厚岸町(あっけしちょう)は、北海道南東部・釧路管内の太平洋に面した人口7,891人の港町です。釧路市から約48km、車でおよそ1時間の距離にあります。
厚岸町の魅力を5つに絞ると、こうなります:
- ✅ 一年中食べられる牡蠣──汽水湖の厚岸湖と厚岸湾を使い分け、通年で生牡蠣を出荷する珍しい産地
- ✅ 厚岸ウイスキー──「白露」が2025年の世界的品評会で金賞を受賞した蒸溜所のある町
- ✅ アサリ生産量が北海道一──厚岸湖で育つ、はまぐり並みに大きい大粒あさり
- ✅ 国泰寺──江戸幕府が建てた蝦夷三官寺のひとつで、跡地は国の史跡
- ✅ 厚岸湖・別寒辺牛湿原──ラムサール条約に登録された湿原と野鳥の楽園
「牡蠣をとことん食べたい人」「ジャパニーズウイスキーが好きな人」「湿原や野鳥に会いに行きたい人」に特におすすめの町です。この記事では、観光・特産・歴史から、方言や暮らしの様子まで、厚岸町の素顔を順に紹介していきます。
| 人口 | 7,891 人 ※2026年4月30日時点(住民基本台帳) |
|---|---|
| 面積 | 739.12 km² |
| 人口密度 | 10.7 人/km² |
地理的には、東は浜中町、北は別海町と標茶町、西は釧路町に接しています(出典:経済産業省)。南には厚岸湾が深く入り込み、汽水湖の厚岸湖とつながっています。
町なかにはJR根室本線と国道44号が通り、厚岸湾と厚岸湖を分ける位置には町のシンボル・厚岸大橋が架かっています。牡蠣にウイスキー、湿原に古刹と、小さな港町にいくつもの「顔」が詰まった町です。ひとつずつ見ていきましょう。
厚岸町の推しポイント

厚岸町といえば、まず牡蠣。汽水湖と湾を使い分ける独自の養殖で、一年を通して生牡蠣が味わえる全国でも珍しい町です。さらに近年は厚岸ウイスキーが世界で評価され、酒好きの注目も集めています。加えて、蝦夷三官寺・国泰寺をはじめとする歴史の厚み、ラムサール条約湿地と野鳥の島・大黒島という自然の豊かさも見どころ。ここでは代表的な4つを紹介します。
一年中食べられる「厚岸の牡蠣」
厚岸の牡蠣は、塩分濃度の異なる厚岸湖と厚岸湾を養殖カゴごと移動させ、産卵期をずらすことで一年を通して出荷されています。「旬は冬だけ」という牡蠣の常識をくつがえす産地なんですよ。地名そのものがアイヌ語で「牡蠣の多いところ(アッケケシ)」に由来するという説もあるほど、牡蠣と縁の深い町です。
厚岸ウイスキー──世界が認めた道東の一本
町内の厚岸蒸溜所は2016年に蒸溜を始めた、道東で初めての本格ウイスキー蒸溜所です。日本の季節を表す「二十四節気」を冠したシリーズで知られ、2025年には「白露」が世界的な品評会ワールド・ウイスキー・アワードで金賞を受賞しました(出典:堅展実業株式会社(PR TIMES))。海霧に包まれた厚岸の気候が、独特のスモーキーな風味を育てると言われています。
国泰寺と厚岸大橋──歴史と景観が出会う
厚岸湾を望む高台には、1804年に江戸幕府が建立した蝦夷三官寺のひとつ・国泰寺があります。その境内は「国泰寺跡」として国の史跡に指定されています(出典:文化遺産オンライン(文化庁))。湾と湖を分けるように架かる厚岸大橋からの眺めとあわせて、町の歴史と景観を一度に味わえる場所です。
厚岸湖・別寒辺牛湿原と大黒島──野鳥の楽園
厚岸湖と別寒辺牛湿原は、まとめて「厚岸湖・別寒辺牛湿原」としてラムサール条約の登録湿地になっています(出典:環境省)。湾口に浮かぶ大黒島は海鳥の繁殖地として国の天然記念物に指定されており(出典:文化遺産オンライン(文化庁))、バードウォッチング好きにはたまらないエリアです。
厚岸町の歴史

厚岸の歴史は、縄文時代までさかのぼります。古くからアイヌの人々が暮らし、天然の良港を持つことから交易と海運の拠点として栄えました。江戸時代には幕府の蝦夷地経営の要となり、明治以降は屯田兵による開拓と鉄道開通を経て、漁業と酪農の町として発展してきました。大きく3つの時代に分けて見ていきます。
道東文化発祥の地、アイヌと和人の交易拠点
町内の遺跡からは縄文時代の住居跡が見つかっており、およそ6,000年前から人が暮らしてきたことが分かっています(出典:厚岸町)。1643年にはオランダ東インド会社の探検船カストリクム号が厚岸湾に寄港し、約18日間滞在してアイヌの人々と交流した記録が残っています。厚岸は早くから外国船が訪れ、アイヌと和人の交易の場となっていました。
蝦夷三官寺・国泰寺と屯田兵の開拓
1804年、江戸幕府は蝦夷地の治安と教化のために三つの寺を置くことを決め、その一つとして国泰寺が建立されました。1800年には伊能忠敬が測量のため厚岸に滞在しています。明治期に入ると、1890年に太田村へ440戸の屯田兵が入植し、内陸部の開拓が本格的に始まりました。この開拓が、のちの酪農地帯の礎になっています。
町制施行から厚岸大橋まで
1900年、近隣の町村が合併して厚岸町が誕生しました。1917年には釧路—厚岸間の鉄道が開通し、本土側の市街地が大きく広がります。そして1972年、厚岸湾と厚岸湖を分ける水路に厚岸大橋が完成し、市街地と漁港・半島部が陸路で結ばれました。これらの出来事が、今の町の姿をかたちづくっています。
厚岸町の文化・風習

方言と話し方の特徴
厚岸町を含む北海道では、独特の言い回しが今も日常で使われています。なかでも有名なのがなまら(とても・すごく)。「なまらうまい」で「とてもおいしい」という意味になります。
冬の冷え込みが厳しい厚岸では、しばれる(厳しく冷え込む・凍えるほど寒い)も冬の挨拶代わりに登場します。「今朝はしばれるね」と聞いたら、それは「ものすごく寒いね」ということなんですよ。
ほかにも、ゴミなどを「捨てる」ことを投げる(捨てる)と言ったり、別れぎわにしたっけ(それじゃあ・またね)と声をかけたりします。標準語と同じ言葉でも意味が違うことがあるので、旅先で耳にすると新鮮ですよ。
牡蠣とともにある食卓
厚岸の食卓は、なんといっても海の幸が主役です。牡蠣やあさり、サンマ、サケ、コンブが、季節ごとに食卓へ並びます。とくに牡蠣は一年中手に入るので、焼く・蒸す・生で味わうと、家庭によってさまざまな食べ方が楽しまれています。
道の駅・厚岸グルメパーク(コンキリエ)では、炭火で牡蠣を自分で焼いて食べられます。旅行者も地元の人と同じ味を気軽に体験できるのが、この町ならではです。
漁業と酪農が育てた気質
厚岸は海の漁業と内陸の酪農、どちらも盛んな町です。自然相手の仕事が暮らしの中心にあるためか、人とのやりとりはさっぱりとして実直。初対面でも気取らず接してくれる空気があります。
夏は海霧で涼しく、冬はしばれる――そんな厳しくも豊かな自然と折り合いをつけながら、季節の恵みを大切にする暮らしが根づいています。
厚岸町の特産品・食

厚岸の牡蠣(カキえもん・マルえもん)
厚岸の牡蠣には、いくつかのブランドがあります。「カキえもん」は、幼生から厚岸で育てた“純厚岸産”。日本で初めて導入されたシングルシード方式で一粒ずつ育てるため、丸みのある形と凝縮した旨みが特徴です。一方「マルえもん」は三陸の種を厚岸で育てたもので、ふっくらと食べごたえがあります。
味は、雑味のないあっさりとした塩気とミルクのような甘み。生でつるりといくのが一番ですが、炭火で焼いてもぷりぷり感が際立ちます。汽水湖と湾を使い分ける養殖のおかげで旬は通年。いつ訪れても旬の牡蠣に出会えるのが、厚岸の最大の強みなんですよ。
厚岸湖のあさり
厚岸を語るうえで牡蠣に並ぶのが、あさりです。厚岸産あさりは生産量が北海道一を誇り、はまぐり並みの大きさと豊かな身入りが自慢です(出典:厚岸漁業協同組合)。湿原由来のミネラルを含む厚岸湖が、味の濃いあさりを育てます。
旬は身が太る春から初夏。味噌汁にすると、ひと口めから濃厚なだしがあふれます。酒蒸しやパスタにすれば、大粒ならではの食べごたえも楽しめますよ。
厚岸ウイスキー
近年の厚岸を代表する特産が、厚岸蒸溜所のウイスキーです。2016年に蒸溜を始め、現在は日本の季節を表す「二十四節気」を冠したシリーズを展開しています(出典:厚岸蒸溜所)。2025年には「白露」がワールド・ウイスキー・アワードで金賞を受賞しました。
潮の香りをまとったスモーキーな味わいが特徴で、ストレートやハイボールで楽しむ人が多い一本です。秋の牡蠣まつりでは、牡蠣に合わせた厚岸ウイスキーのハイボール提供も行われ、地元の海の幸と地酒の相性を確かめられます。
海霧が育てる牛乳・乳製品
内陸の丘陵に広がる牧場では、酪農も盛んです。夏に発生する海霧が牧草地に豊富なミネラルを運び、それを食べた乳牛から濃厚な牛乳が生まれると言われています。
そのまま飲んでもコクがあり、ソフトクリームやチーズなどの乳製品も人気です。海の幸のイメージが強い厚岸ですが、じつは「海と牧場、両方の恵み」が味わえる町なんですよ。
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厚岸町の観光スポット

厚岸町の見どころは、大きく「食」「歴史」「花と岬」「湿原と野鳥」の4つに分けられます。牡蠣を味わう拠点から、蝦夷三官寺の古刹、太平洋を望む断崖、タンチョウが舞う湿原まで、車があれば1日でぐるりと回れる距離感なんですよ。序盤で触れた牡蠣・ウイスキー・国泰寺・湿原を、ここでスポットごとに深掘りしていきます。
牡蠣と海の幸を味わうスポット
- 道の駅厚岸グルメパーク(コンキリエ) – 牡蠣の形をした建物がシンボルの、町の食の拠点です。2階の炭焼処では魚介市場で買った牡蠣をその場で炭火焼きにでき、厚岸ウイスキーを垂らして生牡蠣を味わえるカウンターもあります。2025年には「今後利用してみたい道の駅ランキング」で全国1位に選ばれました(出典:道の駅厚岸グルメパーク コンキリエ)。営業時間は季節や店舗によって異なるので、訪れる前に公式情報の確認がおすすめです。殻を開ける湯気とジュッと焼ける音に包まれる時間は、ここでしか味わえません。
- 厚岸町海事記念館 – 役場庁舎前に建つ、漁業・捕鯨・牡蠣養殖の歴史を学べる資料館です。2階には日本最東端とされるプラネタリウムがあり、海と星を一度に楽しめます(出典:北海道厚岸町)。雨の日や、牡蠣を食べる前に町の成り立ちを知っておきたいときにぴったりですよ。
歴史と祈りに触れるスポット
- 国泰寺(国泰寺跡) – 1804年に江戸幕府が建てた蝦夷三官寺のひとつで、その境内は「国泰寺跡」として国の史跡に指定されています(出典:文化遺産オンライン(文化庁))。江戸時代に石巻から移したと伝わるエゾヤマザクラが今も咲き、静かな境内に長い歴史の重みを感じられます。
- 厚岸神社 – 国泰寺のすぐ近くに鎮座する古社で、夏まつりの神事の舞台にもなります。高台にあり、参道から厚岸の町と湾を見下ろせるのが気持ちのいいところです。
- 厚岸大橋 – 厚岸湾と汽水湖・厚岸湖を分ける水路に1972年に架けられた、町のシンボル的な橋です。橋上からは弁天島や行き交う漁船が見え、夕暮れどきの眺めはとくにきれいなんですよ。
花と岬の絶景スポット
- 子野日公園 – 厚岸湖を望む、道東でも有数の桜の名所です。エゾヤマザクラやヤエザクラ、北海道では珍しいフゲンゾウなど27種・約1,200本の桜があり、冷涼な気候のため5月に咲きます(出典:北海道厚岸町)。全国でもかなり遅い時期に花見ができる公園として知られています。
- 原生花園あやめヶ原 – 市街地から約12km、太平洋に突き出た「チンベの鼻」と呼ばれる断崖に広がる100haの原生花園です。6月中旬から下旬には約30万株のヒオウギアヤメが咲き、草原が紫色に染まります(出典:北海道厚岸町)。海霧がかかると、花と霧が溶け合う幻想的な風景に出会えますよ。
- 愛冠岬 – 厚岸湾の東に突き出た、高さ約80mの断崖上の岬です。先には海鳥の島・大黒島や小島が浮かび、岬には「愛の鐘」のベルアーチが立っています。風と波の音だけが響く、静かな絶景スポットです。
湿原と野鳥にふれるスポット
- 別寒辺牛湿原・厚岸水鳥観察館 – 厚岸湖・別寒辺牛湿原は1993年にラムサール条約の登録湿地となった野鳥の宝庫で、その拠点が厚岸水鳥観察館です。2階の観察コーナーから、湿原に営巣するタンチョウや渡り鳥を間近に眺められます(出典:北海道厚岸町)。望遠鏡をのぞきながら、ゆっくり鳥を探す時間が楽しいんですよ。
- 大黒島・小島 – 厚岸湾口に浮かぶ島で、大黒島はコシジロウミツバメなど海鳥の繁殖地として国の天然記念物に指定されています(出典:文化遺産オンライン(文化庁))。島は保護されているため、愛冠岬や沖から眺めるのがおすすめです。
厚岸町の観光ルート

厚岸町は、JR厚岸駅とコンキリエを起点にすれば、車で1日あれば食・歴史・絶景をひと通り回れます。湿原と野鳥にしぼった半日コースや、隣町まで足をのばす海岸ドライブも組みやすい町なんですよ。気分に合わせて3つのルートを用意しました。
【車・1日】牡蠣と歴史をめぐる厚岸満喫ルート
9:00 JR厚岸駅 → 9:05 コンキリエ(車5分) → 10:30 厚岸大橋 → 10:50 国泰寺・厚岸神社(車10分) → 12:00 愛冠岬 → 14:00 海事記念館
①コンキリエ(90分)→ まずは魚介市場で牡蠣を選び、炭火で焼いて朝のうちに腹ごしらえ。混む前の午前中が狙い目です。
②厚岸大橋(20分)→ 湾と湖を分ける橋を渡りながら、町の地形を体感します。
③国泰寺・厚岸神社(60分)→ 蝦夷三官寺の古刹と高台の神社で、町の歴史にしっとり浸ります。
④愛冠岬(60分)→ 断崖から大黒島を望み、昼の光で海が一番輝く時間に。
⑤海事記念館(60分)→ 締めくくりに、海と暮らしの歴史を学んで一日を振り返ります。
【車・半日】湿原と野鳥のネイチャールート
13:00 JR厚岸駅 → 13:20 厚岸水鳥観察館(車20分) → 14:30 別寒辺牛湿原ビュースポット → 16:00 あっけし望洋台
①厚岸水鳥観察館(60分)→ まず展示で湿原の全体像をつかみ、観察コーナーでタンチョウを探します。
②別寒辺牛湿原(60分)→ 国道沿いから、どこまでも続く湿原と蛇行する川を眺めます。光がやわらぐ午後がきれいです。
③あっけし望洋台(30分)→ 高台から厚岸湖と湿原を一望して、半日の自然散策を締めくくります。
【車・1日】広域ルート:厚岸から霧多布へ、北太平洋シーサイドライン
9:00 厚岸(コンキリエ) → 9:40 あやめヶ原(車40分) → 11:30 浜中町・霧多布湿原(車70分) → 14:00 霧多布岬
①あやめヶ原(60分)→ 断崖の原生花園を散策。初夏ならヒオウギアヤメ、それ以外も海岸線の眺めが見事です。
②霧多布湿原(90分)→ 隣の浜中町へ。ラムサール条約に登録された広大な湿原を、木道や展望台から楽しみます。
③霧多布岬(60分)→ 太平洋に細く突き出た岬で、運がよければラッコや海鳥に出会えます。海沿いのドライブそのものがごちそうの一日です。
厚岸町の年間イベント

厚岸町は、春の桜から初夏の花、真夏の港まつり、そして秋の牡蠣まで、季節ごとに主役が入れ替わる町です。会場には炭火や潮の匂い、太鼓や歓声が満ちて、町じゅうがにぎわいます。代表的な4つを季節順に紹介しますね。
春:桜と牡蠣が同時に楽しめる「あっけし桜・牡蠣まつり」
子野日公園を会場に、毎年5月ごろ「あっけし桜・牡蠣まつり」が開かれます(出典:北海道厚岸町)。全国でも遅咲きの桜を見上げながら、焼きたての牡蠣をほおばる――この町ならではの贅沢な組み合わせなんですよ。炭の煙と桜色が混じる会場は、春の到来を実感できる空気に包まれます。
初夏:草原が紫に染まる「あっけしあやめまつり」
あやめヶ原のヒオウギアヤメが見頃を迎える毎年6月下旬ごろ、「あっけしあやめまつり」が開催されます(出典:北海道厚岸町)。断崖に広がる100haの草原が一面の紫に染まり、海霧がかかれば一帯がふわりと幻想的に。潮風と花の香りのなかを歩く、初夏ならではのまつりです。
盛夏:港まつり・夏まつり・花火が重なる3日間
7月上旬には「厚岸港まつり」「あっけし夏まつり」「厚岸町民花火大会」が続けて行われ、町が一年でいちばん熱くなります(出典:北海道厚岸町)。漁業の町の安全と大漁を願う市中パレード、夜空を彩る花火、湖北・湖南の地区対抗で繰り広げられる山車と獅子舞の競演――太鼓の音と歓声が港じゅうに響きます。
秋:旬を迎える「あっけし牡蠣まつり」
秋には、子野日公園で「あっけし牡蠣まつり」が開かれます(出典:北海道厚岸町)。身がふっくらと太る時期の牡蠣に加え、サンマなど旬の海の幸が炭火の上にずらり。会場では厚岸ウイスキーのハイボールも味わえ、ぷりぷりの牡蠣との相性を確かめる人でにぎわいます。
厚岸町のエリア別の顔

厚岸町は、厚岸大橋を挟んだ市街地と対岸、太平洋に面した海岸部、そして内陸の湿原・酪農地帯で、それぞれ表情が大きく変わります。お祭りでも「湖北地区」「湖南地区」と呼び分けられるように、エリアごとに歩く楽しみが違う町なんですよ。旅する視点で4つのエリアを見ていきます。
市街地・駅周辺エリア──食と玄関口
JR厚岸駅やコンキリエ、海事記念館が集まる、旅の起点になるエリアです。牡蠣を食べ、町の歴史を学び、土産を選ぶ動線がコンパクトにまとまっています。まず到着したら、ここで腹ごしらえと情報収集をするのがおすすめですよ。
対岸・国泰寺エリア──歴史と桜
厚岸大橋を渡った先に広がる、寺社と公園のエリアです。蝦夷三官寺・国泰寺、高台の厚岸神社、そして桜の名所・子野日公園が点在しています。歴史の重みと花の華やぎを一度に味わいたいときに歩きたいエリアです。
海岸・あやめヶ原エリア──花と岬の絶景ドライブ
北太平洋シーサイドラインが走る、断崖と原生花園のエリアです。あやめヶ原や愛冠岬など、太平洋を見渡す景勝地が続きます。とにかく眺めを楽しみたい人、ドライブそのものを目的にしたい人に向いています。
湿原・湖北エリア──野鳥とネイチャー
別寒辺牛湿原と厚岸水鳥観察館を中心とした、自然観察のエリアです。タンチョウや渡り鳥、蛇行する川とどこまでも続く湿原が広がります。静かに自然と向き合いたい人、カヌーやバードウォッチングを楽しみたい人にぴったりですよ。
厚岸町の気候・季節の暮らし

厚岸町は、夏は涼しく冬は冷え込む、太平洋側の冷涼な気候です。町内の太田観測所では年平均気温が約5.8℃、最も暖かい8月でも日平均17.7℃ほどで、真夏でも過ごしやすい土地です(出典:気象庁)。雪は道内では比較的少なめですが、冬の冷え込みと地表の凍結はしっかりあります。季節ごとの暮らしを見ていきましょう。
夏(6〜8月)──海霧に包まれる涼しい季節
厚岸の夏は、本州の暑さとは別物です。8月でも日平均17.7℃前後と涼しく、エアコンがなくても過ごせる日が多いんですよ(出典:気象庁)。6〜8月はこの地方特有の海霧が出やすく、日中でもひんやりすることがあります。薄手の上着が一枚あると安心です。
秋(9〜11月)──空が澄み、海の幸が満ちる
秋は移動性高気圧に覆われて晴れる日が増え、空気が澄んできます。サンマや牡蠣がぐっとおいしくなる季節でもあり、食卓がにぎやかになる時期です。朝晩は冷えるので、10月には暖房の準備を始める家庭が多いですよ。
冬(12〜3月)──雪は少なめ、でも底冷えする
冬は北西の風で空気が乾き、晴れる日が比較的多いのが特徴です。1月の平均最低気温は約-10.7℃まで下がり、地面までしっかり凍ります(出典:気象庁)。豪雪地帯ではないぶん雪かきの負担は軽めですが、路面凍結への備えと厚手の防寒は欠かせません。
春(4〜5月)──遅い春と、最後の花見
厚岸の春はゆっくり訪れます。5月になってようやく晴天が続くようになり、子野日公園の桜もこの頃に咲きます。全国でもかなり遅い花見ができるのが、この町の春ならではの楽しみなんですよ。
厚岸町の移住・暮らし情報

人口7,891人の厚岸町は、漁業と酪農を軸にした、生活がコンパクトにまとまった町です。市街地に役場・病院・スーパー・学校がそろい、日常の用事は町内で完結しやすいのが特徴です。ここでは「暮らす視点」で、通勤から医療までを見ていきます。
通勤・通学
役場や漁協、水産加工、病院など、町内で働く人が中心です。釧路市へ通う場合も、JR花咲線または車でおよそ50分なので、通勤圏に入っています(出典:北海道厚岸町)。車があるとどこへ行くにも便利な町です。
住宅環境
賃貸物件の数自体は多くありませんが、厚岸駅周辺ではSUUMOの集計でワンルームがおよそ5.7万円からとなっています(出典:SUUMO)。条件で変わるので目安ですが、都市部より家賃を抑えやすいエリアです。空き家を活用した住まいの相談先も町に用意されています。
買い物環境
市街地にスーパーやロードサイドの店が集まり、ふだんの買い物はここで足ります。専門店や大型商業施設を使いたいときは、車で約50分の釧路市まで足をのばす人が多いですよ。週末にまとめ買いをする暮らし方が現実的です。
子育て・教育
町内には厚岸・真龍・太田の小学校と中学校、そして高校の北海道厚岸翔洋高等学校があり、保育所や子育て支援センターも整っています(出典:北海道厚岸町)。海と湿原が身近にある環境で、自然に触れながら子育てができる町です。
医療環境
町の中核となるのが町立厚岸病院で、内科・外科・整形外科・小児科などの診療科があります(出典:北海道厚岸町)。高度な専門医療が必要なときは釧路市の総合病院に向かう形になります。日常の通院は町内で対応できる体制です。
エリア別の暮らし視点
暮らしの利便でいえば、役場やコンキリエに近い市街地(住の江・真栄・松葉あたり)が買い物も通院もしやすく、移住者にも住みやすいエリアです。太田は酪農の広がる農村、尾幌・上尾幌はJR沿線の内陸、床潭など海沿いは漁村の表情と、暮らしの色が分かれます。静けさ重視か利便性重視かで選ぶといいですよ。
厚岸町へのアクセス

厚岸町への玄関口は、釧路市とたんちょう釧路空港です。釧路を経由すれば、車でも鉄道でも1時間ほどで到着できます。主要な行き方を交通手段ごとに整理します。
車でのアクセス
釧路市から国道44号で厚岸まで約50分です(出典:北海道厚岸町)。札幌からは距離があり、道央自動車道・道東自動車道を乗り継いで5時間前後を見ておくと安心です。町内や周辺の観光地は車移動が前提になるので、レンタカーがおすすめです。
鉄道+バスでのアクセス
鉄道はJR花咲線で釧路から厚岸まで約50分です。札幌からは特急で南千歳経由で釧路に出て(札幌〜南千歳が約30分、南千歳〜釧路が約3時間30分)、釧路で花咲線に乗り換える形になります(出典:北海道厚岸町)。バスでは釧路から厚岸まで約1時間20分です。本数が限られるので、事前の時刻確認が欠かせません。
飛行機でのアクセス
最寄りの空港はたんちょう釧路空港です。羽田など本州の主要都市から釧路へ空路で入り、空港から厚岸までは車でおよそ1時間が目安です。空港でレンタカーを借りて、そのまま厚岸へ向かう旅程が組みやすいですよ。
町内移動の現実的アドバイス
厚岸町は観光スポットが海岸沿いや内陸に点在しているため、車があると一気に動きやすくなります。鉄道やバスは本数が多くないので、コンキリエや市街地を拠点に、行き先をしぼって回るのが効率的です。冬場は路面凍結に備えた運転を心がけてください。
【地元住民に直撃!】厚岸町の本当の魅力を聞いてみた

Q1.あなたのご職業を教えてください。
カキの養殖をやっています。厚岸湖と厚岸湾を行ったり来たりさせながら、一年中カキを育てて出荷する仕事です。父の代から続けていて、もうずいぶん長くこの海と付き合ってきました。
朝は暗いうちから船を出すこともありますし、冬はとにかく手がかじかむ。それでも、自分が育てたカキが「うまい」と言ってもらえると、やっぱりこの仕事をやってきてよかったと思いますね。
Q2.厚岸町に来て絶対行くべき場所はどこだと思いますか?
まずは道の駅のコンキリエですね。ここは厚岸観光の入り口みたいな場所で、買ったカキをその場で炭火で焼いて食べられる。観光客にも地元にも、ずっと愛されています。
あとは地元の人間としては、あやめヶ原をすすめたい。断崖に立つと、海霧がすうっと流れてきて、波の音だけが響くんです。観光地というより、心を整えに行く場所という感じですよ。
Q3.厚岸町でお土産を買うとしたらなんですか?
定番はやっぱりカキですね。発泡スチロールに詰めて持ち帰れますし、厚岸の有名なものといえばこれ。あとは近年評価が上がっている厚岸ウイスキーも、お酒好きには喜ばれます。
地元ならではというと、厚岸湖のあさり。北海道一の生産量で、身がはまぐりみたいに大きいんです。味噌汁にすると出汁が濃くて、これを知っている人はわざわざ買って帰りますよ。
Q4.外から人が来たときに、厚岸町でまず連れていく店はどこですか?
やっぱりコンキリエの炭焼きの店に連れていきます。市場で好きなだけ貝を選んで、自分で焼いて食べる。あの煙と匂いの中で食べるカキは、観光のハイライトになりますからね。
時間があれば、市街地の食堂でカキの入った丼や定食も食べてもらいます。観光向けの華やかさはないけれど、地元が普段食べている味そのものを知ってもらえるんですよ。
Q5.厚岸町はどんな気質だと思いますか?
海の仕事をしている人間が多いせいか、さっぱりして実直な気質だと思います。口数は多くないけれど、困っていると黙って手を貸してくれる。そういう距離感の町ですね。
自然相手の暮らしですから、天気や海の機嫌に合わせて動くのが当たり前。だからこそ、来た人にも気取らず接するし、よそ者を変に身構えて見ない。そこは厚岸のいいところだと思います。
Q6.昔に比べて、厚岸町の雰囲気や活気はどう変わったと感じますか?
正直に言えば、人は減りました。私が子どもの頃に比べると町民の数はずいぶん少なくなって、店が閉まったり、学校が統合されたりという変化はやっぱり寂しいです。
ただ、ウイスキーが世界で評価されたり、コンキリエに人が集まったりと、外から厚岸を知ってもらえる機会は増えました。町長をはじめ、町を盛り上げようという動きも続いていると感じます。
Q7.厚岸町のこれから新しくできる施設や、期待している活動などはありますか?
大きな箱物ができるという話より、今あるものを生かす動きに期待しています。湿原の自然や水源を守りながら観光につなげる取り組みは、これからも続いてほしいですね。
町民センターのような場所で人が集まったり、運動公園で子どもたちが体を動かしたり、そういう日常の活気が続くことが一番です。海とウイスキーの町として、若い人が戻ってくれたら嬉しいです。

