大館市(おおだてし)は、秋田県の北端・大館盆地に位置する人口6万人あまりの市です。青森県と県境を接し、県庁所在地の秋田市より隣県の弘前市のほうが近いという、北東北の交通の結節点です。
大館市の魅力を5つに凝縮すると、こうなります:
- ✅ 忠犬ハチ公の生誕地──渋谷で待ち続けたあの秋田犬は、この町で生まれた
- ✅ 大館曲げわっぱ──全国の曲物で唯一、国が指定する伝統的工芸品
- ✅ きりたんぽの本場──新米のたんぽ×日本三大地鶏「比内地鶏」の郷土鍋
- ✅ 大館樹海ドーム(ニプロハチ公ドーム)──秋田杉でつくった国内最大級の木造ドーム
- ✅ 佐竹西家の城下町にして、黒鉱と秋田杉が支えた鉱山・林業のまち
「秋田犬やハチ公が好きな人」「本場のきりたんぽ・比内地鶏を味わいたい人」「木の道具や工芸が好きな人」に特におすすめの町です。ここでは、観光・特産・歴史から、暮らしの空気感まで、大館の顔をひとつずつ紹介していきます。
| 人口 | 61,768 人 ※2026年6月1日時点(推計人口) |
|---|---|
| 面積 | 913.22 km² |
| 人口密度 | 67.6 人/km² |
出典:大館市公式サイト
地理的には、東に鹿角市と小坂町、西に北秋田市と藤里町、南に北秋田市が接し、北の青森県側では弘前市・平川市・大鰐町・西目屋村と県境を接します(出典:大館市公式サイト)。
市域の約8割は山地で、白神山地の東端・田代岳から流れ出た水が米代川に集まる盆地に、市街地が広がっています。秋田市へは車で約2時間30分、青森県弘前市へは約1時間。JR奥羽本線と花輪線が分岐する鉄道の要衝でもあります。
ハチ公、曲げわっぱ、きりたんぽ、比内地鶏。全国区の「顔」がいくつも詰まった町です。ひとつずつ見ていきましょう。
大館市の推しポイント

大館の見どころは、「人と犬の物語」「木の工芸」「食」「巨大木造建築」と、ジャンルの幅が広いのが特徴です。渋谷のハチ公の生まれ故郷であり、日本でただひとつ国指定を受けた曲物のふるさとであり、きりたんぽと比内地鶏の本場でもあります。ここからは、その顔を4つに分けて少し深掘りしていきます。
推しポイント1:忠犬ハチ公の生誕地──秋田犬のふるさと
渋谷駅で主人を待ち続けたハチは、1923年(大正12年)11月にこの大館市大子内で生まれた秋田犬です(出典:大館市観光協会)。秋田犬は1931年(昭和6年)、日本犬として初めて国の天然記念物に指定されました。JR大館駅前には、大正時代の渋谷駅を模した観光交流施設「秋田犬の里」があり、本物の秋田犬に会うこともできます。町のあちこちで、ずんぐりした精悍な犬の姿に出会えますよ。
推しポイント2:大館曲げわっぱ──日本で唯一、国が認めた曲物
秋田杉の薄板を熱で曲げ、山桜の皮で綴じてつくる「曲げわっぱ」。全国各地に曲物はありますが、国の伝統的工芸品に指定されているのは大館曲げわっぱだけです(1980年指定・出典:大館市公式サイト)。起源は17世紀後半、大館城主だった佐竹西家が、領民の困窮を救おうと下級武士の内職として奨励したことにさかのぼります。塗りをかけない「白木」の弁当箱は、杉が余分な水分を吸ってくれるので、冷めたご飯までおいしく感じられるんです。
推しポイント3:きりたんぽの本場と、日本三大地鶏「比内地鶏」
新米をつぶして杉串に巻き、炭火で焼いた「たんぽ」を、比内地鶏の出汁で煮込むきりたんぽ鍋。大館はこの料理の本場として知られています。比内地鶏は名古屋コーチン・さつま地鶏と並ぶ日本三大地鶏のひとつで、150〜180日という長い期間をかけて育てられます(出典:大館市観光協会)。毎年10月には「本場大館きりたんぽまつり」が開かれ、新米の季節の大館がいちばん盛り上がる時期です。
推しポイント4:大館樹海ドーム──秋田杉の巨大木造建築
1997年に完成した大館樹海ドーム(愛称ニプロハチ公ドーム)は、地元の秋田杉をふんだんに使った国内最大級の木造ドームです。野球やコンサート、そしてきりたんぽまつりの会場にもなる、まちのシンボル。屋根の下に立つと、木の梁が空へ広がる迫力に思わず見上げてしまいます。森林資源が豊かなこの町らしい建物ですよね。
大館市の歴史

大館の歴史は、古代の「火内(比内)」と呼ばれた蝦夷の地に始まります。中世から近世にかけては森林と鉱山をめぐる争いの舞台となり、江戸時代には佐竹氏の城下町として栄えました。近代以降は鉱山と鉄道で発展し、鉱山閉山後はリサイクル・医療産業へと産業構造を大きく転換させています。時代ごとに顔を変えながら、いまの大館がつくられてきました。
古代〜近世──「火内」から城下町へ
大館周辺には縄文時代の遺跡が数多く残り、市内だけで170か所ほどが確認されています。文献では、878年(元慶2年)の『日本三代実録』に「火内」と記されたのが最初とされます。関ヶ原の戦い以後、常陸から佐竹氏が秋田へ移り、大館城には一族の小場義成(佐竹西家)が城代として入城しました。以後、久保田藩の大館城下として発展します。
幕末〜近代──戦火と鉱山のまち
戊辰戦争では大館城攻城戦などの激しい戦闘が行われ、中心部の広範囲が焼失しました。その後も大正・昭和期に幾度も大火に見舞われ、城下町の面影はほとんど残っていません。一方、1885年(明治18年)に花岡村で黒鉱が発見されると、各地で鉱山開発が進み、秋田県内でもいち早く鉄道網が整備されました。鉱石輸送を軸に人口も増え、県北の中心都市として発展していきます。
現代──産業転換と、いまの大館
資源の枯渇により鉱山の閉山が相次ぎ、1994年(平成6年)までにすべての鉱山が閉山しました(出典:大館市公式サイト)。その後は、鉱山技術を生かした資源リサイクル産業や、医療機器・医薬品などの健康産業が新たな基幹産業へと育ちました。1951年(昭和26年)の市制施行を経て、2005年には田代町・比内町を編入し、現在の市域になっています。
大館市の文化・風習

方言と話し方の特徴
大館の言葉は、秋田弁のなかでも「県北方言」に分類され、市民のなかには「大館弁」と呼ぶ人もいます。あいづちのんだ(そうだ・そうだね)を軸に、会話がぽんぽん進んでいくのが特徴です。県北らしい言い回しをいくつか挙げると、めんけ(かわいい)、しったげ(とても・すごく)、しゃっけ(冷たい)、へば(それじゃあ)、なんもだす(どういたしまして・大丈夫ですよ)、おがる(成長する・大きくなる)など。「孫っこ、しったげおがったなぁ」で「孫がすごく大きくなったね」という意味になります。短くて濁音の多い響きに、どこか温かみを感じる言葉たちですよね。
食卓と季節の暮らし
この町の食卓に欠かせないのが、きりたんぽ鍋です。冠婚葬祭やイベントのたびに振る舞われる「ハレの日の料理」であり、各家庭に受け継がれた「おふくろの味」でもあります。漬物のことはがっこと呼び、長い冬のあいだ食卓を彩ります。大館は特別豪雪地帯を含む雪深い土地。冬には氷点下15℃前後まで下がる日も珍しくなく、雪とともに暮らす知恵が今も息づいています。
人の気質と、犬とともにある町
大館を語るうえで外せないのが、犬との関わりです。1927年(昭和2年)に当時の大館町長らが秋田犬保存会を設立し、雑種化が進んでいた秋田犬の血統を守ってきました。毎年5月8日には、ハチの生家近くで忠犬ハチ公慰霊祭が営まれ、地元の小学生が花輪を捧げます。人と犬の絆を大切にしてきた土地柄が、町の空気にも表れているように感じます。
季節をいろどる祭り
冬の名物「大館アメッコ市」は、「この日に飴を食べると風邪をひかない」と伝わる市で、その起源は1588年(天正16年)にさかのぼります(出典:秋田県公式サイト(美の国あきたネット))。次回は2026年2月14日〜15日に開催予定です(出典:大館市公式サイト)。ほかにも、400年以上の歴史をもつ大館神明社の例祭(9月)や、山や街に「大」の火文字が灯る大文字まつり(8月)など、季節ごとに町が沸きます。
大館市の特産品・食

特産品1:きりたんぽ
新米をやわらかく炊いてつぶし、杉串に握りつけて炭火で焼いた「たんぽ」。これを切って鍋に入れるから「きりたんぽ」です。味は素朴そのものですが、比内地鶏の出汁を吸ったたんぽに、セリ・ごぼう・まいたけ・ねぎが合わさると、体の芯から温まる本場の味になります。旬は新米が出そろう秋。毎年10月に大館樹海ドーム(ニプロハチ公ドーム)で開かれる「本場大館きりたんぽまつり」は2025年で第53回を数え、”たんぽ焼き”体験や食べ比べでにぎわいました(出典:大館食の祭典協議会)。まずは、鍋でぐつぐつのきりたんぽから始めてみてください。
特産品2:比内地鶏
噛むほどに旨みがあふれ、澄んだ脂と濃いダシが出る比内地鶏は、名古屋コーチン・さつま地鶏と並ぶ日本三大地鶏のひとつです(出典:大館市観光協会)。天然記念物の比内鶏を親にもち、米代川流域の広い牧草地で150〜180日かけて放し飼いされます。鍋のダシはもちろん、焼き鳥にすればジューシーな旨みが、握りやタタキにすれば香ばしさが引き立ちます。きりたんぽ鍋を「本場の味」にしているのは、まさにこの一羽なんですよ。
特産品3:大館曲げわっぱ
秋田杉の柾目を薄く剥ぎ、熱湯でしならせて丸め、山桜の皮で綴じる──1300年ほど前に木こりが始めたと伝わる木の器です。塗りをかけない白木の弁当箱は、杉の吸湿性でご飯を程よく保ち、蓋の裏がベタつきません。軽くて、木目が美しく、ほのかに杉が香る。使うほどに愛着がわく「育てる道具」として、いまは国内外で人気が高まっています。市内には制作体験ができる工房もあるので、旅の記念に自分だけの一品をつくるのも楽しいですよ。
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大館市の観光スポット

序盤で紹介したハチ公・秋田犬・曲げわっぱ・きりたんぽは、そのまま大館市の観光の柱になります。うれしいのは、その多くがJR大館駅から歩ける範囲にまとまっていること。まずは駅前で秋田犬に会い、城跡の公園を歩き、工房で木を曲げる──そんな一日の入り口になるスポットを、テーマごとに紹介していきますね。
ハチ公と秋田犬に会えるスポット
- 秋田犬の里 – 大正時代の渋谷駅を模したJR大館駅前の観光交流施設。入館無料で、ガラス越しに本物の秋田犬に会える展示室や、秋田犬の歴史を学べるミュージアム、お土産コーナーがあります。開館時間は4〜10月が9:00〜18:00、11〜3月が9:00〜17:00、秋田犬展示室は9:30〜16:15(月曜休室)、休館日は12月31日・1月1日です(出典:秋田犬の里公式サイト)。もふもふの秋田犬がのっそり寝そべる姿に、思わず長居してしまいますよ。芝生には渋谷ゆかりの「青ガエル」こと東急5000系電車も展示されています。
- ハチ公生家 – ハチが生まれた大子内地区にある斎藤家の前には、「忠犬ハチ公生誕之地」の石碑が立っています。渋谷であれほど有名になった犬の物語が、こののどかな一角から始まったのかと思うと、静かな感慨がわいてきます。
- 秋田犬会館 – 秋田犬保存会の本部が置かれた施設で、秋田犬の歴史や標準を伝える資料室があります。犬好きなら、血統を守り続けてきた大館の情熱が伝わってくる場所です。
歴史と工芸にふれるスポット
- 桂城公園 – 禄高八千石の佐竹西家の居城・大館城の跡地に整えられた公園で、今も堀と石垣の一部が残っています(出典:大館市公式サイト)。約140本の桜が植えられ、春はニプロハチ公ドームを望む桜並木が見どころ。戊辰戦争で焼けた城の記憶を思いながら歩くと、ただの公園が少し違って見えてきます。
- 大館郷土博物館 – 釈迦内の丘に建つ博物館で、縄文から鉱山、現代までの大館を紹介しています。開館時間は9:00〜16:30、休館日は月曜・年末年始、入館料は一般330円・高大生220円・小中生110円(市内小中生は無料)です(出典:大館市公式サイト)。曲げわっぱ展示室や、天然記念物「秋田三鶏」を紹介する秋田三鶏記念館(4〜11月開館)も併設され、大館らしさが詰まっています。
- わっぱビルヂング/大館工芸社 – 曲げわっぱの製作体験ができる施設です。わっぱビルヂング(柴田慶信商店)では木槌や鉋を使って「曲げ」や「樺綴じ」に挑戦でき、体験は平日と毎月第4土曜に実施されています(要事前予約・出典:柴田慶信商店)。大館工芸社でも製作体験ができます(出典:大館工芸社)。熱でしなる杉の感触は、体験してみて初めて分かる面白さなんですよ。
自然と巨大木造建築を味わうスポット
- 大館樹海ドーム(ニプロハチ公ドーム) – 上代野に建つ、地元の秋田杉を使った国内最大級の木造ドームです。野球やコンサート、そして秋のきりたんぽまつりの舞台にもなります。屋根を見上げると木の梁が空へ弧を描き、森の町らしいスケール感に圧倒されます。
- 長走風穴 – 岩の隙間から夏でも冷たい空気が噴き出す「風穴」で、高山植物群落は国の天然記念物に指定され、貯蔵用の石倉は日本の「林業遺産」に登録されています(出典:大館市公式サイト(大館郷土博物館))。真夏に訪れると、ひんやりした天然の冷気に驚かされますよ。
- 田代岳 – 白神山地の東端に位置する、大館のシンボル的な山。山頂付近には湿原が広がり、高山植物と池塘が「雲上の楽園」のような景色をつくります。登り切った先に開ける眺めは、汗をかいた分だけごほうびになります。
大館市の観光ルート

大館市は、駅前に見どころが集まる「まちなか」と、山や温泉が待つ「郊外」の二段構えで楽しめる町です。半日でハチ公と秋田犬を追いかけるのもよし、一日かけて工芸・食・自然をつなぐのもよし。ここでは、車を軸にした3つのモデルコースを組んでみました。
【車・1日】大館まちなか満喫ルート
9:00 大館駅(秋田犬の里)→ 9:40 桂城公園 → 10:30 曲げわっぱ製作体験 → 12:30 比内地鶏ランチ → 14:00 大館郷土博物館 → 16:00 大館樹海ドーム外観 → 17:00 大館駅
①秋田犬の里(60分)→ まずは駅前で秋田犬に朝のあいさつ。人が少ない午前中は、犬もこちらをじっくり見てくれます。
②桂城公園(40分)→ 城跡の堀端を散歩。春なら桜、それ以外の季節も静かな城下の空気が味わえます。
③曲げわっぱ製作体験(90分)→ 職人道具を握って、自分だけの器づくり。集中するとあっという間に時間が過ぎます。
④大館郷土博物館(90分)→ 鉱山や曲げわっぱの展示で、午前に見た町の背景を答え合わせ。雨でも安心の屋内スポットです。
【車・半日】ハチ公と秋田犬めぐりルート
9:00 大館駅(秋田犬の里)→ 10:00 ハチ公生家(大子内)→ 10:40 秋田犬会館 → 11:30 まちなかで曲げわっぱ土産 → 12:00 解散
①秋田犬の里(50分)→ ハチ公像の前で記念撮影。物語の全体像をここでつかんでおきます。
②ハチ公生家(20分)→ 生誕の石碑を訪ねると、渋谷の喧騒とは真逆の原点に立てます。
③秋田犬会館(40分)→ 血統を守ってきた保存会の歩みを知ると、秋田犬の見方が少し変わります。
④まちなかの工房や土産店で、曲げわっぱの弁当箱を選んで締めくくり。半日でも満足度の高い犬づくしコースです。
【車・1日】広域ルート:田代岳と白神の自然
9:00 大館駅 → 9:40 長走風穴 → 11:00 田代岳ふもと散策 → 13:00 五色湖(山瀬ダム)→ 15:00 大滝温泉で入浴 → 16:30 大館駅
①長走風穴(40分)→ 夏でも吹き出す天然の冷気を体感。植物群落の説明板を読みながら涼みます。
②田代岳(120分)→ 本格登山でなくても、ふもとの自然公園エリアを歩くだけで白神の空気を感じられます。
③五色湖(山瀬ダム)(40分)→ 山あいの人造湖でひと休み。水面に映る山なみが穏やかです。
④大滝温泉(60分)→ 米代川沿いに湧く古湯で、歩いた体をゆっくりほぐして一日を締めます。
ここまで見てきたとおり、見どころが少し離れた場所に点在していることもあります。気になるスポットをまとめて回るなら、レンタカーがあると一気に動きやすくなりますよ。料金は会社や時期でけっこう変わるので、まとめて比較できるサイトでサッと見ておくのがおすすめです。
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大館市の年間イベント

大館市のイベントは、雪の季節から始まります。冬の縁起市、初夏のバラ、夏の火文字、秋のきりたんぽ──と、季節ごとにテーマがはっきりしているのが特徴です。どれも大館の「顔」と結びついているので、旅の時期を決める手がかりにしてみてくださいね。
冬〜春:縁起の市と城跡の桜
冬にぜひ訪ねてほしいのが、毎年2月に開かれる「大館アメッコ市」です。「この日に飴を食べると風邪をひかない」と伝わる市で、起源は1588年(天正16年)にさかのぼります(出典:秋田県公式サイト(美の国あきたネット))。雪の中に色とりどりの飴が並ぶ光景は、いかにも北国の冬らしい華やかさです。1月には比内地鶏を主役にした「比内とりの市」も開かれます(出典:大館市公式サイト)。
雪がとけると、桂城公園の桜の季節。「大館桜まつり」は例年4月中旬から5月上旬にかけて開かれ、夜にはライトアップされた夜桜も楽しめます(出典:大館市公式サイト)。城跡の堀に映る桜は、写真に収めたくなる一枚です。
初夏〜夏:バラの香りと夜空の火文字
初夏の主役はバラです。石田ローズガーデンで開かれる「大館バラまつり」は例年5月下旬から6月にかけて行われ、約500種類のバラが咲きそろいます(出典:大館市公式サイト)。会期中の夜には「ナイトガーデン」も催され、闇に浮かぶバラが幻想的なんですよ。
夏は「大館大文字まつり」。毎年8月に、鳳凰山の山肌へ巨大な「大」の火文字が灯り、花火が夜空を彩ります。まちなかから見上げる火文字は迫力があり、盆の夜ならではの熱気に包まれます。9月には、400年以上の歴史をもつ大館神明社の例祭で、豪華な山車がまちを練り歩きます。
秋:新米ときりたんぽの祭典
そして秋の大本命が、毎年10月に大館樹海ドーム(ニプロハチ公ドーム)で開かれる「本場大館きりたんぽまつり」です。2025年で第53回を数え、市内外のきりたんぽ店が集う「きりたんぽグランプリ」や、自分でたんぽを焼く体験でにぎわいました(出典:大館食の祭典協議会)。新米と比内地鶏の香りがドームいっぱいに満ちる、大館の食がいちばん輝く2日間です。
大館市のエリア別の顔

いまの大館市は、2005年に旧大館市・旧比内町・旧田代町が合併して生まれた、広い市域を持つ町です(出典:大館市公式サイト)。旧町のなごりが今もエリアごとの個性として残っているので、旅する視点で4つの顔に分けて見ていきましょう。目的地の見当をつける手がかりになりますよ。
中心市街地エリア──観光と工芸の玄関口
JR大館駅から桂城公園にかけての一帯が、観光の中心です。秋田犬の里、城跡、曲げわっぱの工房、比内地鶏の名店が徒歩圏に集まり、車がなくても半日楽しめます。城下町として焼けては再興してきた歴史の層が、静かな街並みの底に流れています。初めての大館なら、まずここから歩き始めるのがおすすめです。
比内エリア(旧比内町)──比内地鶏のふるさと
市の南側、扇田を中心とする比内エリアは、日本三大地鶏「比内地鶏」の産地です。田園風景の中に鶏舎が点在し、地鶏料理の店や直売所が旅人を迎えます。本場の親子丼やきりたんぽ鍋を目当てに足を延ばすなら、このエリア。食いしん坊の旅にぴったりの顔を持っています。
田代エリア(旧田代町)──白神につながる山の郷
市の北西部、田代エリアは白神山地の東端・田代岳を擁する自然の宝庫です。早口の集落や山瀬ダムの五色湖、登山口へと続く道が、山好きを呼びます。まちなかの喧騒から離れて、森と水に包まれたい人におすすめのエリアです。四季の移ろいがくっきり感じられます。
郊外・産業エリア(花岡・釈迦内・上代野)──鉱山と学びの一帯
花岡や釈迦内、上代野といった郊外は、かつて鉱山で栄え、今はリサイクル・医療産業と大型施設が広がる一帯です。大館郷土博物館や大館樹海ドームもこのエリアにあります。町がどう生まれ、どう産業を乗り換えてきたのかを知りたい人に向いた、学びの多い顔です。
大館市の気候・季節の暮らし

大館市は、四方を山に囲まれた盆地ならではの、夏と冬の寒暖差が大きい気候です。年平均気温は10.2℃、8月の平均最高気温は29.0℃、1月の平均最低気温は−5.9℃です(出典:気象庁)。夏はしっかり暑く、冬はどっさり雪が積もる──そんなメリハリのある一年を、季節ごとに見ていきましょう。
夏(7〜8月)──盆地特有の蒸し暑さ
盆地の夏は、思いのほか暑くなります。日中は30℃近くまで上がり、風が弱いぶん蒸し暑さを感じる日も。近年は猛暑日が出ることもあり、冷房は夏の必需品です。とはいえ夜は気温が下がりやすく、朝晩はいくぶん過ごしやすいのが山あいの町のいいところです。
秋(9〜11月)──新米ときりたんぽの季節
秋は、大館がいちばん「おいしい」季節です。米代川流域の田んぼが黄金色に染まり、新米の季節に合わせて10月にはきりたんぽまつりが開かれます。山々は紅葉に彩られ、朝晩の空気がきりっと澄んでいきます。日中と朝晩の気温差が大きいので、羽織るものが一枚あると安心ですよ。
冬(12〜3月)──雪と暮らす日々
冬の大館は、積雪の多い雪国です。真冬には氷点下まで冷え込み、氷点下15℃前後まで下がる日も珍しくありません。車はスタッドレスタイヤが前提で、朝の雪かきは冬の日課になります。それでも、雪をかぶった街並みや、湯気の立つきりたんぽ鍋を囲む時間には、雪国ならではのぬくもりがあります。
春(4〜5月)──雪解けと桜
長い冬が終わると、桂城公園の桜が一気に咲きほころびます。雪解け水で川の流れが増し、田んぼに水が張られていく光景は、いかにも北国の春らしい風景です。日ざしはやわらかくても風はまだ冷たいので、薄手のコートが役立つ時期です。
大館市の移住・暮らし情報

大館市は、田園風景と都市機能がほどよく同居する、暮らしやすさのバランスがとれた町です。大型商業施設や総合病院がそろい、車があれば日常の用事はほぼ市内で完結します。ここでは「実際に住んだらどうなるか」を、通勤から医療まで具体的に見ていきましょう。
通勤・通学
市内の職場へは車通勤が中心で、幹線道路沿いに工業団地や商業施設が並びます。通勤・通学の主役はマイカーで、鉄道やバスは補助的な役割です。隣県の弘前市へは車で約1時間と近く、買い物や通院で青森県側へ足を延ばす人も少なくありません(出典:大館市公式サイト)。
住宅環境
家賃は都市部に比べてかなり抑えられます。アパートの場合、単身向けのワンルーム・1Kでおよそ4万円前後、家族向けの2LDKクラスでおよそ6万円前後が目安です(出典:SUUMO)。駐車場付きの物件が一般的で、車社会の暮らしにそのまま馴染みます。
買い物環境
買い物には困りません。イオンスーパーセンター大館店やいとく大館ショッピングセンター、大館樹海モールなど、ロードサイドの大型店が市内に複数あります。日常の食料品から衣料、家電まで市内でそろうので、車があれば生活の利便性は高いと考えられます。
子育て・教育
子育て世代の受け皿も整っています。市内には認可保育園10園、認定こども園8園、小学校17校、中学校9校、高校3校、大学・短期大学2校があります(出典:秋田暮らし はじめの一歩(秋田県移住・定住ポータルサイト))。市が全国に先がけて展開する「ふるさとキャリア教育」など、地域に根ざした学びに力を入れているのも特徴です。
医療環境
医療の面では、市内の大館市立総合病院が県北エリアの拠点として機能しています(出典:大館市立総合病院)。クリニックや歯科医院も市街地に集まっており、日常の通院から入院まで市内で対応できる体制が整っていると考えられます。
エリア別の暮らし視点
中盤では旅する視点でエリアを紹介しましたが、住む視点で見ると印象が変わります。中心市街地エリアは駅や商業施設が近く、車がなくても生活しやすい一帯。比内・田代エリアは家賃や土地に余裕があり、自然のそばでのびのび暮らしたい人向きです。買い物や通勤の導線をどこに置くかで、選ぶエリアが決まってきますよ。
大館市へのアクセス

大館市は、鉄道・高速道路・空港がそろう北東北の交通の結節点です。首都圏からは飛行機と新幹線の二択が基本で、県内より隣県の青森方面とのつながりが強いのも特徴。交通手段ごとに、現実的なルートを整理しておきますね。
車でのアクセス
高速道路は、東北自動車道の十和田IC・小坂IC、秋田自動車道(大館西道路)の大館北ICが窓口になります。県庁所在地の秋田市へは車で約2時間30分、青森県の弘前市へは約1時間です(出典:大館市公式サイト)。日常も観光も、車があると行動範囲がぐっと広がります。
鉄道+バスでのアクセス
大館駅はJR奥羽本線の駅で、花輪線も分岐しています。首都圏からは秋田新幹線で秋田駅へ出て、奥羽本線の特急つがるに乗り換えるのが一般的なルートです。秋田駅から大館駅までは特急でおよそ2時間前後を見ておくとよいでしょう。乗り換えを減らしたいなら、次の飛行機ルートが手軽です。
飛行機でのアクセス
最寄りの大館能代空港(北秋田市)へは、羽田空港からANAが1日2〜3便就航し、飛行時間は約1時間10分です(出典:ANA)。空港から大館市の中心部までは車で約30分ほど。首都圏からいちばん早く着けるのは、この空路です。
町内移動の現実的アドバイス
市内をこまかく回るなら、やはり車が便利です。鉄道やバス(秋北バス)は本数が限られるため、時刻の確認は必須。車がない場合は、大館駅前の秋田犬の里でレンタサイクルを借りると、まちなか観光の足になりますよ。
交通手段ごとに見てきましたが、「結局いちばん安く行くにはどうすれば?」と迷う方も多いはず。飛行機で向かうなら、航空券は予約のタイミングや会社によって料金が大きく変わります。複数の航空会社・LCCをまとめて比較できるサイトで、いちど最安値をチェックしておくと安心ですよ。
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【地元住民に直撃!】大館市の本当の魅力を聞いてみた

Q1.あなたのご職業を教えてください。
秋田杉を曲げて器をつくる、曲げわっぱの職人をやっています。この土地で受け継がれてきた仕事で、木を熱でしならせて山桜の皮で綴じる、昔から製法の変わらない手仕事です。
木と向き合う毎日ですが、この街の森と水がなければ成り立たない仕事だと、年々感じるようになりました。手を動かすほど、地元への愛着が深まりますね。
Q2.大館市に来て絶対行くべき場所はどこだと思いますか?
まずは駅前の秋田犬に会える施設ですね。ハチ公の故郷という大館観光の顔で、初めての人はここで街の空気をつかめると思います。
地元の人間としては、佐竹西家の城跡である運動もできる公園を勧めたい。堀端を歩くと城下町の名残が静かに残っていて、朝の澄んだ空気の中を歩くと、この街の時間の流れが体に染みてきます。
Q3.大館市でお土産を買うとしたらなんですか?
やはり曲げわっぱの弁当箱やおひつですね。使うほど木肌が育つので、大館の有名なものとして長く手元に残る品です。
食べ物なら、新米で作るきりたんぽと比内地鶏の組み合わせ。地元の人間からすると、鍋用の生のたんぽを買って帰って、家で煮るのがいちばんの贅沢だと思っています。
Q4.外から人が来たときに、大館市でまず連れていく店はどこですか?
比内地鶏を出す店に連れて行きます。澄んだ脂の出汁がきいた鍋や、炭火で焼いた地鶏は、本場でしか味わえない濃さがありますからね。
あとは、昔ながらの定食屋の、出汁と油の匂いが染みついたような店。観光地の華やかさとは違う、地元の日常の味を知ってもらえると嬉しいんです。
Q5.大館市はどんな気質だと思いますか?
口数は多くないけれど、芯のあたたかい人が多い土地だと思います。ハチ公を大事にしてきた街ですから、一度縁を結んだ相手には義理堅い。
雪と長く付き合ってきたぶん、辛抱強くて、黙々と手を動かすのが得意な人が多い。職人が根づいてきたのも、そういう気質と無関係じゃない気がしますね。
Q6.昔に比べて、大館市の雰囲気や活気はどう変わったと感じますか?
正直に言えば、鉱山でにぎわった頃の勢いはもうありません。人も減って、まちなかの店が静かになったのは寂しいところです。
ただ、秋田犬や曲げわっぱを目当てに、外から、それに海外からも人が来るようになった。市長をはじめ街ぐるみで観光に力を入れていて、新しい風は確かに吹いていると感じます。
Q7.大館市のこれから新しくできる施設や、期待している活動などはありますか?
大きな箱物より、市民センターのような場で、若い人が曲げわっぱや地元の食に触れる機会が増えるといいなと思っています。担い手が育つことが何よりの願いです。
秋田杉を守る山や水源を次の世代へつなぐ活動にも期待しています。森あっての工芸、森あっての大館ですから、そこが続けば街の未来も明るいはずです。

