鹿追町(しかおいちょう)は、北海道・十勝平野の北西部に位置する人口4,806人の町です。十勝の中心都市・帯広市の北側にあり、北には大雪山系の山々、南には広い農地が広がっています。
鹿追町の見どころを5つに絞ると、こうなります:
- ✅ 然別湖──標高およそ810mと、北海道でいちばん高い場所にある「天空の湖」
- ✅ しかりべつ湖コタン──凍った湖の上に氷と雪だけで作る、冬だけの「幻の村」
- ✅ 農民画家・神田日勝のふるさと──絶筆《馬》で知られる夭逝の画家
- ✅ 牛のふん尿で発電し、その余熱で国産マンゴーやキャビアまで生産する町
- ✅ 十勝で唯一の日本ジオパーク「とかち鹿追ジオパーク」のエリア
「火山や湖など雄大な自然にふれたい人」「ふだん着の北海道の暮らしを知りたい人」「環境やエネルギーの最先端に関心がある人」に向いた町です。この記事では、観光・歴史・文化から特産品まで、鹿追町の素顔を順番に紹介していきます。
| 人口 | 4,806 人 ※2026年4月30日時点(住民基本台帳) |
|---|---|
| 面積 | 402.88 km² |
| 人口密度 | 11.9 人/km² |
地理的には、北は上士幌町、北東は士幌町、南は音更町、南西は芽室町と清水町、西は新得町と接しています(出典:鹿追町公式サイト)。町内に鉄道は通っておらず、鉄道の最寄り駅はJR石勝線・根室本線が乗り入れる新得町の新得駅です。
北部は大雪山国立公園にかかる険しい山々、南部は然別川がつくった扇状地の農地という、標高差の大きな町です。火山・湖・農業・アートと、小さな面積のなかに性格の違う見どころが詰まっています。ひとつずつ見ていきましょう。
鹿追町の推しポイント

鹿追町の見どころは、北部の山と湖、南部の農地という対照的な二つの顔に分かれています。北には道内一の高さにある然別湖と火山群が広がり、冬には湖の上に氷の村が出現します。南の扇状地では酪農と畑作がさかんで、牛のふん尿を使った発電や、農民画家・神田日勝が見つめた風景がいまも残っています。ここからは、その一つひとつを紹介していきます。
推しポイント1:然別湖──火山がつくった「天空の湖」
然別湖(しかりべつこ)は、鹿追町北部と上士幌町にまたがる、大雪山国立公園で唯一の自然湖です。標高はおよそ810mで、北海道の湖では最も高い場所にあります(出典:日本ジオパークネットワーク)。
数万年前の火山活動で川がせき止められて生まれた湖で、まわりは原生林に囲まれています。湖だけでなく鹿追町全域が「とかち鹿追ジオパーク」として日本ジオパークに認定されており、十勝では唯一の認定エリアです(出典:農林水産省)。星空の美しさでも知られていて、風のない日には湖面に星が映り込むんですよ。
推しポイント2:しかりべつ湖コタン──冬だけ現れる氷の村
厳冬期に湖が分厚く凍ると、その上に氷と雪だけで作られた「コタン」(アイヌ語で村の意味)が出現します。これが「しかりべつ湖コタン」。2026年は1月24日から3月15日まで開かれました(出典:しかりべつ湖コタン公式サイト)。
氷でできたグラスでお酒を楽しむアイスバー、脱衣所まで雪と氷の氷上露天風呂、氷のチャペルなど、ここでしか体験できないものばかり。春になるとすべて溶けてなくなる、文字どおり一期一会の村です。
推しポイント3:農民画家・神田日勝のふるさと
神田日勝(かんだにっしょう、1937〜1970)は、東京から戦時疎開で鹿追に移り住み、開拓農家として働きながら絵を描き続けた洋画家です。ベニヤ板にペインティングナイフで牛や馬を描いた力強い画風で知られ、32歳の若さで亡くなりました(出典:鹿追町公式サイト)。
馬の半身を描いたところで力尽きた絶筆《馬(絶筆・未完)》は、彼の代表作です。作品を収める神田日勝記念美術館は鹿追町にありますが、大規模改修のため2026年4月1日からおよそ1年間の長期休館に入っています。訪ねる際は再開時期を確認してからにしてくださいね(出典:神田日勝記念美術館)。
推しポイント4:牛のふん尿から電気とマンゴーを生む町
鹿追町は酪農がさかんなぶん、家畜のふん尿の処理が長年の課題でした。そこで町は、ふん尿を発酵させてガスを取り出すバイオガスプラントを整備し、発電と肥料づくりに活用しています(出典:鹿追町公式サイト)。
さらに発電時の余熱を使って、真冬にマンゴーを育て、チョウザメを養殖してキャビアまで生産しています。日本で唯一、真冬に国産マンゴーを出荷できるのは、この余熱と雪氷熱があるからこそ(出典:農林水産省)。牛のふん尿が南国フルーツと世界三大珍味に化ける、世界でも珍しい仕組みなんです。
推しポイント5:十勝らしい酪農と畑作のまち
南部に広がる扇状地は、十勝らしい大規模な農業地帯です。基幹は酪農で、牛乳のほか、ビート(てんさい)、じゃがいも、小麦、豆類、そばなどが作られています(出典:鹿追町公式サイト)。火山灰が積もった大地と、昼夜の寒暖差が、味の濃い農畜産物を育てています。
鹿追町の歴史

鹿追の歴史は、大きく三つの時期に分けられます。アイヌの人々が鹿を狩る土地であった時代、明治以降に本州からの入植者が開拓を進めた時代、そして戦後に酪農と畑作を軸として現在のまちの姿を作り上げた時代です。地名そのものが、この土地のなりたちを今に伝えています。
「鹿追」という地名の由来
鹿追という地名は、アイヌ語の「クテクウシ」に由来します。これは、柵を結んで仕掛けをかけ、鹿を捕らえる場所という意味の言葉でした。これを和訳して付けられたのが「鹿追」という地名です(出典:鹿追町公式サイト)。鹿が暮らす自然の豊かさが、町の名前の出発点になっています。
明治の入植と開拓
本格的なまちづくりが始まったのは1902年(明治35年)で、東京から入植した人物が現在の市街付近に入ったのが始まりとされています。1913年(大正2年)には駅逓所が開設され、本州各地から移住団体が次々と入植しました。1921年(大正10年)には音更村から分かれて鹿追村となり、1959年(昭和34年)に町制を施行して鹿追町が誕生しました。
現代──酪農と環境のまちへ
かつては新得町方面と鉄道でつながっていましたが、その路線は1968年(昭和43年)に廃止され、町内から鉄道は姿を消しました。戦後は自衛隊の駐屯地誘致などで人口が一時1万人を超えましたが、その後は酪農や寒冷地作物への転換が進みました。近年は花のまちづくりやバイオガス発電、2013年のジオパーク認定など、自然と環境を軸にした個性で全国に知られる町になっています。
鹿追町の文化・風習

方言と話し方の特徴
鹿追町を含む北海道・十勝でも、いわゆる北海道弁が日常的に使われています。みなさんも一度は耳にしたことがあるかもしれません。代表的なものを挙げると、なまら(とても・すごく)、したっけ(そうしたら/じゃあね)、めんこい(かわいい)、あずましい(落ち着く・居心地がいい)あたりがあります。
とくにこの地域らしいのがしばれる(厳しく冷え込む)という言葉。冬の寒さがそのまま言葉になっています。ゴミを「なげる」(捨てる)、疲れたときに「こわい」(疲れた・だるい)と言うのも道民らしい言い回しです。旅先で耳にしたら、ぜひ意味を思い出してみてください。
「しばれ」とともにある冬の暮らし
冬は氷点下20度前後まで下がる日も珍しくない、厳しい寒さの土地です。じつは「とかち鹿追ジオパーク」のテーマにも「凍れ(しばれ)」という言葉が入っているんですよ(出典:鹿追町公式サイト)。この寒さがあるからこそ、然別湖は完全に凍り、氷上のコタンが成り立ちます。寒さを嘆くのではなく、観光や農業に活かしているのがこの町の発想です。
食卓と季節のめぐり
酪農のまちだけあって、食卓には地元の牛乳や乳製品が自然と並びます。秋には新そばやじゃがいもが出回り、収穫の季節をみんなで味わいます。長い冬を越えて春が来ると、畑作業が一気に動き出す——四季のメリハリがはっきりした暮らしです。
人の気質と地域のつながり
開拓でゼロから町を築いてきた土地だけあって、助け合いの気風が根づいていると考えられます。広い農地を相手にする仕事が多いぶん、人と人との距離感はおおらかで、初めての人にもさっぱりと接してくれる空気があると言われています。
鹿追町の特産品・食

特産品1:牛乳・乳製品
鹿追町の食を語るうえで外せないのが、酪農から生まれる牛乳です。基幹産業が酪農なので、地元では新鮮な牛乳が身近な存在(出典:鹿追町公式サイト)。大雪山のふもとで育つ牧草と冷涼な気候のなかで搾られた牛乳は、コクがありながらすっきりした後味です。そのまま飲むのはもちろん、ソフトクリームやチーズで味わうのもおすすめですよ。
特産品2:真冬の国産マンゴー「白銀の太陽」
バイオガス発電の余熱と雪氷熱を使って、雪深い真冬に収穫されるのが国産マンゴー「白銀の太陽」です。本来は夏の南国フルーツであるマンゴーを、出回りの少ない冬に出荷できるのが最大の特徴。日本で唯一、真冬に国産マンゴーを出荷できる産地です(出典:農林水産省)。樹上で長く完熟させるため、とろけるような食感に仕上がります。
特産品3:鹿追産のキャビアとチョウザメ
同じく発電の余熱を活かして養殖されているのがチョウザメです。水温を上げて成長を促し、メスからは世界三大珍味のキャビアを採取しています(出典:鹿追町公式サイト)。オスの身は白身で淡白な味わいで、刺身や天ぷら、寿司ネタとして町内の飲食店で味わえます。山あいの小さな町でキャビアやチョウザメ料理に出会えるのは、なかなか新鮮な体験です。
特産品4:鹿追そばと畑作の恵み
南部の畑作地帯では、じゃがいも、ビート、小麦、豆類とともに、そばも作られています。秋には「鹿追そばまつり」が開かれ、収穫したての新そばが楽しめます(出典:鹿追町公式サイト)。寒暖差の大きい十勝の大地で育った作物は、香りと甘みがしっかり乗っています。打ち立てのそばを、地元の空気のなかですするのがいちばんのごちそうですよ。
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鹿追町の観光スポット

鹿追町の観光は、北の「然別湖エリア」と、南の市街・瓜幕エリアの二つに分けて考えると回りやすいです。北へ向かえば天空の湖と温泉、火山がつくった大地の不思議が待っています。南には、ジオパークを学べる施設や乗馬体験、秋だけ開く紅葉の名所が点在しています。まずは押さえておきたいスポットを、エリアごとに紹介していきますね。
然別湖と湖畔で過ごすスポット
- 然別湖 – 大雪山国立公園で唯一の自然湖で、標高およそ810mと北海道の湖では最も高い場所にあります(出典:日本ジオパークネットワーク)。原生林に囲まれた湖面は鏡のように静かで、湖に浮かぶ弁天島の小さな鳥居や、唇の形に見える天望山(くちびる山)が水面に映る光景は、ここでしか見られません。雪のない時期には遊覧船で湖を一周でき、夜は街明かりの届かない満天の星空が広がります。
- 然別湖畔温泉ホテル風水 – 湖のほとりに建つ温泉宿で、全客室と大浴場・露天風呂が然別湖に面しています(出典:然別湖畔温泉ホテル風水)。源泉かけ流しの湯につかりながら、刻々と表情を変える湖を眺める時間はぜいたくそのもの。日帰りでも立ち寄れるので、ドライブの途中にひと風呂浴びていくのもおすすめですよ。
- 然別湖ネイチャーセンター – カヌーやナイトウォッチング、冬のスノーシューなど、然別湖の自然体験を申し込める拠点です(出典:然別湖ネイチャーセンター)。ガイドと一緒に湖や森へ出れば、ナキウサギの鳴き声や夜の静けさといった、ひとりでは出会えない自然の表情にふれられます。
火山の大地を学ぶスポット
- とかち鹿追ジオパークビジターセンター – 鹿追町全域が日本ジオパークに認定されており、その大地のなりたちを学べる施設です。入館無料で、開館は9:00〜17:00、火曜と祝日の翌日が休館です(出典:とかち鹿追ジオパーク公式サイト)。立体模型に映すプロジェクションマッピングや、然別湖の固有種ミヤベイワナの生体展示、暗闇で光る不思議な石「北海道石」など、子どもも大人も夢中になる展示がそろっています。然別湖に向かう前にここで予習すると、旅がぐっと深くなります。
- 然別風穴地帯 – 然別湖の南に広がる、岩のすき間から夏でも0℃近い冷気が吹き出す一帯です。地下には日本最古級とされる永久凍土が確認されており、その冷たい環境がナキウサギなどの貴重な生き物を育ててきました。「火山と凍れ(しばれ)」という、この町ならではの自然を体感できる場所です。
アートと秋の絶景を楽しむスポット
- 道の駅しかおい – 国道274号沿いにある、旅の起点になる道の駅です。観光案内のデスクと地場産品の売り場がそろい、すぐ隣には神田日勝記念美術館が建っています。鹿追そばや牛乳スイーツなど、町の味をここでまとめて手に入れられるのがうれしいところ。
- 神田日勝記念美術館 – 農家として働きながら絵を描き続けた画家・神田日勝の作品を収める美術館で、絶筆《馬(絶筆・未完)》で知られます。ただし大規模改修のため、2026年4月1日からおよそ1年間の長期休館に入っています(出典:神田日勝記念美術館)。訪ねる際は、再開の時期を確認してから計画してくださいね。
- 福原山荘 – 毎年秋に約1か月だけ無料公開される、紅葉の名所です(出典:福原記念美術館)。約8.5ヘクタールの庭園に約300本のヤマモミジが植えられ、池や滝の水面に赤や黄が映り込みます。平坦で歩きやすい散策路なので、ゆっくり「水鏡の紅葉」を楽しめます。私有地を特別に開放している場所なので、マナーを守って散策しましょう。
鹿追町の観光ルート

鹿追町は鉄道が通っていないので、旅の基本は車になります。市街の道の駅を起点に北の然別湖をめざすルート、瓜幕で馬とふれあう半日ルート、そして隣の新得町とつなぐ広域ルートの3本を組んでみました。季節によって表情が大きく変わる町なので、行く時期に合わせて選んでみてください。
【車・1日】然別湖と火山の大地ルート
9:00 道の駅しかおい → 9:25 とかち鹿追ジオパークビジターセンター(車20分)→ 11:00 然別湖(車40分)→ 12:30 ホテル風水で昼食・入浴 → 14:30 湖畔さんぽ・カヌー体験 → 16:00 道の駅しかおいへ戻る
①道の駅しかおい(30分)→ まずは旅の腹ごしらえとおみやげの下見。隣の美術館は休館中なので外観だけ眺めて出発します。
②とかち鹿追ジオパークビジターセンター(60分)→ 然別湖や火山の大地のなりたちを予習。ここで全体像をつかんでおくと、このあとの湖の見え方が変わります。
③然別湖(90分)→ 湖畔に立つと、火山が川をせき止めて湖になったスケールを体感できます。午前中は風が穏やかで、湖面が鏡のようになりやすい時間帯です。
④然別湖畔温泉ホテル風水(120分)→ 湖を見ながら昼食をとり、源泉かけ流しの湯でひと休み。午後はネイチャーセンターのカヌーで湖上に出ると、旅の記憶がぐっと濃くなりますよ。
【車・半日】瓜幕で馬とふれあう農村ルート
9:00 道の駅うりまく・鹿追町ライディングパーク → 10:30 パークゴルフ → 11:30 とかち鹿追ジオパークビジターセンター(車10分)→ 12:30 道の駅しかおいでおみやげ(車20分)
①鹿追町ライディングパーク(90分)→ 道の駅うりまくに併設された乗馬施設で、初心者や小さな子どもでも引き馬で馬に乗れます。広い緑の中、大雪山を背に馬と歩く時間は気分爽快です。
②パークゴルフ場(60分)→ 同じ敷地にある広々としたコースで体を動かします。馬を眺めながらのプレーは、この町ならではののんびり感があります。
③とかち鹿追ジオパークビジターセンター(60分)→ 瓜幕エリアにあるので立ち寄りやすい施設です。光る石やミヤベイワナを見て、半日でも鹿追の大地を学べます。
④道の駅しかおい(30分)→ 最後に市街へ戻り、鹿追そばや地場産品をおみやげに。半日でも農村と学びをぎゅっと味わえるルートです。
【車・1日】広域ルート:新得駅から花と湖へ
9:00 JR新得駅 → 9:40 福原山荘(車40分・秋限定)→ 11:00 然別湖(車50分)→ 12:30 昼食・温泉 → 14:00 ジオパークビジターセンター → 15:30 道の駅しかおい
①JR新得駅(出発)→ 鉄道で来る人の玄関口は隣町・新得町の新得駅。ここでレンタカーを借りて鹿追へ向かいます。
②福原山荘(60分)→ 秋の公開時期なら、まずここへ。約300本のモミジが池に映る光景は、朝のやわらかい光の時間がとくにきれいです。
③然別湖(90分)→ 山道を登って天空の湖へ。紅葉期は湖畔の木々の色づきと湖面のコントラストが見ものです。
④ホテル風水・ビジターセンター(180分)→ 湖を眺めて昼食と温泉、帰りに大地の物語を学べば、隣町とつないだ1日が充実したものになります。
鹿追町の年間イベント

鹿追町のイベントは、然別湖を舞台にしたものが多いのが特徴です。夏はアイヌ伝説の幻想的な舞、秋は収穫したての新そばや農産物、そして冬は凍った湖の上に現れる氷の村。四季それぞれに、この町ならではのお祭りがあります。毎年の開催時期を見ながら、旅の予定に合わせてみてください。
春〜夏:花と然別湖の祭り
初夏になると「しかおい花フェスタ」が開かれ、町内の個人宅の庭やカフェがオープンガーデンとして公開され、街じゅうが花であふれます。「花とみどりの町づくり」を掲げてきた鹿追ならではの、のんびり花めぐりが楽しめる時期です。
夏の見どころは、毎年7月第1土曜日の夜に然別湖畔で開かれる「白蛇姫まつり」です(出典:鹿追町観光協会)。然別湖に伝わる伝説をもとに創作された伝統芸能で、全長13mの親蛇と8mの子蛇、そして白蛇姫が、たいまつの灯りの中で幻想的に舞います。アイヌの祈りの儀式やムックリの演奏も披露され、湖の異界に迷い込んだような夜になりますよ。
7月下旬には鹿追町民花火大会もあり、芝生に寝転んで真上に開く花火を楽しめます。
秋:新そばと収穫の祭り
食欲の秋には、道の駅しかおいの特設会場で「鹿追そばまつり」が開かれます。例年10月ごろ、収穫したての香り高い鹿追産の新そばを、町内の店ごとの食べ比べで味わえるのが醍醐味。そば打ち体験や早食い大会もあって、家族連れでにぎわいます。
同じ秋には「鹿追町ふるさと産業まつり」も開かれ、鹿追牛や採れたての農産物が並びます。畑作と酪農のまちらしく、大地の恵みをまるごと味わえる二日間です。
そして秋を彩るのが、前にも触れた福原山荘の紅葉の特別公開。祭りと紅葉をセットで巡れるのが、この季節のぜいたくです。
冬:凍った湖に現れる「幻の村」
冬のいちばんの見どころは、やはり「しかりべつ湖コタン」です。完全に凍った然別湖の上に、氷と雪だけで作られた村が出現します。直近の2026年は1月24日から3月15日まで開かれました(出典:しかりべつ湖コタン公式サイト)。
村には氷でできたグラスでお酒を味わうアイスバー、脱衣所まで雪と氷の氷上露天風呂、氷のチャペルなどが並びます。氷点下20度をこえる寒さも、ここでは旅の楽しみに変わるんですよ。春が来れば溶けて消えてしまう、その年だけの村をぜひ。
鹿追町のエリア別の顔

鹿追町は、旅の視点で見ると大きく三つのエリアに分けられます。役場や道の駅のある中心部の「市街エリア」、馬と農村が広がる西部の「瓜幕(うりまく)エリア」、そして山と湖が待つ北部の「然別湖・湖畔エリア」です(出典:鹿追町公式サイト)。それぞれ表情がはっきり違うので、目的に合わせて回ると気持ちよく旅ができます。
鹿追市街エリア──旅の起点になる町の中心
国道沿いに道の駅しかおいや役場、商店街が集まる、町の玄関口です。観光案内やおみやげ、食事をここで済ませてから北や西へ向かうのが効率的。商店街にはアートが飾られた一角もあり、車を停めてぶらりと歩くだけでも町の空気が伝わってきます。買い物や情報集めをしたいときに立ち寄るのがおすすめのエリアです。
瓜幕(うりまく)エリア──馬と農村、学びの里
市街から西へ進むと、広い畑と牧草地が続く瓜幕地区に入ります。乗馬とパークゴルフが楽しめる道の駅うりまく、そして大地のなりたちを学べるジオパークビジターセンターがあるのがこのエリア。馬とふれあったり、十勝らしい雄大な農村風景の中をドライブしたりと、家族でのんびり過ごすのに向いています。
然別湖・湖畔エリア──山と湖のリゾート
町の北部、大雪山国立公園にかかる山あいに然別湖が広がります。温泉宿や自然体験の拠点があり、夏はカヌーや星空、秋は紅葉、冬は氷上のコタンと、一年を通して表情が変わります。日常から離れて自然にどっぷり浸かりたい人、絶景や温泉を目当てにする人にぴったりのエリアです。市街から車で40分ほど登るだけで、空気がひんやり澄んでいくのを感じられますよ。
鹿追町の気候・季節の暮らし

鹿追町は寒暖の差が大きい内陸性の気候で、年平均気温はおよそ6.6℃です(出典:気象庁)。夏は日中25℃前後まで上がる一方、1月の平均最低気温は-11.9℃まで下がります。これまでに-26.3℃を記録したこともあり、冬の冷え込みは本州とは桁が違います。年間の降水量はおよそ950mmと多くはありませんが、町の北部は豪雪地帯に指定されていて、雪とのつきあいは欠かせません。
夏──6月〜8月の暮らし
夏は短く、過ごしやすいのが十勝の夏です。日中は25℃を超える日もありますが、朝晩はぐっと涼しくなるので、寝苦しい夜はあまりありません。
湿度が低くカラッとしているので、同じ気温でも本州よりずっと快適に感じられます。畑の作物がぐんぐん育ち、町じゅうが緑に包まれる気持ちのよい季節ですよ。
秋──9月〜10月の暮らし
秋は一年でいちばん旅心をくすぐる季節です。9月の平均最高気温は20℃ほどで、空気が澄んで景色がくっきり見えるようになります。
10月に入ると朝晩の冷え込みが強まり、福原山荘や然別湖の木々が一気に色づきます。新そばや収穫祭の時期とも重なるので、味覚と紅葉を一緒に楽しめます。
冬──11月〜3月の暮らし
冬の鹿追は、生活が雪と寒さを中心に回ります。氷点下20度をこえる朝も珍しくなく、車は冬タイヤと暖機運転が当たり前。家は二重窓やオール電化で寒さに備えています。
厳しい寒さは、然別湖が凍る冬ならではの楽しみも生みます。前にも触れたしかりべつ湖コタンは、この寒さがあってこそ成り立つ風物詩。寒さを暮らしの一部として受け入れているのが、この町らしさです。
春──4月〜5月の暮らし
雪解けは4月ごろで、本州よりだいぶ遅い春の訪れです。雪が消えると畑作業が一気に始まり、町が動き出します。
5月下旬には花のまちづくりの取り組みもあって、庭先やプランターが色づき始めます。長い冬を越えたぶん、春の光のありがたみがひとしお感じられる季節です。
鹿追町の移住・暮らし情報

人口およそ4,806人の鹿追町は、酪農と畑作を軸にした、十勝らしいゆったりした農村の町です。鉄道が通っていないので車が生活の中心になりますが、そのぶん渋滞や人混みとは無縁。自然のなかで子育てしたい人や、のんびり暮らしたい人に向いた町だと考えられます。ここでは「住む視点」で暮らしの現実を見ていきますね。
通勤・通学
仕事は町内の農業・酪農関連が中心ですが、車で帯広市方面へ通う人も少なくありません。鹿追市街から帯広までは車でおよそ40分です。
鉄道がないため、通勤も通学も車かバスが基本。高校は町内に北海道鹿追高等学校があり、進学先によっては帯広方面へ通うことになります。
住宅環境
賃貸物件の数は限られていて、オール電化や駐車場無料の戸建て・アパートが中心です。具体的な家賃相場は流動的なので、最新の募集状況を確認するのが確実です。
町は移住・定住に向けた情報発信や相談に力を入れているので、住まい探しはまず役場に相談するのが近道です(出典:鹿追町公式サイト)。
買い物環境
町内には食料品店があり、日々の買い物は町の中でそろいます。道の駅しかおいや道の駅うりまくでは、鹿追産の野菜や特産品を手に入れられます。
大型店や専門店でのまとめ買いをしたいときは、車で帯広市へ出るのが一般的です。週末にまとめて買い出しに行く、という暮らし方になります。
子育て・教育
教育施設は、認定こども園しかおいや保育所のほか、小学校5校、中学校2校、高校1校がそろっています(出典:鹿追町公式サイト)。
町は「子育てしやすい地域づくり」を掲げて、独自の子育て支援に取り組んでいます。自然のなかでのびのび子育てしたい家庭には、心強い環境だと考えられます。
医療環境
町の中核となる医療機関は鹿追町国民健康保険病院です。内科や小児科、整形外科などを備え、地域の基幹病院として日常の医療を支えています(出典:鹿追町公式サイト)。
高度な専門医療や大きな救急は、車で帯広市の病院を頼ることになります。いざというときの移動も考えて、車の確保は前提になります。
エリア別の暮らし視点
中盤では旅の視点でエリアを紹介しましたが、暮らす目線で見ると印象が変わります。病院・学校・買い物がまとまった鹿追市街エリアが、いちばん生活しやすい場所です。
瓜幕エリアは農村らしい静けさが魅力ですが、車は必須。然別湖・湖畔エリアは観光地なので、定住より「通って楽しむ」エリアと考えるのが現実的です。
鹿追町へのアクセス

鹿追町には鉄道が通っていないので、玄関口は空の便と車になります。道外からは飛行機でとかち帯広空港へ入り、そこから車かバスで向かうのが基本ルートです。主要な行き方を整理しておきますね。
車でのアクセス
札幌方面からは道央道・道東道を進み、十勝清水ICから国道274号で約25分で鹿追市街に着きます(出典:鹿追町公式サイト)。旭川方面からは新得町を経由し、道道75号で約20分です。
町内は見どころが点在し、然別湖まで山道を登る区間もあります。レンタカーがあると、旅も暮らしも一気に動きやすくなります。
鉄道+バスでのアクセス
鉄道を使う場合の最寄りは、隣町・新得町のJR新得駅です。札幌から約2時間、千歳から約1時間20分で新得駅に着き、そこからバスやレンタカー、タクシーで約20分です(出典:鹿追町公式サイト)。
帯広駅からは、北海道拓殖バスの新得・鹿追・然別湖線が出ています。帯広駅バスターミナルから然別湖(然別湖畔温泉)までは片道1,930円で、神田日勝記念美術館などを通って向かいます(出典:北海道拓殖バス)。
飛行機でのアクセス
道外からは、とかち帯広空港が便利です。東京(羽田)からはおよそ1時間35分で結ばれています。
空港からはバスで約50分で帯広駅に出て、そこから拓殖バスで約1時間で鹿追市街に着きます(出典:鹿追町公式サイト)。空港でレンタカーを借りておくと、その後の移動がぐっと楽になりますよ。
町内移動の現実的アドバイス
鹿追町は南北に長く、市街・瓜幕・然別湖がそれぞれ離れています。バスの本数は多くないので、自由に動きたいなら車が前提になります。
とくに冬は路面が凍るので、運転に慣れていない人は無理をせず、観光なら帯広発着の送迎やツアーを活用するのがおすすめです。
【地元住民に直撃!】鹿追町の本当の魅力を聞いてみた

Q1.あなたのご職業を教えてください。
酪農をやっています。この鹿追町で牛を飼って、もう何十年になりますかね。朝晩の搾乳から始まる暮らしで、休みらしい休みはほとんどありません。
でも、自分の牛から搾った牛乳が町の特産になっていくのを見ると、やっぱりやりがいはありますよ。父の代から続けてきた仕事を、こうして守れているのはありがたいことです。
Q2.鹿追町に来て絶対行くべき場所はどこだと思いますか?
やっぱり然別湖ですね。北海道で一番高いところにある湖で、朝もやが立つ時間に行くと、湖面が鏡みたいになって本当に静かなんですよ。鹿追観光の目玉です。
地元の人間としては、瓜幕にある町の水源近くの湧き水のあたりもいい。観光地じゃないけど、空気がひんやりして、町の暮らしを支える水なんだと実感できる場所です。
Q3.鹿追町でお土産を買うとしたらなんですか?
無難なところだと、やっぱり鹿追そばですね。新そばの時期はとくに香りが違います。あとは町で採れる牛乳を使ったチーズやソフトクリーム、これは間違いない鹿追の有名なものです。
地元の人間しか言わないのは、バイオガスの余熱で育てた真冬のマンゴー。数は少ないけど、これを知っていると「分かってるね」と言われますよ。
Q4.外から人が来たときに、鹿追町でまず連れていく店はどこですか?
まずは道の駅しかおいに寄りますね。鹿追産の野菜や牛乳、そばがそろっていて、町の今の顔がひと目で分かる場所なんですよ。
そのあとは、そば屋へ連れていくことが多いです。手打ちのそばをすすってもらうと、みんな「水と空気が違う」と言ってくれる。鹿追らしさが一番伝わる気がします。
Q5.鹿追町はどんな気質だと思いますか?
開拓で一から町をつくってきた土地なので、辛抱強くて、人を見捨てない気質だと思います。困っている人がいれば、誰かが黙って手を貸す。そういう空気が今も残っています。
派手さはないし、口数も多くないけど、一度仲良くなれば長く付き合ってくれる。農家同士の助け合いが、町全体の土台になっている感じですね。
Q6.昔に比べて、鹿追町の雰囲気や活気はどう変わったと感じますか?
正直に言えば、人は減りました。子どもの数も昔とは比べものにならない。商店街も、にぎわっていた頃を知っているだけに寂しさはありますよ。
その一方で、ジオパークやバイオガスの取り組みで町の名前が外に知られるようになった。歴代の町長や町民センターに集まる人たちが、新しい鹿追観光の形を作ろうと動いているのは感じます。
Q7.鹿追町のこれから新しくできる施設や、期待している活動などはありますか?
神田日勝記念美術館が今は改修で休んでいますが、生まれ変わって戻ってくるのを楽しみにしています。あの絵は鹿追の宝ですからね。
あとは町民センターや運動公園を使った、世代をこえて人が集まる催しが増えるといい。若い移住者と昔からの農家がつながっていけば、この町はまだまだやれると思っています。

