別海町(べつかいちょう)は、北海道の最東端・根室管内の中央に位置する人口13,657人の町です。生乳生産量が日本一で、人口より牛の数がはるかに多い「酪農王国」として知られています。
別海町の魅力を5つに凝縮すると、こうなります:
- ✅ 生乳生産量・日本一──約11万頭の乳牛が暮らす、日本を代表する酪農の町
- ✅ 野付半島──全長約26kmの日本最大の砂嘴。立ち枯れた森「トドワラ」が広がる
- ✅ 尾岱沼の北海シマエビ──帆を立てて風で進む「打瀬舟漁」は北海道遺産
- ✅ べつかい氷平線──冬、凍った野付湾を歩くガイドツアーと「四角い太陽」
- ✅ 可住地面積・日本一──町として全国3番目に広い、地平線まで続く牧草地
「広大な大自然の中をドライブしたい人」「酪農や漁業の現場に触れたい人」「人より牛が多い暮らしを体感したい人」に特におすすめの町です。本記事では、推しポイント・歴史・文化・特産品まで、地元目線で順に紹介していきます。
| 人口 | 13,657 人 ※2026年4月30日時点(住民基本台帳) |
|---|---|
| 面積 | 1,317.17 km² |
| 人口密度 | 10.4 人/km² |
地理的には、別海町は東をオホーツク海(根室海峡)に面し、根室海峡を挟んで北方領土を望む東端の町です。陸では根室市・標津町・中標津町・標茶町・厚岸町・浜中町の6市町と接しています(出典:別海町公式サイト)。
町内にJRの駅はなく、移動の玄関口は根室中標津空港です。空港から東部の野付半島までは車で約50分。広い町域には別海・尾岱沼・西春別などの集落が点在しています。火山灰台地・湿原・砂嘴と、変化に富んだ自然が一つの町に詰まっています。ひとつずつ見ていきましょう。
別海町の推しポイント

別海町の見どころは、大きく「酪農」と「海・自然」に分かれます。内陸には日本一の生乳生産量を支える牧草地が地平線まで広がり、東の海沿いには日本最大の砂嘴・野付半島と、北海シマエビ漁の伝統が息づきます。冬には凍った海を歩くという、ここでしかできない体験も待っています。それぞれ詳しく見ていきましょう。
推しポイント1:生乳生産量・日本一の酪農王国
別海町は、生乳生産量が日本一の町です(出典:別海町公式サイト)。約11万頭の乳牛が飼われ、その数は人口の8倍近くにのぼります。町を車で走ると、放牧された牛とサイロ、ロールベールが当たり前のように視界に入ってきます。地平線まで続く牧草地は、まさに「酪農王国」の象徴です。
推しポイント2:野付半島とトドワラ──日本最大の砂嘴
東の海に伸びる野付半島は、全長約26kmの日本最大の砂嘴です。先端近くには、海水の浸食で立ち枯れたトドマツ林「トドワラ」、ミズナラの「ナラワラ」が広がり、「この世の果て」とも呼ばれる荒涼とした景色が見られます。侵食が進んでいて、いずれ見られなくなるとも言われている貴重な風景なんですよ。
推しポイント3:尾岱沼の北海シマエビと打瀬舟漁
尾岱沼(おだいとう)は、北海シマエビの名産地です。エビのすみかであるアマモを傷つけないよう、エンジンを止めて帆を張り、風の力だけで網を引く「打瀬舟漁」が今も続いています。この打瀬舟と野付湾は北海道遺産に選ばれています(出典:別海町観光協会)。三角の帆が湾に浮かぶ初夏の光景は、尾岱沼の風物詩です。
推しポイント4:べつかい氷平線と四角い太陽
冬になると、野付湾の内海が一面の雪原に変わります。これが「べつかい氷平線」。凍った海の上をガイドと歩くツアーが人気です。さらに厳冬期には、気温が下がりきった朝に太陽が四角く見える「四角い太陽」という珍しい現象も。夏とはまったく違う、白一色の別海に出会えます。
推しポイント5:町として日本3番目の広さ・可住地面積は日本一
別海町の面積は1,317.17km²。「町」としては全国で3番目に広く、人が住める可住地面積では日本の市町村で最も広いとされています。だからこそ、人口密度はわずか10.4人/km²。混雑とは無縁の、のびのびとした空間がこの町の大きな魅力です。
別海町の歴史

別海町の歩みは、大きく3つの時代に分けられます。まず東部沿岸での漁業から始まり、次に明治以降の内陸開拓で畑作が広がりました。そして戦後、大規模な酪農化が進み、現在の「酪農王国」が形づくられました。海と内陸、それぞれの開拓史が一つの町に重なっています。
漁業から始まった東部沿岸
この地域は、元禄年間(1688〜1704年)ごろから漁業で開けたとされ、松前藩の交易拠点である「場所」が置かれていました。最も早く開かれたのは東部の沿岸部で、サケなどの漁が行われていました。「別海」という地名は、西別川の河口が大きく曲がる様子を表したアイヌ語「ペッカイェ(川を折る)」に由来するとされています。
内陸の開拓とパイロットファーム
明治30年代から内陸部への入植が本格化し、畑作を中心とした農業が広がりました。1923年(大正12年)には周辺の村が合併して別海村が成立します。戦後の昭和30年代には、世界銀行の融資を受けた「根釧パイロットファーム」が導入され、機械による大規模開拓が一気に進みました。
新酪農村と酪農王国の完成
1971年(昭和46年)に町制を施行し、別海町となりました。1973年(昭和48年)には「新酪農村」の建設に着手し、広大な酪農地帯が形づくられていきます。かつて町内を走っていた標津線は1989年(平成元年)に廃止されましたが、奥行臼の駅跡などに鉄道の記憶が残されています。
別海町の文化・風習

方言と話し方の特徴
別海町のある釧路・根室エリアは、北海道の中でも東北寄りのイントネーションが混ざる地域と言われています。日常では北海道弁が広く使われます。たとえばしばれる(厳しく冷え込む)、しゃっこい(冷たい)は、冬の会話に欠かせない言葉なんですよ。
あいさつではおばんです(こんばんは)、別れぎわのしたっけ(ね)(それじゃあ、またね)がよく登場します。お礼を言われたときに返すなんもなんも(いえいえ、どういたしまして)も、肩の力が抜ける温かい表現です。「とても」を意味するなまらも道内で知られています。
食卓と季節の暮らし
酪農の町だけあって、食卓には牛乳や乳製品が当たり前のように並びます。地元のべつかい乳業興社が作る牛乳やバター、チーズが身近にあるのは、この町ならではの贅沢ですよね。海沿いに行けば、旬のシマエビやホタテ、サケも食卓に上がります。
冬は氷点下が続く厳しい寒さですが、その分、雪原や凍った海、満点の星空といった冬ならではの風景が楽しめます。季節がはっきり分かれる暮らしです。
人の気質と地域のつながり
酪農や漁業は、家族や地域で協力しないと成り立たない仕事です。だからこそ、人と人との距離が近く、助け合いの空気が根づいていると考えられます。広い町に集落が点在しているぶん、ひとつひとつのコミュニティのつながりが濃いのも特徴です。のんびりした時間の流れを感じられる町です。
別海町の特産品・食

特産品1:牛乳・乳製品
まずはなんといっても牛乳です。別海町は生乳生産量が日本一(出典:別海町公式サイト)。冷涼な気候と広大な牧草地で育った牛から搾られた牛乳は、コクがあるのに後味がすっきりしています。地元のべつかい乳業興社では牛乳・バター・チーズなどが作られ、町内では高齢者などを対象にした牛乳の無料給付(福祉牛乳)も行われているんですよ。旅の途中で、搾りたてに近い味をぜひ試してみてください。
特産品2:北海シマエビ
尾岱沼の北海シマエビは、「赤い宝石」とも呼ばれる初夏の味覚です。塩ゆでにすると、殻はあざやかな赤に、身はぷりっと甘くなります。餌を使わない打瀬舟漁で獲るため、エビ本来の風味が濃いのが特徴。旬は北海シマエビ漁が解禁される6月の終わりごろからです。毎年その時期に「尾岱沼えびまつり」が開かれてきましたが、最新の第62回(2026年)は中止が告知されているため、訪れる際は最新情報の確認をおすすめします(出典:別海町公式サイト)。
特産品3:ホタテ・アサリと西別川のサケ
野付湾ではホタテやアサリ漁も盛んです。打瀬舟漁の合間に味わうホタテは、肉厚で甘みがしっかりしています。秋になると、町を流れる西別川にサケ(あきあじ)がのぼってきます。焼いても鍋にしても、脂ののった身が体に染みる季節の主役です。海の幸と山の幸の両方が一度に揃うのは、酪農と漁業をあわせ持つ別海町ならではの食卓ですよね。
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別海町の観光スポット

別海町の見どころは、東の海沿いに集まっています。日本最大の砂嘴・野付半島を中心に、海から眺める観光船、北方領土を望む展望塔、そして開拓時代の交通遺産まで。序盤で触れた野付半島やトドワラを、ここでは実際に歩いて回る目線で見ていきましょう。冬しか味わえない絶景も紹介します。
海に突き出す絶景──野付半島エリア
- 野付半島・トドワラ/ナラワラ – 全長約26kmの日本最大の砂嘴で、野付湾と伝統の打瀬舟漁は北海道遺産に選ばれています(出典:別海町観光協会)。海水に浸食されて立ち枯れたトドマツの「トドワラ」、ミズナラの「ナラワラ」が「この世の果て」のような景色を作ります。遊歩道を歩くと、足元の湿原と地平線だけになり、風の音しか聞こえなくなりますよ。
- 野付半島ネイチャーセンター – トドワラへの遊歩道入口に立つ拠点施設。開館は4〜9月が9:00〜17:00、10〜3月が9:00〜16:00で、入場は無料です(出典:HOKKAIDO LOVE!(北海道観光振興機構))。1階では別海町産の牛乳やソフトクリームが味わえます。歩くのが大変な日は、トドワラ手前まで行くトラクターバスを使うのもおすすめです。
野付湾を海から・氷から楽しむ
- 別海町観光船 – 尾岱沼漁港からトドワラ桟橋まで、片道およそ30分の船旅。例年5月中旬から10月末まで運航しています(出典:別海町観光船)。運がよければ、北海シマエビ漁の打瀬舟や、湾に来遊するゴマフアザラシに出会えることも。歩いて行くのとは違う、海側からのトドワラを楽しめます。
- 氷平線ウォーク – 1月下旬から、凍りついた野付湾の上を歩ける冬だけの体験です。一面の白銀の世界はまるで雪原ですが、足の下は海。安全のため、立ち入りはガイド同行ツアーに限られています。夕日に合わせて歩くフォトツアーも開かれていて、写真好きにはたまらない時間ですよね。
北方領土と酪農を望むスポット
- 道の駅おだいとう(別海北方展望塔) – 国道244号沿い、白鳥が飛来する「白鳥台」に隣接する道の駅。営業は5〜10月が9:00〜17:00、11〜4月が9:00〜16:00で、毎週火曜が定休(7〜9月は無休)です(出典:別海町公式サイト)。3階の展望塔からは野付半島と国後島が一望でき、1階では尾岱沼産ジャンボホタテのバーガーや、べつかいの牛乳を使ったソフトクリームが味わえます。
開拓の記憶をたどる交通遺産
- 旧奥行臼駅逓所 – 明治43年(1910年)に開設された駅逓所で、2011年に国の史跡に指定されました(出典:別海町公式サイト)。部屋ごとに細かくグレード分けされた客室や大正期のガラスが残り、鉄道も道路も未発達だった開拓期の暮らしが伝わってきます。
- 旧国鉄奥行臼駅・旧別海村営軌道風蓮線奥行臼停留所 – どちらも別海町の指定文化財です(出典:別海町公式サイト)。1989年に廃止された標津線の駅と、自走客車や転車台が残る軌道跡が徒歩圏に並びます。レールが酪農地帯の丘へ延びていく光景は、北海道の駅の原風景そのものです。
- 別海町鉄道記念館(西春別) – 廃止された標津線の西春別駅跡に建つ、入館無料の資料館です(出典:北海道根室振興局)。D51形蒸気機関車やキハ22、町内の廃駅の駅名標などが展示され、鉄道好きでなくても引き込まれます。屋外の展示車両は雪のない季節に見るのがおすすめです。
別海町の観光ルート

別海町はとにかく広いので、移動は車が前提です。海の絶景を一気に味わう1日コース、開拓遺産をじっくり歩く半日コース、内陸の酪農地帯から海へ抜ける広域コースの3つを用意しました。どれも運転時間に余裕を持たせています。気になるルートから組んでみてくださいね。
【車・1日】野付半島・尾岱沼満喫ルート(根室中標津空港発)
9:00 根室中標津空港 → 9:50 野付半島ネイチャーセンター(車約50分)
①野付半島ネイチャーセンター(60分)
→ まず展示でトドワラの成り立ちを予習。ソフトクリームで一息ついてから出発すると、半島歩きがぐっと楽しくなります。
②トドワラ・ナラワラ散策(90分)
→ 遊歩道、またはトラクターバスで「この世の果て」へ。午前中は光がやわらかく、立ち枯れの木々がいちばん絵になる時間帯です。
11:40 ネイチャーセンター → 12:10 尾岱沼(車約30分)
③尾岱沼で昼食(60分)
→ 旬なら北海シマエビ、通年ならホタテ。海を見ながらの食事は、それだけで旅のハイライトになります。
④道の駅おだいとう・別海北方展望塔(60分)
→ 3階から国後島を遠望し、ジャンボホタテのバーガーで締め。夕方は尾岱沼の温泉宿に泊まると、翌朝の海もゆっくり楽しめますよ。
【車・半日】奥行臼の開拓遺産めぐりルート(別海市街発)
13:00 別海市街 → 13:25 奥行臼(車約25分)
①旧奥行臼駅逓所(40分)
→ 国の史跡をじっくり見学。受付の方に案内をお願いすると、当時の暮らしの細部まで知ることができます。
②旧国鉄奥行臼駅(30分)
→ 復元された島式ホームに立つと、列車が来た時代の空気がよみがえります。写真を撮るなら逆光になりにくい午後がおすすめ。
③旧別海村営軌道風蓮線奥行臼停留所(20分)
→ 自走客車や転車台が残る軌道跡。3つの交通遺産が徒歩圏にまとまっているのが、この地区の面白さです。
④廃線跡の散策(30分)
→ レールに沿って歩けば、酪農地帯の静けさと開拓の記憶が同時に味わえます。
【車・1日】広域ルート:西部の酪農と鉄道、そして海へ(別海市街発)
9:00 別海市街 → 9:40 西春別(車約40分)
①別海町鉄道記念館(西春別)(60分)
→ D51や駅名標を見て、廃止された標津線に思いを馳せます。鉄道好きでなくても、当時の道東の暮らしが見えてきます。
②酪農地帯のドライブ(60分)
→ 西部の丘陵には牧草地とサイロが続きます。窓を開けると牧草と土の匂い。信号のない直線道路が気持ちいいんですよ。
10:50 西春別 → 12:00 風蓮湖方面(車約70分)
③風蓮湖畔(60分)
→ 根室市との境に広がる汽水湖。水鳥の宝庫で、季節によっては白鳥の群れに出会えます。昼食は湖を眺めながらゆっくりと。
④尾岱沼方面へ北上(午後)
→ 海沿いを走って野付半島側へ。1日で内陸の牧場と海の両方を味わえるのが、広い別海町ならではの贅沢です。
別海町の年間イベント

別海町のイベントは、季節の味覚と強く結びついています。春から初夏は海の幸、秋は酪農と漁業の両方、冬は凍った海そのものが舞台です。それぞれ何月ごろに開かれるか、現場の雰囲気とあわせて紹介していきますね。開催の有無は年によって変わるので、出かける前の確認をおすすめします。
春〜初夏:海の恵みを味わう
まず楽しみたいのが尾岱沼潮干狩りフェスティバルです。例年5月上旬のゴールデンウィークごろから6月中旬の干潮日に、ふだんは禁漁区の尾岱沼ふれあいキャンプ場前浜が開放されます(出典:別海町公式サイト)。大粒のアサリがざくざく採れて、子どもも大人も夢中になりますよ。
6月最終日曜には、北海シマエビ漁の解禁にあわせた尾岱沼えびまつりが伝統的に開かれてきました(出典:別海町公式サイト)。ただし直近の第62回(2026年)は中止が告知されているため、訪れる際は最新情報を確認してくださいね。
秋:海と山の味覚が一度に揃う
秋の主役は別海町産業祭。毎年9月の第3土・日曜に別海町農村広場で開かれ、秋サケの串焼きやホタテ、牛肉や乳製品が一堂に並びます(出典:別海町公式サイト)。ばんえいなどの馬事競技大会も同時開催され、会場は1日中にぎわいます。海と山の味が同時に楽しめるのは、酪農と漁業を併せ持つこの町ならではですよね。
10月の第2日曜ごろには、西別川のサケ(西別鮭)を主役にした西別川あきあじまつりが別海漁港で開かれてきました。鮭のつかみどりなどが名物ですが、近年は中止となった回もあるため、開催の有無は事前に確認するのが安心です。
冬:凍った海が舞台になる
冬にしか体験できないのが氷平線ウォークです。1月下旬から、結氷した野付湾の上をガイドと歩きます(出典:別海町観光協会)。360度の白い世界に立つと、海の上にいることを忘れそうになります。夕日に合わせて歩くフォトツアーもあり、寒さを忘れて見入ってしまう絶景が待っていますよ。
別海町のエリア別の顔

別海町は東西61km・南北44kmに広がり、集落ごとに表情がまるで違います(出典:別海町公式サイト)。役場のある中心市街、漁業と観光の玄関口、鉄道遺産の残る西部、牧場が続く内陸。旅の目的に合わせて、どこを軸にするかを決めると動きやすくなります。主なエリアの顔を見ていきましょう。
別海エリア──暮らしと旅の補給拠点
町役場や病院、商店が集まる中心市街です。観光地という雰囲気ではありませんが、買い物や食事、給油など旅の「補給」がしやすい場所。郷土料理のポークチャップで知られるお店もあり、長距離ドライブの前後に立ち寄るのに向いています。まず腰を据える拠点として便利なエリアですよ。
尾岱沼エリア──漁業と観光の玄関口
東部の海沿い、野付半島の付け根にあたるエリアです。北海シマエビやホタテの水揚げ港であり、観光船や道の駅おだいとう、温泉宿もここに集まっています。海の幸を味わい、野付半島へ渡る拠点にするなら断然このエリア。朝の漁港の活気や、夕暮れの野付湾の静けさを味わいたい人に向いています。
西春別エリア──鉄道遺産と西の玄関
町の西部、かつて標津線の駅があった地区です。別海町鉄道記念館があり、釧路・中標津方面から入るときの玄関口にもなります。周囲は牧草地が広がる静かな酪農地帯。鉄道や開拓の歴史をたどりたい人、ゆっくりドライブを楽しみたい人にぴったりのエリアです。
中春別・上春別エリア──地平線の酪農地帯
内陸の丘陵に広がる、酪農の中核エリアです。観光施設は多くありませんが、サイロと牧草ロールが点在する風景こそが「酪農王国」の本体。車を停めて深呼吸すれば、地平線まで続く牧場と、牛と土の匂いに包まれます。何もないことが贅沢に感じられる、ドライブ向きのエリアですよ。
別海町の気候・季節の暮らし

別海町は寒暖の差が大きい大陸性の気候で、年平均気温はおよそ5.7℃です。最も寒い1月は日平均が約-6.7℃、平均最低気温は約-13.6℃まで下がります(出典:気象庁)。一方で夏は涼しく、本州が猛暑の時期でも過ごしやすいのが特徴です。四季の振れ幅が大きいぶん、季節ごとの暮らしの表情もはっきりしているんですよ。
夏(6〜8月)──涼しくて過ごしやすい
夏は最も暖かい8月でも日平均が約18.1℃と、エアコンがなくても過ごせる涼しさです(出典:気象庁)。海沿いでは「ガス」と呼ばれる海霧がかかる日もあり、ひんやりした空気に包まれます。猛暑を避けたい人には、夏の別海はとても居心地のいい場所ですよね。
秋(9〜10月)──短くて濃い実りの季節
秋は短く、駆け足で過ぎていきます。西別川にサケがのぼり、牧草地が黄金色に変わるころ、朝晩はぐっと冷え込みます。10月の初めには、シベリアから白鳥が飛来し始めます。空気が澄んで、夕日が西の広野を染める時間がいちばん美しい季節です。
冬(11〜3月)──長く厳しい寒さと氷の世界
冬は長く、厳しさも本格的です。観測史上の最低気温は-33.7℃を記録しており、-25℃前後まで下がる日も珍しくありません(出典:気象庁)。日中も氷点下のままの真冬日が続きます。野付湾は厚く凍りつき、序盤・中盤で紹介した氷平線の世界が広がります。暖房は一日中欠かせず、車は冬タイヤと雪道への備えが必須です。
春(4〜5月)──遅い雪解けと花のはじまり
春の訪れは遅く、雪解けは4月にずれ込みます。霧が出やすく、風の冷たい日もありますが、野付半島の原生花園では少しずつ花が咲き始めます。長い冬を越えたあとの新緑は、ことさら鮮やかに感じられますよ。
別海町の移住・暮らし情報

人口13,657人の別海町は、酪農と漁業を軸にした暮らしの町です。派手な利便性はありませんが、その分ゆったりした時間が流れます。子育て支援が手厚く、お試し移住の仕組みも整っているので、「いきなりは不安」という人でも段階を踏んで町を知ることができますよ。
通勤・通学
働く場所は、町内の酪農・漁業のほか、役場や病院、農協・漁協など。買い物や勤務で隣の中標津町へ車で通う人もいます。通学は町域が広いため、小中学生のために21台のスクールバスが運行されているのが、この町ならではの事情です。
住宅環境
賃貸の集合住宅は数が限られ、戸建てや町営住宅が中心です。相場は都市部より低めと考えられますが、物件数自体が少ないため、早めの情報収集がおすすめです。町は「お試し移住(ちょっと暮らし)」を設けており、中心部のリノベ住宅に1日3,000円(冬期は暖房費を加算)で短期滞在できます(出典:別海町公式サイト)。
買い物環境
別海の中心市街には、徒歩圏にスーパーやコンビニ、役場、図書館がそろっています(出典:別海町公式サイト)。日常の買い物はこのエリアで完結しますが、大型店でまとめ買いをしたいときは中標津町まで足を延ばす人が多いです。
子育て・教育
別海町は子育て支援に力を入れている町で、合計特殊出生率も道内で高い水準にあります(出典:別海町公式サイト)。認定こども園やへき地保育園が各地にあり、保育料は第2子が半額、第3子以降は無料になる仕組みです。小中学校が町内に点在し、高校は道立別海高校があります。
医療環境
中核となるのは町立別海病院で、内科・外科・整形外科・小児科などを備え、入院にも対応しています(出典:別海町公式サイト)。加えて西春別駅前診療所、尾岱沼診療所があり、広い町域をカバーしています。専門的な高度医療は釧路や中標津の病院に頼る場面もあると考えられます。
エリア別の暮らし視点
中盤では旅の視点で紹介したエリアを、ここでは住む視点で見てみましょう。別海中心部は買い物・役場・病院がそろい、暮らしの利便性がいちばん高いエリアです。尾岱沼は漁業と海が身近で、海産物好きにはたまりません。西春別など西部は静かな酪農地帯で、広い土地でのびのび暮らしたい人に向いています。
別海町へのアクセス

別海町は北海道の最東端にあり、町内にJRの駅はありません。旅の玄関口は根室中標津空港で、そこから車かバスでアクセスするのが基本です。札幌からはかなり距離があるため、飛行機を使うのが現実的ですよ。交通手段ごとに見ていきましょう。
飛行機でのアクセス
最寄りは根室中標津空港で、ANAが羽田便(所要約90分・1日1往復)と新千歳便(所要約60分・1日3往復)を運航しています(出典:ひがし北海道トラベルラボ)。東京から乗り継ぎなしで道東に入れるのは、別海への旅では大きな利点です。空港から別海市街までは車でおよそ40分です。
鉄道+バスでのアクセス
鉄道で向かう場合は、JRで札幌から釧路まで約4時間。そこから先はバスか車になります。空港連絡バス(根室交通)が中標津空港から別海を経由して根室まで運行しており、別海ぷらと前などに停車します(出典:根室交通)。本数は多くないので、時刻表の事前確認をおすすめします。
車でのアクセス
道内の他都市からは車移動が中心です。釧路方面からは別海市街までおよそ2時間、根室市からは約1時間。札幌からは400km以上あり、7時間前後を見込む必要があります。広い町なので、現地でもレンタカーがあると動きやすいです。
町内移動の現実的アドバイス
東西61km・南北44kmという広さに対して、公共交通は限られています。観光でも暮らしでも、車があることが前提と考えておくと安心です。冬は路面が凍結し、地吹雪で視界が悪くなる日もあるので、冬道に慣れていない人は時間に余裕を持って運転してくださいね。
【地元住民に直撃!】別海町の本当の魅力を聞いてみた

Q1.あなたのご職業を教えてください。
酪農をやっています。朝晩の搾乳から牧草の管理まで、牛と向き合う毎日です。別海町は生乳の生産量が日本一で、僕みたいに牛を飼って暮らしている家がとにかく多い土地なんですよ。
正直、休みらしい休みはほとんどありません。でも、自分の手で育てた牛から搾った乳が全国に届いていると思うと、やっぱり誇らしいですね。この仕事がこの町を支えているという実感があります。
Q2.別海町に来て絶対行くべき場所はどこだと思いますか?
まずは野付半島ですね。トドワラやナラワラの立ち枯れた木が並ぶ景色は「この世の果て」と呼ばれていて、観光で別海町に来るならここは外せないです。風の音しか聞こえない静けさは、ちょっと他にない体験ですよ。
地元の人間としては、冬の氷平線も推したいです。凍った海の上に立つと、空と氷の境目が消える。あれは別海町の冬を知っている人間ほど、すごさが分かる景色だと思います。
Q3.別海町でお土産を買うとしたらなんですか?
定番はやっぱり、べつかいの牛乳屋さんの乳製品ですね。牛乳やバター、チーズは別海町の有名なもので、観光で来た人にも喜ばれます。道の駅おだいとうでも手に入りますよ。
地元の人間が好きなのは、旬の北海シマエビ。漁の時期が限られているので、出回っているときに買えたら当たりです。塩ゆでにするだけで、町の味がそのまま伝わると思います。
Q4.外から人が来たときに、別海町でまず連れていく店はどこですか?
尾岱沼まで連れていって、北海シマエビの天丼を食べてもらうことが多いです。海を眺めながら食べる地元の海の幸は、説明するより一度味わってもらうのが早いんですよ。
その流れで道の駅おだいとうにも寄ります。ジャンボホタテのバーガーを食べて、展望塔から国後島を眺める。別海町観光の入口として、ちょうどいい場所だと思っています。
Q5.別海町はどんな気質だと思いますか?
酪農や漁業って、一人じゃ回らない仕事なんです。だから昔から助け合いが当たり前で、人との距離が近い。困っていたら誰かが手を貸してくれる、そういう土地ですね。
派手さはないし、口数も多くない人が多いですけど、芯はあたたかいです。町長や役場の人も顔が見える距離にいて、住民センターに行けば誰かしら知り合いに会う。そんな町です。
Q6.昔に比べて、別海町の雰囲気や活気はどう変わったと感じますか?
人は確実に減りました。僕が子どものころより学校も統廃合が進んで、近所の同級生も町を出ていった人が多いです。そこは正直、寂しいですね。
ただ、最近は大阪や東京から移住してくる人もちらほら出てきました。地域おこしで関わってくれる若い人もいて、酪農王国としての別海町を外に発信する動きは、昔より確実に増えていると感じます。
Q7.別海町のこれから新しくできる施設や、期待している活動などはありますか?
奥行臼の交通遺産を史跡公園として整備していく話が進んでいます。駅逓所や旧駅、軌道跡がまとまって残っている場所なので、ちゃんと形になれば別海町観光の新しい柱になると思います。
あとは、運動公園や水源といった暮らしの土台を守りつつ、酪農と観光をどうつなげていくか。牛乳や野付半島を入口に、もっと人が来て、できれば住んでくれる町になればと期待しています。

