上小阿仁村(かみこあにむら)は、秋田県のほぼ中央部・北秋田郡にある人口1,632人の小さな村です。総面積の9割以上が山林で、天然秋田杉とマタギ文化で知られています。大館能代空港から車で約25分。
上小阿仁村の魅力を5つに凝縮すると、こうなります:
- ✅ マタギの里・八木沢──狩猟用具5点が村の有形民俗文化財第1号に指定された狩猟文化の村
- ✅ 天然秋田杉「コブ杉」──林野庁「森の巨人たち百選」に選ばれた樹齢約250年の巨木
- ✅ 全国初の中山間地自動運転サービス「こあにカー」が走る村
- ✅ 日本で初めて栽培に取り組んだとされる特産「食用ほおずき」(糖度13〜16度)
- ✅ 秋田県で最も人口が少ない村、村の花は世界的にも珍しい「コアニチドリ」
「マタギ文化や山の暮らしに興味がある人」「巨木や森林浴が好きな旅行者」「静かな山あいで暮らしたい移住希望者」に特におすすめの村です。この記事では、序盤の推しポイントから、歴史・文化・特産品まで、村の「顔」となる部分を紹介します。
| 人口 | 1,632 人 ※2026年6月1日時点(推計人口) |
|---|---|
| 面積 | 256.72 km² |
| 人口密度 | 6.36 人/km² |
地理的には、東は「姫ヶ岳」などの山を境に北秋田市、西は能代市・山本郡三種町・南秋田郡五城目町、南は太平山(1,171m)を境に秋田市と接する、南北に細長い山あいの村です(出典:秋田県)。総面積の92.7%が山林原野で占められています(出典:総務省 地域社会DXナビ)。
鉄道は通っておらず、最寄りは大館能代空港。マタギ・秋田杉・特産の果実と、山とともに生きてきた村の姿を、ひとつずつ見ていきましょう。
上小阿仁村の推しポイント

山林が9割を占める上小阿仁村は、「山の文化」が色濃く残る村です。近世に阿仁のマタギが移り住んだ八木沢集落、森の巨人に選ばれた天然秋田杉のコブ杉、雪国で全国に先駆けて走り出した自動運転車「こあにカー」、そして村生まれの果実。ここでは、村の顔となる4つを少し掘り下げて紹介します。
マタギの里・八木沢──消えた狩猟文化の記憶
上小阿仁村の八木沢集落は、1813年(文化10年)に阿仁根子(現在の北秋田市)のマタギが移り住んでできた狩猟民の村です。山の神への厚い信仰とともに冬狩りが営まれてきましたが、2009年春、集落最後の古老マタギが猟銃を返納し、生業としてのマタギ集落は幕を閉じました。その暮らしを伝える熊槍やマキリなど狩猟用具5点は、2012年に村の有形民俗文化財第1号に指定されています。
天然秋田杉とコブ杉──森の巨人が立つ森
村の上大内沢自然観察教育林には、樹齢約250年の天然秋田杉が約700本も立ち並びます。その中でもひときわ目を引くのが、目線の高さに大きなコブを持つ「コブ杉」。樹高40m、幹周3.77mのこの木は、2000年に林野庁の「森の巨人たち百選」(No.12)に選ばれました(出典:林野庁 米代東部森林管理署上小阿仁支署)。木漏れ日のなかを歩いていくと、突然この不思議な姿が現れるんですよ。森林浴にぴったりの散策路です。
全国初の自動運転「こあにカー」──雪国の挑戦
道の駅かみこあにを拠点に、村の中を走る電動カート「こあにカー」。2019年11月、中山間地域としては全国で初めて自動運転サービスの本格運行を始めた、村の名物です(出典:国土交通省 RoAD to the L4)。道路に埋めた電磁誘導線をたどって時速12kmでゆっくり進み、最大20cmの雪の上でも走れるのが自慢。運賃は1回200円です。運転手のいない「レベル4」を目標に、いまも進化を続けています。
食用ほおずきとこはぜ──村生まれの果実
上小阿仁村は、日本で初めて食用ほおずきの栽培・産地化に取り組んだとされる村です(出典:秋田県)。黄金色のつぶらな実は、昼夜の寒暖差で糖度13〜16度まで育つことも。もう一つの「こはぜ」は、ブルーベリーと同じ属の黒紫色の小さな実で、アントシアニンを多く含むとされます。どちらも道の駅でジャムやアイスになって並んでいます。
上小阿仁村の歴史

上小阿仁村の歴史は、小阿仁川の上流に開けた山里の歴史です。中世から近世にかけて「小阿仁」の名で記録に現れ、阿仁のマタギたちが山を越えて移り住みました。明治の町村制で9つの村が一つにまとまり、平成の大合併では合併せず単独の村として残る道を選びました。時代の節目を追ってみます。
古代〜近世──「小阿仁」の名とマタギの移住
1591年(天正19年)、秋田実季の太閤検地の領地目録に「小阿仁村」として記録されています。この一帯は房住山にまつわる高倉長者の伝説が語られる地でもありました。近世に入ると、1813年(文化10年)に阿仁根子のマタギが八木沢に、1822年(文政5年)には萩形集落が開かれ、狩猟民の中継地として山の暮らしが根づきました。
明治の町村制と九か村の合併
1889年(明治22年)4月1日、町村制の施行により、小沢田村・五反沢村・福館村・杉花村・堂川村・仏社村・沖田面村・大林村・南沢村の9つの村が合併し、上小阿仁村が発足しました。村名に「上」が付くのは、発足当時、近隣に下小阿仁村が存在したことに由来します。
現代──単独立村と全国初への挑戦
「平成の大合併」の際、当初は鷹巣阿仁部の五町村で合併が話し合われましたが、上小阿仁村は協議会から離脱し、単独の村として残ることを選びました。以降も、萩形ダム完成(1966年)で離村した集落の記憶を刻む記念碑や、全国初の自動運転サービスなど、小さな村ならではの選択と挑戦が続いています。
上小阿仁村の文化・風習

方言と話し方の特徴
村で話されるのは秋田弁です。相づちのんだ(そうだ・そうだね)が会話の基本で、活用も豊か。んだども(だけどね)、んだっけ(〜したところ)のように変化します。ほかにもしったげ(とても・すごく)、めんけ(かわいい)、なんも(大丈夫・どういたしまして)、けっぱれ(がんばれ)、別れ際のへば(それじゃあ)などがよく使われます。県北らしく濁音が多く、「か行・た行」が濁って柔らかく響くのも特徴なんですよ。
食卓と季節の暮らし
春は太平山の雪解け水が流れ込む小阿仁川でイワナやヤマメが跳ね、山菜が食卓を彩ります。秋になれば、地元で採れたきのこや、道の駅に並ぶ食用ほおずき、真っ赤な紅葉が村を包みます。1年の3分の1が雪に覆われる豪雪地なので、冬は雪とともにある暮らし。季節の移ろいがそのまま食卓に出てくる、そんな村です。
人の気質と山とともにある暮らし
山に囲まれた小さな村だからこそ、人と人との距離は近く、支え合いの気風が息づいています。集落ごとに獅子踊りや駒踊り、番楽、盆踊りといった芸能が今も受け継がれ、産業祭では村の恵みが一堂に集まります。自分で車を運転できなくなった人を「こあにカー」や住民ドライバーが支える仕組みも、そうした助け合いの延長線上にあるんですよね。
上小阿仁村の特産品・食

特産品1:食用ほおずき
村を代表する特産が食用ほおずきです。南米ペルー原産のナス科の果実で、殻をむくと黄金色の実が現れます。味は、甘さのなかに爽やかな酸味とフルーティーな香りが広がる独特のもの。昼夜の寒暖差が大きい村では糖度13〜16度まで育ち、旬は9〜10月です。生でそのまま食べられるほか、ジャムやアイス、果実酒に加工され、道の駅かみこあにで手に入ります。日本で初めて栽培に取り組んだとされる産地ならではの味を、ぜひ現地で確かめてみてください(出典:秋田県)。
特産品2:こはぜ
こはぜは、ブルーベリーと同じ属の黒紫色の小さな実で、村で古くから食べられてきました。ブルーベリーよりアントシアニンを多く含むとされ、独特の酸味が持ち味です(出典:国土交通省 RoAD to the L4)。そのまま食べるより、コンフィチュール(ジャム)やお酒に加工したものが人気。ヨーグルトやトーストにのせると、甘酸っぱさがクセになりますよ。
特産品3:天然秋田杉
「秋田杉とコアニチドリの里」を掲げる上小阿仁村にとって、天然秋田杉はまさに村の背骨です。上大内沢の巨木林からは、2004年に国立科学博物館の展示用や京都迎賓館の内装材として貴重な天然杉が供給されました(出典:林野庁 米代東部森林管理署上小阿仁支署)。道の駅では、その秋田杉を使った木工品も並びます。手に取ると、木目の美しさと香りに驚くはずです。
特産品4:馬肉料理と山の恵み
道の駅かみこあにの名物といえば、馬肉の煮込みや馬肉入りラーメン。地元で採れた山菜やきのこをたっぷり使った定食も、山里ならではのごちそうです。村の花・コアニチドリは1919年(大正8年)に村内で発見され、植物学者・牧野富太郎博士が命名したもので、太平山の山頂付近に自生しています(出典:秋田県町村会)。食も花も、山の恵みそのものなんですよね。
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上小阿仁村の観光スポット

山林が9割を占める上小阿仁村の見どころは、大きく「巨木の森」「村の味と湯」「マタギとアート」の3つに分けられます。派手な観光施設が並ぶ村ではありませんが、天然秋田杉の巨木や、里山を舞台にした芸術祭など、ほかでは味わえない体験が待っていますよ。まずは押さえておきたいスポットを紹介します。
森と巨木を感じるスポット
- コブ杉(上大内沢自然観察教育林) – 樹齢約250年、樹高40m、幹周3.77mの天然秋田杉で、2000年に林野庁「森の巨人たち百選」(No.12)に選ばれています(出典:林野庁 米代東部森林管理署上小阿仁支署)。約700本の巨木が立ち並ぶ森を歩いて10分ほど、木道の先に目線の高さの大きなコブを持つ神秘的な姿が現れます。木漏れ日と沢のせせらぎに包まれる新緑〜初夏の午前中がおすすめですよ。
- 太平山 – 村の南にそびえる標高1,171mの山で、小阿仁川の水源です。秋田市との境に位置し、毎年6月ごろに山開きが行われます。ブナや秋田杉の森を抜けていく登山道は、山の空気を全身で感じたい人にぴったりです。
村の味と湯に出会うスポット
- 道の駅かみこあに – 1997年に「秋田杉とコアニチドリの里」の愛称で開設された、国道285号沿いの村の玄関口です。物産センターは9:00〜17:30(冬期は17:00まで)、食事処「秋田杉の館」も併設され、定休日は年末年始です(出典:道の駅かみこあに公式サイト)。名物の馬肉料理や、食用ほおずき・こはぜのスイーツ、その日採れた山菜やきのこの産直が並びます。旅の途中に立ち寄れば、村の味がひと通り楽しめるんですよね。
- 山ふじ温泉(上小阿仁村コミュニティセンター) – 村で親しまれてきた日帰り温泉です。営業時間は10:00〜19:00、定休日は水曜日、入浴料は大人300円・子供150円、泉質はアルカリ単純硫黄泉です(出典:全国観光情報サイト JAPAN 47 GO(日本観光振興協会))。山あいにひっそり佇み、大広間ではいつも地元の人の歓談の輪ができています。登山や散策のあとに、やわらかな湯で体をほどいてみてください。
マタギ文化とアートにふれるスポット
- 八木沢集落 – 1813年に阿仁根子のマタギが移り住んでできた、村の奥にある狩猟民の集落です。2009年に最後の古老マタギが猟銃を返納し、生業としてのマタギ集落は幕を閉じました。棚田やはさがけ、蔵が残る里山の風景そのものが、この村の記憶を伝えています。
- かみこあにプロジェクト – 2012年に始まった里山の芸術祭で、2025年で10回目を迎えました。近年は秋(2025年は10月)に、旧かみこあに保育園などを会場に開催されます(出典:かみこあにプロジェクト公式サイト)。県内外の作家が集落や廃校を舞台に作品を展示し、村全体が美術館になります。作品を巡りながら村を歩くと、暮らしの風景そのものが作品に見えてくるんですよ。
- 自動運転車「こあにカー」 – 道の駅かみこあにを拠点に走る電動カートで、2019年11月に中山間地域として全国で初めて自動運転サービスの本格運行を始めました(出典:国土交通省 RoAD to the L4)。誘導線をたどってのんびり進む乗り心地は、ここでしか味わえない体験です。体験乗車や視察も受け付けています。
上小阿仁村の観光ルート

南北に細長い上小阿仁村は、国道285号を軸に道の駅を拠点にすると動きやすい村です。巨木の森と温泉をめぐる半日コースから、隣の北秋田市まで足を延ばすマタギの旅まで、車を使ったモデルルートを紹介します。
【車・1日】村を縦に味わう満喫ルート
時系列:9:30 道の駅かみこあに → 10:00 上大内沢(コブ杉) → 12:00 道の駅で昼食 → 14:00 山ふじ温泉 → 15:30 こあにカー体験
①道の駅かみこあに(30分)
→ まず産直と物産センターで村の全体像をつかみます。朝いちばんは山菜や野菜が揃っていて気持ちいいですよ。
②コブ杉・上大内沢自然観察教育林(90分)
→ 車で山道を上がり、巨木の森を散策。午前の光が差し込む時間帯がいちばん神秘的です。
③道の駅かみこあにで昼食(60分)
→ 名物の馬肉料理や、ほおずき・こはぜのスイーツで一息。歩いたあとのごほうびにぴったりです。
④山ふじ温泉(60分)
→ 山あいの湯で疲れをほぐします。午後のすいた時間帯なら、のんびり浸かれます。
【車・半日】巨木と湯めぐりルート
時系列:13:00 道の駅かみこあに → 13:20 上大内沢(コブ杉) → 15:00 山ふじ温泉 → 16:30 道の駅にもどる
①道の駅かみこあに(20分)
→ 出発前に地図とトイレを確認。特産品のチェックもここで。
②コブ杉(90分)
→ 森の巨人に会いに行く、このルートの主役です。歩きやすい靴がおすすめ。
③山ふじ温泉(60分)
→ 散策の締めに硫黄泉でリフレッシュ。水曜が定休なので曜日だけ気をつけてくださいね。
④道の駅かみこあに(30分)
→ 帰り際にお土産を。夕方の産直は掘り出しものに出会えることもあります。
【車・1日】広域ルート:マタギの源流をたどる
時系列:9:00 道の駅かみこあに → 9:30 八木沢集落 → 11:00 北秋田市・阿仁地区へ → 15:00 帰路
①道の駅かみこあに(30分)
→ 旅のはじまりに、村の成り立ちを頭に入れておくと奥が深まります。
②八木沢集落(60分)
→ マタギ文化が根づいた奥の集落。里山の静けさに身を置くと、山とともに生きた暮らしが想像できます。
③北秋田市・阿仁地区(半日)
→ 八木沢マタギの源流とされる根子集落のある北秋田市阿仁へ。マタギ文化のつながりをたどる旅になります。
移動は上小阿仁村から北秋田市方面へ国道を北上します。山の道が続くので、時間に余裕をもって回るのがおすすめですよ。
ここまで見てきたとおり、見どころが少し離れた場所に点在していることもあります。気になるスポットをまとめて回るなら、レンタカーがあると一気に動きやすくなりますよ。料金は会社や時期でけっこう変わるので、まとめて比較できるサイトでサッと見ておくのがおすすめです。
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上小阿仁村の年間イベント

上小阿仁村のイベントは、山里の信仰や暮らしと結びついたものが多いのが特徴です。春を告げる火の行事から、夏の伝統芸能、秋の芸術祭まで、季節ごとに村の表情が変わります。ぜひ行ってみてほしいものを季節順に紹介しますね。
冬〜春:鳥追い・裸参りと「万灯火」
2月ごろには、五穀豊穣を祈る「鳥追い」や、下帯姿の若衆による「裸参り」といった伝統行事が行われます。雪深い村ならではの、身の引き締まる行事です。
そして春を告げるのが「万灯火(まとび)」。春彼岸の中日(春分の日、例年3月)の日没後、村内15集落で灯油を染み込ませた「ダンポ」に火をつけ、丘や田んぼに火文字を描いて祖先の霊を供養します(出典:秋田犬ツーリズム)。小阿仁川流域に約300年前から伝わるとされ、春に火を焚くこの行事は全国的にも珍しく、国の記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財に選択されています(出典:文化庁)。無料の鑑賞バスに乗ると、闇に浮かぶ火文字を集落ごとに巡れるんですよ。
初夏〜夏:山野草展と集落の伝統芸能
5月ごろには山野草展示会が開かれ、村に自生するめずらしい山野草が並びます。6月には太平山の山開きがあり、いよいよ山のシーズンが始まります。
8月のお盆の時期には、大林獅子踊り・小沢田駒踊り・八木沢番楽・沖田面盆踊りなど、集落ごとの伝統芸能が奉納されます。太鼓や笛の音が里山に響き、先祖を迎える村の夏の空気に包まれます。
秋:かみこあにプロジェクトと産業祭
秋の主役は、里山を舞台にした芸術祭「かみこあにプロジェクト」。2025年は10月に旧かみこあに保育園などで開かれ、10回目の節目を迎えました(出典:かみこあにプロジェクト公式サイト)。紅葉に色づく村を歩きながらアート作品を巡る、この時期ならではの楽しみ方ができます。
10月ごろには産業祭も開かれ、村の農産物や特産品が一堂に集まります。収穫の秋を、地元の人たちと一緒に味わえる催しです。
上小阿仁村のエリア別の顔

上小阿仁村は、小阿仁川に沿って集落が南北に連なる細長い村です(出典:秋田県)。ここでは旅する視点で、村を4つのエリアに分けて、それぞれの顔を紹介します。なお、これらは行政上の区分ではなく、地元で呼ばれる地区・集落のまとまりとして捉えてくださいね。
小沢田・中心部エリア──村の玄関口
村役場や道の駅かみこあに、郵便局、JAが集まる村の中心です。芸術祭の会場となる旧かみこあに保育園もこのエリアにあります。まずここを拠点に、産直で村の味を仕入れてから動き出すのがおすすめですよ。旅の起点にぴったりのエリアです。
大林・上大内沢エリア──巨木「コブ杉」の森
中心部から山側へ入った、天然秋田杉の巨木が広がるエリアです。約700本の巨木林とコブ杉があり、森林浴や自然観察を楽しみたい人に向いています。獅子踊りが伝わる集落でもあり、静けさのなかに山里の文化が息づいています。
五反沢エリア──山あいの湯どころ
山ふじ温泉があるのがこのエリア。硫黄の香りがする湯で、地元の人たちの憩いの場になっています。観光の締めや、のんびり湯に浸かって過ごしたいときに立ち寄りたい、落ち着いた雰囲気の一帯です。
八木沢・萩形エリア──マタギの記憶と山の奥
村のいちばん奥にある、マタギ文化の里です。八木沢は狩猟集落の風景と芸術祭の原点が残る場所。さらに奥の萩形は、ダム建設で離村した集落の記憶が刻まれた地で、小阿仁湖の静かな水面が広がります。村の歴史の深部に触れたい人に向いたエリアです。
上小阿仁村の気候・季節の暮らし

上小阿仁村は、奥羽山脈の西側に広がる内陸の山あいにあり、1年の約3分の1が雪に覆われる豪雪地です(出典:総務省 地域社会DXナビ)。冬は大陸からの北西季節風が日本海で水分を含み、奥羽山脈にぶつかって多くの雪を降らせます(出典:気象庁)。四季の移ろいがはっきりした土地なんですよ。
春──3月〜5月の暮らし
春分のころはまだ雪が残り、丘や田んぼに火文字がともる「万灯火」で春の訪れを待ちます。雪がとけると小阿仁川に太平山の雪解け水が流れ込み、山野草が芽吹きます。長い冬のあとの新緑は、村がいちばん華やぐ季節です。
夏──6月〜8月の暮らし
内陸の盆地状の地形のため、夏は昼夜の寒暖差が大きいのが特徴です。この寒暖差が、特産の食用ほおずきをメロン並みの糖度まで甘く育てます(出典:秋田県)。渓流の水は冷たく、キャンプや釣りが気持ちいい季節ですよ。
秋──9月〜11月の暮らし
秋は山が色づき、道の駅には山菜やきのこ、ほおずきが並びます。里山を舞台にした芸術祭の時期でもあり、紅葉とアートを一度に楽しめます。朝晩は急に冷え込むので、上着が手放せなくなってきます。
冬──12月〜2月の暮らし
冬は本格的な雪との暮らしになります。雪かきは日常で、車の運転にも冬装備が欠かせません。集落間をつなぐ路線バスがなく、雪の日の移動が課題になるからこそ、自動運転車「こあにカー」のような取り組みが生まれた背景があるんですよね。
上小阿仁村の移住・暮らし情報

上小阿仁村は、秋田県のなかで最も人口が少ない村です。派手な便利さはありませんが、山と川に囲まれ、顔の見える距離で暮らせる場所です。ここでは「実際に住むとどうなるか」を項目ごとに見ていきます。
通勤・通学
村には鉄道が通っていないため、移動は車が基本です。村内には役場・診療所・林業や農業の仕事があり、村外へ通う人は隣接する北秋田市や能代市方面へ車で向かうのが一般的だと考えられます。冬の通勤・通学は雪道が前提になります。
住宅環境
大手の賃貸ポータルには村内の物件がほとんど掲載されておらず、賃貸市場はごく小さいのが実情です。住まいを探すなら、村の「空き家情報登録制度(空き家バンク)」や移住相談を通すのが現実的です(出典:上小阿仁村公式サイト)。空き家は多い傾向にあり、住居費は抑えやすいと考えられます。
買い物環境
村内に大型スーパーはなく、日常の食材は道の駅かみこあにの産直やJAが中心になります。まとめ買いは、北秋田市の鷹巣エリアや能代市、五城目町のロードサイド店まで車で出るスタイルが基本です。買い物は「ついで」にまとめる暮らし方になりますね。
子育て・教育
村にはかみこあに保育園(認可保育園)と、小中併設の上小阿仁小中学校があります。小中学校では教諭の相互乗り入れによる指導が行われ、希望する高校生にはアメリカでの海外研修の機会も用意されています(出典:秋田暮らし はじめの一歩(秋田県))。
子育て支援も手厚く、子宝祝金制度では第1子に15万円、第2子以降に60万円が支給され、第3子以降は6歳の誕生月の前月まで月額1万5000円が支給されます(出典:上小阿仁村公式サイト)。
医療環境
村唯一の医療機関は上小阿仁村国保診療所で、日常の内科・外科的なケアを担っています。入院や専門的な医療が必要なときは、隣接する北秋田市などの病院へ車で向かうことになります。かかりつけは村内、いざというときは市部、という組み合わせで考えるのが現実的です。
エリア別の暮らし視点
中心部の小沢田地区は、役場・診療所・道の駅・小中学校が近くにまとまり、生活導線がコンパクトです。移住の入り口としては、まずこのあたりが暮らしやすいと考えられます。八木沢など奥の集落は自然が身近な一方、車は必須で冬の雪も深くなります。
移住を後押しする制度として、村に転入した人へ1人あたり10万円を交付する移住定住奨励金があり、村の学校へ転入学した場合はさらに20万円が加算されます(出典:上小阿仁村公式サイト)。
上小阿仁村へのアクセス

上小阿仁村には鉄道が通っていないため、村への足は車が基本です。国道285号が村を南北に貫き、空の玄関口は大館能代空港。ここでは交通手段ごとにアクセスをまとめます。
車でのアクセス
高速道路は、秋田自動車道の五城目・八郎潟インターから村まで車で約30分です。JR鷹ノ巣駅から約30分、JR秋田駅から約70分、秋田内陸縦貫鉄道の米内沢駅からは約15分でアクセスできます(出典:道の駅かみこあに公式サイト)。
鉄道+バスでのアクセス
最寄りの鉄道駅は、JR奥羽本線の鷹ノ巣駅や秋田内陸縦貫鉄道の各駅です。北秋田市中心部と村の間は秋北バスの路線が結んでいます。ただし本数は多くないので、鉄道で近くまで来て、駅からは車やバスに乗り継ぐイメージで計画するのがおすすめですよ。
飛行機でのアクセス
空路の玄関口は大館能代空港で、東京(羽田)からANAの便が就航しています(出典:ANA)。空港から村までは車で約25分と近く、首都圏から向かうなら空路がいちばんスムーズです(出典:道の駅かみこあに公式サイト)。
村内移動の現実的アドバイス
村内は公共交通が限られるため、滞在中はレンタカーなど車の用意があると安心です。免許を返納した人や高齢の住民の足としては、道の駅を拠点に走る自動運転車「こあにカー」や予約制の移送サービスが活躍しています。旅行者も体験乗車ができるので、村の暮らしを体感するつもりで乗ってみるのも面白いですよ。
交通手段ごとに見てきましたが、「結局いちばん安く行くにはどうすれば?」と迷う方も多いはず。飛行機で向かうなら、航空券は予約のタイミングや会社によって料金が大きく変わります。複数の航空会社・LCCをまとめて比較できるサイトで、いちど最安値をチェックしておくと安心ですよ。
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【地元住民に直撃!】上小阿仁村の本当の魅力を聞いてみた

Q1.あなたのご職業を教えてください。
山に入って獲物を追う、いわゆるマタギです。この村の八木沢という集落には、昔から阿仁のマタギの流れをくむ狩猟の文化が根づいていましてね。私もその土地で育ってきた人間です。
今は生業として食べていくのは難しい時代ですが、山の神への敬いや、獲物の扱い方、雪の読み方は、先人から受け継いだものを大事にしています。山とともに生きる、それが私の仕事です。
Q2.上小阿仁村に来て絶対行くべき場所はどこだと思いますか?
まずは上大内沢の巨木の森ですね。森の巨人にも選ばれたコブ杉があって、樹齢二百五十年の秋田杉が七百本も立ち並んでいます。木道を歩くと、沢の音と木漏れ日に包まれて、背筋が伸びる思いがしますよ。
それから村の中央を流れる水源、小阿仁川沿い。太平山からの雪解け水が澄んでいて、地元の者にとっては当たり前の風景ですが、あの静けさは村の宝だと思っています。
Q3.上小阿仁村でお土産を買うとしたらなんですか?
やはり特産の食用ほおずきですね。昼夜の寒暖差で甘く育つので、ジャムやアイスに加工したものは間違いありません。オーソドックスなところで、これを選んでおけば喜ばれます。
地元の者としては、こはぜという小さな黒い実の加工品も推したい。ブルーベリーに似ていますが酸味が濃くてね。あとは秋田杉の木工品。使うほど味が出るので、長く残る土産になります。
Q4.外から人が来たときに、上小阿仁村でまず連れていく店はどこですか?
村の玄関口にある道の駅ですね。そこの食事処で、まず名物の馬肉料理を食べてもらいます。この土地で長く親しまれてきた味で、外の人はたいてい驚きますよ。
産直には、その日に採れた山菜やきのこも並びます。山の恵みそのものが皿に乗っているようなもので、村の暮らしぶりが一番わかる場所じゃないかと思っています。
Q5.上小阿仁村はどんな気質だと思いますか?
小さな村ですから、人と人の距離が近いです。おせっかいなくらい面倒を見合う、支え合いの気風が残っています。免許のない年寄りを皆で送り迎えするような、そういう温かさがありますね。
一方で、山の暮らしで培った辛抱強さもある。雪深い冬を毎年越してきた者ばかりですから、口数は多くないが芯は強い。そういう気質の土地だと思います。
Q6.昔に比べて、上小阿仁村の雰囲気や活気はどう変わったと感じますか?
正直に言えば、人は減りました。県内で一番人口の少ない村になり、私が追ってきたマタギの文化も、生業としてはほとんど途絶えてしまった。寂しさは、確かにあります。
ただ、悪いことばかりじゃない。里山を舞台にした芸術祭で外から若い人が来るようになり、村が話題にのぼる機会も増えた。静かに芽が出始めている、そんな感触はありますよ。
Q7.上小阿仁村のこれから新しくできる施設や、期待している活動などはありますか?
やはり道の駅を拠点に走る自動運転車ですね。中山間地では全国に先駆けた取り組みで、これが根づけば、車を手放した年寄りの足になる。村の暮らしを支える希望だと思っています。
それと、里山の芸術祭のような、外の人と村人が交わる活動。村長をはじめ皆が知恵を出し合っていますが、こういう縁が続いて、少しずつでも人が戻ってくれればと願っています。

