名取市(なとりし)は、宮城県の中央南部・太平洋岸に位置する人口約7万9千人の市です。北は名取川を挟んで仙台市に接し、市内には東北の空の玄関口・仙台空港があります。
名取市の魅力を5つに凝縮すると、こうなります:
- ✅ 閖上(ゆりあげ)の赤貝──築地で「本玉」と呼ばれる高級食材、日本有数の水揚げ
- ✅ 雷神山古墳──墳丘長168mの東北最大の前方後円墳(国の史跡)
- ✅ 仙台空港──名取市と岩沼市にまたがる、東北の空の玄関口
- ✅ 花とせりの里──カーネーションは東北一、仙台せりは宮城県内生産の約8割
- ✅ 名取熊野三社──熊野三山をそっくり写した、全国的にも珍しい古社
「海の幸を味わいたい旅行者」「古墳や古社など歴史に興味がある人」「空港アクセスのよい仙台近郊で暮らしたい移住希望者」に向いた町です。本記事では、序盤で観光・産業の見どころ、中盤で古代から震災復興までの歴史、終盤で方言・食卓・特産品まで、名取市の素顔を順に紹介します。
| 人口 | 78,961 人 ※2026年5月1日時点(推計人口) |
|---|---|
| 面積 | 98.20 km² |
| 人口密度 | 804 人/km² |
地理的には、北から西は仙台市(太白区・若林区)、南は岩沼市、西は村田町に接し、東は太平洋に面しています(出典:公益財団法人日本交通公社 全国観光資源台帳)。市の西部は高舘丘陵・愛島丘陵のなだらかな丘、東部は仙台平野(名取平野)の肥沃な田園が広がります。
北の仙台市との境を流れる名取川の河口に、漁港と港町・閖上があります。JR東北本線・国道4号・東北新幹線・仙台東部道路が市内を縦貫し、仙台空港アクセス線でJR仙台駅と仙台空港が直結しています。火山こそありませんが、海・古墳・古社・花・空港と、見どころが平野のあちこちに散らばっています。ひとつずつ見ていきましょう。
名取市の推しポイント

名取市の顔は、ひとことで言えば「海と歴史と空港」です。閖上の赤貝に代表される海の幸、東北最大の古墳や全国でも珍しい熊野三社が物語る古代からの歴史、そして東北の空の入口となる仙台空港。さらに花とせりの一大産地でもあります。ここからは、その代表的な5つを順番に紹介していきますね。
推しポイント1:閖上の赤貝──築地で「本玉」と呼ばれる海の宝
名取市最大の名物が、港町・閖上で水揚げされる閖上赤貝です。日本有数の水揚げ量を誇り、東京の市場では「本玉」と呼ばれる高級食材として評価されています(出典:名取市観光物産協会)。地元では握りだけでなく、ぜいたくに丼で味わえるのもこの町ならではです。
推しポイント2:雷神山古墳──東北最大の前方後円墳
愛島丘陵の東端には、墳丘長168mの雷神山古墳が横たわっています。東北地方最大の前方後円墳で、4世紀末〜5世紀初め頃に築かれ、国の史跡に指定されています(出典:名取市)。仙台平野を一望する高台に立つと、古代にこの平野を治めた首長の力の大きさが想像できます。
推しポイント3:仙台空港──東北の空の玄関口
名取市と南隣の岩沼市にまたがって、東北の空の玄関口・仙台空港があります。前身は1940年に下増田村に開かれた名取飛行場で、戦後に民間空港となりました。仙台空港アクセス線でJR仙台駅と直結しており、空港のすぐそばに住めるのも名取市暮らしの魅力のひとつです。
推しポイント4:名取熊野三社──熊野三山を写した古社
高舘丘陵のふもとには、紀州の熊野本宮・新宮・那智をそれぞれ別々に勧請した名取熊野三社が鎮座しています。三社を合祀せず、本場の熊野三山をそっくり引き写したかたちは、全国的にもとても珍しいものです(出典:名取市観光物産協会)。平安時代から続く信仰の道を、今も半日かけて巡ることができます。
推しポイント5:花とせりの里──東北一のカーネーションと仙台せり
名取市は、知る人ぞ知る花とせりの産地でもあります。カーネーションの出荷量は東北一を誇り(出典:名取市)、鍋の主役になる「仙台せり」は宮城県内生産の約8割を名取市が占めています(出典:名取市観光物産協会)。海の幸だけでなく、土の幸も豊かな町なんですよ。
名取市の歴史

名取市の歩みは、大きく3つの時代に分けて眺めると分かりやすくなります。第一に、東北最大の古墳や熊野三社を生んだ古代。第二に、奥州街道の宿場町・増田と港町・閖上が栄えた近世。そして第三に、6つの町村が一つになって市制を敷き、震災を乗り越えて復興へ向かう近現代です。順に見ていきます。
古代──雷神山古墳と名取熊野三社
名取の地には、4世紀後半の古墳時代前期から多くの古墳が築かれました。なかでも愛島丘陵東端の雷神山古墳は、墳丘長168mの東北最大の前方後円墳で、仙台平野一帯を治めた首長の墓とされ、1956年(昭和31年)に国の史跡に指定されています(出典:宮城県)。平安時代には高舘丘陵のふもとに紀州熊野の三社が勧請され、名取熊野三社が形成されました。8世紀には「名取郡」という郡が置かれ、文献にも「名取」の名が登場します。
近世──奥州街道の増田宿と港町・閖上
戦国時代を経て名取の地は伊達領に組み込まれ、近世を通じて仙台藩に属しました。仙台藩が新たに奥州街道を開くと、街道沿いの増田には宿場(増田宿)が置かれ、三と七のつく日に市が立ってにぎわいました。一方、名取川河口の閖上は、貞山堀の水運の拠点として、また漁業集落として栄えていきます。今の市街中心部にあたる増田と、漁港の閖上という二つの核が、この時代に形づくられました。
近現代──6町村の合併から市制、そして震災と復興
1889年(明治22年)の町村制で、増田村・東多賀村(のちの閖上町)・下増田村・館腰村・愛島村・高舘村の6村が生まれました。1955年(昭和30年)にこの6町村が合併して名取町となり、1958年(昭和33年)に市制を施行して名取市が誕生します。その後は仙台市のベッドタウンとして宅地開発が進みました。2011年(平成23年)3月11日の東日本大震災では、閖上地区や下増田の沿岸が津波の大きな被害を受け、多くの命が失われました。現在、閖上には商業施設「かわまちてらす閖上」や震災メモリアル公園が整備され、復興と伝承の歩みが続いています。
名取市の文化・風習

方言と話し方の特徴
名取市で話される言葉は、宮城県全域で使われる「仙台弁(宮城弁)」の仲間です。県南の沿岸という土地柄もあって、やわらかな響きが特徴なんですよ。みなさんが旅行で戸惑いやすいのが、強い同意を表すだから(だからね)(そうだよね・本当にそうだね)。標準語の接続詞とはまったく別の使い方をします。
ほかにも、ぴったりの標準語がないと言われるいずい(しっくりこない・違和感がある)、なげる(捨てる)、うるかす(米や食器を水に浸す)、強調のいきなり(とても・すごく)などが日常で使われています。語尾に〜だべや〜っちゃがつくのも東北らしい話し方です。「ゴミなげといて」と言われて投げ捨てないよう、覚えておくと安心ですよ。
食卓と季節の暮らし
名取の食卓は、海と田畑の恵みがそのまま並びます。冬から春にかけては、閖上の赤貝や根まで丸ごと味わう仙台せりの鍋が登場し、夏には閖上しらすが食卓をさっぱりと彩ります。名取川の河口や貞山堀のまわりを歩けば、漁港と田園が地続きに広がる景色に出会えます。海のものと土のものが、ひとつの町で季節ごとにそろう──そんな豊かさがこの町の暮らしにはあります。
海とともにある気質と地域のつながり
港町・閖上を抱える名取市は、震災という大きな試練を地域ぐるみで乗り越えてきた町です。閖上で長く親しまれてきた夏まつりも、内陸での開催を経て港町に戻り、今では大漁船パレードや花火が夏の風物詩として受け継がれています。海と隣り合って暮らしてきた人々の、粘り強さと温かさが伝わってくる土地柄です。仙台に近く新住民も多い一方で、古くからの祭りや信仰が今も大切に守られています。
名取市の特産品・食

特産品1:閖上赤貝
名取と言えば、まずこれ。閖上赤貝です。ぷりっと締まった身は、柔らかさの中に弾力があり、噛むほどに甘みと磯の香りが広がります。旬は1月〜4月頃。水揚げの約8割が首都圏へ出荷され、1kgあたり5,000円以上で取引されることもある高級食材です(出典:名取市観光物産協会)。銀座の高級寿司店では一貫の握りになる赤貝を、地元・閖上ではぜいたくに丼で味わえます。寿司好きなら一度は食べてみてほしい一品なんですよ。
特産品2:仙台せり
冬の名取を代表するのが仙台せり。葉・茎・根まで丸ごと食べられるのが特徴で、シャキシャキした食感と独特の香りがクセになります。旬は冬で、鴨や鶏のだしで煮込む「せり鍋」は、根っこの土の香りまで楽しむのが地元流です。元和年間(17世紀初め)から続く名産品とされ、「仙台せり」の宮城県内生産の約8割を名取市が占めています(出典:名取市観光物産協会)。良質な水に恵まれた名取の土壌が、この香り高いせりを育てています。
特産品3:閖上しらす・笹かまぼこ
夏の名物が閖上しらす。仙台湾(閖上沖)で獲れる「北限のしらす」で、漁期は7月〜11月。港を出てすぐの前浜で漁獲し、漁港近くの加工場ですばやく加工するため、鮮度は抜群です。ふんわり甘い生しらすや釜揚げを、玉子丼にのせて味わうのがおすすめ。あわせて知っておきたいのが、笹かまぼこのルーツがこの閖上にあるという点。明治期に大漁のヒラメを保存加工した「手のひらかま」が、今の笹かまぼこの前身と伝えられています(出典:名取市観光物産協会)。
特産品4:カーネーション
食べ物ではありませんが、名取の自慢として外せないのがカーネーションです。出荷量は東北一を誇り、「名取のカーネーションは品質が良く、きれいで日持ちする」と高く評価されています(出典:名取市)。栽培の歴史はおよそ1940年頃に始まり、出荷時期は11月〜6月。母の日が近づくと、この町から色とりどりの花が全国へ旅立っていきます。摘み取り体験ができるのも、花の里・名取ならではの楽しみです。
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名取市の観光スポット

名取市の見どころは、大きく分けて二つの方向にあります。ひとつは名取川河口の港町・閖上(ゆりあげ)に広がる「海と復興」のエリア。もうひとつは西部の高舘・愛島丘陵にひろがる「古代と信仰」のエリアです。海の幸と震災の記憶、東北最大の古墳と全国でも珍しい古社──まずはこの二つの顔を押さえると、町の輪郭がぐっとつかめますよ。
海と復興を感じるスポット(閖上)
- かわまちてらす閖上 – 名取川沿いに飲食店や物販店が並ぶ、閖上のランドマーク的な商業施設です(出典:名取市観光物産協会)。閖上赤貝の丼やしらす、笹かまの手焼き体験まで、海辺の風を浴びながら食べ歩きできるのが楽しいんですよ。テラス席に座ると、目の前を流れる名取川と閖上大橋がきらきら光って、来るたびに深呼吸したくなる場所です。
- ゆりあげ港朝市 – 約50店舗が並ぶ朝市で、営業は日曜日・祝日の6:00〜13:00です(出典:ゆりあげ港朝市公式サイト)。買った魚介をその場の炭火コーナーで焼いて頬張れるのが醍醐味。毎週日曜の10時からは誰でも参加できる「せり市」が開かれ、威勢のいい掛け声が港に響きます。早起きして向かう価値のある、朝のごちそうですよ。
- 名取市震災復興伝承館 – 東日本大震災の記憶と教訓を伝える施設で、入館は無料。開館時間は4〜11月が9:30〜16:30、12〜3月が10:00〜16:00で、火曜日が休館です(出典:名取市震災復興伝承館)。震災前の閖上の街を再現したジオラマや、復興のあゆみのパネルは、海と生きてきたこの町を理解する出発点になります。となりには震災メモリアル公園も整備されています。
古代と信仰をたどるスポット(高舘・愛島)
- 雷神山古墳 – 墳丘長168mの東北最大の前方後円墳で、国の史跡に指定されています(出典:名取市)。古墳のてっぺんに立つと、仙台平野と仙台空港を発着する飛行機が一望できます。古代の首長が見たであろう景色を、そのまま味わえるのがこの場所のすごいところなんですよ。広い芝生なので、晴れた日のお散歩にもぴったりです。
- 名取熊野三社(熊野本宮社・熊野神社・熊野那智神社) – 紀州熊野の本宮・新宮・那智を、それぞれ別々に勧請した古社です。三社を地理までなぞって別々に祀った例は全国でもここだけとされています(出典:名取市)。中心の熊野神社(旧新宮社)には、県内唯一の「熊野造り」の本殿が残ります(出典:名取市観光物産協会)。三社を歩いてつなぐ熊野詣で、平安の祈りの道をたどってみてください。
- 熊野那智神社と高舘山 – 三社のひとつ・熊野那智神社は高館山の頂上付近に鎮座し、社宝の懸仏・銅鏡は国指定の有形文化財です(出典:名取市観光物産協会)。神門上の展望台からは、名取平野から閖上浜、太平洋までずっと見渡せます。元旦には海から昇る初日の出が正面に見えることで知られ、初夏には紫陽花が境内を彩ります。
- 名取市歴史民俗資料館 – 雷神山古墳や名取熊野三社など、町の歴史を深く学べる施設で、入館は無料です。開館は9:00〜17:00、月曜日(祝日の場合は翌日)が休館です(出典:名取市歴史民俗資料館)。敷地には雷神山古墳のおよそ10分の1サイズの前方後円墳を模した芝生広場もあって、古墳めぐりの前に立ち寄ると見方が変わりますよ。
名取市の観光ルート

名取市は、西の丘陵(古墳・古社)と東の海(港町・閖上)を一本の線で結べるのが旅のしやすいところです。名取駅を起点にすれば半日でも回れますし、仙台空港を起点にすれば、空の玄関口から海まで贅沢に1日かけて楽しめます。ここでは目的別に3つのルートを紹介しますね。
【車・1日】古代から海へ:名取まるごとルート
9:00 名取駅 → 9:15 雷神山古墳 → 10:00 名取熊野三社 → 11:30 名取市歴史民俗資料館 → 13:00 閖上(昼食)→ 14:30 名取市震災復興伝承館
①雷神山古墳(45分)→ 朝いちばんは人も少なく、丘の上から名取平野を見渡すのにいい時間帯です。
②名取熊野三社(90分)→ 本宮社・熊野神社・那智神社を順に巡ります。坂道もあるので歩きやすい靴がおすすめ。
③名取市歴史民俗資料館(60分)→ 午前に見た古墳や古社の背景を、ここで答え合わせするように学べます。
④閖上・かわまちてらす閖上(90分)→ 名物の閖上赤貝やしらすで遅めのランチ。川風を浴びながらのんびり過ごせます。
⑤名取市震災復興伝承館(45分)→ 一日の締めくくりに、海と生きてきた町の歩みに触れて。閉館時間に余裕をもって向かってください。
【車・半日】日曜の朝がねらい目:閖上満喫ルート
6:30 ゆりあげ港朝市 → 8:30 名取市震災復興伝承館 → 9:30 震災メモリアル公園 → 10:30 かわまちてらす閖上
①ゆりあげ港朝市(120分)→ 日曜・祝日限定の早朝スポット。焼きたての魚介で朝ごはんを食べ、10時からのせり市まで楽しむのが地元流です。
②名取市震災復興伝承館(60分)→ 朝市のあとに立ち寄れば、目の前の港の風景が違って見えてきます。
③震災メモリアル公園(30分)→ 静かに手を合わせ、海を眺める時間を。
④かわまちてらす閖上(60分)→ 最後はお土産選びとコーヒーで一息。半日でも閖上の今がぎゅっと味わえます。
【車・1日】広域ルート:空港から丘陵、そして海へ
10:00 仙台空港 → 10:40 雷神山古墳 → 11:30 名取熊野三社 → 13:30 杜せきのした(昼食・買い物)→ 15:00 かわまちてらす閖上
①仙台空港(40分)→ 東北の空の玄関口。展望スペースから離着陸する飛行機を眺めて旅のスタートです。
②雷神山古墳・名取熊野三社(150分)→ 西部の丘陵で、古代と信仰の名取をじっくり。空港利用者にも回りやすい立地です。
③杜せきのした周辺(90分)→ 仙台空港アクセス線の駅前で、大型商業施設に立ち寄って休憩・買い物を。
④かわまちてらす閖上(90分)→ 最後は海へ。丘から海まで一日で駆け抜ける、名取らしい横断ルートです。時間があれば、北隣の仙台市や南隣の岩沼市まで足を延ばすのもいいですよ。
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名取市の年間イベント

名取市の一年は、桜の春まつりに始まり、港町の大花火、そして秋の古社の神楽へと続いていきます。海・丘・桜と舞台を変えながら季節が巡るので、いつ訪れても何かしらの祭りに出会えるのが楽しいんですよ。代表的なものを季節順に紹介しますね。
春:なとり春まつりと熊野堂の舞楽
春の名取を彩るのが、毎年4月中旬に名取市役所周辺の桜並木で開かれる「なとり春まつり」です(出典:名取市観光物産協会)。満開の桜の下で郷土芸能のステージやフリーマーケットがにぎわい、家族連れの笑顔があふれます。
同じ4月、熊野神社では春の例祭で「熊野堂神楽」と「熊野堂舞楽」が奉納されます。舞楽は池の中に組んだ水上舞台で舞われ、春の例祭のときしか見られない貴重なもの。県指定の無形民俗文化財です(出典:名取市観光物産協会)。笛と太鼓の音が境内の池に響くさまは、ぜひ一度味わってほしい光景です。
夏:なとり夏まつりの大花火
夏の主役は、毎年8月上旬に閖上で開かれる「なとり夏まつり」です。名取市三大祭りのひとつで、2026年は8月8日に震災メモリアル公園周辺を会場として開催されます(出典:名取市)。閖上太鼓の響き、屋台の匂い、そしてフィナーレを飾る大花火──港町ならではの熱気が、夜の名取川いっぱいに広がります。震災を乗り越えて閖上に戻ってきた祭りだけに、込められた思いもひとしおなんですよ。
秋:熊野神社の秋例祭
秋には、熊野神社の秋の例祭(毎年10月)で再び「熊野堂神楽」が奉納されます(出典:名取市観光物産協会)。山伏が伝えたとされる古い舞は、出雲流の足の運びが特徴で、笛・太鼓・舞手の動きがぴたりと連動します。紅葉に染まりはじめた高舘の社で、土地に根づいた祈りの形に出会えますよ。
通年:ゆりあげ港朝市
季節を問わず楽しめるのが、日曜・祝日に開かれる「ゆりあげ港朝市」です(出典:ゆりあげ港朝市公式サイト)。冬はせり、春から夏はしらす、と並ぶ顔ぶれが移り変わるので、何度訪れても飽きません。朝の港のにぎわいそのものが、名取の通年イベントと言えますね。
名取市のエリア別の顔

名取市は、1955年に合併した6つの町村(増田・閖上・下増田・館腰・愛島・高舘)を母体にしているため、エリアごとに表情がはっきり分かれています。海の港町、旧街道の宿場町、丘陵の歴史地区、そして空港アクセス線沿いの新しい街。旅する視点で、それぞれの顔を見ていきましょう。
閖上エリア──海と復興の港町
名取川の河口に広がる、漁業と港の町です。かわまちてらす閖上やゆりあげ港朝市、震災復興伝承館が集まり、海の幸と震災の記憶の両方に触れられます。観光でいちばん時間をかけたいエリアで、朝市の朝、夕暮れの川風と、訪れる時間によって違う表情を見せてくれますよ。
増田・名取駅エリア──旧奥州街道の宿場町
仙台藩時代に奥州街道の増田宿が置かれた、市の中心部です。三と七のつく日に市が立ってにぎわった商いの町で、今も名取駅周辺に市役所や商店が集まります。歴史民俗資料館もこのエリア。古い街道筋の落ち着いた空気を感じながら、町歩きを楽しむのに向いています。
高舘・愛島エリア──丘陵の歴史と自然
西部の高舘丘陵・愛島丘陵に広がる、名取の「古代と信仰」が詰まったエリアです。雷神山古墳、名取熊野三社、高舘山がここに集まっています。坂道と緑が多く、神社めぐりやハイキング気分の散策にぴったり。展望のきく高台が多いので、平野と海を見晴らしたい人におすすめですよ。
杜せきのした・空港エリア──空の玄関口と新しい街
21世紀に入って仙台空港アクセス線が開業し、杜せきのた・美田園エリアでは新しい街づくりが進みました。大型商業施設が建ち、空港を行き交う人でにぎわう、名取のいちばん新しい顔です。空港利用のついでに買い物や食事を楽しみたい旅行者に向いたエリアと言えます。
名取市の気候・季節の暮らし

名取市は太平洋に面した、温暖湿潤気候の町です。隣接する仙台の平年値では年平均気温はおよそ13℃で、名取もこれに近い穏やかな気候です(出典:気象庁)。西に奥羽山脈が壁のようにそびえているため、東北の中では雪が少なく、冬でも晴れる日が多いのが暮らしやすいところなんですよ。
夏──6月〜8月の暮らし
夏は太平洋からの海風が入るため、真夏でも気温が上がりすぎず、猛暑日は比較的少なめです。蒸し暑さが続く期間が短く、夜も寝苦しくなりにくいのが助かります。
梅雨どきはオホーツク海からの冷たい空気の影響で、じめじめというよりひんやりした「梅雨寒」になることも。薄手の上着が一枚あると安心ですよ。
冬──12月〜2月の暮らし
冬は晴天が多く、まとまった雪は少なめです。日本海側の豪雪地帯のような雪かきの負担は小さく、車も動かしやすい冬と言えます。
ただし、よく晴れた朝は放射冷却で冷え込みます。日中は穏やかでも朝晩の寒暖差が大きいので、暖房と厚手のコートはしっかり用意しておきたいところです。
春と秋──桜と実りの季節
春は4月、名取市役所周辺の桜並木が一斉に咲き、なとり春まつりでにぎわいます。一年でいちばん町が華やぐ季節です。
秋は実りの季節であると同時に、9月ごろは降水量が増え、台風が近づくこともあります。名取川や丘陵地では大雨への備えを意識しておくと安心です。
名取市の移住・暮らし情報

名取市は、東北最大の都市・仙台市のすぐ南に位置する、暮らしと利便性のバランスがいい町です。仙台への通勤圏でありながら、海も丘も近く、空港まで電車一本。「都会すぎず、田舎すぎず」をちょうどよく両立できるのが、住む町としての名取の強みなんですよ。
通勤・通学
名取駅からJR東北本線で仙台駅まで約15分と近く、仙台へ通勤・通学する人が多く暮らしています。仙台のベッドタウンとして、1980年代後半から宅地開発が本格化してきた歴史があります。
住宅環境
家賃はおよそ4万〜8万円が中心で、6万〜8万円の物件が特に多いエリアです(出典:SUUMO)。単身向けのアパートからファミリー向けまで幅広く、築浅物件も探しやすい傾向があります。
買い物環境
市内には大型商業施設のイオンモール名取があり、日常の買い物はこことロードサイド店でほぼ完結します。週末は閖上のかわまちてらす閖上やゆりあげ港朝市で、新鮮な魚介を買い足すのも名取らしい暮らし方ですよ。
子育て・教育
市内には市立の小学校・中学校に加え、私立大学や国立高専もあります(出典:名取市)。子ども医療費の助成や児童手当、産後ケア事業、ファミリー・サポート・センターなどの子育て支援も整えられています(出典:名取市子育て応援サイト)。
医療環境
名取市内には、宮城県立がんセンターや宮城県立精神医療センターといった県立の医療機関が立地しています。専門的な医療の拠点が市内にあるのは、暮らすうえで心強いポイントです。隣接する仙台市の大病院にもアクセスしやすい立地です。
エリア別の暮らし視点
住む視点で見ると、名取はエリアごとに表情が分かれます。名取駅・増田エリアは商業と交通が集まる暮らしの中心。杜せきのした・美田園エリアは仙台空港アクセス線沿いの新しい住宅地で、子育て世帯に人気です。
高舘・愛島エリアは丘陵の落ち着いた住環境、閖上エリアは海と復興公園が身近な港町です。仙台通勤なら駅近エリア、静かさ重視なら西部の丘陵、と暮らし方で選び分けられますよ。
名取市へのアクセス

名取市は、鉄道・高速道路・空港がそろう交通の要衝です。仙台都心へは電車で約15分、そして市内には東北の空の玄関口・仙台空港。県外からも県内からもアクセスしやすいのが、この町の大きな特徴なんですよ。
車でのアクセス
市内には仙台東部道路の名取ICと仙台空港IC、そして北西部に近接して東北自動車道・仙台南部道路の仙台南ICがあります。仙台都心までは車でおよそ30分。高速道路網が充実しているので、車移動が中心の暮らしにも向いています。
鉄道+バスでのアクセス
首都圏からは、東北新幹線で東京駅から仙台駅まで約1時間30分、そこからJR東北本線に乗り換えて名取駅まで約15分です。名取駅から仙台駅までの運賃は260円(IC253円)です(出典:仙台空港鉄道)。市内の移動には、市民バス「なとりん号」も走っています。
飛行機でのアクセス
仙台空港を使えば、全国各地から名取へ直接アクセスできます。仙台空港駅から名取駅までは仙台空港アクセス線でわずか約11分、運賃420円(IC419円)です(出典:仙台空港鉄道)。空港から仙台駅へも快速で約17分と、乗り換えなしで結ばれています。
町内移動の現実的アドバイス
観光でも暮らしでも、名取は車があると動きやすい町です。西の丘陵(古墳・熊野三社)と東の海(閖上)は少し離れているので、両方を回るなら車かレンタカーが便利ですよ。鉄道は名取駅と空港アクセス線の3駅が主軸なので、駅から離れたスポットはバス「なとりん号」と組み合わせると安心です。
交通手段ごとに見てきましたが、「結局いちばん安く行くにはどうすれば?」と迷う方も多いはず。飛行機で向かうなら、航空券は予約のタイミングや会社によって料金が大きく変わります。複数の航空会社・LCCをまとめて比較できるサイトで、いちど最安値をチェックしておくと安心ですよ。
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【地元住民に直撃!】名取市の本当の魅力を聞いてみた

Q1.あなたのご職業を教えてください。
せりを作っています。名取のせりは根っこまで食べられるのが自慢で、冬になると鍋用に出荷が忙しくなるんですよ。良質な水に恵まれた土地だからこそ育つもので、何十年もこの仕事を続けてきました。
地味な仕事ですが、自分の育てたせりが鍋の真ん中で湯気を立てているのを想像すると、毎年やめられないんです。土と水と向き合う暮らしが、私には合っているんでしょうね。
Q2.名取市に来て絶対行くべき場所はどこだと思いますか?
やっぱり海沿いの閖上ですね。名取川の河口に立つと、水面がきらきら光って、港町らしい風が吹き抜けていきます。震災を越えてここまで戻ってきた場所なので、見ていただきたい気持ちがあります。
地元の人間としては、西の高館山の上にある古い社もおすすめです。平野と太平洋がぜんぶ見渡せて、朝の澄んだ空気の中で手を合わせると、背筋がすっと伸びるんですよ。
Q3.名取市でお土産を買うとしたらなんですか?
オーソドックスなところでは、笹の形をしたかまぼこですね。このあたりが発祥と言われていて、焼きたてを食べられる場所もあります。お酒のお供にも喜ばれます。
地元ならではというと、やっぱりせり。冬場なら根つきのものを束で買って帰ってもらいたいです。あとは港で揚がる小魚を干したものも、知る人ぞ知る名取の味なんですよ。
Q4.外から人が来たときに、名取市でまず連れていく店はどこですか?
海のそばの、地物の貝や魚を食べさせてくれるお店に連れていきます。名取の赤貝は身が厚くて甘くて、丼にしてもらうと贅沢そのもの。観光の方はたいてい驚かれますよ。
日曜の朝なら、港の朝市もいいですね。買ったものをその場の炭火で焼いて、潮の匂いの中で頬張る。あの活気と香ばしさは、お店とはまた違うごちそうなんです。
Q5.名取市はどんな気質だと思いますか?
海と田畑の両方で生きてきた町なので、働き者で粘り強い人が多いと思います。派手さはないけれど、いざというときは地域でぐっと力を合わせる。震災のあともそうでした。
仙台が近くて新しく移ってきた方も多いので、よそ者を変に身構えない、さっぱりした空気もありますね。距離の取り方が上手な人たちだなと感じます。
Q6.昔に比べて、名取市の雰囲気や活気はどう変わったと感じますか?
正直に言うと、震災で沿岸の景色はすっかり変わってしまいました。失ったものは戻りません。それでも港のまわりに人が集まる場所ができて、笑い声が戻ってきたのは本当にうれしいです。
一方で、空港に近い側はどんどん新しい街になって、昔ながらの田んぼや宿場の面影は少しずつ薄れています。便利になった分、寂しさも正直あるんですよ。
Q7.名取市のこれから新しくできる施設や、期待している活動などはありますか?
大きな施設というより、海辺ににぎわいが続いていくことを一番期待しています。朝市や水辺の場所に若い人が関わって、新しい店や催しが生まれているのを見ると頼もしいです。
あとは、せりや赤貝といった名取の食を、もっと外の人に知ってもらう動きが広がるといいですね。古い社や古墳をめぐる町歩きも、これから育っていってほしいと願っています。

