羽幌町(はぼろちょう)は、北海道北部・日本海沿岸に位置する留萌振興局管内の町です。札幌から北へ約180km、沖合には天売島と焼尻島の2つの離島を抱えます。
羽幌町の魅力を5つに凝縮すると、こうなります:
- ✅ 甘えびの漁獲量・日本一──毎年6月には「はぼろ甘えびまつり」が開催される
- ✅ 天売島はウミガラス(オロロン鳥)の国内唯一の繁殖地──8種約100万羽の海鳥の聖地
- ✅ 焼尻島のサフォーク──「プレ・サレ焼尻」と呼ばれ一流フレンチ料理人が認めるブランド羊
- ✅ 日本最北のローズガーデン「はぼろバラ園」──約300種2,000株が咲く
- ✅ かつての国内屈指の炭鉱街「羽幌炭鉱」──最盛期の出炭量は年100万トン超
「海の幸を本場で味わいたい人」「海鳥や離島の自然に惹かれる人」「廃墟・近代産業遺産が好きな人」に特におすすめの町。本記事では、観光・特産・歴史から地元の暮らしまで、地元目線でじっくり紹介します。
| 人口 | 5,686 人 ※2026年4月30日時点(住民基本台帳) |
|---|---|
| 面積 | 472.65 km² |
| 人口密度 | 12 人/km² |
羽幌町は、東を苫前町・幌加内町、北を初山別村・遠別町に接し、西は日本海に面しています。沖合の天売島・焼尻島も町域に含まれ、本土と島を結ぶフェリーが羽幌港から出ています。
札幌からは国道231号・232号(日本海オロロンライン)経由で北へ約180km、車で約3時間半。鉄道はかつての国鉄羽幌線が1987年に廃止されており、現在は沿岸バスがアクセスを担います。
甘えびと海鳥と炭鉱跡──海・島・山の3つの顔を1つの町で楽しめる場所です。ひとつずつ見ていきましょう。
羽幌町の推しポイント

羽幌町を語るうえで欠かせないのは、なんといっても「海」です。甘えびの漁獲量は日本一、沖合の天売島は国内唯一のウミガラス繁殖地、焼尻島では世界でも珍しいサフォーク種の羊が放牧されています。さらに陸側に目を向ければ、日本最北のバラ園、かつて道内屈指の出炭量を誇った炭鉱遺構と、見どころが本当に幅広い町なんですよ。
甘えびの漁獲量・日本一
羽幌町沖の日本海は、甘えびにとって絶好の漁場。水揚げ量は日本一で、町ぐるみで「えびの町」をPRしています。毎年6月の「はぼろ甘えびまつり」には道内外から大勢が押し寄せ、浜値の甘えびが飛ぶように売れていきます。
天売島──オロロン鳥(ウミガラス)の聖地
羽幌港からフェリーで約1時間半の天売島は、ウミガラス(オロロン鳥)の国内唯一の繁殖地。ウトウ、ケイマフリ、ヒメウなど8種類・約100万羽の海鳥が断崖に集まります。世界最大級のウトウ繁殖地としても知られ、夕方の帰巣シーンは圧巻です。
焼尻島のサフォーク──「プレ・サレ焼尻」
もう一つの離島・焼尻島では、潮風とミネラル豊富な牧草で育つサフォーク種の羊が放牧されています。フランスの「プレ・サレ」になぞらえて「プレ・サレ焼尻」と呼ばれ、洞爺湖サミットの食材にも採用された、一流フレンチ御用達のブランド羊です。
はぼろバラ園──日本最北のローズガーデン
道の駅「ほっと♡はぼろ」に隣接するはぼろバラ園は、約300種・2,000株のバラが咲く日本最北のローズガーデン。見頃は7月上旬〜中旬で、北方系の珍しい品種が顔をそろえます。
羽幌炭鉱の遺構──消えた「ヤマ」の記憶
町の山手には、1970年に閉山した羽幌炭鉱の遺構が静かに残っています。最盛期には年間出炭量100万トンを超え、3万人以上が暮らした「ヤマの町」。今はホッパー、立坑、住宅跡が森に呑まれつつあり、近代産業遺産として注目されています。
羽幌町の歴史

羽幌町の歴史は、海と山という2つの軸で語られます。沿岸ではニシン漁を起点とする漁業が、内陸では大正期に発見された羽幌炭鉱が、それぞれ町の姿を形作ってきました。炭鉱閉山後は漁業・農業・観光を柱に再出発し、今に至ります。
明治の入植と村の独立
本格的な開拓は明治中期以降に始まりました。1897年(明治30年)に苫前村から独立して羽幌村戸長役場が設置され、1901年には初山別村が羽幌から分かれて独立します。1921年(大正10年)に町制を施行し、現在の羽幌町となりました。
近代──炭鉱街として国内屈指の繁栄
大正期に羽幌炭鉱の鉱脈が知られ、1935年(昭和10年)に操業が始まると、町は石炭中心のモノカルチャー都市として急成長しました。最盛期の昭和43年度には出炭量113.3万トンを記録し、「中小炭鉱の雄」と称されます。1965年(昭和40年)の国勢調査では人口30,266人を数え、道内有数の炭鉱街として栄えました。
現代──炭鉱閉山と「人口水増し事件」
エネルギー革命のあおりを受け、羽幌炭鉱は1970年(昭和45年)11月に閉山。翌1971年には、市制施行を狙って前年の国勢調査で約5,900人もの人口水増しが行われていたことが発覚し、町長を含む83人が統計法違反などで書類送検される事件となりました。1955年に天売村を、1959年に焼尻村を編入したことで現在の町域が確定し、その後は離島と海を活かした観光・水産の町へと舵を切っています。
羽幌町の文化・風習

方言と話し方の特徴
羽幌で暮らす人たちが話すのは、いわゆる北海道弁。漁師町らしくテンポは速めですが、相手との距離はぐっと近いんですよね。お土産を渡して「ありがとう」と言うと、必ずと言っていいほどなんもなんも(どういたしまして・気にしないで)と返ってきます。会話の締めにはしたっけね(じゃあね・またね)。最初は戸惑うかもしれませんが、覚えてしまえば妙に心地よい言葉です。
富山県・石川県とのつながり
羽幌には、富山県の旧平村(現・南砺市)や石川県内灘町から移住した人々が伝えた獅子舞が今も残っています。「羽幌越中赤坂奴舞」「羽幌加賀獅子舞」「平越中獅子舞」は、いずれも北陸から海を渡って来た開拓者たちの故郷の記憶。神社の祭礼で奉納されるたびに、町の成り立ちが思い出される瞬間です。
離島と本土を行き来する暮らし
天売島と焼尻島は羽幌町の一部。両島の住民にとって、羽幌沿海フェリーは生活路線そのものです。冬は時化で欠航することもあり、買い物・通院・通学のリズムが海の機嫌に左右されます。本土側の人にとっても「島から来た」「島へ行く」は日常の言葉。なまら(とても)天気が悪い日は、港で「今日は出ないっしょ」とのんびり構える──そんな海と一緒に生きる感覚があります。
四季と暮らし
夏は対馬海流の影響で比較的過ごしやすく、日本海に沈む夕日が町じゅうを赤く染めます。一方で冬は特別豪雪地帯に指定されるほどの雪深さ。1月の平均最高気温はマイナス1〜2度台で、海風と雪に閉ざされる季節が長く続きます。だからこそ、春のバラ園、夏の海鳥、秋の甘えび、冬の温泉と、季節ごとの楽しみがくっきりしているんですよ。
羽幌町の特産品・食

甘えび──漁獲量日本一の主役
羽幌の食といえば、まずはコレ。漁獲量日本一の甘えびは、とろりとした甘みと、噛むとぷりっと弾ける身が特徴で、生で食べるのが間違いなく一番です。旬は春から秋、特に6月の「はぼろ甘えびまつり」シーズンは、水揚げされたばかりの個体がそのまま市場・食堂・道の駅に並びます。漁師さんが営む「甘えびファクトリー蝦名漁業部」では、丼にびっしり盛られた甘えびをなまら(すごく)贅沢に味わえます。
焼尻サフォーク(プレ・サレ焼尻)
焼尻島で放牧されているサフォーク種の羊肉は、ミネラルを含んだ潮風と牧草で育つため、フランス・モンサンミッシェル周辺の「プレ・サレ」になぞらえて「プレ・サレ焼尻」と呼ばれます。クセが少なく、噛むほどに上品な甘みが広がる希少なラム肉。例年8月上旬の「焼尻めん羊まつり」では、サフォークのジンギスカンが手頃に食べられる貴重な機会になっています。
羽幌えびタコ餃子
地元食材の甘えびとタコを皮の中に包んだご当地餃子。日本経済新聞でも取り上げられた羽幌のご当地グルメで、サクッとした食感のあとに魚介の風味がふわっと広がります。道の駅やお土産店で購入でき、家で焼くだけで漁師町の味が再現できるんですよね。
オロロン米・グリーンアスパラ・長いも
意外と知られていませんが、羽幌は農業の町でもあります。日本海オロロンラインにちなんで名付けられたオロロン米のほか、グリーンアスパラ、長いもなど、海と山に挟まれた寒暖差のある気候が美味しさを引き出します。海産物の影に隠れがちですが、地元の食卓を支える大事な存在です。
金時羊羹──炭鉱街が生んだ甘味
かつて炭鉱街として栄えた頃から作られている地元銘菓が、金時羊羹。あんこと寒天のシンプルな羊羹で、炭鉱マンが家族へのお土産に買って帰った懐かしい味として、今も町の菓子文化に残っています。したっけ(それじゃあ)、お茶うけにひとつどうぞ。
羽幌町の観光スポット

羽幌町の観光は、大きく分けると「本土の海沿い」と「離島(天売島・焼尻島)」の2軸になります。本土側は日本海オロロンライン沿いに道の駅・温泉・バラ園が集まり、離島では海鳥観察と希少なサフォーク羊との出会いが待っています。さらに山側には炭鉱遺構が眠り、1つの町とは思えないほど顔の幅が広いんですよ。
海と夕日と温泉が一度に楽しめるスポット
- 道の駅ほっと♡はぼろ – 国道232号沿い、羽幌観光のハブ。豪華客船をイメージした「はぼろ温泉サンセットプラザ」を中心に、天然温泉大浴場、特産品売店、レストランが集結しています。7階展望ラウンジからは天売島・焼尻島と日本海が一望でき、夕方に立ち寄ると沈む夕日でフロアが赤く染まります。
- はぼろバラ園 – 道の駅に隣接する日本最北のローズガーデン。北方系を中心に約300種・2,000株のバラが咲き、最盛期は7月上旬〜中旬。芝生に寝転んで上品な香りに包まれる時間はなまら(とても)贅沢で、入園無料というのも嬉しいところ。
- はぼろサンセットビーチ – 名前のとおり、日本海に沈む夕日が見事な海水浴場。夏は海水浴・キャンプ・海釣りで賑わい、夕方には水平線に沈むオレンジが空も砂浜も染め上げます。
- 北海道海鳥センター – 環境省が設置した日本で唯一の海鳥専門展示施設。天売島に渡る前にここで予習しておくと、現地で「あ、あれがケイマフリだ」と分かる楽しさが何倍にもなります。入館無料。
離島で出会う海鳥と幻の羊
- 赤岩展望台(天売島) – ウミガラス(オロロン鳥)の繁殖地・赤岩を望む展望台。夕暮れ時、ウトウが一斉に海から戻ってくる「ウトウの帰巣」は世界最大級のスケールで、空が黒くなるほどの群れが頭上をかすめていきます。観察ベストシーズンは5〜7月。
- 観音岬展望台(天売島) – 島の南端にある、夕日と断崖を一望できる絶景スポット。荒々しい玄武岩の崖と、その下に広がる青い海のコントラストが圧巻です。
- 焼尻めん羊牧場(焼尻島) – ブランド羊「プレ・サレ焼尻」のふるさと。広々とした牧草地で約500頭のサフォーク種が放牧されており、海を背景に羊がのんびり草を食む風景は、まるでスコットランドのよう。したっけ(じゃあ)羊さんに会いに行ってみてください。
- オンコの荘・オンコ街道(焼尻島) – 島の3分の1を覆う原生林に、強い潮風で這うように育ったオンコ(イチイ)の古木が広がります。樹齢数百年級の独特なフォルムは天然記念物級。森の小径を歩くと、海鳥のさえずりだけが聞こえる別世界です。
近代産業遺産と歴史を訪ねるスポット
- 羽幌炭鉱跡(築別炭鉱) – 1970年に閉山した羽幌炭鉱の遺構群。選炭工場、運搬立坑、炭鉱住宅、太陽小学校跡などが森の中に残り、最盛期に1万人が暮らした「ヤマ」の記憶を伝えています。廃墟ファン・近代産業遺産好きには見逃せないスポット。冬期は通行不可なので訪問は雪のない時期に。
- 羽幌町郷土資料館 – 炭鉱関連の資料や、開拓期からの生活道具を展示。町の歴史を一気に押さえられる場所で、炭鉱跡を訪ねる前に立ち寄ると現地での見方がぐっと変わります。
- 焼尻郷土館(旧小納家住宅) – 明治期にニシン漁で栄えた商家の建物をそのまま活用した資料館。鰊御殿の趣が残る建物自体が見どころで、北陸からの移住者が伝えた獅子舞の資料なども展示されています。
羽幌町の観光ルート

羽幌町の旅は「離島に渡るか・本土だけで回すか」で組み立てが大きく変わります。離島へ行くなら最低1泊、本土だけなら半日〜1日でも甘えびと温泉と夕日をしっかり堪能できますよ。広域では日本海オロロンラインを軸に、留萌〜稚内方面と組み合わせるのが王道です。
【車・1日】本土満喫ルート:甘えびと夕日と炭鉱跡
9:00 道の駅ほっと♡はぼろ → 9:30 北海道海鳥センター → 10:30 羽幌炭鉱跡(築別炭鉱)→ 12:30 甘えびランチ(市街地)→ 14:30 はぼろバラ園 → 16:30 はぼろサンセットビーチ → 18:00 はぼろ温泉サンセットプラザで入浴・夕食
①道の駅ほっと♡はぼろ(30分)
→ まずは旅の拠点で観光情報をゲット。レストラン「二島物語」のメニューも要チェック。
②羽幌炭鉱跡(築別炭鉱)(90分)
→ 山側へ車で約30分。森に呑まれた選炭工場や立坑が静かに立ち並ぶ姿は、写真好きならたまらないはず。冬期は通行止めのため5〜10月推奨。
③甘えびランチ(60分)
→ 市街地の「甘えびファクトリー蝦名漁業部」や「おろろん食堂」で、漁師町ならではのなまら(すごく)新鮮な甘えび丼を。お昼すぐは混むので少し時間をずらすのがコツ。
④はぼろバラ園(90分)
→ 7月上旬〜中旬が最盛期。芝生スペースもあるので、お茶を片手にのんびりベンチで過ごすのもいいですよ。
⑤はぼろサンセットビーチ → サンセットプラザ(120分)
→ 夕日が沈む18時前後にビーチへ。海が金色に染まる時間を見届けたら、そのまま温泉へ。日本海を眺めながらの露天風呂で1日を締めます。
【車・半日】夕方からの「日本海オロロンライン」夕日ルート
14:00 苫前町(とままえ夕陽ヶ丘公園)→ 15:00 道の駅ほっと♡はぼろ → 16:00 北海道海鳥センター → 17:30 はぼろサンセットビーチで夕日鑑賞 → 19:00 はぼろ温泉サンセットプラザで夕食・入浴
①苫前町スタート(30分)
→ 隣町の風車群を背景に夕日への前哨戦。北海道らしい広い空が広がります。
②道の駅ほっと♡はぼろ・海鳥センター(90分)
→ お土産チェックと海鳥学習。展望ラウンジから天売島・焼尻島が見えるので、次回への旅心がくすぐられます。
③サンセットビーチで夕日(60分)
→ 日本海オロロンライン屈指の夕日スポット。水平線に何も遮るものがなく、太陽がそのまま海に沈んでいきます。
④温泉と夕食(120分)
→ サンセットプラザで甘えび丼や焼尻サフォーク料理(提供時期はシーズンによる)を味わってフィナーレ。
【車+フェリー・2日】広域ルート:天売島・焼尻島へ離島の旅
【1日目】8:30 羽幌港発フェリー「おろろん2」→ 9:30 焼尻島着 → レンタサイクルで焼尻めん羊牧場・オンコ街道を周遊 → 11:10 焼尻島発 → 11:25 天売島着 → 民宿チェックイン → 赤岩・観音岬・海鳥観察舎を巡る → 夕方〜夜:ウトウの帰巣観察
【2日目】9:00 天売島内を再散策 → 11:00 天売港発フェリー → 12:25頃 羽幌港着 → 道の駅ほっと♡はぼろで昼食・お土産 → 帰路
①焼尻島(120分)
→ 周囲約12kmの小さな島は自転車一周がちょうどいいサイズ。めん羊牧場では潮風と羊の鳴き声に包まれて、フランスの田園地帯に迷い込んだような気分になります。
②天売島・赤岩展望台(90分)
→ ウミガラスの繁殖地。双眼鏡があるとなまら(とても)楽しめます。観察期は5〜7月がベスト。
③天売島・ウトウの帰巣(夕方〜夜)
→ 海から戻ってくるウトウの大群が空を覆う光景は、世界でも天売島でしか体験できないレベル。日没ごろ、千鳥ヶ浦周辺がベストポジションです。
④2日目の島内再散策(120分)
→ 朝の島は驚くほど静か。フェリー出航までに千鳥ヶ浦園地や黒崎海岸を歩けば、海鳥の鳴き声と波音だけのぜいたくな時間が過ごせます。
羽幌町の年間イベント

羽幌町のイベントは、町の名産がそのまま主役になるグルメ系が中心。初夏の甘えび、夏の羊肉、冬のスキー場と、季節ごとに「これを食べに(滑りに)羽幌に行く理由」が用意されています。離島開催のイベントもあり、フェリーの時刻と組み合わせて計画するのがポイントですよ。
初夏:はぼろ甘エビまつり(6月)
毎年6月、道の駅ほっと♡はぼろを会場に開催される町最大のグルメイベント。漁獲量日本一の羽幌町の甘えびが浜値で並び、朝9時の販売開始前から長蛇の列ができます。早い人は深夜2時から並ぶというから、その熱気は本物。会場には甘えびを使ったラーメン・餃子・スープカレーなどの限定メニューを出す屋台が並び、海の香りと焼ける醤油の匂いが入り混じります。
夏:焼尻めん羊まつり(8月)
例年8月上旬、焼尻港の特設会場で開催されるBBQ型グルメイベント。希少な焼尻産サフォーク肉と地元の海産物を、自分で焼いて食べられる気軽さが魅力です。夜には港の上に打ち上げ花火が広がり、日本海と夜空が同時に光ります。フェリーで島に渡る非日常感とセットになった、夏の特別な一夜なんですよ。
夏:羽幌神社祭(7月)
例年7月中旬、羽幌神社の例大祭として開催。神輿と獅子舞の練り合いは大迫力で、町の中心部が祭り一色に染まります。北陸からの移住者が伝えた獅子舞文化が今も色濃く残る、地元の人にとって1年で一番大切な日のひとつ。
冬:びゅーまつり(1〜2月)
羽幌町民スキー場「びゅー」で例年冬季に開催される雪のお祭り。当日はリフトが無料開放され、ファミリーやスキー仲間で賑わいます。日本海を見下ろしながらシュプールを描けるロケーションは、道内でも珍しい設定。なんもなんも(気にしないで)の精神で、地元の人と一緒に粉雪を楽しめる温かい雰囲気です。
通年:天売島ウミガラス・ウトウ観察シーズン(4〜8月)
厳密にはイベントではありませんが、毎年4月から8月にかけて天売島で繰り広げられる海鳥の繁殖シーズンは、訪れる時期そのものが「自然のフェスティバル」になります。とくに5〜7月のウミガラス観察期と、夕方のウトウ帰巣シーンは、バードウォッチャーが世界中から集まる羽幌町のハイライト。
羽幌町のエリア別の顔

羽幌町は、大きく分けて「本土の市街地エリア」「本土の山側(築別・上羽幌)エリア」「天売島エリア」「焼尻島エリア」の4つの顔を持ちます。本土と離島で雰囲気がまるで違うため、旅の目的に合わせてどのエリアに長く滞在するかを決めると、満足度がぐっと変わってきますよ。
本土・市街地エリア──港町の生活と観光の中心
羽幌港・羽幌町役場・道の駅・温泉・バラ園・北海道海鳥センターが集中する、町のメインエリア。国道232号(日本海オロロンライン)沿いに観光施設がきれいに並んでいるため、車を停めれば徒歩で温泉とバラ園と海鳥学習をまとめて楽しめます。グルメも甘えびの専門店や食堂が密集していて、観光初心者にも一番おすすめのエリアです。
本土・築別/上羽幌エリア──炭鉱の記憶が残る山あいの集落
市街地から東へ車で30分ほど内陸に入ると、かつて1万人以上が暮らした炭鉱街の跡が広がります。今は森に呑まれつつある選炭工場や立坑、空き家の集合住宅が点在し、訪れる人を一気に昭和の繁栄時代へ連れていきます。廃墟ファン・写真好き・近代産業遺産が気になる人に向いた、静かで重厚なエリアです。冬期は通行止めになるため訪問は5〜10月がおすすめ。
天売島エリア──海鳥と猫と人が共生する島
羽幌港からフェリーで約1時間半、高速船なら約1時間。周囲約12km、人口約300人の小さな島に、絶滅危惧種のウミガラスをはじめ8種約100万羽の海鳥が集まります。島の西側はそそり立つ断崖、東側は穏やかな港集落と、ぐるりと一周するだけでもまったく違う表情が楽しめます。「自然と本気で向き合いたい人」「鳥が好きな人」のためのエリアです。
焼尻島エリア──羊と原生林の癒しの島
羽幌港からフェリーで約1時間。天売島より少し小さい島で、3分の1が原生林に覆われています。中央部の牧草地ではサフォーク種の羊が放牧され、海を背景にした牧歌的な風景が広がります。したっけ(じゃあ)天売島が「海鳥の島」なら、こちらは「羊と森の島」。のんびり散策・サイクリング・ブランド羊肉を楽しみたい人に向いています。
羽幌町の気候・季節の暮らし

気象庁の平年値(1991〜2020年)によると、羽幌町の年平均気温は8.0℃、年降水量は1,337.7mm、年降雪量は535cmです。対馬海流の影響で沿岸部は比較的温暖ですが、冬は西から日本海の湿った季節風が直撃するため、雪の量はかなり多い特別豪雪地帯。一年を通して風の強い日が多く、海と空気の存在感が暮らしの中心にあります。
夏──6月〜8月の暮らし
夏の平均気温は7月で19.6℃、8月で20.9℃と、本州の真夏に比べればぐっと涼しい気候。日中の最高気温は7月で23.1℃、8月で24.7℃が平年値ですので、エアコンなしで過ごせる日が多くなります。
湿度は7〜8月で80%超になることもありますが、海風が常に吹いているので、家の窓を開けるだけでスッと風が抜けていくんですよ。夕方になると日本海に大きな夕日が落ちて、町全体がオレンジに染まる時間が毎日のように訪れます。
秋──9月〜11月の暮らし
9月の平均気温は17.4℃、10月は11.2℃、11月は4.4℃と、北海道らしいスピードで気温が下がっていきます。11月にはもう降雪が始まり、月の降雪量は平年44cmです。
この時期、町は冬支度に入ります。タイヤ交換、窓に断熱フィルム、家の周りに防雪柵。秋の甘えびと新米が並ぶ食卓が、冬の長さを乗り切るための燃料になっていきます。
冬──12月〜3月の暮らし
1月の平均気温はマイナス4.3℃、平均最低気温はマイナス8.3℃。降雪量は1月だけで平年159cm、12月154cm、2月110cmと、3カ月で4mを超える雪が降ります。冬の主な風向きは南東・西北西で、海からの吹雪が容赦なく町を覆います。
朝起きると車が雪に埋もれているのは日常風景。「今日はしばれる(厳しく冷え込む)ね〜」が朝の合言葉になります。除雪・暖房・スタッドレスタイヤは生活必需。一方でスキー場「びゅー」が町内にあり、日本海を見下ろしながらの滑走は道内でも珍しい体験です。
春──4月〜5月の暮らし
4月の平均気温は5.5℃。雪が残る中でも徐々に日中の日差しが強くなり、5月には平均11.2℃まで上がります。5月の最高気温平年値は15.4℃で、ようやくコートを脱ぐ季節になります。
春は海鳥の繁殖期がスタートする時期。4月から天売島ではウミガラスやウトウが島に戻り、町全体が「観光シーズンが始まるぞ」というワクワクした空気に包まれます。
羽幌町の移住・暮らし情報

羽幌町は、留萌振興局管内では留萌市に次ぐ2番目の人口を持つ町。生活の中心となる商業エリア・行政・病院がコンパクトにまとまっており、車があれば日常の用事はほぼ町内で完結します。海も山も離島も身近にある暮らしはなまら(とても)魅力的ですが、雪と風と「鉄道がない」という現実とどう付き合うかが移住の鍵になります。
通勤・通学
町内には鉄道が走っていないため、通勤・通学はほぼ自家用車か沿岸バスの路線バスが基本。町内では羽幌町役場、北海道立羽幌病院、JAるもい本所、北るもい漁協、漁業関連企業などが主要な勤務先になります。隣の苫前町や留萌市まで通う人もおり、留萌市までは車で約45分が目安です。
住宅環境
住宅は市街地(南町・北町・栄町など)に集合住宅が点在し、町営住宅(栄町夕陽ケ丘団地、寿町団地、北町団地ほか)も多数あります。民間賃貸は1K〜2LDKが中心で、家賃水準は札幌に比べると大幅に低いと考えられます。具体的な家賃は変動するため、町公式の「町内民間賃貸住宅情報」や不動産サイトでの確認がおすすめです。
移住者向けには羽幌町空き家バンク制度があり、町が町内の空き家情報を公開しています。一戸建てを安く手に入れたいUJIターン希望者には現実的な選択肢になります。
買い物環境
市街地にはスーパー、ホームセンター、ドラッグストア、コンビニが揃っていて、日常の買い物に困ることはありません。漁港のすぐ近くには「甘えびファクトリー蝦名漁業部」をはじめとする海産物の直売所もあり、新鮮な魚介を浜値で買えるのは漁師町ならではの特権。大型のショッピングモールを使いたい時は、車で留萌市または旭川市まで遠征するイメージです。
子育て・教育
本土側には羽幌小学校・羽幌中学校、離島には天売小・中学校、焼尻小・中学校があります。離島の学校は児童・生徒数が少ないため、少人数できめ細やかな教育が受けられる環境です。高校は町内にはなく、羽幌町から通学する場合は留萌市または旭川市の高校に通うケースが多いと考えられます。
幼児教育は羽幌藤幼稚園や認定こども園・まきなどが整っており、医療・保育・教育が市街地に集まっているので、子育て世帯の動線は短く済みます。
医療環境
町の医療の中核は北海道立羽幌病院。留萌北部地域の中核病院として、内科・外科・整形外科・小児科などを備えています。離島には北海道立天売診療所と北海道立焼尻診療所があり、島民の日常的な医療をカバー。緊急時や高度医療は留萌・旭川・札幌の病院に搬送される体制です。
エリア別の暮らし視点
本土の市街地に住むなら、買い物・通院・温泉・道の駅までの動線が徒歩〜車5分圏に収まり、雪国の冬でも比較的暮らしやすいエリア。築別・上羽幌方面は人口が少なく、自然に囲まれた静かな生活が好きな人向けです。
離島の天売島・焼尻島は、人口数百人規模の本格的な「離島暮らし」。フェリーは1日2〜3便、冬は時化で欠航もあるため、買い物や通院は計画的に。逆に言えば、海鳥や羊や森と毎日向き合える、本土ではできない暮らしが待っています。
羽幌町へのアクセス

羽幌町へのアクセスは、札幌から車で約3時間、稚内・旭川から約2時間が目安。鉄道は通っていないため、主な手段は自家用車か、町に本社を置く沿岸バスの高速バスになります。離島の天売島・焼尻島へ行く場合は、羽幌港からフェリーまたは高速船に乗り換えます。
車でのアクセス
札幌からは道央自動車道〜深川留萌自動車道で留萌ICへ向かい、留萌ICから国道239号・国道232号(日本海オロロンライン)経由で約3時間。旭川からは国道12号〜道道57号〜国道233号〜深川留萌自動車道経由で約2時間40分。稚内からは国道40号・国道232号経由で約2時間30分です。
冬期は吹雪・地吹雪・路面凍結が頻発するため、スタッドレスタイヤと余裕を持ったスケジュールが必須。ホワイトアウトに備えて、最新の道路情報を北海道開発局のサイトでチェックしてから出発するのが安心です。
鉄道+バスでのアクセス
札幌駅から直通の高速バス「特急はぼろ号」(沿岸バス運行)が出ています。札幌駅前から沿岸バス本社ターミナル(羽幌)までの所要時間は約3時間10分。鉄道で来る場合は、JR北海道で深川駅まで来てから沿岸バスに乗り継ぐルートが一般的ですが、所要時間・乗継回数を考えると札幌からは高速バス直行のほうがスムーズです。
旭川方面からは沿岸バスの「特急あさひかわ号」が運行されており、旭川と羽幌を結んでいます。
飛行機でのアクセス
最寄りの空港は新千歳空港・旭川空港・稚内空港。新千歳空港からは札幌駅まで快速エアポートで約40分、そこから特急はぼろ号で羽幌へ。旭川空港からは旭川駅経由で特急あさひかわ号、稚内空港からは国道40号〜232号で車2時間30分が現実的なルートです。
町内移動の現実的アドバイス
町内は車があれば動きやすいですが、市街地内なら徒歩でも回れる規模感です。市街地と離島フェリーターミナルの間は、フェリーの発着時刻に合わせて「羽幌港連絡バス」(沿岸バス運行)が走るので、車なしでも離島観光は可能。町内には沿岸バスのコミュニティバス「ほっと号」も運行しており、日常の足として地元の人に利用されています。
離島内は徒歩・レンタサイクル・観光タクシーが中心で、車両通行が制限されるエリアもあります。したっけ(じゃあ)、離島では1日のスケジュールに余裕を持って動くのがコツですよ。
【地元住民に直撃!】羽幌町の本当の魅力を聞いてみた

Q1.あなたのご職業を教えてください。
天売島で民宿をやってます。もう30年以上になるかねぇ。両親から引き継いだ宿で、今は私と娘で切り盛りしてるんです。
お客さんはオロロン鳥目当てのバードウォッチャーさんとか、写真家さん、フェリーで渡ってくる旅の方が中心。夏場はてんてこ舞いで、冬は冬で島の暮らしを支える時期。島で生まれて島で年をとる、そんな人生ですね。
Q2.羽幌町に来て絶対行くべき場所はどこだと思いますか?
やっぱり天売島の赤岩展望台と、夕方のウトウの帰巣ね。何十万羽が一斉に海から戻ってくる光景は、テレビで見るのとは全然違いますよ。空が黒くなるくらい。
あとは地元の人しか行かないけど、千鳥ヶ浦の岩場。観光バスは来ないし、海鳥の声と波の音だけ。本土側なら、はぼろバラ園の朝いちばん、人がいない時間帯の香りがいちばんいいんです。
Q3.羽幌町でお土産を買うとしたらなんですか?
定番はやっぱり甘えび関係。羽幌町の有名なものといえばこれだもの。道の駅で売ってる甘えびのお煎餅とか、えびタコ餃子は外しません。
地元の人がこっそり買うのは、焼尻のサフォークの加工品。あと天売島の漁師さんが作る一夜干し。市町村観光のパンフレットには載らないけど、本当に美味しいものは港の小さい店に並んでるんですよ。
Q4.外から人が来たときに、羽幌町でまず連れていく店はどこですか?
本土に渡る予定があるなら、迷わず蝦名漁業部さんの甘えび丼ね。漁師さんが直で出してくれる店だから、鮮度が違うんですわ。
島内でゆっくりしてもらうなら、うちの宿でとった魚をその日の夕食に出します。観光客向けの店も大事だけど、市町村のおすすめスポットって、結局そこで暮らす人の食卓がいちばんなんですよね。
Q5.羽幌町はどんな気質だと思いますか?
海で生きてきた町だから、表面はぶっきらぼうでも、中身はあったかい人が多いですよ。困ってる人がいれば「なんも気にすんな」って手を貸す。
島の人間は特にそうで、フェリーが時化で止まったら、誰かの家に当たり前のように泊めてもらえる。市町村民センターでの集まりも、お年寄りから子どもまで顔見知り。距離が近すぎて窮屈に感じる人もいるかもしれないけどね。
Q6.昔に比べて、羽幌町の雰囲気や活気はどう変わったと感じますか?
正直にいうと、寂しくなったよね。私が嫁いできた頃の天売島は子どもの声が島中に響いてたけど、今は学校の生徒も数えるほど。
本土も炭鉱が閉まってから人口は減り続けてるし、商店街もシャッターが目立つようになりました。ただ、ここ数年は移住で島に来てくれる若い人も少しずつ出てきて、市町村長さんも力を入れてくれてる。空き家バンクの動きもありがたいですね。
Q7.羽幌町のこれから新しくできる施設や、期待している活動などはありますか?
焼尻のめん羊牧場が一度閉鎖の話になって、また存続が決まった時は島中ほっとしました。プレ・サレ焼尻のブランドは羽幌町水源ともいえる宝だから、なんとか守ってほしい。
あとは天売島のウミガラス保護がやっと実を結んで、年々数が増えてること。市町村運動公園や体育館もリニューアルされて、子どもたちが集まれる場所が少しずつ整ってきてるのも嬉しいことです。

