豊富町(とよとみちょう)は、北海道の宗谷地方・日本海側に位置する人口3,362人の町です。日本最北の温泉郷「豊富温泉」と、ラムサール条約に登録されたサロベツ原野で知られています。札幌からは車でおよそ4時間、稚内市からは南へ約40kmの距離にあります。
豊富町の魅力を5つに凝縮すると、こうなります:
- ✅ 日本最北の温泉郷「豊富温泉」──油分を含む、世界的にも希少な泉質の湯
- ✅ サロベツ原野──ラムサール条約登録、日本最北の国立公園の中心地
- ✅ 乳牛1万1千頭・人口の3倍超──年間出荷乳量約6万トンの酪農の町
- ✅ 稚咲内漁港のホッキ貝と、ご当地グルメ「豊富ホッキチャウダー」
- ✅ 全国初の「自転車健康都市宣言」をした町(1991年)
「温泉でじっくり療養したい人」「サロベツの大湿原や野鳥に会いたい人」「酪農の町でのんびり暮らせる移住先を探している人」におすすめの町です。序盤で町の見どころ、中盤で歴史と暮らし、終盤で特産品と食を、地元目線で紹介します。
| 人口 | 3,362 人 ※2026年4月30日時点(住民基本台帳) |
|---|---|
| 面積 | 520.69 km² |
| 人口密度 | 6.46 人/km² |
地理的には、北は稚内市、南は幌延町、東は猿払村に隣接し、西は日本海に面しています(出典:豊富町公式サイト)。町の中央をサロベツ川が蛇行して流れ、その流域に広大な湿原と平原が広がります。
鉄道はJR宗谷本線が通り、豊富駅・兜沼駅があります。温泉・湿原・酪農・歴史と、520km²を超える広い町のあちこちに「日本最北」「世界的に希少」の要素が詰まっています。ひとつずつ見ていきましょう。
豊富町の推しポイント

先にあげた5つの推しポイントを、もう少し肉付けして紹介します。豊富町の顔は何といっても「日本最北の温泉郷」と「サロベツ原野」の2つ。そこに人口の3倍を超える乳牛が支える酪農と、日本海のホッキ貝が加わります。温泉・自然・食という異なる魅力が、ひとつの町に同居しているのが面白いところなんですよね。それぞれ詳しく見ていきます。
推しポイント1:豊富温泉──油分を含む日本最北の湯
豊富温泉は「日本最北の温泉郷」と呼ばれ、井戸から石油や天然ガスとともに湧き出るため、湯にわずかに油分を含むのが最大の特徴です(出典:豊富町公式サイト)。この油分を含む泉質は世界で2か所、日本では豊富町だけといわれるほど希少です(出典:北海道豊富町観光協会)。アトピーや乾癬に効くとされ、全国から湯治客が訪れます。
推しポイント2:サロベツ原野──日本最北の国立公園の大湿原
豊富町と幌延町にまたがるサロベツ原野は、2005年11月8日にラムサール条約に登録された貴重な湿地です(面積2,560ha、出典:環境省)。日本三大湿原のひとつで、高層湿原としては国内最大規模。一帯は日本最北の国立公園「利尻礼文サロベツ国立公園」に指定されています(出典:環境省)。
推しポイント3:人口の3倍を超える乳牛が支える酪農
豊富町は酪農が基幹産業で、乳牛頭数は約1万1千頭。人口3,362人の3倍を超える牛が暮らしている計算です。年間の出荷乳量は約6万トンで、全道でも上位にランクされています(出典:豊富町公式サイト)。1万3千ヘクタールの牧草地を生かした放牧型の酪農が広がっています。
推しポイント4:稚咲内のホッキ貝と「豊富ホッキチャウダー」
日本海に面した稚咲内(わかさかない)漁港は、ホッキ貝の水揚げで知られています(出典:北海道(水産経営課))。このホッキ貝を使ったご当地グルメ「豊富ホッキチャウダー」は、町内の飲食店で味わえます。温泉と湿原のイメージが強い町ですが、海の幸も自慢なんですよ。
豊富町の歴史

豊富町の歩みは大きく3段階に分けられます。アイヌの人々が暮らした原野の時代、明治以降の開拓と分村、そして炭鉱の盛衰を経て温泉・酪農・観光の町へと姿を変えた現代です。地下から噴き出した温泉と天然ガスが、この町の運命を大きく動かしてきました。
地名の由来とアイヌ語の世界
「豊富」という地名は、アイヌ語の「エベコロベツ」(何でも豊富にある、の意)の意訳とされます。一方で、食物(魚)を持つ川を意味する「イペコロペッ」の意訳とする説もあります(出典:北海道(アイヌ語地名リスト))。いずれも、自然の恵みが豊かな土地だったことを物語る名前です。
近代の開拓と分村
1869年(明治2年)に開拓使が置かれ、入植が進みました。1919年(大正8年)には現在の幌延町にあたる幌延村が成立し、その一部だった豊富地区は、1940年(昭和15年)9月に幌延村から分村して豊富村として独立します。その後1959年(昭和34年)に町制を施行し、現在の豊富町となりました。
現代──炭鉱の閉山から温泉・酪農の町へ
1926年(大正15年)、石油の試掘中に天然ガスとともに温泉が噴出し、豊富温泉が開湯しました。昭和には日曹炭鉱が栄えましたが、1972年(昭和47年)に閉山。人口減少に直面した町は観光産業への転換を進めます。1974年にサロベツ原野が国立公園に指定され、現在は年間およそ30万人が訪れる観光地へと成長しました。
豊富町の文化・風習

方言と話し方の特徴
豊富町で耳にするのは、おなじみの北海道弁です。寒さが厳しいこの町でいちばん登場するのがしばれる(凍えるほど寒い)という言葉。冬の朝、ご近所さんが「今朝はしばれるね〜」とあいさつ代わりに交わします。
ほめ言葉にはなまら(とても・すごく)、別れぎわにはしたっけ(それじゃあ、またね)。動物や子どもがかわいいときはめんこい(かわいい)と言います。語尾に「〜っしょ」「〜だべさ」が付くと、ぐっと土地の空気が出てくるんですよ。
しばれる冬と季節の暮らし
豊富のアメダスでは、最低気温の極値マイナス28.8℃を記録したことがあります(2014年2月8日)。冬日の年間日数は150日を超え、11月中旬から4月中旬まで雪と付き合う暮らしです。だからこそ、芯まで温まる豊富温泉の存在が町の人にとって特別なんですよね。
湯治文化と人のつながり
豊富温泉には、皮膚の悩みを抱えて長期で滞在する湯治客が全国から訪れます。そうした人たちを町ぐるみで受け入れてきた歴史があり、湯治をきっかけに移住する人も少なくありません。よそから来た人をあたたかく迎える空気が、この小さな町には根づいています。したっけ、次は食の話にいきましょう。
豊富町の特産品・食

特産品1:豊富牛乳・とよとみしぼり
豊富町といえば、まずは牛乳です。町内の工房レティエやみさわ牧場などでもさまざまな乳製品が作られていますが、その中心が「豊富牛乳公社」。約100戸の酪農家から集めた生乳を、鮮度を保ったまま町内でパックしています(出典:豊富町公式サイト)。セイコーマートの「とよとみしぼり」やプレーンヨーグルトとして道内外に流通しています。
飲んでみると、すっきりしながらも乳本来のコクがあってなまら(すごく)おいしい。涼しい気候とサロベツの牧草地で育った牛の乳ならではの味わいです。旅の途中に立ち寄ったら、地元のソフトクリームもぜひ味わってみてください。
特産品2:ホッキ貝・豊富ホッキチャウダー
稚咲内漁港で水揚げされるホッキ貝は、刺身や寿司、バター焼きで楽しめる肉厚の二枚貝です。甘みが強く、火を通すとほんのり赤く色づきます。旬は冬から春。豊富町ではこのホッキ貝をクラムチャウダー風に仕立てた「豊富ホッキチャウダー」がご当地グルメとして親しまれ、町内の飲食店で味わえます(出典:北海道(水産経営課))。豊富牛乳とホッキ貝、町の名物がひと皿に合わさった一品です。
特産品3:チーズ・ソーセージなどの高付加価値食品
近年は、豊富町産の生乳で本格ナチュラルチーズやジェラートを作る工房レティエ、芦川小学校跡で高品質のソーセージやベーコンを製造販売するサロベツファームなど、こだわりの食品を作る作り手が育っています。どちらも手づくり体験ができ(予約制)、酪農の町ならではの食を間近に楽しめます。お土産にもぴったりですよ。
豊富町の観光スポット

序盤で触れた温泉・湿原・酪農という豊富町の3つの顔は、そのまま観光の柱になります。温泉でじっくり体を癒やし、湿原の木道を歩き、地平線まで続く牧場を眺める。どれも町なかから車ですぐ行けるのがうれしいところなんですよ。まずは外せないスポットから紹介していきます。
温泉と湯治を楽しむスポット
- 豊富温泉ふれあいセンター – 町営の日帰り入浴施設。営業時間は10:00〜21:00(最終受付20:30)、定休日は隔週木曜日、入浴料は大人510円・小学生250円・未就学児無料です(出典:豊富温泉 ミライノトウジ)。一般浴場のほか、ぬるめに設定された湯治用の浴場が別にあるのが特徴。湯面にうっすら油が浮かび、独特の石油の香りが鼻に届きます。湯から上がると肌がしっとりして、クセになる人が多いんですよね。
- 豊富温泉スキー場 – 温泉街の裏手にあるゲレンデで、ナイター設備とリフトを備え、初心者やファミリー向けです(出典:豊富町公式サイト)。滑ったあとにそのまま温泉で温まれる、なんとも贅沢な立地。しばれる(凍えるほど寒い)冬だからこそ、雪と湯のセットが効くんです。
サロベツ原野の自然を体感するスポット
- サロベツ湿原センター – サロベツ原野の玄関口にある案内施設で、入館は無料。営業時間は5〜10月が9:00〜17:00(無休)、11〜4月が10:00〜16:00(月曜・年末年始休館)です(出典:サロベツ湿原センター公式サイト)。館内で湿原の成り立ちを予習してから、裏手の一周約1kmのバリアフリー木道へ。足元から泥炭地のやわらかな感触が伝わり、風が草を揺らす音だけが響きます。晴れた日は地平線の先に利尻富士が浮かびます。
- 稚咲内海岸(オロロンライン) – 利尻礼文サロベツ国立公園に含まれる日本海沿いの海岸線。砂丘林が続き、正面には利尻富士がそびえます。夕方には海に沈む夕日が水平線を染め、車を停めてしばらく見入ってしまう景色です。すぐ近くの稚咲内漁港は、序盤で紹介したホッキ貝の水揚げ地でもあります。
酪農の風景と兜沼エリアのスポット
- 大規模草地牧場 – 総面積1,500ha(東京ドーム約320個分)、約1,500頭の乳牛が放牧される日本有数の牧場で、豊富駅から車で約15分です(出典:北海道豊富町観光協会)。なだらかな丘に牧草ロールが転がり、その向こうで牛が草を食む。なまら(とても)広くて、ヨーロッパの田園に迷い込んだような気分になりますよ。星空観察にもおすすめです。
- 兜沼公園 – 豊富市街から北へ約20km、周囲約7kmの兜沼のほとりに広がる公園で、水鳥の飛来地として知られ、キャンプ場やコテージも整っています(出典:北海道豊富町観光協会)。森に囲まれた湖畔は時間がゆっくり流れ、春には水芭蕉が咲きます。
- 言問の松 – 兜沼の近くに立つ、樹齢1,200年・高さ14mのオンコ(イチイ)の巨木。イチイは町の木でもあります(出典:北海道豊富町観光協会)。切り倒そうとすると災いが起きると伝えられ、土地の守り神として大切にされてきました。小高い丘の上にあり、兜沼を見渡せます。
- 宮の台展望台 – サロベツ原野と利尻富士を一望できる無料の展望台。地平線まで続く緑の原野と、その奥に浮かぶ山の組み合わせは、まさに北の大地という眺めです。人も少なく、静かに景色を味わえます。
豊富町の観光ルート

スポットが点在する豊富町では、車があると一日をぐっと充実させられます。温泉を起点に湿原と牧場を回る町内ルートから、稚内市や幌延町とつなぐ広域ルートまで、組み立て方はいろいろ。代表的な回り方を紹介しますね。
【車・1日】温泉と原野を満喫する町内ルート
時系列:9:00 豊富温泉 → 9:40 サロベツ湿原センター(車約30分)→ 11:30 稚咲内海岸(車約20分)→ 13:30 大規模草地牧場(車約30分)→ 15:30 豊富温泉ふれあいセンター(車約20分)
①サロベツ湿原センター(90分)→ 朝のうちは風がおだやかで、木道散策に向いています。湿原の花や鳥を間近に観察しましょう。
②稚咲内海岸(60分)→ 日本海を眺めながらお昼休憩。利尻富士を正面に見られたら最高です。
③大規模草地牧場(90分)→ 午後の光のなか、放牧の風景をのんびり眺めます。広さに圧倒されますよ。
④豊富温泉ふれあいセンター(90分)→ 一日の締めはやっぱり温泉。歩き疲れた体を、油分を含んだ湯がじんわりほぐしてくれます。
【車・半日】酪農と湿原をつまむショートルート
時系列:13:00 豊富駅 → 13:20 大規模草地牧場(車約15分)→ 14:40 サロベツ湿原センター(車約30分)→ 16:30 豊富温泉(車約30分)
①大規模草地牧場(60分)→ まずは牧歌的な丘へ。電動アシスト自転車なら、起伏のある道もなまら(とても)楽に走れます。
②サロベツ湿原センター(90分)→ 木道を一周して湿原の空気を味わいます。閉館時間に注意して回りましょう。
③豊富温泉(任意)→ 時間が許せば、最後にひと風呂浴びて帰るのがおすすめです。
【車・1日】稚内・幌延とつなぐ広域ルート
時系列:9:00 稚内市街 → 10:00 サロベツ湿原センター(車約60分)→ 12:30 豊富温泉(車約30分・昼食)→ 14:30 兜沼公園(車約40分)→ 16:00 幌延町方面(車約30分)
①サロベツ湿原センター(90分)→ 稚内市から南下し、まずは日本最北の高層湿原へ。
②豊富温泉(120分)→ 昼食と入浴をセットで。食堂のジンギスカンやラーメンで腹ごしらえを。
③兜沼公園(60分)→ 静かな湖畔で森林浴。すぐそばの言問の松にも立ち寄れます。
④幌延町方面(任意)→ 隣町まで足を延ばすなら、サロベツ原野の南側を抜けて移動できます。
豊富町の年間イベント

豊富町の一年は、花と自転車の夏、しばれる冬の温泉と、季節がはっきり分かれています。サロベツ原野が花で埋まる初夏、「自転車健康都市」らしい真夏のレース、そして雪と湯を楽しむ冬。季節ごとの見どころを紹介しますね。
春〜夏:花咲くサロベツと自転車レース
初夏のサロベツ原野は、町いちばんの華やぎどき。代表的な花エゾカンゾウは、例年6月下旬から7月上旬に見頃を迎えます(出典:環境省 北海道地方環境事務所)。地平線まで広がる原野がオレンジ色に染まる光景は圧巻です。
真夏には、序盤で触れた「自転車健康都市」を象徴するイベント「サロベツ100マイルロードレース」が、近年は7月に大規模草地の特設コースで開かれます。牧場の中を走り抜ける、日本最北クラスの自転車レースです。沿道で応援するだけでも熱気が伝わってきますよ。
夏:地域の夏祭り
夏には、豊富八幡神社の例大祭や商工夏祭りなど、地元の人が主役のお祭りが市街地でひらかれます。屋台が並び、子どもからお年寄りまで集まる、町の規模ならではのあたたかい空気。観光客もすっと混ざって楽しめる雰囲気なんです。
冬:しばれる季節の温泉とスノーシュー
冬の豊富町は、最低気温がマイナス20℃を下回る日もある寒さ。だからこそ温泉のありがたみが増します。温泉街裏手の豊富温泉スキー場で滑ったあと、湯で温まる流れが定番です。
雪に覆われたサロベツ湿原では、スノーシューで真っ白な原野を歩く体験ができます。したっけ(それじゃあ)、エリアごとの顔も見ていきましょう。
豊富町のエリア別の顔

520km²を超える豊富町は、エリアごとに表情がはっきり違います。旅の拠点になる市街地、湯治の里の温泉、湿原と海の自然、静かな森と湖の兜沼。旅する視点で、それぞれの顔を見ていきましょう。どこを目的に来るかで、滞在の組み立てが変わってきます。
豊富市街エリア──旅の拠点となる中心部
JR豊富駅を中心に、役場や商店、飲食店が集まる町の玄関口です。コンビニや食事処もあり、旅の補給や宿泊の起点に向いています。派手さはありませんが、観光の合間にほっと一息つける、暮らしの匂いがするエリアなんですよ。
豊富温泉エリア──湯治と湯めぐりの里
市街から東へ約6km、丘の上に温泉宿とふれあいセンターが集まる温泉街です。皮膚の悩みを抱えた湯治客が全国から長期滞在する、独特の落ち着いた空気が流れています。じっくり体を癒やしたい人、温泉そのものを目的に来たい人にぴったりのエリアです。
サロベツ・稚咲内エリア──湿原と海の絶景
町の西側に広がる、サロベツ原野と日本海の自然エリア。湿原センターの木道、オロロンラインの海岸、漁港が点在します。花や野鳥、夕日を目当てに訪れる人に向いています。地平線まで遮るものがない景色は、ここまで来ないとめんこい(かわいい)花たちにも出会えません。
兜沼エリア──静かな森と湖
市街から北へ約20km、森に囲まれた兜沼を中心とした静かなエリアです。キャンプや森林浴、言問の松めぐりが楽しめます。にぎやかな観光地より、自然のなかでゆっくり過ごしたい人におすすめ。時間を忘れてのんびりできますよ。
豊富町の気候・季節の暮らし

豊富町の年平均気温は6.3℃で、最も暖かい8月でも日平均19.4℃と、夏は涼しく過ごしやすい気候です(出典:気象庁)。一方で冬は長く、年間降雪量は703cmにのぼります。猛暑日や熱帯夜を観測したことがないのも、最北の町ならではです。夏は扇風機いらず、冬は雪と寒さとの付き合い方が暮らしの中心になる町なんですよ。
夏──6月〜8月の暮らし
夏は涼しく、真夏日(最高30℃以上)の平年日数はわずか0.6日です(出典:気象庁)。本州の蒸し暑さとは無縁で、夜は窓を開けると肌寒いほど。サロベツ原野が花で埋まるのもこの時期で、散歩やサイクリングが気持ちいい季節です。
秋──9月〜10月の暮らし
秋は短く、駆け足で過ぎていきます。原野が草紅葉に色づき、渡り鳥が羽を休める季節。朝晩の冷え込みが日に日に強まり、10月には初雪の便りも届きます。暖房の準備や冬タイヤへの交換を、早めに済ませておく家庭が多い時期です。
冬──11月〜3月の暮らし
冬日(最低0℃未満)の平年日数は157.1日、真冬日(最高0℃未満)は76.7日にのぼり、過去には最低マイナス28.8℃を記録したこともあります(出典:気象庁)。しばれる(厳しく冷え込む)朝は、吐く息が一瞬で白くなり、雪を踏む音がきしむように響きます。だからこそ、豊富温泉のあたたかさが体にしみるんですよね。
春──4月〜5月の暮らし
雪解けは遅く、4月中旬まで雪が残ることもあります。春先は風が強く、まだ肌寒い日が続きますが、5月になると一気に草木が芽吹きます。長い冬を越えた分、春の訪れは町じゅうが待ちわびる特別な季節です。
豊富町の移住・暮らし情報

人口3,362人の豊富町は、温泉を目的に移住する人がいる、ちょっと珍しい町です。湯治がきっかけで定住する人も少なくありません。買い物や暮らしの利便は都会には及びませんが、その分、自然とのびのびした距離感が手に入ります。なまら(とても)静かな環境で暮らしたい人に向いた町なんですよ。
通勤・通学
多くの住民が町内の酪農・関連産業や役場、商店などで働いています。日常生活では中心都市の稚内市に依存する場面も多く、買い物や通院で車で往復する人もいます。車があると暮らしの幅がぐっと広がります。
住宅環境
賃貸物件は数が限られるため、町営住宅や空き家を活用する形が中心になると考えられます。家賃は都市部より抑えられる傾向と考えられます。移住の相談は、町の定住支援センター「ふらっときた」がワンストップ窓口になっています(出典:豊富町定住支援センター ふらっときた)。
買い物環境
町内にはセイコーマートなどがあり、日常の買い物はまかなえます。豊富牛乳がセコマグループで製造されている町なので、地元の牛乳やヨーグルトが身近に並ぶのも嬉しいところ。大型店でのまとめ買いは稚内市まで足を延ばす人が多いと考えられます。
子育て・教育
町内には豊富小学校・豊富中学校に加えて道立の北海道豊富高等学校があり、兜沼地区には兜沼小中学校があります。人口規模で町内に高校まであるのは心強いところです。子育て支援の情報は町公式サイトにまとまっています(出典:北海道豊富町公式サイト)。
医療環境
町内には豊富町国保診療所があり、日常的な診療に対応しています(出典:北海道豊富町公式サイト)。専門的・高度な医療が必要なときは、稚内市の病院を利用する形になると考えられます。
エリア別の暮らし視点
暮らす視点でみると、市街地は役場・商店・学校が近く、生活導線がコンパクトにまとまっています。豊富温泉エリアは湯治や療養を目的とした滞在・移住に向き、郊外の酪農地帯は農業就業を目指す人の受け皿になっています。
豊富町へのアクセス

豊富町は北海道の北のはずれにあり、稚内市から南へ約40kmの位置です。鉄道・バス・飛行機のいずれでも行けますが、いずれも本数が限られるため、現地では車があると安心です。主要なルートを整理します。
車でのアクセス
札幌からは約300km、おおむね4〜5時間の道のりです。稚内市からは約1時間。最寄りの稚内空港からレンタカーで約60分です(出典:北海道豊富町観光協会)。広い町内を効率よく回るなら、車がいちばん融通が利きます。
鉄道+バスでのアクセス
JR宗谷本線の豊富駅が玄関口で、特急宗谷・サロベツが停車します。JR稚内駅からは約45分・930円です(出典:北海道豊富町観光協会)。豊富駅から豊富温泉へは路線バスで約10分・330円。札幌からは特急でおよそ4時間半かかります。
バスでのアクセス
沿岸バスの「特急はぼろ号」が、札幌駅前と豊富町を乗り換えなしで結んでいます。留萌・羽幌を経由して約5時間、完全予約制の路線です(出典:沿岸バス)。豊富温泉まで直接アクセスできるので、温泉が目的なら便利な選択肢です。
飛行機でのアクセス
最寄りの稚内空港は、東京(羽田)や札幌方面と結ばれています。稚内空港から豊富温泉へはバスで約30分・600円、タクシーなら約20分・約5,000円です(出典:北海道豊富町観光協会)。遠方からは飛行機+レンタカーが現実的なルートと考えられます。
町内移動の現実的アドバイス
鉄道もバスも本数が多くないため、観光でも暮らしでも車が頼りになります。レンタカーを使うなら、稚内空港やJR豊富駅で借りて回るのがスムーズですよ。冬は路面が凍るので、運転には余裕を持って臨んでください。
【地元住民に直撃!】豊富町の本当の魅力を聞いてみた

Q1.あなたのご職業を教えてください。
豊富温泉の宿で、お客さんのお世話をする仕事を長いことやってますわ。湯治に来る方が多くてね、アトピーや乾癬で悩んで全国から来られるんです。
長く滞在する方ばかりだから、もう家族みたいなお付き合いになってね。お客さんの肌が良くなっていくのを見るのが、なにより嬉しいんですわ。
Q2.豊富町に来て絶対行くべき場所はどこだと思いますか?
やっぱりサロベツ湿原だべね。6月の終わりごろ、エゾカンゾウが地平線まで真っ黄色に咲く時期は、観光の方も町の者も息をのみますよ。木道を歩くと風で草がさわさわ鳴って、奥に利尻富士が浮かんでね。
地元の者がこっそり行くなら大規模草地。牛と牧草ロールだけの丘がずうっと続いて、夜は星がしばれるほどきれいなんですわ。
Q3.豊富町でお土産を買うとしたらなんですか?
まずは豊富牛乳。とよとみしぼりやヨーグルトは、町の者が毎日飲んでる味でね、間違いないですわ。
あとはね、地元の人間が買うのは温泉水を濃縮した「サロベツ大地恵泉」っていう入浴剤。家のお風呂が豊富温泉になるって評判で、湯治を続けたい人がまとめ買いしていくんですよ。
Q4.外から人が来たときに、豊富町でまず連れていく店はどこですか?
温泉のふれあいセンターの食堂「味彩」に連れていくね。ひと風呂浴びてから、ジンギスカンやラーメンを食べてもらうのが、いちばん豊富らしいもてなしですわ。
地元の名物なら豊富ホッキチャウダー。稚咲内で揚がったホッキ貝と豊富牛乳が一杯に入ってて、これ食べたら町の顔がだいたいわかるべさ。
Q5.豊富町はどんな気質だと思いますか?
口数は多くないけど、芯はあったかい人ばっかりだね。湯治で長く来る人をずっと町ぐるみで迎えてきたから、よそから来た人を構えずに受け入れる気質があるんですわ。
酪農で朝の早い土地だからか、みんな働き者でね。困ってる人がいたら、したっけ自然と手が出る。そういう町なんですよ。
Q6.昔に比べて、豊富町の雰囲気や活気はどう変わったと感じますか?
炭鉱があったころに比べたら、人はずいぶん減ったよ。子どもの声も町なかで聞こえにくくなって、店じまいするとこも出てきてね。正直、寂しいなと思うことはあります。
ただ、温泉目当ての移住者や若い酪農家が少しずつ入ってきてね。役場や町長さんも移住の窓口に力を入れてて、新しい風は確かに吹いてますわ。
Q7.豊富町のこれから新しくできる施設や、期待している活動などはありますか?
町民センターや定住支援の「ふらっときた」みたいに、町の者が集まれる場所がもっと生きてくるといいなと思ってます。移住相談から暮らしまで、ここで完結できるとありがたいですわ。
あとは町の水源やサロベツの自然を守る取り組みと、夏の自転車レースみたいな観光行事ね。湿原と温泉を次の世代につなげていけたら、本望ですわ。

