矢巾町(やはばちょう)は、岩手県のほぼ中央部、紫波郡に属する町です。県庁所在地・盛岡市の南に隣接し、北上盆地の田園地帯に市街地が広がります。面積67.32km²に約2万7千人が暮らし、岩手県内でも有数の人口密度を持つコンパクトな町です。
矢巾町の魅力を5つに凝縮すると、こうなります:
- ✅ 徳丹城跡──「律令制最後の城柵」とされる平安初期の遺跡(国指定史跡)
- ✅ 岩手医科大学・附属病院──東北最大規模の病院が移転した「医療と学園のまち」
- ✅ 盛岡のベッドタウン──過疎の進む岩手で人口が増えてきた数少ない町
- ✅ 徳田米(とくでんまい)──藩政時代に殿様へ献上された歴史を持つ米どころ
- ✅ 奇祭・スミつけ祭り──顔に炭を付け合う、約400年続く2月の伝統行事
「歴史や古代史に興味がある人」「盛岡近郊で暮らしやすい移住先を探している人」「ちょっと変わったお祭りを体験したい人」に向いた町です。この記事では、古代城柵から医大移転後の今、地元の食や暮らし、方言まで、序盤・中盤・終盤に分けて紹介します。
| 人口 | 26,982 人 ※2026年5月1日時点(推計人口) |
|---|---|
| 面積 | 67.32 km² |
| 人口密度 | 401 人/km² |
地理的には、北は盛岡市、西は岩手郡雫石町、南は紫波町に接しています(出典:雫石町公式サイト)。東側は北上川で区切られ、その対岸も盛岡市と紫波町の市域にあたります。鉄道はJR東北本線の矢幅駅が中心部にあり、2018年には東北自動車道の矢巾スマートICも開通しました。
古代の城跡、最先端の大学病院、田園に咲くひまわり――小さな町に時代の異なる「顔」がいくつも同居しています。ひとつずつ見ていきましょう。
矢巾町の推しポイント

矢巾町を語るなら、まず1200年前の徳丹城跡。そして時代を一気に飛ばして、町の今をつくった岩手医科大学の移転。さらに宮沢賢治が愛した南昌山と夏のひまわり、真っ黒になって笑い合うスミつけ祭り、そしてプロレス団体の「聖地」――。historical にも文化的にもバラバラなのに、どれも矢巾の顔なんですよ。5つを順番に紹介します。
推しポイント1:徳丹城跡──律令制最後の城柵
矢巾町徳田にある徳丹城(とくたんじょう)は、平安時代初期の弘仁3年(812年)頃に征夷将軍・文室綿麻呂によって造られた、律令制で最後に築かれた城柵とされています。盛岡市にあった志波城が雫石川の水害を受けたため、その機能を南へ移して築かれたものです。一辺約350mのほぼ正方形で、昭和44年(1969年)に国の史跡に指定されました(出典:いわての文化情報大事典(岩手県))。今は史跡公園として整備され、隣の歴史民俗資料館で出土品を見ることができます。
推しポイント2:岩手医科大学と「医療・防災のまち」
2007年に岩手医科大学の矢巾キャンパスが完成し、2019年9月には附属病院が盛岡市から移転・開院しました。東北でも最大規模の大学病院が町に来たことで、医療系の事業所や賃貸住宅が一気に増えたんですよ。県の防災センターも置かれ、矢巾町は「高度医療と防災の拠点」という新しい顔を持つようになりました。
推しポイント3:南昌山と煙山ひまわりパーク
町の西にそびえる南昌山(なんしょうざん)は、宮沢賢治が愛したことで知られる山。元禄16年(1703年)に「南部の繁昌」を願って改名されたという由来もあります。そして夏、煙山地区の「煙山ひまわりパーク」には30万本を超えるひまわりが咲きそろいます。黄色い花畑の向こうに南昌山の緑が重なる景色は、晴れた8月の矢巾を代表する風景です。
推しポイント4:奇祭・スミつけ祭り
毎年2月、燃やした杉の枝の消し炭を、お互いの顔に付け合う「スミつけ祭り」。約400年前から城内地区に伝わる年越し行事で、火難よけや無病息災を願います(出典:矢巾町公式サイト)。始まると会場は無礼講。大人も子どもも見物人も、あっという間に真っ黒になります。汚れてもいい服で行くのがお約束です。
推しポイント5:みちのくプロレスの聖地
東北を拠点とするみちのくプロレスは、旗揚げの地である矢巾町を「聖地」としていて、旗揚げから30年以上経った今も、矢巾町民総合体育館をビッグマッチの会場にしています。古代史の町でありながら、熱いプロレス興行の原点でもある――この振れ幅も矢巾町らしさだと思います。
矢巾町の歴史

矢巾町の歴史は、大きく3つの時代で語れます。古代は朝廷の最前線基地・徳丹城が置かれた時代。近世は北上川流域の新田開発で米どころとして栄えた時代。そして現代は、盛岡のベッドタウンとして人口を増やし、大学病院を迎えた時代です。縄文時代の遺跡も多く、和味地区の月が森遺跡など大規模なものが見つかっています。
古代──徳丹城が置かれた最前線
平安時代初期、朝廷の蝦夷経営の拠点として、弘仁3年(812年)頃に徳丹城が造営されました。志波城(現在の盛岡市)の機能を引き継いだ城柵で、戦いの城から行政的な性格の城へと役割が移り変わる、時代の転換点に位置づけられています(出典:いわての文化情報大事典(岩手県))。
近世──新田開発と米どころの形成
慶長4年(1599年)、金山師・鎌津田甚六による鹿妻穴堰(かづまあなぜき)の開削が、この地域の農業生産力を大きく押し上げました。北上川西岸の新田開発が進み、徳田地区の米は藩主への献上米として知られるようになります。元禄16年(1703年)には、毒ケ森が南昌山と改名されました。
近代から現代──合併と発展
1889年(明治22年)の町村制施行を経て、1955年(昭和30年)に煙山村・徳田村・不動村が合併し矢巾村が成立。1966年(昭和41年)に町制を施行して矢巾町となりました。2007年の岩手医科大学キャンパス完成、2018年の矢巾スマートIC開通、2019年の附属病院移転と、平成以降は盛岡近郊の拠点として急速に発展しています。
矢巾町の文化・風習

盛岡に隣接する矢巾は、暮らしの空気も盛岡都市圏のリズムに近いところがあります。それでいて、田んぼと南昌山に囲まれた田園のゆったり感も残っている。都市と田舎のちょうど中間にある暮らしぶりを、言葉・食卓・人の気質の3つから見ていきましょう。
方言と話し方の特徴
矢巾町は旧南部藩の領域で、盛岡市に近い「盛岡弁系(南部弁)」の言葉が使われる地域です。会話に出てくる言葉をいくつか紹介すると、めんこい(かわいい)、んだ・んだべ(そうだ・そうだよね)、わんつか(少し・ちょっぴり)、方向を示す格助詞の〜さ(〜へ。「山さ行く」で「山へ行く」)などがあります。相づちのだからさ(そうなんだよ)は、標準語の「だから」とは意味が違うので、よそから来ると一瞬戸惑うかもしれません。語尾がやわらかく、聞いていてどこかほっとする話し方です。
食卓と季節の暮らし
食卓の主役は、なんといってもごはん。徳田米でつやつやに炊いたお米があれば、おかずはシンプルでも十分なんですよね。冬は雪に閉ざされる内陸性の気候なので、温かい汁物や鍋が恋しくなる季節。夏はひまわりが咲き、秋には収穫を祝う「秋まつり」で、米6俵分ともいわれる豪快な餅まきが行われます。
人の気質と地域のつながり
地元の人いわく、矢巾の魅力は「いつ訪ねてもやさしく迎え入れてくれる町民」だそうです。盛岡近郊で利便性が高いのに、人と人の距離はゆったり、ほっこり。スミつけ祭りで初対面の人とも真っ黒になって笑い合えるのは、こうした気質があってこそだと思います。みなさんも一度、町の人と話してみてください。
矢巾町の特産品・食

矢巾の食を語るなら、まずはお米。そしてハウスで育つきのこや野菜。盛岡に近い立地を活かした近郊農業で、まちの食卓を支える顔ぶれがそろっています。代表的なものを紹介します。
特産品1:徳田米(とくでんまい)
北上川沿いの徳田地区で育つお米は、藩政時代に藩主への献上米として作られていた歴史を持つブランド米です(出典:矢巾町公式サイト)。品種はひとめぼれを中心に、岩手県のブランド米「銀河のしずく」やササニシキ、新顔の「つきあかり」など。つやと適度な粘り、口あたりのよさが持ち味で、冷めてもおいしいのでおにぎりやお弁当にもぴったり。旬は新米の出回る9月〜秋です。まずは炊きたてを一膳、何もかけずに食べてみてほしいんですよ。
特産品2:きくらげ・しいたけ
矢巾町ではきくらげやしいたけの栽培も盛んで、ふるさと納税でも生きくらげが人気を集めています。生のきくらげは乾燥ものとは別物で、コリコリ・プリプリした食感が魅力。さっと湯通ししてポン酢で食べたり、炒め物に加えたりすると、その歯ごたえに驚くはずです。一年を通して安定して採れるのも、ハウス栽培ならではです。
特産品3:ズッキーニなどの野菜
夏から秋にかけては、ズッキーニをはじめとした野菜も矢巾の食卓を彩ります。採れたてのズッキーニは皮までやわらかく、油との相性がよいので、焼いたり炒めたりするとほんのりした甘みが引き立ちます。秋まつりでは、農家さんが手がけた野菜が市場より手頃な値段で並ぶので、その場で旬の味を確かめられます。
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矢巾町の観光スポット

矢巾町の見どころは、大きく「歴史」と「自然・温泉」の2方向です。1200年前の古代城跡をたどるか、宮沢賢治が愛した南昌山のふもとで温泉とひまわりを楽しむか。どちらも町の中心部から車で15分ほどの距離にまとまっているので、半日あればぐるりと回れます。序盤で触れたスポットを、ここから順番に深掘りしていきますね。
古代史を学べるスポット
- 徳丹城跡 – 弘仁3年(812年)頃に文室綿麻呂が築いた、律令制で最後の城柵とされる国指定史跡です(出典:矢巾町公式サイト)。今は史跡公園として整備され、5年計画の第2次整備で井戸跡のレプリカや遊歩道もお目見えしました。だだっ広い芝生に立つと、ここが朝廷の最前線だったとは思えないほど、のどかな時間が流れています。
- 矢巾町歴史民俗資料館 – 徳丹城跡のすぐ西隣にある資料館で、開館時間は午前9時〜午後4時30分、入場料は一般・大学生160円、小・中・高校生60円、月曜と年末年始が休館です(出典:矢巾町公式サイト)。徳丹城から出土した土器や木製品を見たあと、城跡を実際に歩ける立地が魅力です。県内有数の規模という南部曲家(佐々木家曲家)も併設されています。
自然と温泉を楽しむスポット
- 煙山ひまわりパーク – 岩手県林業技術センター東側の畑に、夏になるとひまわりが一面に咲きます。例年8月上旬から中旬が見ごろで、2025年はおよそ20万本が咲きました(出典:矢巾町公式サイト)。南昌山を背景に黄色い花畑を撮れる絶景スポットで、年によっては夜のライトアップも行われます。写真好きなら早めの時間に行くと、光がやわらかくておすすめですよ。
- 矢巾温泉「南昌の湯」(矢巾町国民保養センター) – 南昌山のふもとに湧くアルカリ性単純温泉で、営業時間は10:00〜21:00、毎月第3火曜と年末年始が休館です(出典:矢巾観光開発株式会社)。日帰り入浴も宿泊もでき、館内の食堂では郷土料理の「ひっつみ」やハトムギ入りの「さんさそば」が味わえます。湯冷めしにくい柔らかいお湯で、登山やスポーツのあとに立ち寄るのにぴったりなんですよ。
- 南昌山 – 標高848m、宮沢賢治が愛したことで知られる山です。5合目から階段で登る一般コースと、途中でロープを使う上級者向けの前倉コースがあり、毎年5月に山開きが行われます。山頂からの眺めはもちろん、ふもとの散策だけでも気持ちのいい場所です。
- 幣掛の滝(ぬさかけの滝) – 南昌山のふもと、矢巾温泉からほど近い渓流沿いにかかる滝です。温泉とセットで立ち寄れる距離なので、お湯に入る前後の軽い散策にちょうどいいんですよ。新緑や紅葉の季節は、水音と木立の空気がとくに心地よく感じられます。
- 和味フラワーパーク – 町の西部・和味地区にある、令和3年度にオープンしたひまわり畑です。ひまわりを見渡せる見晴らし台が設けられていて、煙山とはまた違った静かな雰囲気。混雑を避けてゆっくり花を眺めたい人に向いています。
町歩きと交流のスポット
- やはぱーく – JR矢幅駅東口にある活動交流センターで、図書機能や交流スペースを備えた町の新しい拠点です。すぐそばには屋台村「さんなり横丁ヤハバル」やねむの木公園もあり、駅前だけでも数時間楽しめます。電車で来てぶらりと過ごすのにちょうどいいエリアなんですよね。
- 矢巾町民総合体育館 – 東北発祥のみちのくプロレスが「聖地」とする会場で、旗揚げから30年以上を経た今もビッグマッチが組まれることがあります。興行のある日は、地元のファンと一緒に熱気あふれる時間を味わえます。
矢巾町の観光ルート

矢巾町はコンパクトな町なので、半日でも歴史と温泉を両取りできます。ここでは町内をぎゅっと回る定番ルートと、南昌山のふもとを歩く自然ルート、そして古代城柵をテーマに盛岡市へ足をのばす広域ルートをご紹介します。車があると動きやすいですが、駅前だけなら徒歩でも十分楽しめますよ。
【車・1日】徳丹城と温泉めぐりルート
9:30 矢幅駅 → 9:45 徳丹城跡・歴史民俗資料館(車5分)→ 11:30 矢幅駅前で昼食(車10分)→ 13:30 煙山ひまわりパーク(車15分)→ 15:00 矢巾温泉 南昌の湯(車5分)→ 17:00 矢幅駅
①徳丹城跡・歴史民俗資料館(約1時間30分)
→ 朝のすいた時間に古代城跡と出土品をじっくり。芝生が広いので、散歩がてら history を体に入れる感覚で歩くのがおすすめです。
②矢幅駅前エリア(約1時間)
→ やはぱーくや屋台村で昼食。地元の人で賑わう時間帯なので、町の日常の空気も一緒に味わえます。
③煙山ひまわりパーク(約1時間)
→ 夏なら一面のひまわり。南昌山を背に写真を撮るなら、光のやわらかい午後がきれいですよ。
④矢巾温泉 南昌の湯(約1時間30分)
→ 一日の締めは温泉で。夕方になると地元の人がお風呂道具片手に集まってきて、にぎやかになります。
【車・半日】南昌山ふもとの自然ルート
9:00 矢巾温泉 南昌の湯(出発)→ 9:20 幣掛の滝(車・徒歩)→ 10:30 南昌山(登山)→ 13:00 和味フラワーパーク(車)
①幣掛の滝(約30分)
→ まずは渓流沿いの滝で深呼吸。朝の澄んだ空気の中だと、水音がいっそう涼やかに響きます。
②南昌山(約2時間)
→ 一般コースなら無理なく山頂へ。賢治も眺めたであろう景色を、自分の足で確かめる時間です。
③和味フラワーパーク(約30分)
→ 下山後は静かなひまわり畑へ。見晴らし台からのんびり花を眺めて、半日の締めにどうぞ。
※登山を含むので、矢巾温泉は出発前か下山後の入浴利用がおすすめです。
【車・1日】広域ルート:古代城柵をたどる旅
9:00 矢巾町 徳丹城跡 → 10:00 盛岡市 志波城古代公園(車30分)→ 12:00 盛岡市内で昼食 → 13:30 盛岡城跡公園 ほか
①徳丹城跡(約1時間)
→ 律令制最後の城柵からスタート。ここが移転先だったことを頭に入れておくと、次が面白くなります。
②志波城古代公園(約1時間30分)
→ 盛岡市にある徳丹城の前身・志波城跡。外郭南門や築地塀が復元されていて、移転前の姿を体感できます。
③盛岡市中心部(昼食〜午後)
→ 城下町・盛岡へ。古代から近世まで、北上盆地の歴史が一日でつながる欲張りルートです。
【鉄道・徒歩】矢幅駅さんぽルート
矢幅駅東口 → やはぱーく → さんなり横丁ヤハバル → ねむの木公園(いずれも徒歩圏)
①やはぱーく(約1時間)
→ 駅を出てすぐの交流拠点。本を読んだり休んだり、旅の起点にちょうどいい場所です。
②ヤハバル・ねむの木公園(約1時間30分)
→ 屋台村でひと息ついて、公園でのんびり。車がなくても、駅前だけで町の雰囲気をしっかり味わえます。
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矢巾町の年間イベント

矢巾町には「四季のまつり」と呼ばれる季節ごとのお祭りがあり、春の徳丹城、夏のさんさ、秋の収穫祭、冬の奇祭と、一年を通して町が賑わいます。どれも町民が主役の手づくり感あるイベントなので、観光客もすっと混ざって楽しめるのがいいところなんですよ。季節ごとに見ていきましょう。
春:徳丹城春まつり
毎年4月、桜が咲く徳丹城跡公園で「矢巾町徳丹城春まつり」が開かれます(出典:岩手県公式サイト)。史跡めぐりツアーや昔あそび体験、屋台にフリーマーケット、そして平安衣装をまとった行列が会場を練り歩きます。岩手の初夏を告げる「チャグチャグ馬コ」のパレードも同時に行われ、馬と触れ合えるのが子どもたちに大人気なんですよ。
初夏:南昌山山開きとチャグチャグ馬コ前祝祭
5月には南昌山の山開きがあり、本格的な登山シーズンが始まります。6月には国の重要無形民俗文化財「チャグチャグ馬コ」にちなんだ前祝祭も町内で開かれます。鈴を鳴らして歩く着飾った馬の姿は、見ているだけで気持ちが華やぎますよ。
夏:矢巾町夏まつり
7月には矢巾町役場前を会場に「矢巾町夏まつり」が開かれます(出典:矢巾町公式サイト)。ステージでの歌やダンス、さんさ踊り、夜空に浮かぶスカイランタンと、夏の夜らしい熱気に包まれます。8月には煙山ひまわりパークが見ごろを迎え、町全体が黄色く輝く季節です。
秋:矢巾町秋まつり
秋には、その年の収穫を祝う「矢巾町秋まつり」が開かれます。矢巾の農家さんが育てたお米や野菜が並び、屋台やキッチンカー、ステージ発表で賑わいます。名物は、米6俵分ともいわれる豪快な餅まきと、一歳児が一升餅を背負って歩く「一歳児一升餅歩行大会」。地元の温かさが伝わってくるお祭りなんですよ。
冬:スミつけ祭り
2月には、序盤で紹介した奇祭「スミつけ祭り」が開かれます(出典:矢巾町公式サイト)。燃やした杉の枝の消し炭を、お互いの顔に付け合って無病息災を願う、約400年続く行事です。近年は町営キャンプ場でイルミネーションと同時開催され、雪あかりの中で真っ黒になって笑い合う、矢巾の冬の風物詩です。
矢巾町のエリア別の顔

矢巾町は小さな町ですが、エリアごとに表情がはっきり分かれています。駅前のにぎやかな中心部、古代史が眠る東の徳田、温泉と山が広がる西の煙山、そして新しく生まれた医大周辺。旅する視点で、どこをどう楽しむかを整理してみますね。
矢幅駅周辺エリア──町の玄関口でグルメと町歩き
JR矢幅駅の東口は、やはぱーくや屋台村ヤハバル、商業施設が集まる町の中心です。電車で来てまず降り立つのがこのエリア。食事や買い物をしながら、地元の人の日常に自然と溶け込めます。車がなくても歩いて楽しめるので、ふらっと立ち寄る旅に向いていますよ。
徳田エリア(西徳田)──古代史散策の中心
町の東寄り、西徳田には徳丹城跡と歴史民俗資料館が並びます。桜の季節には史跡公園が花に包まれ、春まつりの会場にもなります。歴史好きにはたまらない、ゆっくり時間をかけて歩きたいエリアです。
煙山エリア(西部山麓)──温泉・登山・花の里
町の西側、南昌山のふもとに広がる煙山エリアは、矢巾温泉やひまわりパーク、幣掛の滝、キャンプ場が集まる自然の宝庫です。登山やアウトドア、温泉でのんびりしたい人はこのエリアへ。一日かけて自然を満喫するのにぴったりなんですよ。
医大周辺エリア──新しく生まれた街並み
岩手医科大学と附属病院の移転で生まれた、矢巾のいちばん新しい顔がこのエリアです。整然とした道路沿いに、宿泊施設や飲食店が増えてきました。歴史や自然とはまた違う、これからの矢巾を感じたい人におすすめの一角です。
矢巾町の気候・季節の暮らし

矢巾町は北上盆地のなかにあり、夏は暑く冬は冷え込む、典型的な内陸性の気候です。町に気象台はないので、すぐ隣の盛岡(最寄りの観測地点)の平年値を目安にすると、年平均気温は10.6℃、年間の降雪量の合計は209cmです(出典:気象庁)。盆地特有の寒暖差があるぶん、季節の移ろいをはっきり感じられる町なんですよ。
夏──暑さと、ひまわりの季節
いちばん暑い8月でも平均23.5℃ほどですが、日中は30℃近くまで上がる日もあります(出典:気象庁)。盆地なので昼は蒸し暑く感じますが、朝晩はすっと涼しくなるのが内陸らしいところ。煙山ひまわりパークが見ごろを迎えるのもこの時期で、町がいちばん華やぐ季節です。
冬──雪はあるが、盆地の落ち着き
1月の平均気温は-1.6℃、最低気温の平均は-5.2℃まで下がります(出典:気象庁)。雪は積もりますが、奥羽山脈側の豪雪地帯ほどではなく、盆地のなかでは比較的落ち着いています。とはいえ朝の路面凍結は当たり前なので、冬の車生活には冬タイヤと早めの雪かきが欠かせません。
春と秋──短くも鮮やかな季節
春は4月下旬に桜が咲き、徳丹城跡公園が淡いピンクに包まれます。秋は朝晩の冷え込みとともに、南昌山のふもとが赤や黄色に染まっていきます。春と秋はやや駆け足で過ぎていきますが、そのぶん一日一日の変化が鮮やかで、散歩が楽しい季節なんですよね。
矢巾町の移住・暮らし情報

矢巾町は「盛岡に近いのに、田園の落ち着きもある」という、ちょうどいい距離感の町です。岩手県の中では数少ない人口が増えてきた自治体で、子育て世代の移住先としても注目されています。ここからは旅ではなく「暮らす視点」で、通勤・住まい・買い物・子育て・医療を順に見ていきますね。
通勤・通学
町内には岩手医科大学や流通センターなど大きな職場があり、町内で働く人も少なくありません。一方で、盛岡市まで車でも電車でも短時間で出られるので、盛岡へ通う人も多いエリアです。盛岡都市圏の一員として、通勤・通学の選択肢が広いのが強みです。
住宅環境
賃貸はワンルームや1Kでおよそ4〜5万円、ファミリー向けの2LDKでおよそ6万円前後が目安と考えられます(出典:SUUMO)。盛岡近郊で人気のベッドタウンのため、岩手の町村としては相場はやや高めです。医大移転後は駅東や医大周辺で新しい住宅も増えています。
買い物環境
矢幅駅周辺には、マックスバリュやDCMを核とする矢巾ショッピングセンター(イオンタウン)があり、日常の買い物に困ることはありません。医大周辺や駅西口にも商業施設が広がっています。スーパーも飲食店もコンパクトにまとまっているので、車があれば生活はとても回しやすいんですよ。
子育て・教育
幼稚園・保育園から小・中学校、高校、大学までが町内にそろう学園都市です。子育て支援も手厚く、高校生まで(18歳到達年度末まで)の医療費助成があり、所得制限はありません(出典:岩手県移住定住ポータルサイト)。東北最大級の屋内アスレチック施設「ジャンパランド」もあり、雪の季節でも子どもを思いきり遊ばせられます。
医療環境
2019年に岩手医科大学附属病院が移転・開院し、東北でも最大規模の大学病院が町内にあります。高度救命救急を担う病院がすぐそばにあるという安心感は、子育て世帯にも高齢世帯にも心強いポイントです。医療を軸にした「やさしいまちづくり」が、矢巾の今のテーマなんですよ。
エリア別の暮らし視点
住む視点で見ると、矢幅駅周辺は買い物も交通も便利な暮らしやすいエリア。医大周辺は新しい住宅と飲食店が増える成長エリアです。一方、煙山や和味など西部の山麓側は、田園と自然に近いゆったりした住環境で、相場も中心部より落ち着いていると考えられます。
矢巾町へのアクセス

矢巾町は、JR東北本線と国道4号、東北自動車道が通る交通の便のよい町です。県都・盛岡市にすぐ出られるうえ、東北新幹線やいわて花巻空港にもアクセスしやすい立地。車・鉄道・飛行機それぞれのルートを整理しておきますね。
車でのアクセス
東北自動車道の矢巾スマートICと、すぐ近くの盛岡南ICが使えます。2018年に開通した矢巾スマートICのおかげで、高速からの出入りがぐっと便利になりました。盛岡市街からは国道4号を南へ20分前後で着きます。町内は車移動が基本なので、マイカーがあると暮らしも観光もスムーズです。
鉄道+新幹線でのアクセス
町の玄関口はJR東北本線の矢幅駅で、盛岡駅からは3駅・10分ほどです。遠方からなら、東京駅から東北新幹線で盛岡駅までおよそ2時間15分前後、そこから在来線に乗り換えるルートが基本になります。盛岡で乗り換えるイメージを持っておくと、旅程が組みやすいですよ。
飛行機でのアクセス
最寄りの空港はいわて花巻空港です。盛岡バスセンターから空港までのアクセスバスは所要約60分、運賃1,600円(小児800円)です(出典:いわて花巻空港)。空港から矢巾へは、いったん盛岡方面に出てから向かうとわかりやすいです。関西や九州方面から来るなら、空港ルートが便利だと考えられます。
町内移動の現実的アドバイス
観光スポットは西部の山麓側に点在しているので、町内をしっかり回るなら車が一番です。駅前だけなら徒歩でも十分ですが、徳丹城跡や矢巾温泉まで足をのばすならレンタカーやタクシーを使うと安心。冬は路面が凍るので、運転には余裕を持った計画をおすすめします。
交通手段ごとに見てきましたが、「結局いちばん安く行くにはどうすれば?」と迷う方も多いはず。飛行機で向かうなら、航空券は予約のタイミングや会社によって料金が大きく変わります。複数の航空会社・LCCをまとめて比較できるサイトで、いちど最安値をチェックしておくと安心ですよ。
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【地元住民に直撃!】矢巾町の本当の魅力を聞いてみた

Q1.あなたのご職業を教えてください。
米農家です。徳田の地で米を作っています。このあたりは藩政の頃から殿様へ献上していた米どころでね、肥沃な土と北上川の水に恵まれているんですよ。
同じ田んぼでも、年によって出来が違う。冷害の年もありましたしね。それでも毎年この土と向き合えるのが、性に合っているんだと思います。
Q2.矢巾町に来て絶対行くべき場所はどこだと思いますか?
まずは徳丹城跡ですね。平安の昔に築かれた城の跡で、今は広い芝生の史跡公園になっています。桜の季節は格別で、町民の花見の場にもなっていますよ。
あとは夏の煙山ひまわりパーク。南昌山を背に黄色い花が一面に広がって、地元の人間でも毎年見にいきます。西の山あいの温泉郷も、湯あがりに山の空気を吸うと体がほどけますよ。
Q3.矢巾町でお土産を買うとしたらなんですか?
やっぱり米でしょう。徳田米は手前味噌ですが、つやと甘みが違います。炊きたてを何もかけずに食べてみてほしいですね。
地元ならではというと、しいたけやきくらげといったきのこ類。生のきくらげのコリコリした食感は、知っている人ほど喜びます。米と一緒に送ると間違いないですよ。
Q4.外から人が来たときに、矢巾町でまず連れていく店はどこですか?
温泉郷の食堂ですね。郷土料理のひっつみが食べられて、汁物のあったかさに皆ほっとした顔をします。湯に入って一杯やる、これが一番喜ばれます。
駅の東側なら、屋台が並ぶ一角に連れていくこともあります。地元の人間にまじって、出汁や鉄板の匂いの中で飲む時間が、町の素顔を伝えてくれるんですよ。
Q5.矢巾町はどんな気質だと思いますか?
派手さはないけれど、人をやさしく迎える土地柄です。冬の奇祭で初対面の相手とも顔に炭を付け合って笑える、あの距離感が矢巾らしさだと思いますね。
田んぼ仕事で培った辛抱強さもあります。慌てず、こつこつ。盛岡が近くて便利なのに、町には田園のゆったりした時間が残っているのが、いいところです。
Q6.昔に比べて、矢巾町の雰囲気や活気はどう変わったと感じますか?
大学と病院が来てからは、町の表情が変わりましたね。若い人や医療関係の人が増えて、駅のまわりや医大の周辺に店や住宅がどんどん建ちました。
盛岡の南の田園地帯だったところに、新しい活気が混ざってきた感じです。一方で田んぼは減ってもいる。便利さと、昔ながらの風景をどう両立させるかが、これからの課題でしょうね。
Q7.矢巾町のこれから新しくできる施設や、期待している活動などはありますか?
町の交流拠点や子ども向けの場が増えて、住民が集まれる場所がしっかりしてきました。町長さんも医療や防災を軸にしたまちづくりを進めていますよ。
願わくば、こうした新しい流れの中でも、徳田の米作りや昔からの祭りが次の世代へ続いてほしい。便利になった分、町の根っこの部分を大事にしてもらえたらと思っています。

