広尾町(ひろおちょう)は、北海道・十勝地方の最南端にある人口5,649人の港町です。東は太平洋、西は日高山脈にはさまれ、その間を4本の川が流れています。
広尾町の魅力を5つに凝縮すると、こうなります:
- ✅ サンタの町──1984年にノルウェー・オスロ市が認めた「国外初・日本で唯一」のサンタランド
- ✅ ししゃも水揚げ量日本一──日本固有種「本ししゃも」の主産地
- ✅ 黄金道路──断崖に挑んだ国道336号、約33.5kmの海岸絶景ルート
- ✅ 日本最大の国立公園「日高山脈襟裳十勝国立公園」(2024年指定)の一角
- ✅ 第61代横綱・北勝海(現・日本相撲協会理事長)のふるさと
「クリスマスや雪景色が好きな人」「火山ではなく山と海の絶景を味わいたい旅行者」「本物のししゃもを産地で食べたい人」に特におすすめの町です。本記事では、観光・特産・歴史から、海とともにある暮らしや方言、四季の風景まで地元目線で紹介します。
| 人口 | 5,649 人 ※2026年4月30日時点(住民基本台帳) |
|---|---|
| 面積 | 596.48 km² |
| 人口密度 | 9.47 人/km² |
※人口の出典:広尾町公式サイト
地理的には、北を大樹町と接し、西は日高山脈の尾根をはさんで、日高側の浦河町・様似町・えりも町と境を接しています。東はすべて太平洋で、漁業と農林業を基幹産業として発展してきました(出典:広尾町公式サイト)。
山と海、サンタとししゃも。この小さな町には「日本唯一」「日本一」「日本最大」が重なっています。ひとつずつ見ていきましょう。
広尾町の推しポイント

広尾町を語るとき外せないのが、日本でただ一つのサンタランドと、日本一の水揚げを誇るししゃもです。さらに、断崖を縫う黄金道路、2024年に誕生した日本最大の国立公園、そして横綱を生んだ町という顔もあります。観光・食・自然・人と、方向の違う見どころが一つの町に詰まっているんですよ。ここからは、その5つを少し掘り下げていきます。
サンタの町──日本で唯一のサンタランド
広尾町は、1984年11月にサンタクロースの故郷ノルウェー・オスロ市から、国外で初めて、そして日本でただ一つの「サンタランド」として認定された町です(出典:広尾町公式サイト)。きっかけは1980年、町の水族科学館がノルウェー・ベルゲンの水族館と姉妹提携したことでした。基本理念は「愛と平和、感謝と奉仕」。冬になると大丸山森林公園が約15万球の電飾でいろどられ、まちぜんたいがクリスマス一色になるんですよ。
ししゃも水揚げ量日本一
スーパーで見かける「ししゃも」の多くは、じつは輸入のカラフトシシャモ(キャペリン)。本物のししゃもは北海道の太平洋沿岸でしか獲れない日本固有の魚で、広尾町はその水揚げ量で日本一になった主産地です(出典:広尾町公式サイト)。漁の最盛期は秋。産地でしか味わえない一夜干しは、ぜひ現地で食べてほしい一品です。
黄金道路──黄金を敷くほど費やした絶景ルート
広尾町からえりも町庶野まで、日高山脈が海に迫る約33.5kmの国道336号は「黄金道路」と呼ばれます。昭和2年に着工し、断崖を削る難工事の末に昭和9年に開通しました(出典:広尾町観光協会)。名前は「金を敷き詰めるほど建設費がかかった」ことに由来します。トンネルの合間からのぞく太平洋は迫力満点ですよ。
日本最大の国立公園のなかにある町
広尾町の西半分は、2024年6月25日に誕生した「日高山脈襟裳十勝国立公園」に含まれています。これは国内35番目にして、陸域面積が日本最大の国立公園です(出典:環境省)。南北約140kmにおよぶ原生的な山なみが、内陸から海まで一続きで残っている点が高く評価されました。
横綱・北勝海のふるさと
広尾町は、第61代横綱・北勝海(ほくとうみ)が生まれ育った町でもあります。広尾小学校の卒業文集に「相撲取りになる」と書き、14歳で九重部屋に入門。現在は八角親方として、第13代日本相撲協会理事長を務めています(出典:八角部屋)。港町から土俵の頂点へ、というのが地元の誇りなんですよね。
広尾町の歴史

広尾の歴史は、アイヌの人々が暮らした大地から始まります。江戸期には十勝を治める拠点が置かれ、幕末には北方警備のための陣屋が築かれました。明治以降は村から町へと歩みを進め、昭和には鉄道の開通と廃止、そしてサンタランドの誕生という現代の転機を迎えます。この3つの時代を順に見ていきます。
古代〜近世──十勝の拠点が置かれた地
町内では縄文期の石器なども見つかっており、古くから人の営みがありました。十勝最古とされる十勝神社は1600年代の創建で、北海道指定文化財の文化財を所蔵しています(出典:広尾町公式サイト)。安政6年(1859年)には、北方警備を命じられた仙台藩が円山のふもとにトカチ陣屋を構えました。その跡は旧広尾小学校の敷地に土塁などを残しています。
近代の開拓と発展
1906年(明治39年)、茂寄村(もより)などが合併して二級町村制の茂寄村が発足しました。1926年(大正15年)に広尾村と改称し、1928年には大樹村(現在の大樹町)が分かれて独立します。漁業と畑作、酪農を軸に人口を増やし、町の骨格がかたちづくられていきました。
現代──町の今を作った出来事
1946年(昭和21年)に町制が施行され、広尾町が誕生しました。鉄道の広尾線も走っていましたが、1987年(昭和62年)に廃止されています。一方で1984年にはサンタランドの認定を受け、町は「サンタの町」という新しい顔を得ました。鉄道の駅舎跡は記念公園として今も残されています。
広尾町の文化・風習

方言と話し方の特徴
北海道の言葉は、海ぞいの漁村で使われる「浜言葉」と、比較的標準語に近い内陸の言葉に大きく分かれます。太平洋に面した広尾町は、東北の言葉の影響を受けた浜言葉の文化圏。お年寄りどうしの会話には、独特のなまりや語尾が今も残っています。
たとえばなまら(とても・すごく)、しばれる(凍えるほど寒い)、めんこい(かわいい)。別れぎわにはしたっけ(それじゃあ・じゃあね)と言い、語尾には〜だべさ(〜だよね)が付きます。理由をたずねるときはなして?(どうして?)。意味が分かると、会話がぐっと近くなりますよ。
海とともにある食卓と四季
食卓には季節がそのまま並びます。秋はししゃも、夏は昆布、寒くなれば毛がにやつぶ貝。前浜で揚がった魚をその日に食べられるのは、港町ならではの贅沢なんですよね。冬は最低気温が氷点下20度近くまで下がる日もあり、しばれる朝の空気のなかで一日が始まります。
人の気質とサンタの理念
厳しい海と向き合ってきた町だけあって、人は実直で面倒見がいいと言われます。そこに「愛と平和、感謝と奉仕」というサンタランドの理念が重なり、町ぐるみで子どもや訪れる人をあたたかく迎える空気が育ってきました。みなさんが訪ねても、どこかほっとする距離感を感じられるはずです。
広尾町の特産品・食

特産品1:本ししゃも
広尾町の主役は、なんといっても本ししゃもです。産卵に向けて栄養をたくわえた「沖獲れ本ししゃも」は、身がやわらかく脂がのっていて、輸入ものとは別物のおいしさ。旬は10月〜11月のおよそ1か月で、広尾町はこの水揚げ量で日本一になりました(出典:広尾町公式サイト)。卵を抱えた子持ちは、炭火でじっくり焼くのがたまりません。寿司やコロッケで味わえるお店もありますよ。
特産品2:広尾の昆布
黄金道路ぞいでは、夏になると昆布漁の風景が広がります。親潮と黒潮が混じり合う豊かな海で育った昆布は、だしにも煮物にも力を発揮します。浜に並んで干される昆布のすだれは、夏の広尾を象徴する眺め。だしを一口とると、海のうまみがそのまま溶け出していくのが分かりますよ。
特産品3:毛がに・つぶ貝などの海の幸
広尾の海はししゃもや昆布だけではありません。十勝港や音調津漁港には、毛がに、つぶ貝、鮭など季節ごとにさまざまな魚介が水揚げされます。漁師さんたちは複数の漁を季節で使い分けながら海と向き合ってきました。冬の毛がにのぎっしり詰まった身は、寒い土地ならではのごちそうです。
広尾町の観光スポット

序盤で触れたサンタランドやししゃも、黄金道路は、実際に足を運ぶとその面白さがぐっと立体的になります。広尾町の見どころは、大きく「サンタの世界」「海と断崖の絶景」「町の歴史」の3つに分けられます。市街地から車で動けば半日〜1日でぐるっと回れる距離感なので、まずは押さえておきたいスポットを順に紹介していきますね。
サンタの世界を楽しむスポット
- 広尾サンタランド(大丸山森林公園) – シンボルゾーンの大丸山森林公園が、サンタランドの中心地です。観光案内所をかねた「サンタの家」では、一年じゅうクリスマスグッズや絵本が並びます(出典:広尾町公式サイト)。丘の上には「恋人の聖地」に認定されたサンタの鐘があり、鳴らすと願いがかなうと言われています。一歩入ると、季節を問わずクリスマスの空気に包まれるんですよ。
- 日高山脈展望台(大丸山山頂) – 2025年9月、大丸山の頂上に新しく設けられた展望台です(出典:広尾サンタランド公式サイト)。眼下の牧場や森林の向こうに、楽古岳など日高山脈の山なみを一望できます。広尾の市街地から襟裳方面までのパノラマも広がり、登りきった時の開放感は格別です。
海と断崖の絶景スポット
- 黄金道路 – 広尾町からえりも町庶野まで続く約33.5kmの国道336号です。昭和2年着工、昭和9年完成で、建設費は当時の金額で約94万5千円かかりました(出典:広尾町観光協会)。日高山脈が海に迫る断崖をトンネルと覆道で縫って走り、合間からのぞく太平洋は迫力満点。夏は昆布漁の風景も見られます。
- フンベの滝 – 黄金道路を広尾橋からえりも方面へ車で5分ほど走った、フンベ地区の道路沿いにあります。地下水がわき出して直接道路脇に落ちる珍しい滝です(出典:広尾町公式サイト)。「フンベ」はアイヌ語で「鯨の獲れる浜」の意味。夏はすずやかに、冬は氷柱になって表情を変えます。滝の前に駐車帯があるので、ドライブの途中に気軽に立ち寄れますよ。
町の歴史を学べるスポット
- 海洋博物館(広尾町海洋博物館・郷土文化保存伝習館) – 所在地は広尾町字野塚。近海の魚類や漁法の展示に加え、広尾町出身の第61代横綱・北勝海のコーナー、山岳画家・坂本直行の展示室があります(出典:広尾町公式サイト)。坂本直行が坂本龍馬の末裔であることを示す書簡や、旧国鉄広尾線の記録も。海を見下ろす段丘の上に立ち、ここに来れば町の全体像がつかめます。
- 仙台藩トカチ陣屋跡 – 所在地は広尾町西4条9丁目。幕末に北方警備を命じられた仙台藩が、円山のふもとに設けた小規模な陣屋(屯所)の跡です(出典:広尾町公式サイト)。旧広尾小学校の敷地に土塁などの一部が残ります。市街地のなかに突然あらわれる歴史の痕跡で、幕末の蝦夷地警備に思いをはせられる場所です。
- 十勝神社 – 所在地は広尾町茂寄。創建は不明ながら1600年代とされる、十勝最古の神社です。現在の社殿は昭和17年に完成し、北海道指定文化財「東蝦新道記彫字板」を所蔵しています(出典:広尾町公式サイト)。境内は静かで、十勝の歴史の古層に触れられます。
広尾町の観光ルート

広尾町は鉄道が通っていないので、移動は車が基本になります。市街地のサンタの世界をめぐる半日コースから、海岸線をえりも方面まで足をのばす広域ドライブまで、組み立て方は自由自在。ここでは目的別に3つのルートを紹介しますね。出発はいずれも広尾市街を起点にしています。
【車・半日】サンタと歴史の市街地ルート
9:30 広尾市街 → 9:40 大丸山森林公園(車10分)→ 11:30 海洋博物館(車10分)→ 12:30 十勝神社(車5分)
①大丸山森林公園(90分)
→ サンタの家でグッズを眺め、丘の上のサンタの鐘を鳴らし、日高山脈展望台まで登ります。午前の澄んだ空気のうちにパノラマを楽しむのがおすすめです。
②海洋博物館(60分)
→ 横綱・北勝海や坂本直行の展示で、町の人物史にぐっと近づけます。海を見下ろす立地なので、晴れた日は窓の外も楽しみのひとつ。
③十勝神社(30分)
→ 締めくくりは十勝最古の神社へ。静かな境内で、町の長い歴史に手を合わせて半日を終えられます。
【車・半日】海と断崖の黄金道路ルート
13:00 広尾市街 → 13:10 広尾橋 → 13:15 フンベの滝(車5分)→ 黄金道路をえりも方面へ往復
①フンベの滝(20分)
→ 道路脇に水が落ちる珍しい滝で、まずは肩ならし。駐車帯から数歩で見られる手軽さがうれしいところ。
②黄金道路(往路)(40分)
→ トンネルと覆道の合間に、太平洋の荒波がのぞきます。午後の光が海に当たる時間帯がとくにきれいなんですよ。
③昆布漁の浜(夏季)
→ 夏なら道沿いに昆布を干す浜の風景が広がります。漁師さんの手仕事を眺めながらの運転は、この季節ならではです。
④黄金道路(復路)
→ 来た道を引き返し、夕方の広尾市街へ。日没前に戻ると、港町の夕景も味わえます。
【車・1日】広域ルート:襟裳岬まで足をのばす
9:00 広尾市街 → 9:15 フンベの滝 → 10:30 えりも町(黄金道路経由・車約50分)→ 襟裳岬 → 夕方 広尾市街へ戻る
①フンベの滝・黄金道路(午前)
→ まずは広尾側の断崖区間を堪能。日本最大の国立公園に含まれる海岸線を、海を見ながら南下していきます。
②えりも・襟裳岬(昼〜午後)
→ 日本屈指の強風地帯として知られる岬へ。広尾とはまた違う、ダイナミックな海の景色が待っています。
③復路の黄金道路(夕方)
→ 帰りも同じ海岸線を北上。往路とは光の角度が変わり、同じ道が別の表情を見せてくれます。
④広尾市街
→ 一日の締めは港町で。海の幸を味わって、ドライブの余韻にひたれます。
広尾町の年間イベント

サンタの町・港町・果てなき海。広尾町のイベントは、その三つの顔がそのまま季節の行事になっています。初夏のツツジ、真夏の花火、年の瀬の毛がにと、季節ごとに足を運ぶ理由があるんですよ。代表的なものを春から順に紹介します。
初夏:広尾つつじまつり
大丸山森林公園では、5月中旬から6月上旬にかけて約1万2,000本のエゾヤマツツジが見頃を迎えます。その朱色のなかで開かれるのが広尾つつじまつりです(出典:広尾町公式サイト)。
ぜひ味わってほしいのが、会場で販売される「八角親方ふるさとちゃんこ鍋」。横綱を生んだ町ならではの一杯です。焼き台も用意されているので、広尾の海産物を買ってその場で焼いて食べられますよ。
真夏:十勝港まつり・十勝港海上花火大会
毎年8月上旬に開かれる、十勝管内の港で唯一の花火大会です。約7,000発が打ち上がり、2025年は第35回を数えました(出典:広尾町観光協会)。
名物は、船から海に投げ入れて点火する「水中花火」。海面に光が扇のように開く様子は、港町ならではの眺めです。日中はポートバザールや陣屋太鼓でにぎわい、近年は同日開催の「海風サウナフェス」も話題なんですよ。
冬:広尾毛がにまつり(広尾まんぷくまつり)
年の瀬の12月にシーサイドパーク広尾で開かれる、冬の味覚イベントです。毎年およそ1万人が訪れ、2025年は第56回が開催されました(出典:広尾町公式サイト)。
主役は大釜で茹で上げる毛がにの実演販売と、湯気の立つ毛がに汁。ししゃも、いくら、新巻鮭など広尾産の海の幸がずらりと並びます。寒空の下、茹でたてを頬ばる幸せは、ここでしか味わえません。
冬:サンタランドイルミネーション
10月第4土曜日の点灯式を皮切りに、大丸山森林公園が約15万球のイルミネーションと約1万個のウッドランタンに包まれます。点灯は1月初旬まで続きます(出典:広尾町公式サイト)。
サンタの家へ続くトンネルが光のアーチになり、まちぜんたいがクリスマス色に。雪と光のなかをゆっくり歩けば、サンタの町という名前がすとんと腑に落ちますよ。
広尾町のエリア別の顔

596.48平方キロメートルの広尾町は、東の太平洋から西の日高山脈まで、横長に広がっています。旅する視点で見ると、にぎわいの「市街地」、絶景の「黄金道路・海岸エリア」、山と森の「内陸・大丸山エリア」の3つに性格が分かれます。それぞれどんな時に訪れると楽しいか、見ていきましょう。
市街地エリア──港と暮らしのにぎわい
役場や商店、十勝港が集まる町の中心です。海洋博物館や十勝神社、トカチ陣屋跡といった見どころが歩ける範囲に点在しています。観光の拠点にちょうどよく、海の幸を出すお店もこのあたり。町の空気を肌で感じたい人に向いたエリアです。
黄金道路・海岸エリア──断崖と波の絶景
市街地から南、えりも方面へ続く海岸線がこのエリア。フンベの滝や黄金道路の断崖、夏の昆布漁の浜など、見どころは「動きながら楽しむ」タイプです。ドライブやツーリングで景色を流したい人、海と岩のダイナミックな表情を撮りたい人にぴったりですよ。
内陸・大丸山エリア──サンタと花と展望
市街地の背後に広がる、森と丘のエリアです。中心は大丸山森林公園で、サンタの家、恋人の聖地、2025年新設の日高山脈展望台が集まります。春は花、初夏はツツジ、冬はイルミネーションと、季節で表情が変わるのが魅力。家族連れやカップルでのんびり過ごしたい時におすすめのエリアです。
広尾町の気候・季節の暮らし

広尾町の年平均気温は7.2℃です(出典:気象庁平年値(1991〜2020年))。太平洋に面しているため、夏は同じ十勝の内陸部ほど暑くならず、冬も道内では比較的雪が少なめなのが特徴です。
ただし、ここは「日高山脈から吹き下ろす風」と「海からの霧」が出会う土地。数字以上に、風の強さと海の気配が暮らしを左右します。季節ごとの体感を見ていきましょう。
夏──6月〜8月の暮らし
もっとも暑い8月でも、日平均気温は18.6℃ほど(出典:気象庁平年値(1991〜2020年))。本州のような蒸し暑さはなく、夜は窓を開けると涼しい風が入ってきます。
一方で、夏は海霧(ガス)が出やすい時期。朝、海side が白くかすむ日も多く、薄手の上着が一枚あると安心です。花火大会や昆布漁の季節でもあり、町がいちばん活気づくのがこの時期なんですよ。
秋──9月〜11月の暮らし
秋は空気が澄み、海も山もくっきり見える季節です。10月〜11月はししゃも漁の最盛期で、港のまわりが一年でいちばん忙しくなります。
朝晩の冷え込みは10月から本格化します。日が落ちると一気に気温が下がるので、夕方の外出には厚手の羽織りものを。10月最終土曜の点灯式を境に、町は早くもクリスマスムードへ切り替わっていきます。
冬──12月〜2月の暮らし
もっとも寒い1月で日平均気温は−4.2℃、最低気温の平均は−9.2℃ほどです(出典:気象庁平年値(1991〜2020年))。氷点下20度近くまで下がる日もあり、北海道で言う「しばれる」(凍えるほど冷え込む、の意)朝が続きます。
とはいえ、日本海側のような豪雪地帯ではありません。雪かきの負担は道内では軽めで、晴れる日も多め。サンタランドのイルミネーションが灯る町を、白い息をはきながら歩くのが冬の広尾の風物詩です。
春──3月〜5月の暮らし
春の訪れは本州よりゆっくりです。雪どけのあとも風が冷たく、4月でも油断は禁物。広尾町の春は風の強い季節でもあります。
それでも5月に入れば、大丸山森林公園のエゾヤマザクラやエゾヤマツツジが一気に咲きそろいます。長い冬を越えた町が、いちばんほっとゆるむのがこの時期。花とともに観光シーズンの幕が開きます。
広尾町の移住・暮らし情報

人口5,649人の広尾町は、漁業と農林業で成り立つコンパクトな港町です。鉄道はなく車が生活の足になりますが、町なかに役場・病院・スーパー・学校がまとまっているので、日々の用事は町内で完結しやすいんですよ。暮らしの実際を項目ごとに見ていきます。
通勤・通学
町民の多くは町内の漁業・水産加工・農業・役場関係などで働いています。通勤は車が中心で、市街地なら役場や港まで車で数分の距離感。帯広方面へ通う人は、片道2時間前後を見ておく必要があります。
住宅環境
賃貸物件の数はかぎられ、広尾郡全体でも掲載物件は100件前後にとどまります(出典:SUUMO)。アパートは市街地に集中し、郊外は持ち家・戸建てが中心。移住を考えるなら、町の空き家・住宅情報もあわせて確認するのがおすすめです。
買い物環境
市街地にスーパーや商店、ドラッグストアがそろい、日常の買い物はまかなえます。新鮮な魚介が手頃に手に入るのは港町ならでは。まとまった買い物や専門店は、帯広まで足をのばす人が多いと考えられます。
子育て・教育
町には子育て支援センターがあり、就学前の親子向けの「あそびの広場」や一時保育、無料の育児相談を行っています(出典:広尾町公式サイト)。
学校は小・中学校に加え、町内に道立の北海道広尾高等学校があります。高校まで町内で通えるのは、子育て世帯には心強いポイントですよね。
医療環境
町内の医療機関は3か所です。入院用の病床がある広尾町国民健康保険病院(公園通南4丁目)のほか、クリニックつつみ、子どもの診療も行う広尾ファミリークリニックがあります(出典:広尾町公式サイト)。高度・専門医療が必要な場合は帯広市内の病院が受け皿になります。
エリア別の暮らし視点
中盤では旅の視点でエリアを見ましたが、住む視点では市街地エリアが断然便利です。役場・病院・学校・スーパーが徒歩〜車数分の圏内にまとまり、生活導線が短くてすみます。
海岸エリアや内陸エリアは、自然のそばで暮らしたい人向け。買い物や通院は市街地まで車で出る前提になりますが、その分、海や山を独り占めできる環境が手に入ります。
広尾町へのアクセス

広尾町の玄関口は、空の便なら「とかち帯広空港」、陸の便なら「帯広駅」です。町内に鉄道は通っていないため、最終的には車かバスでの移動になります。主要ルートを順に整理します。
車でのアクセス
とかち帯広空港からレンタカーで広尾まで直行すると、約1時間の道のりです(出典:広尾町公式サイト)。帯広市街からは国道236号で南下するのが基本ルート。観光なら、空港で車を借りて広尾→黄金道路→えりも岬とつなぐ海岸ドライブが組みやすいです。
鉄道+バスでのアクセス
JR北海道を使う場合は帯広駅が起点です。帯広駅から広尾町までは十勝バス(広尾線)で約2時間40分かかります(出典:広尾町公式サイト)。旧国鉄広尾線を引き継いだ路線で、十勝平野をのんびり南下する車窓も旅の一部。なお十勝バスはICカードが使えないので、乗車券を先に用意しておくと安心です。
飛行機でのアクセス
東京(羽田)からとかち帯広空港まではJALとAIR DOが就航し、所要時間は約1時間30分です。空港から帯広市内へは連絡バスで約40分です(出典:広尾町公式サイト)。首都圏からなら、飛行機+レンタカーが時間も読みやすくおすすめの組み合わせです。
町内移動の現実的アドバイス
観光でも暮らしでも、広尾では車があると行動の幅が大きく広がります。黄金道路やフンベの滝、大丸山森林公園は、いずれも車での移動が前提の距離感だからです。
札幌からの都市間バス「高速ひろおサンタ号」は現在運休中なので、札幌方面から向かう場合は帯広での乗り継ぎを基本に計画を立てるのが確実ですよ(出典:広尾町公式サイト)。
【地元住民に直撃!】広尾町の本当の魅力を聞いてみた

Q1.あなたのご職業を教えてください。
漁師です。十勝港から船を出して、秋になると本ししゃもを獲っています。この町のししゃもは水揚げ日本一と言われていて、それを誇りに思いながら毎日海に出ています。
ただ正直、海の様子は年々変わっていて、ししゃもも昆布も以前ほど安定して獲れません。自然相手の仕事なので、その年その年で一喜一憂しながらやっているのが実際のところです。
Q2.広尾町に来て絶対行くべき場所はどこだと思いますか?
定番なら大丸山森林公園ですね。サンタの家やイルミネーションが有名ですが、去年できた日高山脈展望台からの眺めは本当にいい。広尾の観光の顔だと思います。
地元の人間としては黄金道路沿いのフンベの滝あたりが好きです。観光地という感じではないけど、波の音と崖の迫力、海から流れてくる風の匂いは、ここでしか味わえない空気なんですよ。
Q3.広尾町でお土産を買うとしたらなんですか?
やっぱり本ししゃもの一夜干しですね。これは広尾の有名なものですし、輸入物とは別格なので、来た人には一度食べてほしいです。昆布もおすすめです。
あと地元の人間がよく買うのはサンタソフトや、町内で作っている昆布の加工品。観光客はあまり知らないけど、こういう普段使いのものを選ぶと、生活感のある広尾らしいお土産になりますよ。
Q4.外から人が来たときに、広尾町でまず連れていく店はどこですか?
まずは地元の海産物を出してくれる食堂ですね。ししゃも定食を頼めば、産地で食べる本物のうまさが分かってもらえます。これが一番手っ取り早い広尾観光だと思っています。
季節が合えば、毛がにまつりや夏の十勝港まつりの会場へ連れていくこともあります。茹でたてをその場で頬張る雰囲気は、店では味わえない広尾の良さですから。
Q5.広尾町はどんな気質だと思いますか?
海と向き合ってきた町なので、人は実直で、困っている人は放っておけない。漁師仲間も近所も、距離が近くて面倒見がいいです。よそから来た人にも自然と声をかける土地柄ですね。
サンタランドの「愛と平和、感謝と奉仕」という考え方も、町民センターでの集まりや行事を通じて、知らないうちに根づいている気がします。穏やかで、あたたかい町です。
Q6.昔に比べて、広尾町の雰囲気や活気はどう変わったと感じますか?
正直に言うと、人は減りました。子どもの頃に比べて店も同級生も少なくなって、漁師の担い手も高齢化しています。にぎやかさという点では、昔のほうがありました。
ただ、最近は花火大会にサウナフェスが加わったり、新しい風も入ってきています。町長をはじめ町ぐるみで観光に力を入れていて、外から来てくれる人が増えているのは嬉しい変化ですね。
Q7.広尾町のこれから新しくできる施設や、期待している活動などはありますか?
大丸山に日高山脈展望台ができたばかりですが、ああいう景色を生かした取り組みがもっと増えてほしいです。広尾の水源になっている日高の山と海、両方を見せられるのは強みですから。
あとは港や運動公園を使ったイベントが続いていくといい。日本最大の国立公園に入ったことも追い風です。漁業と観光が両輪で回って、若い人が残れる町になってほしいと願っています。

