長井市(ながいし)は、山形県南部・置賜地方の北部にある人口24,272人のまちです。最上川・置賜白川・置賜野川が合流する長井盆地の中心に位置し、山形新幹線赤湯駅から山形鉄道フラワー長井線で約30分。
長井市の魅力を5つに凝縮すると、こうなります:
- ✅ ながい黒獅子まつり──市内約40社の神社に千年伝わる「むかで獅子」が集結
- ✅ 競技用けん玉の生産量が日本一──全国生産量の約7割を1社が担う
- ✅ 最上川舟運の終着港──町並みが国の重要文化的景観に選定
- ✅ 長井あやめ公園──500種100万本、固有種「長井古種」が咲く3.3ha
- ✅ 馬肉ラーメンと行者菜──行者菜は生産量・作付面積とも全国一
「祭りの熱気を体で浴びたい人」「花の名所をゆっくり巡りたい人」「地方のものづくりに関心がある人」に向いたまちです。本記事では推しポイント・歴史・文化と方言・特産品まで、地元目線で紹介します。
| 人口 | 24,272 人 ※2026年6月1日時点(推計人口) |
|---|---|
| 面積 | 214.67 km² |
| 人口密度 | 113 人/km² |
地理的には、北は朝日町と白鷹町、東は南陽市、南は川西町と飯豊町、西は小国町に接しています(出典:飯豊町公式サイト)。市域の西半分は朝日山地の山岳地帯で、東部の長井盆地に市街地が広がります。
南北に国道287号、東西に新潟と宮城を結ぶ国道113号が走り、東北中央自動車道南陽高畠ICからは車で約20分です。降雪量が多く、特別豪雪地帯に指定されています。
「長井」という地名は「水の集まる所」に由来します(出典:長井市)。水の話から始めると、このまちのほとんどが説明できてしまうんですよ。順に見ていきましょう。
長井市の推しポイント

キャッチコピーは「水と緑と花のまち・ながい」。最上川舟運が運んできた商家の町並み、千年続く黒獅子舞、断崖に挟まれた秘境の渓谷、そして競技用けん玉の日本一。バラバラに見える要素が、実はすべて「水」と「ものづくり」でつながっています。ここからは5つに分けて掘り下げていきます。
推しポイント1:ながい黒獅子まつり──千年続く「むかで獅子」
漆黒の獅子頭に、蛇のように長い胴幕。多人数が入って舞う「むかで獅子」は、この地域特有の姿です。起源は平安時代、前九年の役の勝利を祝って源頼義が總宮神社の再建時に兵士へ舞わせたことに始まると伝えられています。
市内十数社の黒獅子が目抜き通りに集結するのが「ながい黒獅子まつり」。2026年は5月23日に第36回が開かれました(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。獅子頭の顔つきが神社ごとに違うので、見比べるのが地元流の楽しみ方です。
推しポイント2:競技用けん玉の生産量が日本一
長井市は競技用けん玉の生産量日本一で、全国生産量の約7割を占めています(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。昭和40年代にコマやダルマ落としなどの木地玩具を作り始めたのが出発点でした。
競技用は1mmの誤差も許されない世界。長井駅から徒歩2分の「けん玉ひろばSPIKe」では、有段者に教わりながら無料でけん玉を体験できます。市内には、けん玉の技を成功させるとサービスが受けられるお店も多数あるんですよ。
推しポイント3:最上川舟運が残した町場──国の重要文化的景観
江戸時代、日本海の酒田から最上川をさかのぼる舟運ルートの終着港が長井でした。宮村には米沢藩の船着場、小出村には商人衆の船着場が置かれ、置賜西部の物資が集まる商業地として栄えます。
この町並みは2018年に「最上川上流域における長井の町場景観」として国の重要文化的景観に選定されました(出典:文化遺産オンライン)。間口が狭く奥に深い短冊状の地割と、そこを流れる水路が今も生きています。
推しポイント4:三淵渓谷とながい百秋湖
市街地から車で約15分、2011年完成の長井ダムがつくる「ながい百秋湖」があります。その奥にあるのが三淵渓谷。川幅3〜5m、高さ50mを超える断崖絶壁が約250m続く、ボートでしか到達できない空間です。
渓谷の上には三淵神社があり、渓谷そのものが参道にあたるため、船で通り抜けることが「参拝」になります。ここに伝わる卯の花姫の龍神伝説が、黒獅子舞の源流だといわれています(出典:長井市公式サイト)。
推しポイント5:あやめ、白つつじ、そして久保ザクラ
長井あやめ公園は1910年開園、3.3haに約500種100万本が咲きます。ここにしかない固有品種「長井古種」があり、うち13種は市の天然記念物です。あやめまつりは例年6月中旬〜7月上旬に開かれます(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。
初夏は白つつじ公園へ。琉球種の白つつじ約3,000株が満開になると、まるで雪が積もったよう。2026年の白つつじまつりは5月10日〜31日に開催されました(出典:同上)。
そして春の主役が「伊佐沢の久保ザクラ」。樹齢約1200年と伝わるエドヒガンの古木で、1924年に国の天然記念物に指定されました。近年は樹勢の衰えが進み、地域ぐるみで回復に取り組んでいます。
長井市の歴史

長井市の歴史は、大きく3段階に分けて理解できます。第一に、大化の改新直後に置賜郡が置かれ、中世に大江氏が「長井荘」を支配した時代。第二に、元禄期に最上川舟運の河港として米沢藩の交易を担い、商都として花開いた時代。第三に、戦前の東芝誘致から企業城下町へ転じ、1954年に市となった現代です。舟運で蓄えた富が文化を育て、その土壌が今のものづくりにつながっています。
古代〜中世──置賜郡と「長井荘」
この地域に置賜郡が置かれたのは、大化の改新(645年)の直後とされます(出典:長井市)。
中世初期には、源頼朝の家臣・大江時広が地頭となり、長井姓を名のって長井荘を支配しました。その後、伊達氏、蒲生氏の統治を経て、1598年(慶長3年)以降は上杉氏(のちの米沢藩)の領地となります。東西の置賜郡をあわせた一帯が「長井荘」と呼ばれ、米沢周辺を上長井、現在の長井市周辺を下長井と呼び分けていました。
近世〜近代──舟運の終着港と製糸業
長井の町場は、宮村と小出村という2つの在郷町を起源とします。元禄年間(1688〜1704年)以降、宮は最上川舟運の河港として米沢藩の物資流通と商取引で栄えました。
藩の青苧蔵や上米蔵が置かれ、上方との文化交流も生まれます。大正時代には養蚕地を背景に製糸業が隆盛し、長井駅前には郡是製糸(現・グンゼ)が立地。長井紬が特産となりました。
現代──東芝誘致から市制施行、そして今
第二次世界大戦前、当時としては珍しく自治体を挙げて東京芝浦電気(現・東芝)の誘致に成功しました。戦後は東芝とマルコン電子(現・日本ケミコン)の企業城下町として、電気機器関連産業が発展します。
1954年(昭和29年)11月15日、長井町と長井村・西根村・平野村・伊佐沢村・豊田村の1町5村が合併し、長井市が誕生しました。県内9番目の市で、当時の人口は37,429人でした。
1980年代以降の円高で製造業の環境は厳しさを増しますが、長井工業高校・市・地元中小企業・商工会議所が連携した人材育成と雇用創出の取り組みが全国的に注目されました。2021年には長井駅と一体化した新市庁舎が業務を開始しています。
長井市の文化・風習

このまちで暮らすと、水の音がずっと近くにあります。商家の敷地を縦横に走る水路、朝の獅子舞の稽古の太鼓、台所の生ごみが堆肥になって畑へ帰っていく仕組み。祭りも食も、水と土のサイクルの上に乗っているんですよ。ここでは方言・食卓・人の気質の3つから、長井の日常をのぞいてみます。
方言と話し方の特徴
置賜弁の代表格がおしょうしな(ありがとう)。「恐縮です」を意味する「しょうしい」が変化したもので、感謝を謙遜と一緒に差し出すような言葉です。長井市周辺では語尾に「〜っし」が付くのも特徴で、やわらかく丁寧な響きになります。
市の観光ガイドサイトには、実際に使われている言い回しが並んでいます。ありがとさまっし(ありがとう)、ぶじょほなっし(ごめんなさい)、さすけねっし(大丈夫ですよ)、あがっとこえっし(どうぞ食べてください)、じょさねっし(お安い御用です)といった具合です(出典:長井まち歩きナビ(長井市))。
もうひとつ、ごんざい(いらしてください)は長井・西置賜地方の言葉で、市の移住サイトの入口にも使われています(出典:長井市公式サイト)。市街地の産直施設「おらんだ市場」のおらんだ(わたしたち)も長井の方言です。看板の言葉が読めるようになると、まちの見え方が変わります。
台所と畑がつながる「レインボープラン」
長井市では1997年(平成9年)から「レインボープラン(台所と農業をつなぐながい計画)」に取り組んでいます。中央地区の約5,000世帯から生ごみを回収し、堆肥にして市内の田畑へ戻す仕組みです(出典:長井市公式サイト)。
その堆肥で育った減農薬・減化学肥料の農産物は、市が認証して家庭や飲食店へ回ります。単なるごみ処理事業ではなく「循環」「ともに」「土はいのちのみなもと」を掲げた地域づくり事業。ごみ出しが農業の一部になっている生活、想像できますか。
食卓と季節の暮らし
年平均気温は11.0℃前後で、寒暖差の大きい内陸性の気候。冬日は年に115日ほどあり、1〜2月は日平均気温が氷点下に沈みます。だからこそ、冬の保存食が発達しました。
冬の手軽なおやつがみそ餅。もち米に味噌、くるみ、ごま、青豆、砂糖を練り込んだ切り餅で、香ばしく焼いて食べます。正月やお祝いには鯉の甘煮が必ずといっていいほど並びます。
春から夏は一転して花と祭りの季節です。5月に白つつじと黒獅子、6月から7月にあやめ。市民が祭りの企画・運営に加わる行事が多く、季節の行事が生活のリズムそのものになっています。
人の気質と地域のつながり
置賜地方は、19世紀の旅行家イザベラ・バードが実り豊かな大地と人情の温かさから「東洋のアルカディア」と呼んだ土地です(出典:山形県)。
黒獅子舞は約40社の神社で地区ごとに継承され、獅子を抑える「警護」役は体格と人望を兼ね備えた男が務めます。祭りが地区の人間関係そのものを保存装置にしているようなところがあって、移り住んだ人が最初に呼ばれるのも、たいてい獅子の稽古なんですよ。
長井市の特産品・食

「長井といえば」で市民が真っ先に挙げるのが、行者菜と馬肉です。片方は20年前に生まれた新しい野菜、もう片方は農耕馬の時代から続く食文化。新旧が並んでいるのが、このまちの食卓のおもしろいところ。順に紹介します。
特産品1:行者菜──全国一の産地
行者菜は、山菜の行者にんにくとニラを掛け合わせて開発された野菜です。長井市は全国に先駆けて栽培に取り組んだ産地で(出典:農畜産業振興機構)、作付面積・生産量・生産者数のいずれも全国一を誇ります(出典:長井市観光ポータルサイト)。
ニラのシャキッとした食感に、にんにくのような強い香り。それでいて食べた後に匂いが残りにくいのが行者菜の強みです。餃子、炒め物、味噌汁、和食の薬味と、にんにくを入れたい料理ならだいたい合います。
出荷は5月から10月まで。刈り取っても株が伸び直すため年に3〜4回収穫でき、2026年は生産者グループ30軒が約60アールで栽培し、20トンの収穫を見込んでいます。夏場は葉がしなるのを防ぐため、収穫は必ず早朝です。地元では学校給食にも出てきます。
特産品2:馬肉ラーメン──長井のソウルフード
醤油ベースのあっさりスープに煮干しのダシ、そこへじっくり煮込んだ馬肉チャーシューがのる。これが長井市のご当地ラーメンです(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。
背景には、農耕馬が多く、戦前は軍馬の産地でもあったという事情があります。戦後、馬肉が安価に手に入るようになり、ラーメンに使われるようになりました。市内では馬肉が当たり前すぎて、メニューに「馬」の字がなく「中華そば」と書いてあるだけの店も珍しくありません。
豚のチャーシューより脂が少なく、噛むほどに味が出る赤身。長井商工会議所が2012年に8月29日を「ながい馬肉の日」に制定して以降、馬肉食文化はさらに盛り上がっています。スーパーに馬刺しが普通に並ぶ光景は、なかなか他所では見られません。
特産品3:鯉の甘煮と薄皮丸なす漬
鯉を輪切りにして特製のタレで長時間煮込んだ鯉の甘煮は、骨まで柔らかくなる伝統料理。甘辛くて濃く、冷めてもおいしいので祝い事や正月の常連です。海から遠い内陸の盆地で、たんぱく源をどう確保したかが料理に残っています。
夏の食卓の主役は薄皮丸なす漬。パリッとした歯ごたえと絶妙な塩加減で、これだけでご飯が進みます。朝日山系のふもとで採れたしその実を使った「しその実漬」もあわせて、漬物のレベルが全体的に高いまちです。
特産品4:レインボープランの米と野菜
台所の生ごみから作った堆肥で土を育て、減農薬・減化学肥料で栽培した農産物を市が認証する。これがレインボープランの認証農産物です。産直施設「おらんだ市場 菜なポート」などで手に入ります。
米作が農業の中心で、最上川・置賜白川・置賜野川の水と、寒暖差の大きい盆地の気候が味を作っています。旅の途中に産直へ寄って、認証マークの付いた野菜を手に取ってみてください。土のにおいが違う、と感じるはずです。
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長井市の観光スポット

長井市の見どころは、大きく3つの方向に散らばっています。長井駅を中心とした舟運の町並み、市街地から西へ車で15分の長井ダムと秘境の渓谷、そして市内各所に点在する花の名所。どれも「水」でつながっているのが、このまちのおもしろいところなんですよ。
移動距離は短く、車なら1日でひと通り回れます。ただ、季節によって主役が入れ替わるので、いつ来るかで見える顔がまったく違います。
舟運が残した町並みを歩く
- 旧長井小学校第一校舎 – 1933年(昭和8年)建築の木造2階建て校舎で、2009年に国の登録有形文化財に登録されました。開館時間は9:30〜21:30、休館日は月曜日です(出典:旧長井小学校第一校舎)。赤みを帯びた外壁、中央の大階段、舟底天井の長い廊下。展示室は見学無料で、江戸時代の舟運から現在までの長井の歩みをたどれます。廊下を歩くと床がわずかに鳴って、木の校舎ってこんな音がしたなと思い出させてくれます。
- 旧丸大扇屋 – 最上川舟運で栄えた商家で、山形県指定文化財。開館時間は10:00〜17:00、観覧無料、休館日は月曜日です(出典:文教の杜ながい)。敷地に水路を引き込んだ「入れかわど」が残り、台所と川がそのままつながっていたことがわかります。石畳と蔵の連なりは、写真より実物のほうが圧倒的に効きます。
- 長沼孝三彫塑館 – 丸大扇屋の敷地内にあり、この家に生まれた彫刻家・長沼孝三の作品と郷土玩具コレクションを展示。観覧料は一般300円、高校生200円、小中学生100円です(出典:同上)。蔵の暗がりに彫刻が置かれているので、光の当たり方が展示室とまるで違うんです。
- 小桜館 – 1878年11月に旧西置賜郡役所として建設された建物で、1996年3月に長井市指定有形文化財となりました。開館時間は9:00〜17:00、観覧無料です(出典:同上)。現存する郡役所としては県内で最も古い部類に入ります。今も催し物の会場として現役で、擬洋風建築の中でDJイベントが開かれることさえあります。
- あら町通り・十日町通り – 「最上川上流域における長井の町場景観」として国の重要文化的景観に選定されたエリアの中心です(出典:文化遺産オンライン)。間口が狭く奥行きの深い短冊状の敷地に、店・住宅・蔵が一列に並びます。足元の水路の音を聞きながら歩くのが正解。寛政元年創業の山一醤油店の店構えも、この通り沿いにあります。
- 道の駅 川のみなと長井 – 国道287号沿い、長井市東町2-50。営業時間は9:00〜18:00(冬期間は9:30〜17:00)です(出典:道の駅 川のみなと長井)。観光案内所と産直、フードコーナーが一体になった旅の起点。夏には薄皮丸なす、秋には桃や果物が棚を占領します。けん玉グッズの品ぞろえもここが一番です。
水の秘境へ──長井ダムと三淵渓谷
- 長井ダム/ながい百秋湖 – 2011年(平成23年)完成の多目的ダムで、市街地から車で約15分。ダム湖は「ながい百秋湖」と呼ばれています(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。新緑と紅葉の時期がとくに美しく、湖面はエメラルドグリーンに沈みます。ダム管理用の通路が「水辺空間のオープン化」の指定を受け、遊覧やSUPなどが行われる珍しい湖でもあります。
- 絶景・三淵渓谷通り抜け参拝 – 百秋湖の上流にある三淵渓谷は、川幅3〜5m、高さ50mを超える断崖が約250m続く、ボートでしか入れない空間です(出典:同上)。渓谷の上に三淵神社があるため、船で通り抜けることが参拝になります。参加料は個人プランで大人4,000円、小学生までの子ども2,000円、貸切プランは4人乗りボート14,000円からです(出典:ながい百秋湖ボートツーリング公式ホームページ)。運航日は月ごとに公式サイトで発表され、2026年8月分も決まっています。渓谷に入った瞬間、気温が数度下がったように感じるんです。音が消えて、水の落ちる音だけになる。黒獅子の源流とされる卯の花姫の龍神伝説を、身体で理解する場所だと思います。
- 水陸両用バス in ながい百秋湖 – 道の駅「川のみなと長井」を出発し、陸路でダムへ向かい、そのまま湖へ「ザブーン」と入水する1周75分のツアー。料金は中学生以上3,500円、3歳〜小学生2,000円、2歳以下は無料(座席なし)です(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。2026年は5月下旬から夏にかけて、水曜を運休日として1日4便運行されています。窓ガラスがない仕様なので、風がそのまま入ってきます。入水の瞬間、大人のほうが声が出ます。
- 野川まなび館 – 長井市平山2743-4にあり、ボートツーリングの受付窓口にもなっています(出典:同上)。ダムと野川の成り立ちを学べる施設で、渓谷へ向かう前にここへ寄ると、その後に見る風景の意味が変わります。
花の名所をめぐる
- 長井あやめ公園 – 1910年(明治43年)開園、約3.3haの園内に数百種のあやめ・花菖蒲が咲きます。園内には固有品種「長井古種」があり、市の天然記念物に指定されているものもあります。あやめまつり期間中は有料(大人500円、小人200円)、期間外は入園無料です(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。見頃は6月中旬〜7月上旬。品種ごとに区画が分かれているので、花菖蒲の顔がこんなに違うのかと驚きますよ。
- 白つつじ公園(松ヶ池公園) – 琉球種の白つつじ約3,000株が咲く、約6haの公園。園内中心部には樹齢750年と伝わる古木群「七兵衛つつじ」があり、市の天然記念物に指定されています(出典:同上)。満開の5月中旬は、一面が雪をかぶったような純白になります。白一色だけを植えているので、視界が本当に白く飛ぶんです。
- 伊佐沢の久保ザクラ – 樹齢約1200年と伝わるエドヒガンの古木で、1924年(大正13年)に国の天然記念物に指定されました。見頃は例年4月中旬〜下旬です(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。坂上田村麻呂と豪族の娘お玉の悲恋伝説が残ります。近年は樹勢の衰えが進み、花の咲く枝が年々小さくなっていますが、地域ぐるみで回復に取り組んでいます。60本余りの支柱に支えられた姿を、そのまま受け取ってほしい木です。
- 草岡の大明神ザクラ – 草岡地区の個人宅の敷地に立つエドヒガンで、目通り周囲10.9m、樹高18.8m。人里に植栽された単幹のサクラとしては最大の太さで、2005年に国の天然記念物に指定されました(出典:文化遺産オンライン)。伊達政宗が初陣の敗戦時にこの桜の洞に隠れて難を逃れたという伝説が伝わります。地元では農作業の目安になることから「種まき桜」と呼ばれてきました。幹の前に立つと、人のスケールが狂います。
- 最上川堤防千本桜 – 1915年(大正4年)、大正天皇御即位大典の記念にさくら大橋〜長井橋の約2kmに300本が植えられた桜並木で、今も樹齢100年を超える桜が200数十本残っています(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。土手を歩くと、東に残雪の葉山、西に菜の花。桜だけを見る場所ではないんですよ。
けん玉と縄文に触れる
- けん玉ひろばSPIKe – 長井駅前にある、誰でも気軽にけん玉を楽しめる施設。貸し出し用けん玉の体験は無料で、けん玉ペインティングは1週間前まで要予約・一人3,000円です。けん玉は2020年9月28日に長井市の「市技」と定められました(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。有段者の管理人が常駐していて、旅行者だろうと容赦なく教えてくれます。市内には技を成功させるとサービスが受けられる参加店もあるので、けん玉を1本持って歩くだけで町の見え方が変わりますよ。
- 長井市古代の丘資料館 – 長井市草岡2768-1。縄文時代中期の長者屋敷遺跡をはじめ市内の遺跡からの出土品を展示しています。開館時間は9:00〜16:00、休館日は毎週月曜日、入館料は無料。12月16日から4月15日までは冬期休館です(出典:長井市公式サイト)。勾玉づくりや火起こしの体験もできます(要予約)。
- 古代の丘(土偶広場・長者屋敷遺跡公園) – 資料館の周辺に広がる野外エリアで、拡大復元された土偶が並ぶ土偶広場や、竪穴住居の復元が無料開放されています。朝日山系の麓なので空が広く、土偶と山の稜線が同じ視界に入ります。夏はキャンプ場とバンガローも利用できます。
長井市の観光ルート

市域は東西20km・南北23kmほどで、市街地から長井ダムまで車で15分。つまり、町並みと秘境を同じ日に見られます。ここでは車1日・徒歩半日・広域1日の3本を紹介します。渓谷のボートを組み込むなら、予約時間を軸に組み立てるのがコツですよ。
【車・1日】水と町並みをつなぐ長井一周ルート
9:00 道の駅 川のみなと長井 → 9:30 長井ダム・野川まなび館(車25分) → 12:30 古代の丘(車20分) → 14:00 白つつじ公園(車20分) → 15:00 あら町通り〜十日町通り(徒歩) → 16:30 長井駅前
①道の駅 川のみなと長井(30分)
→ 観光案内所でその日の運航・開花情報を確認します。朝いちは産直の野菜が一番多い時間帯です。
②三淵渓谷通り抜け参拝/野川まなび館(3時間)
→ 1時間のボートに乗る前後で、まなび館の展示を見ておくと伝説の背景がつながります。午前便は湖面が凪ぎやすく、水鏡になる確率が上がるんです。
山を下りて、そのまま草岡地区へ向かいます。
③古代の丘・古代の丘資料館(1時間)
→ 土偶広場で写真を撮って、資料館で長井の縄文人の暮らしを確認。入館無料なので、短時間でも損がありません。
④白つつじ公園(松ヶ池公園)(40分)
→ 5月なら白つつじ、それ以外の季節でも噴水とせせらぎのある大きな公園です。ここに車を置いて、町歩きへ移るのが効率的。
⑤あら町通り〜十日町通り(1時間30分)
→ 重要文化的景観の中心。夕方の斜光が蔵の白壁に当たる時間が一番きれいなので、あえて最後に回します。
【徒歩・半日】長井駅から歩く舟運の町ルート
10:00 長井駅 → 10:05 けん玉ひろばSPIKe → 11:00 旧長井小学校第一校舎(徒歩10分) → 12:00 昼食(馬肉ラーメン) → 13:30 文教の杜ながい(徒歩10分) → 14:30 小桜館(徒歩5分) → 15:30 最上川堤防千本桜(徒歩15分)
①けん玉ひろばSPIKe(50分)
→ 駅を出て2分。まずけん玉を1本借りて、大皿だけでも成功させておきます。これが後半の町歩きの通行手形になるんですよ。
②旧長井小学校第一校舎(1時間)
→ 展示室で舟運から現在までを予習。併設のフリースペースは休憩にも使えます。
昼は市内のラーメン店へ。中華そばと書いてあっても馬肉チャーシューが乗ってきます。
③文教の杜ながい(旧丸大扇屋・長沼孝三彫塑館)(1時間)
→ 水路を引き込んだ台所を見てから彫塑館へ。蔵の中の彫刻は、午後の光が入る時間が見やすいです。
④小桜館(40分)
→ 明治11年築の郡役所。無料で入れて、しかも椅子に座って休めます。
⑤最上川堤防千本桜(30分)
→ 締めは土手へ。桜の季節でなくても、最上川と葉山が見渡せて、このまちが「水の集まる所」だと腑に落ちます。
【車・1日】広域ルート:置賜さくら回廊と隣町めぐり
9:00 南陽市赤湯 → 10:00 最上川堤防千本桜(車30分) → 11:00 伊佐沢の久保ザクラ(車15分) → 13:00 草岡の大明神ザクラ(車20分) → 15:00 白鷹町 荒砥(車25分)
南陽市・長井市・白鷹町にまたがる桜の古木・名所の連なりは「置賜さくら回廊」と呼ばれ、桜の観賞地として知られています(出典:文化遺産オンライン)。4月中旬から下旬が本番です。
①最上川堤防千本桜(1時間)
→ まずは並木で目を慣らします。群れで咲く桜と、この後に見る単独の巨木との差を体感するための順番なんです。
②伊佐沢の久保ザクラ(1時間30分)
→ 小学校の隣。周囲のソメイヨシノに囲まれながら、支柱に支えられて咲く姿を見ます。昼をはさむと混雑を外せます。
③草岡の大明神ザクラ(1時間)
→ 個人宅の裏庭に立つ巨木。幹の太さは全国屈指で、久保ザクラとはまったく別種の迫力です。
④白鷹町 荒砥方面(2時間)
→ 北へ抜けると白鷹町にも古典桜が点在します。長井市と白鷹町は連続した盆地で、道も鉄道も一続き。県境を越えるような感覚はまったくありません。
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長井市の年間イベント

長井市の一年は、花と水と雪で区切られています。4月の桜に始まり、5月の白つつじと黒獅子、6〜7月のあやめ、8月の水まつり、10月のマラソンと縄文、そして2月の雪灯り。市民参加型の行事が多いので、観光客というより「その日たまたま町にいた人」として混ざれるのが特徴です。
春:白つつじと黒獅子が同時に来る5月
ぜひ狙ってほしいのがね、5月の長井市なんです。白つつじ公園を会場に「白つつじまつり」が開かれ、2026年は5月10日から31日まで実施されました(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。毎年5月に開催されています。
その期間中、5月下旬に「ながい黒獅子まつり」が重なります。2026年は5月23日に第36回が開かれ、市内から13社の黒獅子が参加しました(出典:同上)。平成2年に始まった祭りです。
昼の部で数社が舞い、日が落ちてから10社前後が夜の部に入ります。獅子が口を閉じる「歯打ち」の音が、商店街の壁に反射して二重に聞こえるんです。土砂降りでも止まりません。水神の舞ですから。純白のつつじと漆黒の獅子が同じ日に同じ公園にいる、その対比だけでも見る価値があります。
初夏〜夏:あやめ、長井おどり、そして水まつり
6月中旬から7月上旬は「長井あやめまつり」。長井あやめ公園を会場に、毎年この時期に開かれます(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。期間中は水上ステージでの演奏や野だて茶会、あやめ食堂の限定メニューまで出そろいます。
まつり終盤の7月には「長井おどり大パレード」。2026年は7月4日に本町大通りを会場として実施されました(出典:長井市観光ポータルサイト)。あやめ太鼓、けん玉ストリートパフォーマンス、そして地区ごとの踊り手が続きます。衣装の作り込みが地区対抗みたいになっていて、見ている側もつい応援したくなります。
8月は「ながい水まつり最上川花火大会」。第31回は2026年8月8日に開催予定で、日中は交流施設「くるんと」、夜の最上川花火大会は最上川河川緑地公園が会場です(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。水鉄砲射的やスーパーボールすくい、長井ダムの特別見学やダム湖面巡視体験まである、名前どおり水づくしの一日。夜、最上川の対岸から上がる花火が水面に映って、上下二重になります。
秋:いも煮、縄文、そしてフルマラソン
秋の口開けが「長井1000人いも煮会」。長井市役所前を会場に、例年9月下旬から10月上旬に開かれます(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。直径2mの大鍋で炊く山形のいも煮を、予約なしで食べられます。鍋の縁で湯気が上がる音と匂いが、まちの一区画を丸ごと占領するんですよ。
10月は古代の丘 長者屋敷遺跡(通称:縄文村)で「縄文まつり」。毎年10月に開催されます(出典:同上)。縄文太鼓の演奏、勾玉づくり、火おこし体験に加えて、縄文太鼓とけん玉のライブセッションまで組まれる年もあります。この町らしいごちゃ混ぜ方だと思いませんか。
同じ10月には「長井マラソン」。2026年は10月18日に開催されることが決まっています(出典:長井マラソン大会 公式サイト)。日本陸連公認・世界陸連認証コースで、東北では数少ないフルマラソンの公認大会です。舟運の町並みと朝日連峰の紅葉を見ながら走り、完走者にはいも煮がふるまわれます。走らなくても、沿道の応援だけでこの町の性格がわかります。
冬:雪灯りとけん玉の2月
2月に開かれるのが「ながい雪灯り回廊まつり」。第23回は2026年2月7日に実施され、本町・大町・高野町・中央・あら町の5エリアを中心に、17時の一斉点灯で町が灯りに包まれました(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。
市民手作りのスノーランタンが沿道に並び、旧長井小学校第一校舎など歴史的建造物がライトアップされます。小桜館では文化財がダンスホールに変わり、フラワー長井線ではイルミネーション列車「雪あかり号」が走ります。雪の壁に灯りが吸い込まれて、音まで消えるんです。冬の長井、寒いですけど、来る価値があります。
同じ2月には、けん玉の市長杯をかけた「けん玉ながいカップ」も開かれています(出典:けん玉ひろば スパイク)。雪灯りとけん玉、この2つが並ぶ2月が、実は長井市のいちばん濃い月かもしれません。
長井市のエリア別の顔

長井市は、中央地区・致芳地区・西根地区・平野地区・伊佐沢地区・豊田地区の計6地区にコミュニティセンターを置き、それぞれを地域づくりの拠点としています(出典:長井市公式サイト)。1954年に1町5村が合併してできた市なので、この区分はそのまま旧町村の輪郭でもあります。
旅する側から見ると、東の平地と西の山でくっきり性格が分かれます。どこに行くかを先に決めておくと、動きがずいぶん楽になりますよ。
中央エリア──蔵と水路と、けん玉の駅前
長井駅を中心とした市街地で、旧長井町にあたるエリア。十日町、あら町、本町、大町、高野町といった商店街が南北に連なります。重要文化的景観に選定された町場も、けん玉ひろばSPIKeも、旧長井小学校第一校舎も、文教の杜ながいもここ。
短冊状の敷地に店と蔵が並び、その間を水路が流れています。歩いていると、道の脇からずっと水音がついてくるんです。徒歩で回れる密度なので、車を白つつじ公園か市役所前の駐車場に置いて、あとは歩きに切り替えるのがおすすめ。散策とグルメが目的なら、このエリアだけで半日は溶けます。
西根エリア──ダム、渓谷、けん玉工場、そして縄文
勧進代・草岡・川原沢・寺泉などからなる西部の山手エリア。長井ダムとながい百秋湖、三淵渓谷、古代の丘、草岡の大明神ザクラ、そして競技用けん玉を作る工房も、この地区にあります。
市街地から車で15分走るだけで、標高も空気もはっきり変わります。朝日山系の懐に入っていく感覚があって、道の両側の緑が濃くなっていくんですよ。自然のアクティビティ目当て、あるいは長井の「日本一」の現場を見たい人はこのエリアへ。日帰り温泉「ニュー桜湯」もこの地区にあり、置賜盆地を見下ろしながら湯に浸かれます。
伊佐沢エリア──巨木と念仏踊りの南の谷
上伊佐沢・下伊佐沢・芦沢からなる、市の南寄りのエリア。国の天然記念物・伊佐沢の久保ザクラがあるのはここです。小学校の校庭に隣接して樹齢1200年の桜が立っている、という状況そのものが、このエリアの空気を説明しています。
周囲は果樹園と田んぼで、観光施設らしい施設はほとんどありません。だからこそ、4月中旬から下旬の桜の時期に、静かに巨木と向き合いたい人に向いています。毎年4月には伊佐沢念仏踊りが舞われ、県指定無形民俗文化財に指定されています。
致芳エリア──葉山を仰ぐ田園と、はぎの公園
市の北側、成田・五十川・白兎・森などからなる農業エリア。置賜野川を挟んで市街地と隔てられ、田畑が広がります。地区の中央を最上川と並行してフラワー長井線と国道287号が南北に走ります。
野川のそばには、はぎの名所として知られる「はぎ公園」があり、その隣に卯の花温泉「はぎ乃湯」。西に葉山を仰ぐ景色は、置賜らしいといえばこれ以上ないくらい置賜らしい。ドライブの途中でふっと止まりたくなるエリアです。黒獅子舞も各地区の寺社に伝わっていて、五十川獅子踊は市の無形民俗文化財に指定されています。
豊田・平野エリア──米坂線が交わる南の玄関口
豊田地区は今泉・歌丸・河井・泉・時庭、平野地区は平山・九野本。長井市の南東側にあたり、今泉ではJR米坂線と山形鉄道フラワー長井線が接続します。長井の南の玄関口です。
馬肉ラーメンの老舗が今泉界隈に残っていて、鉄道と食が結びついた土地でもあります。平野地区には野川まなび館があり、ダムへ向かう入口。派手な観光地ではありませんが、フラワー長井線でのんびり南下しながら、駅ごとに降りて食べ歩く人にはたまらないエリアだと思いますよ。
長井市の気候・季節の暮らし

長井市の年平均気温は11.0℃、年降水量は1856.5mm、年間の降雪の深さ合計は731cm、最深積雪の平年値は109cmです(出典:気象庁)。特別豪雪地帯に指定されています。
数字だけ見ると「雪が多くて寒い盆地」ですが、暮らしてみると印象が違うと思います。夏はしっかり暑く、朝晩はすっと冷える。年較差も日較差も大きい、この振れ幅こそが長井の気候なんですよ。
夏──6月〜8月の暮らし
8月の平均気温は23.8℃、日最高気温の平均は29.2℃です。平年値では真夏日が年29.4日、猛暑日が0.8日となっています(出典:気象庁)。
盆地なので日中は熱がこもります。ただし日最低気温の平均は19.5℃なので、朝は窓を開けると空気が入れ替わる。エアコンは日中だけ、という家も少なくないと考えられます。
7月の降水量は246.4mmで、年間で最も多い月です。梅雨と夕立が重なる時期は最上川の水位が上がり、ダムの放流も気になり始めます。水の町なので、雨のニュースへの感度は高い土地です。
8月8日の水まつりが終わると、夜の風がふっと変わります。あの一日を境に夏が折り返す、という感覚が市民にはあるように思います。
秋──9月〜11月の暮らし
9月の平均気温は19.4℃、10月は13.0℃、11月は6.7℃と、2か月でおよそ13℃下がります(出典:気象庁)。
10月は朝日連峰の紅葉が下りてくる季節。ながい百秋湖の周りが色づき、長井マラソンのランナーがその中を走ります。街ではいも煮会の煙が上がり、稲刈りが終わります。
11月には平年で5cmの降雪が記録されます。つまり、紅葉の終わりと初雪がほぼ地続き。10月中には車のタイヤ交換の話題が出始めます。
冬──12月〜3月の暮らし
降雪の深さ合計は1月が260cm、2月が200cm、12月が140cmで、最深積雪の平年値は2月の105cmです。1月の平均気温は−0.9℃、日最低気温の平均は−4.2℃。平年値では冬日が年115.0日、真冬日が11.1日にのぼります(出典:気象庁)。
1年の3分の1近くが冬日、という数字が示すとおり、冬は長いです。1月・2月は日平均気温が氷点下に沈みます。除雪は日常業務で、屋根の雪下ろしと玄関前の雪かきが朝のルーティンに組み込まれます。
ただ、日本海側の湿った雪なので、粉雪よりも重い。スコップの手ごたえが違うんです。移住してきた人が最初に驚くのはたいてい寒さより「雪の重さ」だと言われています。
2月の「ながい雪灯り回廊まつり」は、そんな冬をなかば逆手に取った行事。市民が雪でランタンを作って沿道に並べます。雪が音を吸うので、灯りが灯った通りは驚くほど静かなんですよ。
春──4月〜5月の暮らし
4月の平均気温は8.8℃、5月は15.1℃まで上がり、4月の降雪は平年で9cm、5月は0cmとなります(出典:気象庁)。
雪が消えると一気に動き出します。4月中旬から下旬に久保ザクラと大明神ザクラ、5月中旬に白つつじ、そして5月下旬に黒獅子。この1か月半だけ、まちの人口が実質的に増えたように見えます。
雪解け水で野川と最上川の水量が増え、湖面が青みがかるのもこの時期。冬が長いぶん、春の情報量が異様に多いんです。カレンダーの予定が一気に埋まります。
長井市の移住・暮らし情報

長井市は西置賜地域の行政・商業の中心で、昼間人口が100%を超え、周辺の他市町を一次商圏(購買依存率30%以上)に含む自治体です(出典:長井市)。つまり、周りから人が集まってくる側のまちなんですよ。
一方で、鉄道の本数は限られ、冬の除雪は避けて通れません。車があるかないかで生活の難易度がはっきり変わる。そのあたりを順に見ていきます。
通勤・通学
市内には東芝の誘致に始まる電気機器関連の製造業が集積し、市民の就業先も市内が中心です。産業別就業人口の構成は第1次9.4%、第2次44.6%、第3次45.9%で、第2次産業の比率が高いのが特徴です。
市外通勤の場合、南へ約20分で川西町、北へ約15分で白鷹町、東へ30分ほどで南陽市。米沢市までは車で40分前後と考えられます。山形市へは高速を使って1時間強です。
高校生の通学は、山形鉄道フラワー長井線と自転車が中心。市内には山形県立長井高等学校と山形県立長井工業高等学校があり、長井工業には機械科・電子科・福祉環境科がそれぞれ40名の定員で置かれています(出典:山形県立高等学校ポータルサイト)。地元に工業高校があることが、そのまま地元の雇用につながっている構図です。
住宅環境
SUUMOに掲載されている長井市の賃貸物件を見ると、2LDKで5万円台後半、1DK・2DKで4万円台後半から5万円台前後の物件が中心です(出典:SUUMO)。掲載件数は市内全体で数十件規模なので、時期によって選択肢は変わります。
市は空家バンクを運営していて、地域づくり推進課が窓口です(出典:長井市公式サイト)。住宅利用の場合、いずれの物件も自治会への加入が必須という条件が明記されているのは、この土地らしいところだと思います。
助成制度としては、定住促進補助金、住宅新築補助金、住宅リフォーム補助金などが用意されています(出典:同上)。年度ごとに金額や要件が変わるので、必ず最新年度のページで確認してください。
1泊2日から市内の生活を体験できる「お試し“長井”暮らし」もあり、移住コンシェルジュが滞在をサポートします。いきなり決めずに、まず冬に一度来てみるのがいいと思うんですよ。
買い物環境
日常の買い物は、市街地と郊外のロードサイドで完結します。ドラッグストアやスーパー、書店、ファミリーレストランが国道沿いに並び、車があれば不便を感じる場面は少ないと考えられます。
特徴的なのが産直の充実です。レインボープラン認証農産物を扱う「おらんだ市場 菜なポート」と、道の駅「川のみなと長井」。夏は薄皮丸なす、秋は桃と、季節がそのまま棚に出てきます。
ただし、市の資料でも中心市街地の空洞化が課題として挙げられており、南陽市や山形市への買い物客の流出も指摘されています。まちなかの店を使い続けるかどうかは、住む側の選択でもあります。
子育て・教育
市内には長井小学校、致芳小学校、西根小学校、平野小学校、豊田小学校、伊佐沢小学校の6つの市立小学校と、長井南中学校、長井北中学校の2つの市立中学校があります(出典:長井市教育委員会)。地区とコミュニティセンターと小学校がほぼ一致しているので、学区がそのまま地域社会の単位になっています。
教育のなかにけん玉と黒獅子が入り込んでいるのも長井らしさ。市内の小学校が黒獅子まつりで「長井の心」地域文化発表会に出演し、獅子踊りや黒獅子舞を披露します。子どもが伝統芸能の担い手として組み込まれている、ということです。
2023年には「長井市遊びと学びの交流施設 くるんと」がオープンし、旧長井小学校第一校舎とあわせて、雨の日でも子どもを連れて行ける屋内の居場所ができました。冬が長い土地では、これは実務的にかなり効きます。
医療環境
市内の中核は公立置賜長井病院です。内科、神経内科、総合診療科、精神科、外科、整形外科、脳神経外科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、リハビリテーション科、人工透析室があり、初期および回復期の医療を担っています(出典:公立置賜総合病院)。
高度医療・急性期医療は、隣の川西町にある公立置賜総合病院が担当します。長井市・南陽市・川西町・飯豊町の2市2町と県が協力して建設した病院で、救命救急センターが併設されています。地域全体で機能を分担する仕組みです。
ただし、市内には整形外科や産婦人科の診療所がないという現状もあり、その分野は公立置賜長井病院や広域の連携が受け皿になっています(出典:同上)。個人医院・診療所の数は多いまちですが、専門科によっては市外へ出る前提になる、と理解しておくのが現実的です。
エリア別の暮らし視点
住むエリアを選ぶなら、まず「車の必要度」で考えるとわかりやすいと思います。中央地区なら市役所・病院・商店街・駅が徒歩圏で、車がなくても最低限は回ります。賃貸物件もこのあたりに集まっています。
豊田・平野地区は今泉駅や国道沿いで、通勤の自由度が高いエリア。致芳地区や伊佐沢地区は田畑に囲まれた戸建て向きで、家は広く取れますが買い物と通学には車が要ります。
西根地区は山手なので、雪の量が市街地より増えます。そのかわり長井ダムも古代の丘も温泉も生活圏の中。冬の除雪と引き換えに何を得たいか、という選択になります。
長井市へのアクセス

長井市には空港も新幹線駅も高速道路のインターチェンジもありません。ただ、山形新幹線の赤湯駅から山形鉄道フラワー長井線で乗り換え1回、東北中央自動車道の南陽高畠ICからは車で20分台。数字で見ると、思っているより近いんですよ。
車でのアクセス
東北中央自動車道の南陽高畠ICから長井市街地までは車で約20〜25分です(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。山形自動車道の山形蔵王ICからは約60分です(出典:同上)。
市内を南北に国道287号、東西に新潟と宮城を結ぶ国道113号が走っています(出典:長井市)。新潟方面からは国道113号を東へ、というのが定番のルートです。
結論から言うと、観光でも移住でも車が一番現実的です。市街地から長井ダムまで15分、古代の丘まで20分。この機動力は鉄道では代替できません。
鉄道でのアクセス
東京から山形新幹線で赤湯駅へ、そこから山形鉄道フラワー長井線に乗り換えて長井駅まで。赤湯から長井までの運賃は大人620円、子ども310円です(出典:山形鉄道株式会社)。所要時間は約30分です。
ここが最大の注意点なのですが、フラワー長井線の本数は多くありません。たとえば白兎駅の場合、上り・下りとも1日8本ずつの運行です(出典:同上)。新幹線の到着時刻に合わせて先に接続列車を決めておかないと、赤湯で2時間待つことになります。
もうひとつ。今泉駅で接続するJR米坂線は、2022年8月の豪雨の影響で今泉〜坂町(新潟県)間の運転を見合わせており、同区間はバスによる代行輸送が続いています(出典:JR東日本)。新潟方面から鉄道だけで入るルートは、現時点では成立しません。
それでも、フラワー長井線に乗る価値はあります。窓の外が田んぼと最上川と葉山だけになる区間があって、あれは車では見られない景色なんです。
飛行機でのアクセス
市内に空港はありません。最寄りは東根市の山形空港ですが、山形新幹線の開通以降は便数が減っており、実際には仙台空港から鉄道・車で入る人も多いと考えられます。
いずれの空港からも、レンタカーを借りて南下するのが現実的です。飛行機と鉄道を組み合わせるより、空港からそのまま車、のほうが時間も自由度も勝ります。
市内移動の現実的アドバイス
市内には市営バスの循環路線があり、タクシー会社も複数あります。ただ、観光で1日回るなら車かレンタサイクルの二択だと思ってください。
道の駅「川のみなと長井」には電動アシスト付き自転車のレンタルがあり、市内めぐりに使えます(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。長井駅から重要文化的景観のエリアまでは徒歩圏なので、駅前を歩いてから自転車で郊外へ、という組み立てが効率的です。
冬は話が別です。積雪期は自転車が使えず、除雪の状況によっては山手の道が細くなります。1月・2月に訪れるなら、冬タイヤの車か、素直にタクシーを使うのが安全ですよ。
交通手段ごとに見てきましたが、「結局いちばん安く行くにはどうすれば?」と迷う方も多いはず。飛行機で向かうなら、航空券は予約のタイミングや会社によって料金が大きく変わります。複数の航空会社・LCCをまとめて比較できるサイトで、いちど最安値をチェックしておくと安心ですよ。
【トラベリスト】
で航空券をまとめて比較する
【地元住民に直撃!】長井市の本当の魅力を聞いてみた

Q1.あなたのご職業を教えてください。
最上川のほとりにある道の駅で、観光案内の仕事をしています。長井の見どころを聞かれたら、その日の花の咲き具合やダムの水位まで含めてお伝えする仕事、といったところでしょうか。
県外の方も、地元の方も来ます。「何もないでしょう」と言われることもあるんですけど、そう言われるたびに、いや、水と花と獅子があります、と返しています。
Q2.長井市に来て絶対行くべき場所はどこだと思いますか?
まずは長井ダムの奥の三淵渓谷です。断崖に挟まれた瞬間、気温が下がって音が消えるんですよ。長井市観光の目玉ですし、あそこが黒獅子の伝説の出どころだと知ると見え方が変わります。
もう一つは、市街地の水路沿い。蔵と商家の間をずっと水音がついてくる。あとは市民が普通にジョギングしている運動公園まで足を延ばすと、朝日連峰がきれいに見えます。
Q3.長井市でお土産を買うとしたらなんですか?
定番はけん玉ですね。長井市の有名なものといえばこれ、というくらいで、競技用の生産量が日本一なんです。あとは長井紬の小物。手触りが全然違います。
地元の人がよく買うのは、薄皮丸なすの漬物と、鯉の甘煮です。鯉は正月やお祝いに必ず出るもので、観光客の方はまず知らない。冬なら味噌餅もおすすめですよ。
Q4.外から人が来たときに、長井市でまず連れていく店はどこですか?
昔ながらのラーメン屋です。ここは馬肉チャーシューが当たり前で、看板に「馬」の字がない店も多いんです。「中華そば」と書いてあっても馬肉が乗ってくる。あの反応を見るのが楽しくて。
あとは行者菜を出してくれるお店。行者にんにくとニラを掛け合わせた野菜で、作付面積も生産量も全国一。香りが強いのに匂いが残らないんです。
Q5.長井市はどんな気質だと思いますか?
舟運の商人町だったせいか、よそから来た人に対しては開けているほうだと思います。ただ、腹の内はすぐには見せない。距離の詰め方がゆっくりなんですよ。
祭りになると一変します。黒獅子は市内の神社ごとに受け継がれていて、警護役は人望のある人がやる。あの一日で誰が地域を支えているかが可視化される、そういう気質です。
Q6.昔に比べて、長井市の雰囲気や活気はどう変わったと感じますか?
正直に言うと、人は減っています。中心の商店街もシャッターが増えましたし、買い物は近隣の市に流れている。市町村民センターに集まる顔ぶれも、だいぶ高齢になりました。
ただ、空き店舗を使って何か始める人が確実に増えました。生ごみを堆肥に戻す循環の取り組みも三十年近く続いています。派手じゃないけれど、止まってはいないんです。
Q7.長井市のこれから新しくできる施設や、期待している活動などはありますか?
市町村長も市も、けん玉と水を軸にした発信に力を入れています。市技になってから、外国の方が「けん玉の町」と言って訪ねてくることが本当に増えました。
期待しているのは、朝日連峰から来る水源をそのまま観光にできていること。ダムの湖を巡る企画が続いてほしいですし、長井市のおすすめスポットとして渓谷を残していけたらと思います。

