一戸町(いちのへまち)は、岩手県の北部・二戸郡にある人口9,644人の町です。馬淵川沿いに集落が開け、IGRいわて銀河鉄道で盛岡まで約1時間の距離にあります。
一戸町の魅力を5つに凝縮すると、こうなります:
- ✅ 世界遺産・御所野遺跡──縄文中期後半(約5,000〜4,200年前)の大集落跡。「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産
- ✅ 土屋根の竪穴建物──竪穴建物が土屋根だったことを全国で初めて実証した遺跡
- ✅ 鳥越竹細工──鳥越地区のスズタケで編む、長い歴史を持つ手仕事
- ✅ 奥中山高原──冷涼な高原での酪農と高原野菜。ジャージー牛乳やレタスの産地
- ✅ 根反の大珪化木──太古の森が石になった国の特別天然記念物
「縄文や考古学に興味がある人」「静かな高原の風景と手仕事に惹かれる人」「冷涼な気候でのんびり暮らせる移住先を探している人」に向いた町です。本記事では、世界遺産・御所野遺跡を軸に、歴史・文化・特産・食まで、町の顔となる要素を順に紹介します。
| 人口 | 9,644 人 ※2026年5月1日時点(推計人口) |
|---|---|
| 面積 | 300.03 km² |
| 人口密度 | 32.1 人/km² |
地理的には、北と西は二戸市、東は九戸村、南は葛巻町と岩手町、南西の一角で八幡平市に接しています(出典:八幡平市公式サイト)。西部の二戸市側は、2006年に二戸市へ編入された旧浄法寺町の区域にあたります。
新幹線は通っていませんが、IGRいわて銀河鉄道一戸駅から二戸駅へ出れば東北新幹線に接続でき、盛岡都市圏への通勤・通学圏でもあります。火山灰でなく縄文のムラが眠るこの町を、ひとつずつ見ていきましょう。
一戸町の推しポイント

一戸町の顔は、なんといっても世界遺産の御所野遺跡です。ただ、それだけの町ではありません。鳥越地区に伝わる竹細工、冷涼な奥中山高原の酪農と高原野菜、そして太古の森が石になった珪化木と、歴史・文化・食・自然がそれぞれ独立した見どころとして揃っています。ここでは代表的な5つを少し詳しく紹介します。
御所野遺跡──世界遺産になった縄文のムラ
御所野遺跡は、約5,000〜4,200年前の縄文時代中期後半に営まれた集落跡です。2021年7月27日、「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産として世界遺産に登録されました(出典:一戸町公式サイト)。馬淵川沿いの河岸段丘に立地し、東・中央・西の3つのムラと配石遺構(ストーンサークル)が計画的に配置されています。公園内では土屋根の竪穴建物が復元され、縄文の風景を歩いて体感できますよ。
土屋根の竪穴建物──全国初の実証
御所野遺跡が学術的に重要なのは、竪穴建物が土屋根だったことを全国で初めて証明した遺跡だからです(出典:全国観るなび(日本観光振興協会))。焼けた建物跡をもとに復元し、燃やす実験まで重ねて検証したのだとか。併設の御所野縄文博物館では、国の重要文化財「鼻曲り土面」も見られます。
鳥越竹細工──スズタケが生む手仕事
町南部の鳥越地区には、山に自生するスズタケ(鈴竹)を割って編む竹細工が古くから伝わっています。かつては農家の冬の手仕事として、ほとんどの家庭で作られていたそうです(出典:いちのへ観光公社)。市場かごやザルは丈夫で、使い込むほど色が深まります。鳥越もみじ交遊舎では、展示・販売のほか製作体験もできるんですよ。
奥中山高原──酪農と高原野菜の冷涼地
標高の高い奥中山地区は、夏でも涼しい高原型の気候で、酪農と高原野菜の栽培が盛んです。1999年に酪農家の共同出資で設立された奥中山高原農協乳業が、地元の生乳から牛乳やジャージー牛のアイスを作っています(出典:一戸町公式サイト)。産直にはレタスやトウモロコシといった高原野菜が並びます。
根反の大珪化木──太古の森の化石
根反川の川沿いには、木が長い年月をかけて石になった珪化木が多く露出しています。なかでも「根反の大珪化木」は国の特別天然記念物に指定されています。御所野遺跡からは、この付近で採れたとみられる珪化木製の矢尻も見つかっており、縄文人もこの石を使っていたことが分かっています。
一戸町の歴史

一戸町の歴史は、縄文時代の御所野遺跡に始まり、中世の「戸(へ)」の地名、近世の奥州街道の宿場町、そして明治以降の合併へと続きます。「一戸」という地名そのものが、この地域の成り立ちを物語っています。時代の流れを3段階で見ていきます。
地名「一戸」と糠部の「戸」
「一戸」は、二戸・三戸・九戸と続く糠部地方の「戸(へ)」のひとつです。地名の由来には、平安末期以降に名馬を産出する牧(まき)の区画として呼ばれたとする説などがあります(出典:コトバンク(日本歴史地名大系))。馬とともに歩んだ土地だったわけです。
奥州街道の宿場として
近世には、奥州街道の宿駅として一戸が発展しました。馬淵川とその支流に沿って集落と田畑が開け、街道沿いに人と物が行き交いました。浪打峠付近を、歌枕の「末の松山」とする説も伝わっています。
近代の合併と現代の町
1889年(明治22年)、一戸村と高善寺村が合併して町制を施行しました。さらに1957年(昭和32年)11月1日、姉帯村・小鳥谷村・鳥海村・浪打村の4村と合併し、現在の町域となりました。1989年に発掘が始まった御所野遺跡は1993年に国史跡となり、2021年に世界遺産へと結実しています。現在の町長は小野寺美登氏です。
一戸町の文化・風習

方言と話し方の特徴
一戸町は旧南部藩の領域にあたり、青森県南部から岩手県北部にかけて使われる「南部弁」が話されています。語尾がやわらかく、聞いていると親しみのこもった響きです。
たとえば同意するときはんだ(そうだ)、んだべ(そうだよね)。かわいいものを見るとめんこい(かわいい)と言います。量が少ないことはわんつか(少し・ちょっぴり)。「行く」はさを使って「山さ行く」のように言い、励ますときはけっぱれ(がんばれ)と声をかけます。
面白いのが食事の場面で、か、け!(さあ、食べなさい)と勧められることがあります。別れぎわにはお静かに(気をつけてお帰りください、という見送りの言葉)と言う風習も残っています。短い言葉のなかに、相手を気づかう気持ちが込められているんですね。
雪とともにある冬の暮らし
一戸町は豪雪地帯に指定されていて、冬の寒さはなかなか厳しいものがあります。近年でも氷点下20度前後を記録する朝があり、奥中山では2012年1月に-20.4度を観測しました。だからこそ、家の中の暖かさや、雪解け後の春の喜びがひとしお大きく感じられます。
手仕事と高原が育てた気質
農家の冬の副業として竹細工を編み、冷涼な高原で牛を飼い、野菜を育ててきた土地です。コツコツと手を動かして暮らしを支えてきた背景があるからか、派手さよりも実直さが感じられる地域だと考えられます。鳥越竹細工の後継者を志して、町外から若い人が移り住む例も出てきています。
一戸町の特産品・食

奥中山高原のジャージー牛乳・乳製品
奥中山高原で育った牛から搾った生乳を、地元の工場で短時間のうちにパックしています。低温殺菌牛乳はあっさりとした口当たりで、牛乳本来の甘みが感じられるのが特徴です。ジャージー牛のミルクを使ったアイスクリームはコクが濃厚で、夏のドライブの途中に産直で食べるのがおすすめ。冷涼な気候の高原酪農だからこそ生まれた味なんですよ(出典:一戸町公式サイト)。
高原野菜(レタス・トウモロコシ)
奥中山の冷涼な気候は、夏野菜の栽培にもぴったりです。国道4号沿いの産直「産直 奥中山高原」には、レタスやトウモロコシ、アスパラといった高原野菜が旬の時期に数多く並びます。暑い盆地で育ったものとはまた違う、シャキッと締まった歯ごたえが楽しめます。野菜狩りや産直めぐりが好きな人には、夏から初秋がいちばんの狙い目です。
鳥越竹細工──食卓で使える工芸品
食べ物ではありませんが、食卓を支える名産がこの竹細工です。鳥越のスズタケで編んだザルやかごは、水切りや盛り付けに使うと風通しがよく、見た目にも涼やかです。丈夫なので普段使いに向いていて、長く使うほど飴色に育っていきます。世界遺産の町に来たお土産として、ひとつ連れて帰ると暮らしになじみますよ。
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一戸町の観光スポット

一戸町の旅は、世界遺産・御所野遺跡の縄文ムラを歩くことから始まります。そこから足をのばせば、ブナ林に囲まれた奥中山の高原リゾート、鳥越の手仕事の里まで、まったく表情の違う場所が一日のうちに楽しめます。まずは押さえておきたいスポットを、テーマごとに紹介していきますね。
縄文と世界遺産を体感するスポット
- 御所野縄文公園・御所野縄文博物館 – 開園時間は9:00〜17:00(入館は16:30まで)、入館料は大人300円・大学生200円・高校生以下無料、休館日は月曜(祝休日の場合は翌日)・祝日の翌日・年末年始です(出典:御所野縄文公園公式サイト)。土屋根の竪穴建物やストーンサークルが復元された公園を歩くと、約4,500年前の縄文ムラに迷い込んだような感覚になりますよ。博物館では巨大スクリーンのプロジェクションマッピングで縄文の四季を体感できます。新緑から夏にかけての、土屋根に草が茂る季節がいちばん雰囲気が出ます。
- きききのつりはし – 駐車場と遺跡をつなぐ、長さ約120メートルの木製の吊り橋です(出典:世界遺産 北海道・北東北の縄文遺跡群公式サイト)。一本柱が曲線を描く独特のデザインで、渡っているあいだに少しずつ現代から縄文へとタイムスリップしていくような演出になっています。橋の下に広がる森の緑も気持ちいいんですよ。
高原で遊んで、癒されるスポット
- 岩手県立児童館 いわて子どもの森 – 奥中山のブナ林に囲まれた県立の大型児童館で、入場は無料です(出典:一戸町公式サイト)。巨大アトラクション「冒険の塔 のっぴぃ」や、おもちゃがお湯がわりの「おもちゃ湯」など、子どもが帰りたがらなくなる仕掛けばかり。屋外にはローラー滑り台やキャンプ場もあり、家族連れなら丸一日過ごせます。休館日は火曜(祝日の場合は翌日)と整備休館日なので、出かける前にカレンダーを確認しておくと安心です。
- 奥中山高原スキー場 – 標高1,018メートルの山頂から360度のパノラマが広がる、全11コース・リフト5本のスキー場です(出典:奥中山高原公式サイト)。例年12月中旬から3月下旬にかけて営業しています。さらさらのパウダースノーが自慢で、山麓には平均斜度7度のなだらかなコースもあるので、はじめてのスキーやスノボにもおすすめです。
- 奥中山高原温泉(朝朱の湯・煌星の湯) – スキー場の麓にある日帰り温泉で、源泉かけ流しの「朝朱の湯」には開放感のある露天風呂があります(出典:奥中山高原公式サイト)。炭酸水素塩泉のツルツルした湯ざわりで、入った後は肌がすべすべに。雪の舞う露天に浸かりながら、頭に乗せたタオルに雪が積もる時間は、冬の一戸ならではのぜいたくですよ。
- 産直 奥中山高原 – 国道4号沿いに建つ人気の産直です。冷涼な気候で育ったレタスやトウモロコシ、アスパラといった高原野菜が旬の時期に数多く並びます(出典:いちのへ観光公社)。奥中山高原農協乳業のアイスやヨーグルト、カナンの園の手作りパンも買えるので、ドライブの休憩にぴったりなんです。
自然と手仕事に触れるスポット
- 鳥越もみじ交遊舎 – 鳥越地区に伝わる竹細工の展示・販売と、製作体験ができる拠点施設です。営業期間は5月から10月で、時間は9:30〜16:30です(出典:いちのへ観光公社)。スズタケを割るところから始まる手仕事の細やかさは、実際に手を動かしてみるとよく分かります。自分で編んだ小さなかごは、世界遺産の町の旅の記念にちょうどいいですよ。
- 根反の大珪化木 – 太古の木が長い年月をかけて石になった珪化木で、国の特別天然記念物に指定されています。根反川沿いには珪化木が多く露出していて、御所野遺跡からはこの付近の珪化木で作られた矢尻も見つかっています。縄文人も使っていた石の森、と思って眺めると感慨深いものがあります。
- 西岳・高森高原 – 町の南西にそびえる標高1,018メートルの西岳と、その麓に広がる高森高原です。高森高原からはイチイやブナの原生林を通る遊歩道が西岳へと続いていて、初夏の新緑から秋の紅葉まで、季節ごとに表情が変わります。風力発電の風車が回る開けた高原は、晴れた日のドライブにおすすめです。
一戸町の観光ルート

一戸町は南北に長く、世界遺産のある中心部から奥中山の高原までは車で30分ほどの距離があります。だからこそ、縄文・手仕事・高原という異なる魅力を一本の線でつなぐドライブが楽しいんです。時間に合わせて選べるよう、町内ルートと広域ルートを用意しました。
【車・1日】縄文と奥中山まるごとルート
9:00 一戸駅 → 9:05 御所野縄文公園(車5分)→ 11:00 鳥越もみじ交遊舎(車25分)→ 12:30 産直 奥中山高原(車30分)→ 14:00 いわて子どもの森(車5分)→ 16:00 奥中山高原温泉
①御所野縄文公園(120分)→ 朝いちばんの空いた時間に、吊り橋を渡って縄文ムラへ。光がやわらかい午前中は写真もきれいに撮れます。
②鳥越もみじ交遊舎(60分)→ 竹細工の手仕事を見学・体験。職人の手つきを間近で見られる貴重な時間です。
③産直 奥中山高原(60分)→ 高原野菜と乳製品でひと休み。ここでアイスを食べるのが定番です。
④いわて子どもの森(120分)→ 家族連れなら午後はここで思いきり遊びましょう。大人ものんびりできます。
⑤奥中山高原温泉(60分)→ 一日の締めくくりに源泉かけ流しの湯へ。高原の夕暮れを眺めながら疲れを流します。
【車・半日】世界遺産・縄文集中ルート
9:00 一戸駅 → 9:05 御所野縄文公園・博物館(車5分)→ 11:30 一戸まちなか → 12:30 一戸駅
①御所野縄文公園・御所野縄文博物館(150分)→ 公園と博物館をじっくり。体験工房で勾玉づくりや縄文編みに挑戦するのもおすすめです。
②一戸まちなか(60分)→ IGR一戸駅周辺の中心市街地を散策。奥州街道の宿場町だった面影を探しながら歩きます。
半日でも、世界遺産の核心はしっかり味わえます。新幹線で二戸駅に着いてから一戸へ向かう人にも組みやすいルートです。
【車・1日】広域ルート:北東北の縄文と漆をめぐる
9:00 一戸・御所野縄文公園 → 11:30 二戸市街(車25分)→ 13:30 浄法寺エリア(車30分)→ 15:00 奥中山方面へ
①御所野縄文公園(120分)→ まずは世界遺産から。縄文のムラを歩いて旅のテーマを決めます。
②二戸市街(90分)→ 隣接する二戸市へ。新幹線二戸駅を起点に、城下町の歴史を感じる町歩きが楽しめます。
③二戸市浄法寺エリア(90分)→ 国産漆の主要な産地として知られる浄法寺。漆の文化に触れられます。
世界遺産の御所野遺跡を入口に、北東北の歴史と手仕事を横断する欲ばりな一日です。八幡平市の安比方面へ抜ければ、そのまま高原リゾートの旅にもつながります。
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一戸町の年間イベント

一戸町のイベントは、初夏の高原の祭りから晩夏の豪華な山車まつり、冬の高原の灯りまで、季節ごとに表情が変わります。なかでも夏の終わりに行われる「一戸まつり」は、ぜひ一度は見てほしい町いちばんの祭りなんです。季節順に紹介していきますね。
春〜初夏:花と高原の祭り
春の終わりには、藤島のフジの周辺で「藤島のフジまつり」がおおむね5月の最終日曜日ごろに開かれます(出典:いちのへ観光公社)。紫の花房が垂れ下がる藤棚の下は、ほのかに甘い香りに包まれます。
6月の第1日曜日ごろには、高森高原で「高森高原まつり」が行われます(出典:いちのへ観光公社)。風車が回る広々とした高原で、さわやかな初夏の風を感じながら過ごせるイベントです。
夏の終わり:一戸まつり
町最大の祭りが「一戸まつり」です。八坂神社と稲荷神社の二社大祭として、毎年8月の最終金・土・日の3日間に開かれます(出典:一戸町公式サイト)。岩手県北地区で最も早い秋まつりとも言われています。
見どころは、装飾から人形の衣装まですべて手づくりの山車5台。南部流の形態を伝える豪華絢爛な風流山車が、「ヤーレヤーレ」のかけ声とお囃子とともに町を練り歩きます。中日には山車の夜間運行もあり、灯りに浮かぶ山車は昼とはまた違う迫力ですよ。岩手県指定無形民俗文化財の「根反鹿踊り」など、郷土芸能が一斉に繰り出すのも一戸まつりならではです。
冬:高原の灯りとスノーシーズン
1月の中旬ごろには、IGR奥中山高原駅前通りで「奥中山夢あかり・はしご酒」が行われます(出典:いちのへ観光公社)。雪あかりがやさしく灯る通りを歩きながら、地元の店をはしごする冬らしいイベントです。
そして冬の主役は、なんといっても奥中山高原スキー場のパウダースノー。さらさらの雪を滑った後に源泉かけ流しの温泉で温まる、というのが一戸の冬の正しい過ごし方なんです。
一戸町のエリア別の顔

南北に長い一戸町は、地区ごとに驚くほど表情が違います。世界遺産のある中心部、手仕事の里・鳥越、高原リゾートの奥中山、藤の花の小鳥谷。同じ町とは思えないほどの振れ幅を、旅する視点でめぐってみましょう。それぞれどんな時に訪れるとよいかも合わせて紹介します。
一戸・中心部エリア──奥州街道の宿場町と世界遺産の玄関口
IGR一戸駅を中心とした、町のいちばんにぎやかなエリアです。かつて奥州街道の宿場として栄えた面影が、まちなかの通りに残っています。世界遺産・御所野遺跡のある岩舘地区も馬淵川をはさんですぐ近く。8月最終の週末に一戸まつりが繰り広げられるのもこのエリアです。歴史散策と祭りを楽しみたい人に向いています。
鳥越エリア──スズタケの竹細工が息づく手仕事の里
町の南部、山あいに広がる鳥越地区は、長い歴史を持つ竹細工の里です。農家の冬仕事として受け継がれてきたスズタケの手仕事が、今も生きています。鳥越もみじ交遊舎で職人の技に触れたり、自分で編む体験をしたり。静かな里で、ものづくりにじっくり向き合いたい人におすすめのエリアです。
奥中山エリア──ブナ林と酪農の高原リゾート
町の南西、標高の高い奥中山地区は、夏でも涼しい高原リゾートです。スキー場、温泉、いわて子どもの森、産直と、遊びと癒しが一か所に集まっています。冷涼な気候を生かした酪農と高原野菜の産地でもあり、ジャージー牛乳のアイスは外せません。家族連れや、アクティブに過ごしたい人にぴったりですよ。
小鳥谷(こずや)エリア──田園と藤の花の里
町の南、IGR小鳥谷駅を中心とした田園地帯です。春の終わりには藤島のフジが見頃を迎え、藤まつりでにぎわいます。のどかな田畑と川沿いの風景が広がり、ゆっくりと季節を感じながら歩きたいエリア。混雑を避けて静かに旅したい人におすすめです。
一戸町の気候・季節の暮らし

一戸町は、夏は涼しく冬の寒さが厳しい高原の町です。奥中山観測点の平年値では、年平均気温は7.9℃、年間降雪量はおよそ571センチ、最高気温も氷点下にとどまる真冬日が年50日以上あります(出典:気象庁)。豪雪地帯に指定されていて、冬の備えは欠かせません。とはいえ、四季のメリハリがはっきりしていて、暮らしのリズムが季節とともに動く町なんですよ。
夏──7月〜8月の暮らし
夏でもからっとして過ごしやすいのが、この町の大きな魅力です。真夏日になる日は平年で年5.7日ほどしかなく、寝苦しい熱帯夜とはほぼ無縁です(出典:気象庁)。
奥中山の高原ではこの涼しさを生かしてレタスやトウモロコシが育ちます。朝晩はひんやりするので、夏でも薄手の上着が一枚あると安心です。
秋──9月〜11月の暮らし
秋は短く、足早に過ぎていきます。8月最終の週末に一戸まつりが終わると、町の空気が一気に秋へと切り替わります。
西岳や高森高原の紅葉が色づき、馬淵川沿いの朝には霧が立ちこめる日が増えます。11月に入ると、もう冬支度を始める家が多くなります。
冬──12月〜3月の暮らし
冬がこの町の本番です。12月から3月にかけては日平均気温が氷点下になり、近年でも氷点下20度前後まで下がる朝が観測されています(出典:気象庁)。
雪かきは冬の日課になるので、移住を考えるなら除雪のことは頭に入れておきたいところです。一方で、さらさらのパウダースノーはスキー場では大きな財産。雪を楽しむ暮らしへの切り替えが、ここで気持ちよく過ごすコツなんです。
春──4月〜6月の暮らし
長い冬が明けると、春の訪れがことのほかうれしく感じられます。5月の終わりには藤島のフジが咲き、6月には高森高原がさわやかな緑に包まれます。
雪解け後は風の強い日もありますが、新緑と花がいっせいに動きだす季節。御所野遺跡の土屋根に草が芽吹くのもこの頃です。
一戸町の移住・暮らし情報

一戸町は、面積の多くを山林が占める高原の町でありながら、新幹線駅のある二戸市まで近く、暮らしの利便と自然のバランスが取りやすい場所です。子育て世帯への支援も手厚く、若い世代の移住先としても注目されています。住む視点で、暮らしの現実を見ていきましょう。
通勤・通学
町内のものづくり産業や農業で働く人のほか、隣接する二戸市や岩手町、車・電車で1時間ほどの盛岡市へ通う人もいます。IGRいわて銀河鉄道で盛岡駅まで約1時間なので、盛岡都市圏への通勤・通学も可能です。
通学では、IGRや路線バスの通学定期券の購入費を町が一部補助する制度があります(出典:岩手県移住定住ポータルサイト)。
住宅環境
町は子育て世帯向けの支援に力を入れていて、町が認定した民間賃貸住宅に入る子育て世帯には家賃の一部を補助しています。町外からの移住者は3年間に限り、補助額が1万円増額されます(出典:岩手県移住定住ポータルサイト)。
都市部に比べて家賃や土地の負担は抑えやすい地域と考えられます。一戸駅周辺の中心部はまとまった住宅地、奥中山や小鳥谷は田園に囲まれたゆとりある住環境、と地区ごとに住み心地が違います。
買い物環境
一戸駅周辺の中心部には大型スーパー「イコオショッピングセンター」やコンビニがあり、日用品の買い物はこのエリアで完結します。
さらに専門店や大型店で選びたいときは、車や電車で1時間ほどの二戸市・八戸・盛岡へ出る人が多いです。週末にまとめ買いをする、という暮らし方がなじみます。
子育て・教育
町内には一戸小学校・一戸南小学校・奥中山小学校の小学校と、一戸中学校・奥中山中学校があり、こども園や保育園もそろっています。町立すこやか病児保育室があるのも、共働き世帯には心強いところです(出典:一戸町公式ホームページ)。
子育て支援では、出産祝金として10万円分の町商品券が交付され、医療費の助成は高校生まで受けられます(出典:岩手県移住定住ポータルサイト)。県立児童館いわて子どもの森が身近にあるのも、子育て環境としてうれしいポイントです。
医療環境
町の中核となる医療機関として、内科・外科・整形外科などを備えた岩手県立一戸病院があります(出典:厚生労働省 医療情報ネット)。内科や歯科のクリニックも町内に複数あり、日常の医療は町の中でおおむねまかなえます。
より高度な医療が必要なときは、隣接する二戸市の医療機関を利用する形になります。
エリア別の暮らし視点
一戸・中心部エリアは、駅・スーパー・病院・役場が近く、車がなくても暮らしやすい利便性重視のエリアです。奥中山エリアは寒さが厳しい分、高原の自然とスキー場・温泉が日常になる、アウトドア好きに向いた暮らしです。
小鳥谷エリアは田園に囲まれた静かな住環境で、のんびり子育てしたい世帯に向いています。移住の際は、東京23区在勤者などを対象にした移住支援金もあり、18歳未満の子を帯同する場合は1人あたり100万円が加算されます(出典:一戸町公式ホームページ)。
一戸町へのアクセス

一戸町は、国道4号・IGRいわて銀河鉄道・八戸自動車道が南北に貫く、交通の便のよい町です。町内に新幹線駅はありませんが、隣の二戸市にある二戸駅が東北新幹線の玄関口になります。主要な行き方を整理します。
車でのアクセス
高速道路は八戸自動車道の一戸ICが最寄りです。中心部から二戸駅までは車で20分ほど。国道4号が町を縦貫しているので、二戸・盛岡方面への移動もスムーズです。
冬は路面が凍結しやすいので、スタッドレスタイヤと余裕を持った運転を心がけたいところです。
鉄道+バスでのアクセス
町内にはIGRいわて銀河鉄道の一戸駅・小鳥谷駅・小繋駅・奥中山高原駅があります。一戸駅から盛岡駅までは約1時間です(出典:IGRいわて銀河鉄道)。
新幹線を使う場合は、一戸駅からIGRで二戸駅へ出て乗り換えるのが基本です。二戸駅から盛岡駅までは新幹線でおよそ25分。世界遺産の御所野縄文公園へは、二戸駅から車で約15分です(出典:御所野縄文公園公式サイト)。
飛行機でのアクセス
遠方からは、いわて花巻空港または三沢空港を使う行き方があります。空港からは在来線や車で北上してくるルートになります。
首都圏からなら、東京駅から二戸駅まで東北新幹線はやぶさで2時間半〜3時間ほど。二戸駅で在来線や車に乗り換えて一戸へ向かうのが現実的です。
町内移動の現実的アドバイス
南北に長い町なので、観光でも暮らしでも車があると断然動きやすいです。中心部と奥中山では車で30分ほど離れています。
車がない場合は、IGRの各駅と町のデマンド交通「いくべ号」を組み合わせる形になります。日中中心の運行なので、時刻は事前に確認しておくと安心ですよ。
交通手段ごとに見てきましたが、「結局いちばん安く行くにはどうすれば?」と迷う方も多いはず。飛行機で向かうなら、航空券は予約のタイミングや会社によって料金が大きく変わります。複数の航空会社・LCCをまとめて比較できるサイトで、いちど最安値をチェックしておくと安心ですよ。
【トラベリスト】
で航空券をまとめて比較する
【地元住民に直撃!】一戸町の本当の魅力を聞いてみた

Q1.あなたのご職業を教えてください。
鳥越に伝わる竹細工を編む仕事をしています。山に入ってスズタケを採るところから、割って、ひごにして、かごやザルに仕上げるまで、ほとんど手作業です。
母の代から見てきた手仕事ですが、今は若い人が町外からも習いに来てくれるようになって、続けてきてよかったと思っています。
Q2.一戸町に来て絶対行くべき場所はどこだと思いますか?
やっぱり世界遺産の御所野遺跡ですね。馬淵川を見下ろす台地に土屋根の竪穴建物が並んでいて、吊り橋を渡るうちに気持ちが縄文に切り替わるんですよ。朝のひんやりした空気の中だと、より静かで特別です。
あとは奥中山の高原。広い牧草地と西岳の景色が抜けていて、地元の私でもふっと深呼吸したくなる場所です。
Q3.一戸町でお土産を買うとしたらなんですか?
オーソドックスなのは奥中山高原の乳製品です。高原の牛乳で作ったヨーグルトやアイスは、土地の冷涼な空気をそのまま閉じ込めたような味なんですよ。
地元の人間としては、やっぱり鳥越の竹細工を勧めたいです。ザルひとつでも、使い込むほど飴色になって、暮らしになじんでいきますから。
Q4.外から人が来たときに、一戸町でまず連れていく店はどこですか?
国道沿いの産直にまず寄りますね。高原野菜が山積みで、地元の乳製品やお惣菜も並んでいて、この町の食卓がそのまま見える場所なんです。
それから昔ながらの定食屋で、出汁と油の匂いがする温かい一杯を食べてもらいます。気取らない味が、かえって喜ばれるんですよ。
Q5.一戸町はどんな気質だと思いますか?
派手さはないけれど、コツコツ手を動かして暮らしを支えてきた土地なので、実直で粘り強い人が多いと思います。冬の寒さと雪が、自然とそういう気質を育てたのかもしれません。
最初は口数が少なく見えても、一度懐に入れば、とことん面倒を見てくれる。そういう温かさのある町です。
Q6.昔に比べて、一戸町の雰囲気や活気はどう変わったと感じますか?
正直に言うと、人は減りましたし、まちなかも昔ほどのにぎわいはありません。竹細工も作り手が少なくなって、後継者のことはずっと課題です。
ただ、御所野が世界遺産になってから外の人の目が町に向くようになって、手仕事を習いに来る若い人も出てきた。静かですが、確かな手応えは感じています。
Q7.一戸町のこれから新しくできる施設や、期待している活動などはありますか?
大きな箱物よりも、町長さんはじめ町ぐるみで、御所野の縄文と鳥越の竹細工をつなげて発信していく動きに期待しています。世界遺産と手仕事は、相性がいいはずなんです。
町民が集まれる場や運動公園のような場所も大事にしながら、ここで暮らす人と訪れる人が交わる流れが、もっと育っていけばと思っています。

