平取町(びらとりちょう)は、北海道日高振興局西部・沙流川の中流域に位置する人口4,370人の町です。札幌から車で約1時間半、新千歳空港から約1時間でアクセスできます。
平取町の魅力を5つに凝縮すると、こうなります:
- ✅ 二風谷(にぶたに)コタン──アイヌ文化が色濃く残る道内随一の聖地
- ✅ 二風谷イタ・二風谷アットゥㇱ──2013年に北海道で初めて経済産業省の伝統的工芸品に指定
- ✅ 義経神社──源義経が辿り着いたという「義経北行伝説」を伝える1799年創建の神社
- ✅ びらとりトマト「ニシパの恋人」──出荷量全道一を誇る一大産地
- ✅ 芽生(めむ)すずらん群生地──約15haと日本一の広さを誇る野生のすずらん自生地
「アイヌ文化に触れたい人」「歴史好き・神社巡りが趣味の人」「人混みを離れて静かな旅をしたい人」に特におすすめの町。本記事では、観光・特産・歴史から、文化や暮らしのリアルな姿、アクセス情報まで地元目線で紹介します。
| 人口 | 4,370 人 ※2026年4月30日時点(住民基本台帳) |
|---|---|
| 面積 | 743.09 km² |
| 人口密度 | 5.88 人/km² |
平取町は日高振興局に属する沙流郡の町で、地名はアイヌ語の「ピラウトゥル(崖の間)」に由来します。隣接する市町村は、同じ日高振興局の日高町と新冠町、胆振総合振興局のむかわ町、上川総合振興局の占冠村、十勝総合振興局の帯広市の5市町村。沙流川流域の谷あいに集落が点在し、東部は日高山脈襟裳十勝国立公園に指定されています。
アイヌ文化の聖地、北海道一のトマト産地、義経伝説、日本一のすずらん群生地──この町にはここでしか出会えない要素が静かに重なり合っています。ひとつずつ見ていきましょう。
平取町の推しポイント

平取町を語るとき、外せないのは「アイヌ文化」「義経伝説」「トマト」「すずらん」「日本最大級のダム」の5つの軸。二風谷地区には全国でも稀なほどアイヌ文化が色濃く受け継がれ、町の本町には源義経を祀る神社が江戸時代から鎮座しています。さらに沙流川の肥沃な大地は北海道一のトマト産地を生み、幌尻岳のふもとには日本一の野生すずらん群生地が広がります。それぞれを順番に見ていきましょう。
推しポイント1:二風谷コタン──アイヌ文化の聖地
沙流川沿いの二風谷地区は、現代まで途切れることなくアイヌ文化が継承されてきた稀有な場所。平取町立二風谷アイヌ文化博物館、萱野茂二風谷アイヌ資料館、伝統家屋「チセ」群、工芸作家の工房が並ぶ「匠の道」がコンパクトに集まっており、半日あれば文化の輪郭をしっかり掴めます。
推しポイント2:二風谷イタ・二風谷アットゥㇱ──北海道初の伝統的工芸品
カツラやクルミの木に渦巻きや棘の文様を彫り込んだ盆「二風谷イタ」と、オヒョウやシナノキの樹皮で織る反物「二風谷アットゥㇱ」。この2品は2013年に北海道で初めて経済産業省の伝統的工芸品に指定されました。アットゥㇱは江戸時代には北前船の船乗りの仕事着としても愛用された丈夫な布で、伝統と暮らしの結びつきが今も生きています。
推しポイント3:義経神社──北行伝説が江戸時代から残る神社
1799年(寛政11年)、蝦夷地調査に訪れた幕臣・近藤重蔵が、平取のアイヌが英雄オキクルミと源義経を重ねて崇敬していることを知り、神田の仏師に彫らせた義経の木像を奉納したのが始まりとされます。アイヌの人々が義経を「ハンガンカムイ(判官神)」と呼んだという伝承が、神社の歴史を貫いています。
推しポイント4:びらとりトマト「ニシパの恋人」──出荷量全道一
沙流川の清流と冷涼な気候が育てるトマトは、JAびらとり公式で「北海道一の出荷量」とされる地域ブランド。桃太郎系品種に統一し、5月上旬から11月中旬まで長期にわたりリレー出荷されています。「ニシパ」はアイヌ語で「紳士・旦那」を意味し、ジュースやケチャップなど加工品も人気です。
推しポイント5:芽生すずらん群生地──日本一の野生すずらん
幌尻岳のふもと・芽生(めむ)地区に広がる、約15haの野生すずらん群生地。日本最大の規模を誇り、5月下旬から6月中旬の期間限定で一般公開されます。かつて軍馬の放牧地だった土地で、有毒なすずらんを馬が食べ残したことで群生地が残ったという、ちょっと意外な成り立ちもあります。
平取町の歴史

平取町の歴史は、沙流川流域に古くから暮らしたアイヌの人々の歴史と分かちがたく結びついています。江戸時代の蝦夷地探検と義経伝説、明治以降の開拓と分村、戦後の町制施行と二風谷ダム建設──この3つの大きな流れが、現在の町の姿を作っています。アイヌ文化の継承と近代開拓が同じ土地で展開された点が、他の北海道の町とは異なる特徴です。
古代〜江戸時代──アイヌの聖地と義経伝説
沙流川流域は古くからアイヌの一大居住地でした。江戸時代の安政年間(1854〜1859)には、松前藩が幕府に献上する産品の中に沙流川流域の半月盆や丸盆の記録があり、二風谷イタの源流が確認できます。また1799年(寛政11年)、幕府巡検使・近藤重蔵がアイヌの英雄崇拝に触れて義経の木像を奉納し、義経神社が創建されました。
近代の開拓と分村
1899年(明治32年)、門別村ほか17村から分かれて「平取村外8村戸長役場」が独立しました。1916年(大正5年)には新冠村のアイヌ80戸が平取村へ強制移住するという出来事も起きています。1919年(大正8年)には現在の日高町にあたる右左府村が分離し、1923年(大正12年)に二級町村制を施行して「平取村」となりました。
現代──町制施行から世界に発信する文化拠点へ
1954年(昭和29年)に町制が施行され「平取町」が誕生。1977年(昭和52年)に平取温泉が開業し、1997年(平成9年)には二風谷ダムが完成しました。2007年(平成19年)には沙流川流域が国の重要文化的景観に選定。2013年(平成25年)には「二風谷イタ」「二風谷アットゥㇱ」が経済産業省の伝統的工芸品に指定され、北海道で初めての快挙となりました。
平取町の文化・風習

平取町の暮らしは、アイヌ文化が日常の中に溶け込んでいる稀な町です。観光地として整備された「二風谷コタン」だけでなく、工芸作家の工房が日常的に動いていて、近所のおじいちゃんがアットゥㇱを織っている、なんて光景もあるんですよ。アイヌ古式舞踊の保存会も活発に活動しており、地元の小学校でもアイヌ文化を学ぶ機会が設けられています。
方言──北海道弁の「したっけ」と「なまら」
平取町では北海道の共通語と同じく北海道弁が話されています。代表的なのはしたっけ(「そしたら」「じゃあね」の両方の意味)となまら(とても・すごく)。「明日また会おうね、したっけ(じゃあね)!」「このトマトなまら(とても)甘いっしょ」みたいに使います。語尾の「〜っしょ」「〜さ」も自然に出てくる、柔らかい話し方が特徴です。
食卓と季節の暮らし
夏は冷涼で昼夜の寒暖差が大きいため、トマトをはじめとした野菜が驚くほど甘く育ちます。夏の食卓には地元のトマトをそのまま冷やしてかじる風景があり、冬はしばれる(厳しく冷える)日が続くため、びらとり和牛のすき焼きや鍋で身体を温める家庭も多いです。秋にはサケが沙流川を遡上し、アイヌの伝統儀礼「カムイチェプノミ(鮭を迎える儀式)」も行われています。
人の気質とアイヌ文化への敬意
町民にはアイヌの血を引く方も多く、和人とアイヌの文化が長い時間をかけて互いに敬意を持ちながら共存してきた土地です。義経神社が「多文化共生と多様性尊重のシンボル」を掲げているのも、こうした歴史の積み重ねがあってこそ。観光客に対しても、控えめながら親しみのある接し方をする方が多い印象です。
平取町の特産品・食

平取町の特産品といえば、なんといってもトマトと和牛。沙流川流域の肥沃な大地と冷涼な気候が、味の濃い農畜産物を育てています。アイヌ文化の伝統工芸品もここでしか手に入らないものばかり。実際に味わうと「なまら(とても)うまい」と素直に口に出てしまうレベルなんですよ。
びらとりトマト「ニシパの恋人」──夏の太陽をぎゅっと閉じ込めた味
JAびらとり公式によると、出荷量は北海道一。品種は桃太郎系で統一されており、糖度と酸度のバランスが良く、しっかりと実が締まっていて日持ちするのが特徴です。旬は5月上旬から11月中旬まで長く、特に夏の最盛期(7〜8月)のトマトはひと口かじると果汁があふれ出すほど。生でかぶりつくのが一番なまら(すごく)美味しい食べ方です。規格外品から作られるトマトジュース・ピューレ・ケチャップも人気で、JAタウンや通販で全国に発送されています。
びらとり和牛──A5ランクが多くを占める黒毛和牛
1962年(昭和37年)に島根県から繁殖牛が導入されて始まった、比較的歴史の浅いブランド和牛。平取町の凍てつく冬の寒さを乗り越えることで肉の旨味が凝縮され、出荷される枝肉の多くがA5ランクに格付けされる高品質ぶりです。一頭を生産するには妊娠期間を含めて約40ヶ月かかると言われています。すき焼き・焼肉・ステーキで楽しめる直売店も町内にあり、温泉施設「びらとり温泉ゆから」では和牛料理が味わえます。
二風谷イタ──カツラの木に刻まれた渦巻きの文様
カツラやクルミの木を彫って作る木製の盆。モレウノカ(渦巻きの形)、アイウㇱノカ(棘のある形)、シㇰノカ(目の形)、ラㇺラㇺノカ(ウロコ文様)といったアイヌ文様が表面全体に彫り込まれているのが特徴です。最初に史料に現れるのは江戸時代末期の安政年間(1854〜1859)と古く、現在は二風谷民芸組合が制作の中心。お盆として日常使いするほど味わいが増していくので、お土産にもおすすめです。
二風谷アットゥㇱ──樹皮から織り上げる、丈夫な平織の布
オヒョウやシナノキの内皮から糸を作り、平織で仕上げる反物。江戸時代にはニシン漁の漁師や北前船の船乗りの仕事着として愛用されたほど丈夫で、水にも強く通気性に優れています。1881年(明治14年)にこの地を訪れた英国の旅行家イザベラ・バードも著書『日本奥地紀行』で触れているほど。樹皮を剥ぐところから糸を績む、織るまで、すべての工程が手作業で行われる手仕事の結晶です。したっけ(それじゃあ)、二風谷工芸館や匠の道の工房で実物を見て触れてみてください。
平取町の観光スポット

平取町の観光は、二風谷地区のアイヌ文化エリアと、本町・幌尻岳のふもとに広がる自然・歴史エリアの2つに分けて楽しむのがおすすめです。アイヌ文化博物館をはじめとした学べるスポット、義経神社などの歴史を感じる場所、そして日本一の規模を誇るすずらん群生地まで、半日〜1日でじっくり巡れる町なんですよ。
アイヌ文化を学べるスポット
- 平取町立二風谷アイヌ文化博物館 – 「人々の暮らし」「神々のロマン」「大地のめぐみ」「造形の伝承」の4ゾーンでアイヌ文化を体感できる博物館。重要有形民俗文化財「北海道二風谷及び周辺地域のアイヌ生活用具コレクション」を中心に千点以上の民具を収蔵しており、種類の多さで国内最大級です。開館時間は9:00〜16:30、入館料は大人400円・小中学生150円。雨の日でもじっくり楽しめます。
- 萱野茂二風谷アイヌ資料館 – アイヌ民族初の国会議員となった故・萱野茂氏が、40年にわたって収集したアイヌ民具や世界の先住民族の民具など計千点以上を展示する私設資料館。一人の情熱が形になった空間は、博物館とはまた違う温度感があってなまら(とても)見ごたえがあります。
- 平取町アイヌ文化情報センター(二風谷工芸館) – 2013年に北海道で初めて経済産業省の伝統的工芸品に指定された「二風谷イタ」と「二風谷アットゥㇱ」を展示・販売しているお店。地元作家の手仕事を間近で見られて、お土産選びにもぴったりですよね。
- 二風谷コタン – 復元されたチセ(伝統家屋)群が並ぶ屋外の文化空間。茅葺きの家を間近で見られて、アイヌの暮らしの空気感が伝わってきます。博物館や工芸館とまとめて巡れる場所です。
歴史・伝説に触れるスポット
- 義経神社 – 1799年(寛政11年)に幕臣・近藤重蔵が源義経の木像を奉納したのが始まりとされる神社。御祭神は源九郎判官義經公で、アイヌの人々から「ハンガンカムイ」と慕われたという伝説が今も語り継がれています。境内には源義経が植えたと伝わる栗の木や、巨大なさざれ石もあり、歴史好きにはなまら(すごく)たまらない空間です。
- 義経資料館 – 義経神社の境内にある資料館。アイヌからハンカンカムイとして親しまれた義経公にまつわる書物や武具などの史料を展示しています。義経北行伝説のストーリーを順を追って学べる場所です。
- 二風谷ダム – 1997年(平成9年)完成の沙流川本流のダム。「日本一ダムに見えないダム」とダムマニアから呼ばれるユニークな造りで、湖面とアイヌ文化が伝承される土地の風景が一体になっています。
- 振内鉄道記念館 – 1986年に廃止された国鉄富内線・振内駅の跡地に作られた記念館。ホームや車両が保存されており、鉄道ファンにも静かに人気のスポットです。
自然を楽しむスポット
- 平取町芽生すずらん群生地 – 約15ヘクタールと日本一の広さを誇る野生のすずらん群生地。一般公開は5月下旬〜6月中旬の期間のみで、白樺の木立に囲まれた観賞用道路から眺める景色は鈴のような花が一面に揺れる、初夏ならではの光景。香りも豊かで、写真より体験で味わいたい場所です。
- 二風谷ファミリーランド – パークゴルフ場、キャンプ場、テニスコートを備えた複合レジャー施設。びらとり温泉ゆからも敷地内にあり、家族で1日過ごせる場所として地元にも観光客にも親しまれています。
- びらとり温泉ゆから – 1977年開業の平取温泉が2014年に新築リニューアル。塩分濃度の高い天然温泉に加え、道内では珍しい高濃度炭酸泉、露天風呂、サウナを備えています。併設レストランではびらとり和牛をふんだんに使った料理が味わえる、温泉と食を両方楽しめる宿です。
- 幌尻岳(ポロシリ岳) – 標高2,053mで日本百名山にも選ばれている日高山脈の最高峰。本格的な登山装備と渡渉の準備が必要な上級者向けですが、頂から眺める北海道の屋根の景色は他では味わえません。
平取町の観光ルート

平取町には鉄道が通っていないため、観光は車が基本になります。札幌・新千歳空港方面からは日高自動車道の日高富川ICが玄関口。アイヌ文化に集中する1日コース、義経伝説と自然をつなぐ半日コース、隣町まで足を伸ばす広域コースの3パターンを紹介します。
【車・1日】アイヌ文化どっぷりルート
9:00 日高富川IC → 9:20 義経神社(本町)→ 10:30 二風谷コタン(二風谷地区)→ 12:30 昼食(びらとり温泉ゆから)→ 14:00 二風谷工芸館 → 15:30 二風谷ダム → 16:30 日高富川IC
①義経神社(60分)
→ まずは1799年創建の歴史ある神社から。境内の義経資料館で北行伝説の物語を頭に入れておくと、後の二風谷観光で「アイヌ文化と和人文化の出会い」がより立体的に見えてきます。
②二風谷コタン+平取町立二風谷アイヌ文化博物館(120分)
→ 復元チセを外から眺めてから、館内へ。「人々の暮らし」「神々のロマン」「大地のめぐみ」「造形の伝承」の4ゾーンを順に巡ると、アイヌの世界観がすっと入ってきます。
③びらとり温泉ゆから(90分・昼食)
→ 温泉施設併設のレストランで、びらとり和牛のすき焼きや焼肉を。午後の運転前なので入浴は最後にとっておきましょう。
④二風谷工芸館+匠の道(90分)
→ 二風谷イタや二風谷アットゥㇱの作品を見学・購入。匠の道沿いには工房が点在しており、運が良ければ作家さんの作業風景も覗けます。
⑤二風谷ダム(30分)
→ 帰りに立ち寄って、湖面の景色を眺めて締めくくり。夕暮れ時はなまら(とても)静かで写真映えします。
【車・半日】義経伝説と自然めぐりルート
13:00 日高富川IC → 13:20 義経神社・義経資料館(本町)→ 14:30 二風谷ダム → 15:00 二風谷コタン → 16:30 びらとり温泉ゆから → 18:00 日高富川IC
①義経神社・義経資料館(60分)
→ 義経伝説の入口。資料館の展示パネルを丁寧に読むのがおすすめです。
②二風谷ダム(30分)
→ 沙流川本流のダム湖を眺めて移動。アイヌの伝承地と現代インフラが重なる風景です。
③二風谷コタン(60分)
→ 時間が限られているので、博物館は外観と中庭のチセ群を中心にざっと見学。深掘りは次回に。
④びらとり温泉ゆから(90分)
→ 高濃度炭酸泉と露天風呂で旅の疲れをとってフィニッシュ。帰りの運転前にしっかり休めます。
【車・1日】広域ルート:日高地方の自然&文化満喫コース
9:00 日高富川IC → 9:30 平取町・義経神社 → 10:30 二風谷コタン → 13:00 むかわ町(道の駅四季の館で昼食)→ 14:30 むかわ町穂別博物館(化石)→ 16:00 新冠町・サラブレッド銀座 → 17:30 日高富川IC
①平取町(午前中・180分)
→ 義経神社と二風谷コタンを巡り、アイヌ文化と歴史を体感。
②むかわ町(昼食〜午後・180分)
→ 道の駅でししゃも料理を味わい、穂別博物館で恐竜化石「カムイサウルス」関連の展示を見学。したっけ(それじゃあ)、次は競走馬の町へ。
③新冠町(夕方・90分)
→ 馬の牧場が連なるサラブレッド銀座をドライブ。夕日に照らされた牧場の風景は北海道らしさが詰まっています。
平取町の年間イベント

平取町の年間イベントは、春のすずらん観賞会から夏のアイヌ文化儀礼、秋のグルメ祭りまで、町の3本柱「自然・アイヌ文化・農畜産物」がそれぞれ主役になる構成。どの季節に訪れても何かしらの行事に当たる確率が高い町なんですよ。
春〜初夏:すずらん観賞会
毎年5月下旬から6月上旬にかけて、芽生すずらん群生地で開催される平取町を代表するイベント。約15ヘクタールの群生地に白く可憐な花が一面に揺れ、香りが漂う光景は、写真より現地で味わってこそ価値があります。観賞用道路をゆっくり歩きながら、初夏の冷たい風と花の甘い香りが混じる空気を感じられます。期間中の土日にはびらとり和牛のバーベキューコーナーが設置されることもあり、根付きすずらんの先着プレゼントも実施されます。
夏:義経神社例大祭・チプサンケ
毎年8月中旬には義経神社の例大祭が開催され、本町の参道周辺がお祭りムードに包まれます。同じく8月にはアイヌの伝統的な舟下ろし儀礼「チプサンケ」も行われ、沙流川に丸木舟を浮かべる儀式が見学できます。アイヌ文化が「展示」ではなく「現役の儀礼」として続いていることを実感できる、貴重な体験ですね。
秋:食の祭典 びらとり和牛・トマトまつり
毎年9月中旬から下旬にかけて開催される、平取町最大のイベント。びらとり和牛、びらとり黒豚、ニシパの恋人トマトなど町の名物を一度に味わえる食の祭典です。和牛肩ロース200gが2,300円(2025年実績)など、地元価格で食べられるバーベキューコーナーは毎年長蛇の列。YOSAKOIソーランや吹奏楽の特設ステージ、和牛10万円分が当たる大抽選会もあり、地元の人と観光客が入り混じる熱気の高い1日になります。
冬:二風谷コタンDAYなど通年イベント
冬は屋外の大型イベントこそ少ないものの、二風谷地区では文化系のイベントが行われます。例えば2026年2月には平取町立二風谷アイヌ文化博物館主催の「二風谷コタンDAY」が開催されました。冬のしばれる(厳しく冷える)季節には、温泉と博物館をセットで楽しむ大人の旅もなまら(とても)おすすめです。
平取町のエリア別の顔

平取町は沙流川に沿って細長く広がる町で、地区によって大きく表情が異なります。役場が置かれた本町エリア、アイヌ文化の聖地である二風谷エリア、農業と温泉の二風谷ファミリーランド周辺、山深い振内・貫気別エリア、そして日本一のすずらん群生地がある芽生エリア。それぞれが違う「顔」を持っており、目的に合わせてエリアを選ぶのが旅のコツです。
本町エリア──行政・歴史の中心
町役場や義経神社、義経資料館があるエリア。平取町の歴史的な顔がぎゅっと詰まった場所で、義経北行伝説に触れるならまずここを訪れるのが正解です。商店街や郵便局、信用金庫支店もまとまっており、町の生活の中心でもあります。歴史好きや神社巡りが目的の旅人にぴったり。
二風谷エリア──アイヌ文化の聖地
本町から沙流川を遡って車で約10〜15分。二風谷アイヌ文化博物館、萱野茂二風谷アイヌ資料館、二風谷工芸館、復元チセ群、匠の道、二風谷ダム、びらとり温泉ゆからまでが半径1km圏内に集まっています。アイヌ文化に深く触れたい人、工芸品をじっくり選びたい人にとっては、この町で一番訪問頻度が高いエリアになります。
芽生(めむ)エリア──幌尻岳のふもとの自然郷
町の北側、幌尻岳のふもとに位置する自然豊かな地区。日本一の野生すずらん群生地があるのはここです。普段は静かな農村ですが、5月下旬から6月中旬のすずらん観賞会の期間はなまら(とても)多くの観光客で賑わいます。花や植物が好きな人、写真好きにおすすめのエリアです。
振内・貫気別エリア──山深い旧国鉄沿線の集落
町の西部、かつて国鉄富内線が走っていた振内駅周辺と、さらに山を分け入った貫気別地区。振内鉄道記念館では廃線の歴史が学べ、山あいの静かな集落の風景が広がります。鉄道遺構を訪ねたい人、人混みを離れて静かな北海道の田舎を歩きたい人に向いています。
二風谷ファミリーランド周辺エリア──宿泊・食・遊びの拠点
びらとり温泉ゆからとパークゴルフ場、キャンプ場、テニスコートがまとまった複合エリア。観光の拠点として泊まり、ここを起点にアイヌ文化エリアや義経神社へ車で動くのが効率的です。家族旅行や和牛グルメ目当ての旅人にしたっけ(それじゃあ)一番おすすめのエリアと言えます。
平取町の気候・季節の暮らし

平取町は北海道のなかでは比較的温暖で、降雪量も少ない地域に分類されます。平取町公式の移住情報ページでは「夏は冷涼、冬は温暖小雪で過ごしやすい」と紹介されており、内陸盆地特有の昼夜寒暖差はあるものの、道北・道東のような厳寒気候ではないんですよ。沙流川沿いの集落部分は風が抜けやすく、四季の表情がくっきり分かれます。
春──4月〜5月の暮らし
4月でも朝晩は氷点下まで下がる日があり、本格的な春は5月に入ってから。5月下旬には芽生地区で野生のすずらんが咲き始め、町全体が一気に華やぎます。トマト農家は3月から加温ハウスでの定植作業に入り、農繁期のスタート。雪解けの沙流川沿いを散歩すると、雪と新緑が同居する独特の景色が楽しめます。
夏──6月〜8月の暮らし
夏は冷涼で昼夜の寒暖差が大きく、トマトをはじめとした野菜が甘くなる気候。日中30℃近くまで上がる日もありますが、湿度は本州ほど高くなく、夜は窓を開けて寝られる涼しさになります。8月にはチプサンケ(舟下ろし儀礼)や義経神社例大祭などのイベントが続き、町中の人出が増える季節です。
秋──9月〜11月の暮らし
9月の食の祭典「びらとり和牛・トマトまつり」を境に、町は秋色へ。10月になると沙流川渓谷の紅葉が始まり、tenki.jpの紅葉名所ランキング道南エリアで上位常連になる景観が広がります。11月中旬以降は初雪が降り、暖房とスタッドレスタイヤの準備期間に入ります。
冬──12月〜3月の暮らし
冬は12月から3月まで雪が積もりますが、日本海側の豪雪地帯のような大量の降雪はありません。とはいえ朝晩はしばれる(厳しく冷え込む)日が続き、氷点下二桁になる朝もあります。除雪は日常の作業で、灯油やプロパンガスの暖房コストは本州より高めになる、と地元の方からよく聞きます。雪が落ち着いた朝は空気が澄み、星空がなまら(すごく)きれいに見えるんですよ。
平取町の移住・暮らし情報

平取町は人口4,370人、面積743.09km²の小さな町で、行政・商業の中心は本町エリアに集まっています。町営住宅・特定公共賃貸住宅・単身者住宅の3種類の公営住宅があるほか、町が分譲する移住定住宅地「レラの里」など、移住を後押しする制度も整っています。地に足のついた田舎暮らしを考える人にとっては、選択肢の多い町です。
通勤・通学
町内勤務の方が多く、JAびらとり、町役場、平取町国民健康保険病院、農業・畜産関連の事業所が主な勤務先になります。隣のむかわ町や苫小牧市まで車で1時間圏内のため、苫小牧方面に通勤する人も一定数います。鉄道は通っていないため、通勤は基本的にマイカー利用が中心です。
住宅環境
平取町は町営住宅・特定公共賃貸住宅・単身者住宅の3種類を整備しており、所得や家族構成に応じて選べます。さらに二風谷地区の分譲宅地「レラの里」では、150坪の宅地が50万円で提供される制度もあります(平取町公式サイトより)。空き家バンクや民間アパート情報も町公式サイトで一覧化されており、移住検討中の方は事前にチェックしやすい環境です。
買い物環境
本町エリアにAコープ平取店、スーパー、ホームセンター、ドラッグストアなどがまとまっており、日常の買い物はここで完結します。コンビニも町内に点在しています。大型ショッピングモールや家電量販店を利用したい場合は、車で1時間ほどの苫小牧市まで出るのが一般的です。
子育て・教育
町内には保育所(認定こども園)、小学校、中学校、高校(北海道平取高等学校)まで揃っており、町内完結で子育てが可能です。平取町は「子育て支援医療費還元事業」として、子どもの医療費自己負担分を町内取扱店で使える「平取町金券」で還元する独自制度も実施しており、子育て世代を後押しする仕組みが整っています。
医療環境
町の中核医療機関は平取町国民健康保険病院(本町67-1)。内科・外科・循環器内科を中心に、CTスキャン装置、X線装置、内視鏡カメラ、超音波診断装置、PCR検査用の遺伝子解析装置などを備えており、町内で一通りの診療が受けられます。高度医療や専門医療が必要な場合は、苫小牧市内の総合病院まで車で1時間ほどで搬送可能です。
エリア別の暮らし視点
本町エリアは町役場・病院・スーパーが半径数百メートルに集まっており、車を持たない高齢者でも生活しやすい場所です。二風谷エリアは「レラの里」分譲地もあり、自然と文化に囲まれて暮らしたい人向け。芽生・振内・貫気別エリアは農業や山の暮らしを志向する人に向いており、家賃や宅地価格はさらに抑えられる傾向にあります。
平取町へのアクセス

平取町は鉄道が通っておらず、アクセスの主役は車と路線バスです。札幌・新千歳空港・苫小牧の3拠点から日高自動車道経由でアプローチするのが基本ルート。2021年4月に日高本線の鵡川〜様似間が廃止されたため、現在のJR最寄り駅は鵡川駅になります。
車でのアクセス
札幌から:道央自動車道〜日高自動車道経由で日高富川ICまで、平取町公式サイトの記載で約1時間50分。
新千歳空港から:日高自動車道経由で日高富川ICまで約1時間、ICから町中心部まで約15分。
苫小牧から:自動車で約1時間。
日高富川ICで降りた後は国道237号を北上して町中心部へ向かいます。
鉄道+バスでのアクセス
札幌駅から:千歳線で苫小牧駅(約1時間20分)→日高本線で鵡川駅まで乗車後、富川駅前まで代行バス→道南バスで平取方面へ。
新千歳空港から:南千歳駅で千歳線に乗り換え苫小牧駅(約30分)→上記と同ルート。
びらとり温泉ゆからまでの場合:富川駅前から道南バス「びらとり温泉前」停下車で約25分(びらとり温泉公式サイトより)。
鉄道+バスの乗り継ぎは時間がかかるため、観光・移住下見ともに車の利用が現実的です。
高速バスでのアクセス
札幌駅前から道南バスの「高速ひだか号」に乗車すると、平取町中心部まで約1時間50分(平取町公式サイト・道南バスの記載より)。「高速ペガサス号」も札幌〜富川区間で運行されており、平取方面へは富川大町または富川南で道南バスに乗り換えます。事前予約は方面によって異なるため、運行会社の道南バスに確認するのが確実です。
飛行機でのアクセス
東京・大阪方面からは新千歳空港まで航空便を利用。
東京(羽田)→新千歳空港 約1時間35分
大阪(伊丹・関空)→新千歳空港 約1時間55分
新千歳空港からはレンタカーが最も効率的で、約1時間で平取町中心部に到着します。
町内移動の現実的アドバイス
町内は東西に細長く、本町から二風谷地区まで車で約10〜15分、芽生すずらん群生地まで町中心部から車で約40分、振内・貫気別エリアまではさらに山道を走ります。路線バスは本数が限られているため、町内観光・移住下見ともにレンタカーかマイカーがほぼ必須です。冬期はスタッドレスタイヤが必要なので、レンタカーは冬装備を必ず確認してください。
【地元住民に直撃!】平取町の本当の魅力を聞いてみた

Q1.あなたのご職業を教えてください。
俺は二風谷でイタを彫ってる職人だわ。カツラとかクルミの木に、モレウノカっていう渦巻きの文様を彫り込んでいくのが本職。
親父の代から手伝ってたから、もう30年近くこの仕事やってるかな。2013年に伝統的工芸品に指定されてからは、観光のお客さんとか海外の人にも見てもらえる機会が増えて、なまら張り合いあるよ。
Q2.この街に来て絶対行くべき場所はどこだと思いますか?
まずは二風谷コタンと二風谷アイヌ文化博物館だね。平取町観光って言ったらここ外しちゃダメだわ。チセの茅葺き屋根の匂いと、館内の薄暗い照明の中に並ぶ民具の存在感は、写真じゃ伝わらないんだわ。
あと地元民じゃないと行かないけど、沙流川の平取町水源あたりの河原ね。夕方になるとサケが遡上する時期は水しぶきの音だけが響いて、なまら静かでいいんだわ。義経神社の裏参道の坂もおすすめのスポット。
Q3.この市町村でお土産を買うとしたらなんですか?
定番ならニシパの恋人のトマトジュースだね。平取町の有名なものといったらコレ。JAびらとりが作ってるやつで、北海道一の出荷量って言われてるトマトをそのまま搾ってるから、味が濃いんだわ。
地元民として推したいのは、二風谷工芸館で売ってるイタの小皿。盆だと値が張るけど、小皿なら数千円から手に入る。あとはびらとり和牛のソーセージも町内のスーパーに置いてあって、知る人ぞ知る一品だわ。
Q4.外から人が来たときにまず連れていく店はどこですか?
びらとり温泉ゆからの中のレストランだね。びらとり和牛のすき焼きをまず食わせるんだわ。A5ランクが多いから、初めての人はだいたい黙って食う。
もう少しカジュアルに行きたい時は、二風谷の和牛直売店「くろべこ」で焼肉。ここは温泉の中じゃなくて街道沿いの店なんだけど、地元の常連も通ってる場所だから、観光地っぽくない平取町の空気感が味わえるんだわ。
Q5.この市町村はどんな気質だと思いますか?
正直、控えめで人見知り気味の人が多いと思うわ。アイヌ文化を守ってきた土地柄か、よその人を急に懐に入れたりはしないんだけど、いっぺん仲良くなったらなまら長い付き合いになる。
あと多文化共生って言葉が肌に染みついてる土地でもあるんだわ。和人とアイヌが何百年も並んで暮らしてきたから、違いに対する免疫があるっていうかね。だから移住者にも、距離は取るけど排除はしない感じ。
Q6.昔に比べて、街の雰囲気や活気はどう変わったと感じますか?
まあ、そうだね人は減ってるわ。俺が子どもの頃は5,000人以上いたけど、今は4,370人だからね。商店街の店もだいぶ減ったし、振内のほうの集落はもっと深刻。
ただ、よいこともある。二風谷イタとアットゥㇱが伝統的工芸品に指定されてから、海外からも視察が来るようになったし、移住希望者も少しずつ増えてる。平取町長を含めて行政も観光と移住には力入れてるから、底を打った感じはあるかな。
Q7.これから新しくできる施設や、期待している活動などはありますか?
大きな箱物が新しくできるって話は聞かないけど、二風谷コタン周辺の整備は地味に進んでる。平取町民センターでもアイヌ文化の講座とかワークショップが定期的に開かれてて、若い世代に技術を渡す動きが続いてるんだわ。
個人的に期待してるのは、芽生のすずらん観賞会の時期に合わせた工芸品販売の連携かな。観光客が平取町運動公園とかすずらん群生地から二風谷まで自然に流れてくる動線ができたら、なまらいいなって思ってる。

