朝日町(あさひまち)は、山形県のほぼ中央、最上川が刻む五百川峡谷の両岸に広がる人口5,327人の町です。山形市から車でおよそ1時間。
朝日町の魅力を5つに凝縮すると、こうなります:
- ✅ 無袋ふじ発祥の地──袋をかけないりんご栽培を全国に先駆けて確立した町
- ✅ 空気神社──「空気」を御神体とする、世界でも例のない神社
- ✅ 朝日町ワイン──1944年創業、ワイン城で見学と試飲ができるワイナリー
- ✅ 椹平の棚田──「神が落とした扇の田」と呼ばれる日本の棚田百選
- ✅ 大沼の浮島──島が動く神秘の沼。国の名勝に指定されて100年
「果物と地酒が好きな旅行者」「静かな山と森を歩きたい人」「小さな町の暮らしに関心がある人」に向いた町です。この記事では、観光・歴史・文化・特産品を、一次情報にあたりながら順に見ていきます。
| 人口 | 5,327 人 ※2026年6月1日時点(推計人口) |
|---|---|
| 面積 | 196.81 km² |
| 人口密度 | 27.1 人/km² |
地理的には、北は西川町と大江町、東は山辺町、南は白鷹町・長井市・小国町と境を接しています。町の南西部には朝日連峰が横たわり、主峰・大朝日岳は標高1,870メートル。1950年指定の磐梯朝日国立公園の中核をなします(出典:朝日町公式サイト)。
町内に鉄道駅も高速道路のインターチェンジもなく、最寄りは寒河江市の山形自動車道・寒河江IC。そのぶん、りんご畑と最上川と森だけが静かに続く風景が残っています。
朝日町の推しポイント

キャッチフレーズは「りんごとワインの里」。町の顔は、まず果樹です。そこに、空気を祀るという発想の神社、扇形に広がる棚田、島が動く沼が重なります。
どれも「町ぐるみで守ってきたもの」という共通点があります。ひとつずつ見ていきましょう。
推しポイント1:無袋ふじ発祥の地
朝日町のりんご栽培は明治20年にさかのぼります。1970年(昭和45年)、63人の生産者が「無袋ふじ研究会」をつくり、翌年、袋をかけずに育てる栽培技術を全国に先駆けて確立しました(出典:朝日町公式サイト)。1989年には「日本一りんごの町宣言」も行っています。
推しポイント2:空気神社──御神体は「空気」
ブナ林の中に、5メートル四方のステンレス板が鏡のように敷かれています。社殿も鳥居もありません。本殿はその地下3メートル。1990年(平成2年)、空気への感謝を込めて建てられた、世界でも類例のない神社です(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。四季の森がそのまま鏡に映り込む光景は、写真で見るより実物のほうが静かです。
推しポイント3:椹平の棚田と一本松公園
「椹平」と書いて「くぬぎだいら」。扇形に広がる約200枚の田が、1999年(平成11年)に農林水産省の「日本の棚田百選」に選ばれました(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。地元の人は「神が落とした扇の田」と呼びます。一本松公園の展望台から全景を見下ろせます。
推しポイント4:大沼の浮島
大小30余りの島が水面を漂う沼です。1925年(大正14年)10月8日に国の名勝に指定され、2025年に指定100年を迎えました(出典:朝日町公式サイト)。浮嶋稲荷神社の境内にあり、沼を一周する遊歩道が整備されています。
推しポイント5:町全体が「エコミュージアム」
1989年に町民有志の研究会から始まり、1995年には国際会議が開かれました。博物館を建てるのではなく、りんご畑も沼も峡谷もそのまま展示物として捉える考え方です。2000年に拠点施設の創遊館がオープンしています。
朝日町の歴史

朝日町の歴史は、最上川とともにあります。江戸時代には舟運の難所として、明治以降は養蚕と青苧の里として、そして戦後はりんごとぶどうの産地として姿を変えてきました。
町名の「朝日」は西にそびえる朝日連峰に由来し、一帯は古くから五百川郷と呼ばれてきました。三つの村が合併して現在の町が生まれたのは、戦後の1954年のことです。
近世──最上川舟運と五百川峡谷
白鷹町荒砥から大江町左沢までの約25キロメートルは、古くから五百川峡谷と呼ばれてきました。最上川の中で唯一、連続する「瀬」を持つ区間です。ここは舟運最大の難所であり、江戸時代に米沢藩が峡谷全体を掘削して通船を可能にしました。日本最長といわれる舟道の遺構が、今も峡谷に残っています(出典:朝日町公式サイト)。
近代の開拓と発展──りんごの登場
明治20年、和合平地区にりんごが植えられました。病害虫に悩まされ、栽培をあきらめる人も多かったといいます。その後、養蚕とともに果樹が定着し、1944年(昭和19年)には政府の命令でぶどう産地にワイン工場が置かれます。目的はワインではなく、酒石酸から軍需物資ロッシェル塩を取り出すことでした(出典:日本ワイナリー協会)。
現代──町の今を作った出来事
1954年(昭和29年)11月1日、宮宿町・大谷村・西五百川村が合併して朝日町が誕生しました。翌年には針生地区が白鷹町に編入されています。1970年代には無袋ふじの技術が確立し、1975年には町と地元農協の共同出資で自社ブランドのワイン造りが始まりました(出典:同上)。りんごとワイン、そして森。この三つが、今の町の骨格です。
朝日町の文化・風習

果樹の町の一年は、農作業のリズムで動きます。春は剪定と摘果、初夏は空気まつり、秋はりんごの収穫、冬は雪。行事も暮らしも、そこに素直に乗っています。
暮らしの手ざわりが伝わるところから、順に見ていきますね。
方言と話し方の特徴
朝日町は山形県村山地方に属し、話される言葉は村山弁です。イントネーションの上下が少なく、淡々と話すのが特徴とされます。語尾に「す」を付けると丁寧語のかわりになり、電話で名乗るときに「○○でした〜」と過去形になることもあります(出典:やまがた子育て応援サイト(山形県))。
代表的な言葉をいくつか。んだ(そうだ)、んまい(おいしい)、んね(〜ない)。「ん」から始まる語が多いのも村山弁の面白さです。「今日のテストわがらねくてしゃますした」と言えば、「わからなくて苦労した」という意味になります(出典:同上)。
食卓と季節の暮らし
秋になると、家々の玄関先にりんごのコンテナが積まれます。贈答用にならない「わけあり」を近所で分け合う光景は、この町の秋の風物詩です。
冬は雪。朝日連峰は日本海からの季節風を正面で受け止める、有数の多雪地帯です。その雪解け水が、春の田んぼと棚田を満たしていきます。雪が多いことと、りんごが甘いことは、この町では地続きの話なんですよ。
年に一度、地下の本殿が開く「空気まつり」
町は世界環境デーの6月5日を条例で「朝日町空気の日」と定めています。2026年は6月5日(金)・6日(土)・7日(日)に空気まつりが開かれ、空気神社の地下本殿が一般公開されました。地元の小学生が巫女装束で舞う「みこの舞」も奉納されます(出典:朝日町公式サイト)。
人の気質と受け継がれてきたもの
袋をかけないりんごは、見た目が揃いません。それでも味を選んだ──その判断に、この町の気質が出ているように思います。派手さより中身。話しかければ、りんごの育て方を延々と聞かせてくれる人がたくさんいます。
町には江戸中期の大庄屋の姿を伝える佐竹家住宅があり、1969年(昭和44年)12月18日に国の重要文化財に指定されました(出典:朝日町公式サイト)。
朝日町の特産品・食

最上川の両岸に広がる河岸段丘は、傾斜地で粘土質。決して肥沃とは言えない土地です。そこに昼夜の寒暖差が加わることで、果物が濃くなります。
りんご、ワイン、そしてりんごが浮かぶ温泉まで。食べて、飲んで、浸かる。順に紹介します。
特産品1:無袋ふじ(サンふじ)
袋をかけずに太陽を浴び続けたふじは、糖度が高く、果肉にアメ色の蜜が入ります。かじると「シャリッ」と音がして、甘みのあとに酸味がすっと立ち上がる。旬は11月から12月、寒くなるほど味が乗ります。
この技術を全国で最初に確立したのが朝日町で、中央市場で品質日本一の評価を得たことがブランドの出発点になりました(出典:朝日町公式サイト)。産直では、皮ごと丸かじりする人が本当に多いです。
特産品2:朝日町ワイン
主力はマスカット・ベーリーAやブラック・クイーンといった国内改良品種。町内の生産組合が育てたぶどうを使い、酸がきれいで、するりと飲める赤に仕上がっています。旬というより、りんごの収穫が終わった冬の食卓によく合います。
2000年に完成した「ワイン城」では、びん詰め工程を見学しながら試飲ができます(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。2025年の日本ワインコンクールでは金賞・部門最高賞・コストパフォーマンス賞を受賞しています(出典:朝日町ワイン)。
特産品3:りんご温泉と「りんご麺」
1991年(平成3年)オープンの町の日帰り温泉。湯船には一年を通して真っ赤なりんごがぷかぷか浮かんでいます。泉質は植物由来の成分を含むモール泉で、独特のアブラ臭と、上がったあとの温まり方が忘れがたい。入浴料は大人300円です(出典:りんご温泉)。
館内のレストランでは、りんごを練り込んだ「りんご麺」が食べられます。りんご風呂から上がって、りんご麺。徹底ぶりが清々しいですよね。
特産品4:ぶどう
ワイン用だけでなく、生食用のぶどうも古くから栽培されてきました。旬は8月下旬から10月。河岸段丘の水はけの良さと寒暖差が、甘みを凝縮させます。ワイン工場が町内の大谷地区に置かれたのも、もともとここがぶどう産地だったからです。
現地に行くのはなかなか難しい方もいますよね。でもふるさと納税なら、実質2,000円の自己負担で全国の特産品が返礼品として届きます。
会社員ならワンストップ特例で確定申告も不要です。
返礼品は数万点あるので、迷ったらAmazonの【今みんなが選んでいる人気返礼品ランキング】から見るのが失敗しないコツですよ。
楽天ユーザーの方は【返礼品ランキング総合TOP100】でチェックしてみてくださいね。
朝日町の観光スポット

朝日町の見どころは、大きく三つに分かれます。ブナ林の中の空気神社、最上川と棚田がつくる風景、そしてりんごとワインの現場です。
どれも観光地らしい派手さはありません。ただ、車を降りて5分歩くと空気が変わる。そういう場所ばかりなんですよ。順に紹介します。
森と水──静けさを味わうスポット
- 空気神社 – ブナ林の頂に、5メートル四方のステンレスの鏡板が敷かれているだけ。本殿は地下3メートルにあり、年に一度の空気まつりでのみ公開されます(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。駐車場から参道を10分ほど。木漏れ日が鏡に落ちて、風で揺れる。新緑の朝いちばんが、いちばん静かです。冬は雪のため閉鎖され、2026年度は4月18日から参拝できるようになりました(出典:山形県朝日町観光協会)。
- 大沼の浮島 – 大小30余りの島が水面を漂う沼です。1925年(大正14年)10月8日に国の名勝に指定されました(出典:朝日町公式サイト)。沼を一周する遊歩道は20分ほど。緋鯉が寄ってきて、水面に木々が映る。降雪後は雪解けまで閉鎖されます。
- 朝日連峰・大朝日岳 – 磐梯朝日国立公園の中核をなす山域で、主峰の大朝日岳は標高1,870メートル(出典:朝日町公式サイト)。山頂までは片道6〜8時間の本格登山ですが、麓のブナ林を歩くだけでも十分に山の気配が伝わってきます。
最上川と棚田──風景を見に行くスポット
- 椹平の棚田(一本松公園) – 扇形に広がる約200枚の田。1999年(平成11年)に農林水産省の「日本の棚田百選」に選ばれました。一本松公園のひめさゆり園では、例年5月下旬から6月上旬にヒメサユリが咲きます(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。水を張った5月の朝、田んぼが空を映して光る時間帯が最高です。降雪時は車で入れません。
- 五百川峡谷 – 白鷹町荒砥から大江町左沢までの約25キロメートル。最上川の中で唯一、連続する「瀬」を持つ区間で、かつて舟運最大の難所でした(出典:朝日町公式サイト)。国道287号を走ると、川面と岩と段丘が延々と続きます。
- 佐竹家住宅 – 江戸中期の大庄屋の姿を伝える民家で、1969年(昭和44年)12月18日に国の重要文化財に指定されています。個人所有のため、見学は事前確認が必要です(出典:朝日町公式サイト)。
りんごとワイン──食べて飲んで浸かるスポット
- 道の駅あさひまち「りんごの森」 – 無袋ふじ発祥の和合地区にある、りんご形の道の駅です。営業は9時から(冬期は閉館が早まります)。休みは正月三が日のみ(出典:朝日町観光協会)。りんご冷麺、りんごソフト、そして秋には産直棚が品種で埋まります。
- 朝日町ワイン城 – 1ヘクタールの自社ぶどう畑を眺めながら、びん詰め工程を見学し、40種類を超えるワインとブランデーの試飲ができます(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。運転する人はぶどうジュースを。オリジナルラベルも1本から作れます。
- りんご温泉 – 湯船に一年中りんごが浮かぶ日帰り温泉。植物由来のモール泉で、独特の香りと温まり方が特徴です。入浴料は大人300円、定休日は毎月第2水曜日(出典:りんご温泉)。露天風呂は営業期間・曜日が限られるので確認を。
- Asahi自然観 – 空気神社のある森の一帯。ホテルは営業を終え、コテージ村を全面リニューアルして2026年(令和8年)秋のグランドオープンを目指しています。コテージは再整備期間中も営業しています(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。冬は天然雪100%のスノーパークになります。
朝日町の観光ルート

町内に鉄道駅はなく、移動は基本的に車です。町の南北は国道287号一本。逆に言えば、道に迷いようがありません。棚田も沼も温泉も、この道から10分以内に散らばっています。
【車・1日】りんごとワインの王道ルート
9:30 道の駅あさひまち → 9:50 朝日町ワイン城(車5分)→ 11:00 椹平の棚田(車10分)→ 12:30 昼食・宮宿地区(車10分)→ 14:00 大沼の浮島(車15分)→ 15:30 りんご温泉(車15分)
①道の駅あさひまち(40分)
→ まずは産直棚でこの日の旬を把握します。朝いちばんは野菜と山菜の入荷直後で、棚が最も豊かな時間帯です。
②朝日町ワイン城(60分)
→ ぶどう畑を眺めながら試飲。運転手はジュースで参加できます。午前中は人が少なく、じっくり選べますよ。
③椹平の棚田(40分)
→ 一本松公園の展望台へ。日が高い時間は稲の緑が均一に見え、扇の形がいちばんはっきりします。
④大沼の浮島(60分)
→ 遊歩道を一周。午後の斜光が沼に入ると、水面と樹影の境目が消えていきます。
⑤りんご温泉(60分)
→ 一日の終わりに。窓の外に朝日連峰。りんごが鼻先を通り過ぎていきます。
【車・半日】空気神社と森のルート
9:00 宮宿地区 → 9:30 Asahi自然観(車30分)→ 10:00 空気神社(徒歩10分)→ 11:30 朝日川沿いドライブ → 12:30 道の駅あさひまち(車30分)
①Asahi自然観(30分)
→ 駐車場に車を置き、山の空気に体を慣らします。ここから先は歩きです。
②空気神社(60分)
→ 五行のモニュメントが並ぶ参道を上り、鏡板の前へ。午前中は光が斜めに入り、鏡に空と葉が同時に映ります。
③朝日川渓谷(30分)
→ 山を下りながら川沿いへ。水の音だけが続く区間で、窓を開けて走るのがおすすめです。
④道の駅あさひまち(40分)
→ 締めはりんご冷麺。森を歩いたあとの、ほのかな甘みの麺がよく効きます。
【車・1日】広域ルート:最上川をさかのぼる
9:00 寒河江市(山形自動車道寒河江IC)→ 9:40 大沼の浮島(車40分)→ 11:00 椹平の棚田(車20分)→ 12:00 道の駅あさひまち(車10分)→ 14:00 朝日町ワイン城(車5分)→ 15:30 白鷹町方面へ(車30分)
①大沼の浮島(60分)
→ 高速を降りて最初に山側へ入ります。朝の沼はまだ観光客がおらず、鯉の水音しかしません。
②椹平の棚田(40分)
→ 山を下りて最上川沿いへ。大江町方面から入ると、棚田の扇が正面に開けます。
③道の駅あさひまち(60分)
→ 昼食と土産。ここでりんごを箱で買っておくと、あとが楽です。
④朝日町ワイン城(60分)
→ 見学と試飲。ここから国道287号を南へ走れば、五百川峡谷の景色とともに白鷹町・長井市方面へ抜けられます。
ここまで見てきたとおり、見どころが少し離れた場所に点在していることもあります。気になるスポットをまとめて回るなら、レンタカーがあると一気に動きやすくなりますよ。料金は会社や時期でけっこう変わるので、まとめて比較できるサイトでサッと見ておくのがおすすめです。
【エアトリ
】でレンタカーをまとめて比較する
そして遠方から訪れるなら、思いきって一泊するのもおすすめです。日帰りでは通り過ぎてしまう夜や朝の時間に、その町ならではの静けさや表情に出会えます。お祭りやイベントの時期は宿が一気に埋まるので、早めの確保が安心ですよ。
【じゃらんnet
】でこのエリアの宿を探す
朝日町の年間イベント

朝日町の一年は、初夏の空気まつりから始まって、盛夏の島まつり、秋のワインまつりと収穫へ流れていきます。どれも観光客より地元の人のほうが多い、素朴なお祭りです。
春〜夏:空気まつりと、森のライトアップ
ぜひ行ってみてほしいのがね、6月の空気まつりです。町は世界環境デーの6月5日を条例で「朝日町空気の日」と定めており、2026年は6月5日から7日にかけて開かれました。年に一度、地下の本殿が御開帳され、地元の小学生が巫女装束で「みこの舞」を奉納します(出典:朝日町公式サイト)。
鏡板の上で舞が始まると、地下の素焼きの瓶が足音を拾って、低く響きます。森の中なので音が逃げず、ブナの葉が擦れる音と混ざり合う。写真では伝わらない部分です。
2026年は6月6日から8月31日まで、夜の空気神社がライトアップされています(出典:山形県朝日町観光協会)。暗いブナ林に光が差し込み、鏡板が黒く沈む。夏の夜、車で山を上がる価値はありますよ。
夏:大沼浮島の島まつり
毎年7月の第3日曜日、大沼の湖畔から新しい「島」が切り出されます。その年の吉方位にある旧国名にちなんだ名前が付けられ、浮島雅楽の調べのなか、氏子の手で湖面の中央へ送り出されます(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。
雅楽の音が沼の水面を渡っていく光景は、地味なようでいて忘れがたい。かつては島の動き方で吉凶を占ったと伝えられます。観光イベントというより、生きている神事です。
秋:朝日町ワインまつりと、りんごの季節
創遊館の芝生広場で、樽の朝日町ワインとバーベキューを楽しむ「朝日町ワインまつり」が、例年秋分の日ごろに開かれてきました。完全前売制で当日券はなく、雨天中止です(出典:朝日町ワイン)。開催の可否や前売券の販売は年によって変わるため、朝日町役場の告知を確認してください。
9月からはりんごの季節です。早生種が8月下旬に始まり、本命の無袋ふじは11月から12月。寒くなるほど蜜が入ります。道の駅の産直棚が、週ごとに品種を入れ替えていく様子を見るだけでも楽しいんですよ。
冬:雪とスキー場
大朝日岳の麓に広がるAsahi自然観スノーパークは、天然雪100%のゲレンデです。豪雪地帯ですから、粉雪の質は折り紙付き。営業期間は積雪次第で変わるので、公式の告知を確認してから出かけてください。
雪に埋もれた棚田や、雪囲いされた空気神社の参道も、この時期だけの表情です。冬の大沼の浮島と空気神社は閉鎖されるため、そこだけご注意を。
朝日町のエリア別の顔

朝日町は最上川を軸に、東岸と西岸で表情が変わります。役場のある宮宿が町の中心、川沿いの和合・大谷がりんごとワインの現場、山側の大沼と朝日連峰が信仰と森の領域です。
車で端から端まで30分ほどの町ですが、この30分の間に商店街も、果樹園も、原生林も通り過ぎます。それぞれの顔を見ていきましょう。
宮宿エリア──町の中心、暮らしの気配が残る通り
役場、エコミュージアムコアセンター創遊館、りんご温泉が集まる、町の心臓部です。かつての宿場の名残で、通りには古い商家の構えが残っています。
散策向きのエリアなんですよ。観光施設をめぐる合間に、地元の食堂や商店をのぞく時間をつくると、この町の日常が見えてきます。
和合・大谷エリア──りんごとワインの現場
国道287号沿い、道の駅あさひまち「りんごの森」と朝日町ワイン城があるのがこのあたり。和合平地区は無袋ふじが生まれた場所です。
坂を上ると、視界がりんご畑で埋まります。秋に訪れるなら、まっすぐここへ。買い物とグルメ目的の人には、町でいちばん時間を使う価値があるエリアです。
三中・能中エリア──扇の棚田を見下ろす高台
椹平の棚田と一本松公園があります。国道から細い道を上がっていくため、うっかり通り過ぎがちな場所です。
写真を撮りたい人向き。日の出前後と、稲刈り後に杭掛けが並ぶ10月上旬が狙い目です。駐車場は8台ほどと小さいので、混む時間は避けたほうが快適ですよ。
大沼エリア──沼と神社の、時間が止まった一角
大沼の浮島と浮嶋稲荷神社。大江町との境に近い山あいで、集落は静かです。修験の道場として開かれた歴史があり、参道に入ると空気の温度が変わります。
ひとりで訪れるのに向いたエリアです。遊歩道を一周して、鵲橋のあたりで鯉を眺めていると、あっという間に1時間が過ぎます。
朝日連峰・朝日川エリア──森と雪と、空気神社
町の南西部。Asahi自然観と空気神社があり、その奥は磐梯朝日国立公園の原生林です。朝日鉱泉は大朝日岳への登山基地になっています。
登山者とアウトドア好きに向いたエリアですが、空気神社までなら誰でも歩けます。夏は避暑、秋は紅葉、冬はスキー。町のなかで、季節の落差がいちばん大きい場所です。
朝日町の気候・季節の暮らし

朝日町には気象官署がないため、最も近い山形地方気象台(山形市)の平年値を目安にします。年平均気温は12.1℃、1月の平均気温は-0.1℃、8月は25.0℃。年間の降雪の深さの合計は285センチ、最深積雪の平年値は51センチです(統計期間1991〜2020年/出典:気象庁)。
ただし朝日町は朝日連峰の麓にあり、日本海からの季節風を正面で受け止める多雪地帯です。実際の積雪は上の数値よりかなり多いと考えられます。内陸性の気候で、夏は暑く冬は寒い。この寒暖差が、りんごの糖度をつくっています。
春──4月〜5月の暮らし
雪解けは4月。山からの水が最上川に流れ込み、椹平の棚田に水が張られます。りんご園では剪定と受粉の作業が本格化して、町全体が動き出す季節です。
空気神社の参道が開くのもこの頃。2026年度は4月18日から参拝できるようになりました。雪囲いが外れると、町の人が「今年も春が来た」と口にします。
夏──6月〜8月の暮らし
盆地の夏は蒸します。8月の平均気温は25.0℃で、日中は30℃を超える日も珍しくありません。ただし山側のAsahi自然観あたりまで上がると、体感が数度変わります。
夜は思いのほか冷えるんですよ。この昼夜の落差が果物には効くのですが、暮らす側としてはエアコンと薄手の羽織りを両方用意しておくのが正解です。
秋──9月〜11月の暮らし
いちばん過ごしやすい季節です。9月下旬から棚田で稲刈りが始まり、10月には「くいのこ」と呼ばれる杭掛けが並びます。りんごの収穫は9月から。
11月に入ると、無袋ふじの収穫が始まります。町じゅうがりんごの匂いになる時期で、朝晩の冷え込みが強い年ほど蜜が入る。寒さを喜ぶ土地なんです。
冬──12月〜3月の暮らし
雪です。1月の平均気温は-0.1℃、12月から2月にかけて降雪が集中します(出典:同上)。除雪車が朝5時前に通る音で目が覚める生活になります。
車は四駆かスタッドレス必須。大沼の浮島も空気神社も冬は閉鎖され、町は静かに沈みます。その代わり、Asahi自然観スノーパークには天然雪100%のゲレンデが開きます。
朝日町の移住・暮らし情報

人口5,327人、面積196.81平方キロメートル。町域の大半は山林です。暮らしの拠点は宮宿地区に集まっており、役場・町立病院・学校・スーパー・温泉が半径1キロ圏内に収まっています。
車がないと成り立たない町、というのが率直なところです。ただ、その代わりに得られるものもはっきりしています。順番に見ていきましょう。
通勤・通学
町内に鉄道駅はなく、通勤の中心は車です。寒河江市や山形市へ通う人が多く、山形自動車道の寒河江ICまでは車でおよそ20分。山形市中心部までは1時間前後と考えられます。
高校生の通学は町の課題でした。町内に高校はないため、山形市や寒河江市の高校へ通う生徒向けに、町営の直行バスが運行されています。
住宅環境
賃貸物件はごく少なく、持ち家か空き家の取得が中心になります。町は空き家等バンクを運営しており、改修工事や家財の片付け費用への補助制度もあります(出典:朝日町公式サイト)。
移住・定住には30万円の支給制度、引っ越し費用の一部補助、暮らし体験の補助などが用意されています(出典:朝日町公式サイト)。制度の内容や募集枠は年度で変わるため、役場に直接確認するのが確実です。
買い物環境
大型商業施設はありません。日常の買い物は宮宿地区の店舗と、道の駅あさひまち「りんごの森」の産直が中心になります。
まとまった買い物は寒河江市まで出るのが一般的です。車で30分ほど。「週末に寒河江でまとめ買い」という生活リズムを、多くの家庭が組んでいると考えられます。
子育て・教育
町内には小学校が3校(大谷小学校・西五百川小学校・宮宿小学校)、中学校が1校(朝日中学校)あります(出典:朝日町公式サイト)。高校はありません。
医療費については、高校3年生以下の子どもの保険適用内の医療費が無料になります。子育て支援センターや放課後児童クラブも整備されています(出典:朝日町公式サイト)。
医療環境
町の中核は朝日町立病院です。宮宿843番地にあり、リニューアル工事を終えています(出典:朝日町公式サイト)。
専門的な治療や救急は寒河江市や山形市の病院に頼ることになります。この距離感をどう受け止めるかが、移住の判断で大きい部分になりますよね。
エリア別の暮らし視点
宮宿エリアは、役場・病院・学校・温泉が徒歩圏にまとまった、いちばん暮らしやすい場所です。車が使えない時期がある高齢者世帯にも現実的な選択肢と考えられます。
和合・大谷エリアは果樹園に囲まれた農村地帯。就農を考える人向きです。三中・大沼・朝日連峰側の集落は、雪の量と除雪の負担が一段上がります。憧れだけで選ばないほうがいい場所でもあるんですよ。
朝日町へのアクセス

朝日町には鉄道駅も高速道路のインターチェンジもありません。玄関口は、山形自動車道の寒河江IC(寒河江市)と、JR左沢線の左沢駅(大江町)の二つです。国道287号が町を南北に貫いています。
車でのアクセス
山形自動車道の寒河江ICから国道287号を白鷹方面へ、車でおよそ20分で町内に入ります(出典:やまがたへの旅(山形県公式観光サイト))。
東京方面からは東北自動車道の福島JCTで東北中央自動車道へ入り、南陽高畠ICから国道113号・国道287号を経由するルートもあります。新潟方面からは国道113号で長井へ抜けるのが一般的です(出典:朝日町公式サイト)。
ETC搭載車なら寒河江SAのスマートICが最寄りになります。冬季は雪道装備が必要です。
鉄道+バスでのアクセス
山形新幹線で山形駅まで行き、JR左沢線に乗り換えて北山形駅経由で左沢駅へ。左沢駅からは山交バスの寒河江宮宿線で町内に入ります(出典:同上)。
本数が限られるため、事前に時刻表を確認してから動くのが安心です。町内の路線バスも限られているので、駅からレンタカーという選択肢も現実的ですよ。
飛行機でのアクセス
最寄りは山形空港です。空港からさくらんぼ東根駅へ出て、北山形駅・左沢駅を経由してバスで町内へ入るルートが案内されています(出典:同上)。羽田・伊丹の両方から便があります。
仙台空港から車で向かう手もあります。時間はかかりますが、そのまま車で町内をめぐれるのは大きな利点です。
町内移動の現実的アドバイス
結論から言えば、車が前提です。空気神社、大沼の浮島、椹平の棚田は、いずれも国道から山道を上がった先にあり、公共交通では届きません。
町内には平日運行のデマンドタクシーがありますが、観光での利用には向きません。左沢駅か寒河江駅で車を借りて、国道287号を軸に動くのがいちばん確実です。
交通手段ごとに見てきましたが、「結局いちばん安く行くにはどうすれば?」と迷う方も多いはず。飛行機で向かうなら、航空券は予約のタイミングや会社によって料金が大きく変わります。複数の航空会社・LCCをまとめて比較できるサイトで、いちど最安値をチェックしておくと安心ですよ。
【トラベリスト】
で航空券をまとめて比較する
【地元住民に直撃!】朝日町の本当の魅力を聞いてみた

Q1.あなたのご職業を教えてください。
りんご農家です。無袋ふじを作っています。袋をかけない栽培をこの町が全国で最初に確立したもので、父の代からずっとその流儀でやってきました。
摘果、葉摘み、玉回し。手間はかかりますが、太陽をまるごと浴びたりんごは蜜の入りが違います。朝日町のりんごは味で勝負してきたんです。
Q2.朝日町に来て絶対行くべき場所はどこだと思いますか?
まずは空気神社ですね。ブナ林の中に鏡板が置いてあるだけなんですが、風が抜けると木の匂いが変わる。あの静けさは行かないとわかりません。
地元の者としては椹平の棚田を推します。一本松公園から見下ろすと、扇が広がっている。五月の水鏡に朝の空が映る時間が朝日町観光の白眉です。あとは大沼の浮島も、忘れないでほしい。
Q3.朝日町でお土産を買うとしたらなんですか?
順当なところで、りんごと朝日町ワインです。町の顔ですから、まずこれを持って帰ってほしい。ワインは町とここの農家で育ててきたものです。
地元の人間がよく買うのは、道の駅の産直に並ぶ加工品ですね。りんごのジュースやジャム。りんごの果汁を練り込んだ麺なんてものもあって、これは意外と喜ばれます。
Q4.外から人が来たときに、朝日町でまず連れていく店はどこですか?
店というより、りんご温泉に連れていきます。湯船に本当にりんごが浮いていて、油のような独特の匂いがする。あれで大抵の人は笑いますね。
あとは道の駅の軽食コーナー。派手さはありませんが、朝日町の有名なものは全部そこに集まっています。汗を流して、りんごの麺をすすってもらえば十分です。
Q5.朝日町はどんな気質だと思いますか?
口下手で、目立つのが苦手です。袋をかけないりんごは見た目が揃わない。それでも味を選んだあたりに、この町の性格が出ていると思います。
愛想はよくないかもしれません。ただ、雪の朝に隣の家の前まで除雪しておくようなことは当たり前にやる。派手に助け合うんじゃなくて、黙ってやるんです。
Q6.昔に比べて、朝日町の雰囲気や活気はどう変わったと感じますか?
正直、人は減りました。高校が町から無くなって、子どもたちは外へ通う。商店の灯りも一つ、また一つと消えていきました。そこは誤魔化せません。
ただ、りんご作りを覚えたいと言って町の外から来る若い人が増えたのは、私らの世代にはありがたい話です。町長も移住の受け入れには熱心です。静かですが、細く続いています。
Q7.朝日町のこれから新しくできる施設や、期待している活動などはありますか?
朝日連峰の麓の森で、宿泊施設を一新する計画が進んでいると聞いています。空気神社のある森ですから、あそこが賑わえば町の空気も変わるでしょう。
それと、町全体を博物館に見立てるという考え方が昔からあります。創遊館を軸に、朝日町水源の山も棚田も暮らしも見せていく。派手な箱物より、そちらに期待しています。

